読書日記– category –
-
読書日記
『出版禁止 女優 真里亜』- その女優を追うほど、こちらの足元まで怪しくなる【読書日記】
長江俊和の作品を読むとき、いつも少し身構えてしまう。正確に言うと、身構えたつもりで毎回まんまと引っかかる。 こちらは「今回は騙されないぞ」と、付箋と疑い深い目つきでページに向かうわけだが、長江作品はその疑い深ささえ計算に入れてくる。実に意... -
読書日記
寝舟はやせ『XXX日後に呪われるだけの誰かさんの日記』- 呪いより会社のほうが怖いかもしれない、生あたたかホラーの変な愛しさ【読書日記】
「XXX日後に呪われる」と言われたら、普通は大事件である。いや、普通ならまず仕事どころではない。 即座に有給を取り、寺社仏閣を巡り、霊能者を検索し、ついでに生命保険の内容も確認する。 ところが、寝舟はやせ『XXX日後に呪われるだけの誰かさんの日... -
読書日記
マルセル・シュオッブ『黄金仮面の王』- 博識が悪夢の仮面をかぶったら、幻想文学はここまで濃くなる【読書日記】
幻想文学にはときどき、何を食べたらこんなものが書けるんだ?と言いたくなる作家がいる。 マルセル・シュオッブは、まさにそのタイプだ。 歴史、神話、古文書、伝説、犯罪史、終末幻想、海賊、仮面、死体、顔の喪失、奇跡。材料だけ並べると、だいぶ物騒... -
読書日記
『呪いの☒☒』- 令和の呪いは、井戸からではなくインフラと紙と職場からやってくる【読書日記】
呪いという言葉を聞くと、古びた藁人形、丑の刻参り、封印された村の祠、絶対に開けてはいけない箱、みたいなものを思い浮かべがちだと思う。 もちろん私はそういうタイプのホラーも大好物だ。できれば旧家の蔵から、何かよくない巻物の一本くらいは出てき... -
読書日記
似鳥鶏『新学期にだけ見える星座』- 市立高校に戻ってきたら、後輩たちが星をつないでいた【読書日記】
長く続いているシリーズの新刊を読むとき、少し変な気分になる。 久しぶりに母校へ遊びに行ったら、知っている廊下や部室はそのままなのに、そこにいる生徒は少し入れ替わっている。懐かしいのに、新しい。安心するのに、ほんの少しだけ知らない場所にも見... -
読書日記
『悪党たちのシチュー』- 腐った政治を、洒落た会話と悪党の手際で煮込んだ危険なご馳走【読書日記】
世の中には、タイトルだけで妙に気になってしまう小説がある。 ロス・トーマス『悪党たちのシチュー』も、まさにそのタイプだ。 悪党。シチュー。もう、ろくでもない匂いしかしない。鍋の中で何が煮えているのか、できれば知りたくない。でも蓋を開けたく... -
読書日記
小鷹信光『探偵物語』- もうひとりの工藤俊作は、下北沢の片隅で煙草をくゆらせる【読書日記】
探偵という職業には、なぜか妙な魔力がある。 警察ではない。名探偵みたいに華麗な推理を披露するわけでもない。基本的には面倒ごとを嫌がり、金にはうるさく、できれば厄介な事件には関わりたくない顔をしている。 なのに、いざ放っておけないものに出く... -
読書日記
『漂泊の星舟』- 宇宙船という密室で、自分が何者かまで疑わしくなるSFミステリ【読書日記】
宇宙船というのは、ミステリの舞台として反則気味に魅力的である。 館なら逃げ道を探せる。孤島なら海を眺めて絶望できる。雪山の山荘なら、とりあえず暖炉の前で誰かが意味ありげな顔をする。 だが宇宙船は違う。外に出たら即アウト。窓の向こうには、助... -
読書日記
消されるはずの人生を拾い上げる -『特殊清掃人グレイス・マクギルと孤独な死者たち』が踏み込む死後の密室【読書日記】
人が亡くなったあとの部屋を片づける、という設定だけでもう重い。 しかも、その人が誰にも気づかれないまま、何週間も、場合によっては何ヶ月も部屋にいたのだとしたら、そこには事件の怖さとは別の、もっと生々しい怖さがある。 殺人鬼が出てくるわけで... -
読書日記
ホラー映画好き必読の書『男と女とチェーンソー』- 悲鳴と血しぶきの奥で、ホラーの定番を理論へ変える【読書日記】
ホラー映画というジャンルは、どうにも誤解されやすい。 血が出る。人が叫ぶ。 マスクを被った殺人鬼が出る。 逃げる若者たちはなぜか地下室へ行く。どう考えても行かないほうがいいのに、律儀に行く。 観ているこちらは「そっちはダメだって!」と何度も...
