読書日記– category –
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下村敦史『ネタバレあり 双紋島の殺人』- 先に真相を見せられて、それでも迷う反則級の本格ミステリ【読書日記】
ミステリ小説にとってネタバレとは本来、吸血鬼にとっての日光みたいなものだ。 浴びた瞬間に楽しみが灰になる。犯人、トリック、動機、死者の数、隠された過去。 そういうものは最後まで隠されているからこそ、こちらはページの上で疑心暗鬼になり、犯人... -
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小田雅久仁『禍』- 怖いのに目をそらせない、奇妙に美しい災厄【読書日記】
新刊情報を追っていて小田雅久仁の名前が見えると、私の中の空気が毎回ちょっと空気が変わる。 待ってました、という気持ちもあるし、今度はどこまで連れていかれるのかという妙な緊張もある。 この人はたくさん書くタイプではない。むしろ寡作で、そのぶ... -
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トマス・リゴッティ『悪夢工場』- 世界そのものが悪夢として立ち上がる、文学的ホラーの黒い到達点
ホラー小説には、読んだあと電気を消すのが嫌になるタイプの作品がある。 背後が気になる。カーテンの隙間が気になる。廊下の暗がりが、やけに意味ありげに見えてくる。 まあ、それはそれで困るのだが、まだ生活に戻れる恐怖ではある。 だがトマス・リゴッ... -
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月影朔『とある村の奇妙な求人広告』- 求人票が異界への入口になるモキュメンタリーホラー【読書日記】
求人広告というものは、本来であれば現実的な情報である。 勤務地、勤務時間、給与、福利厚生、必要なスキル。そこに並んでいるのは、あくまで生活のための条件だ。 時給はいくらか。交通費は出るのか。週何日から働けるのか。怖い要素など普通はない。む... -
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『出版禁止 女優 真里亜』- その女優を追うほど、こちらの足元まで怪しくなる【読書日記】
長江俊和の作品を読むとき、いつも少し身構えてしまう。正確に言うと、身構えたつもりで毎回まんまと引っかかる。 こちらは「今回は騙されないぞ」と、付箋と疑い深い目つきでページに向かうわけだが、長江作品はその疑い深ささえ計算に入れてくる。実に意... -
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寝舟はやせ『XXX日後に呪われるだけの誰かさんの日記』- 呪いより会社のほうが怖いかもしれない、生あたたかホラーの変な愛しさ【読書日記】
「XXX日後に呪われる」と言われたら、普通は大事件である。いや、普通ならまず仕事どころではない。 即座に有給を取り、寺社仏閣を巡り、霊能者を検索し、ついでに生命保険の内容も確認する。 ところが、寝舟はやせ『XXX日後に呪われるだけの誰かさんの日... -
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マルセル・シュオッブ『黄金仮面の王』- 博識が悪夢の仮面をかぶったら、幻想文学はここまで濃くなる【読書日記】
幻想文学にはときどき、何を食べたらこんなものが書けるんだ?と言いたくなる作家がいる。 マルセル・シュオッブは、まさにそのタイプだ。 歴史、神話、古文書、伝説、犯罪史、終末幻想、海賊、仮面、死体、顔の喪失、奇跡。材料だけ並べると、だいぶ物騒... -
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『呪いの☒☒』- 令和の呪いは、井戸からではなくインフラと紙と職場からやってくる【読書日記】
呪いという言葉を聞くと、古びた藁人形、丑の刻参り、封印された村の祠、絶対に開けてはいけない箱、みたいなものを思い浮かべがちだと思う。 もちろん私はそういうタイプのホラーも大好物だ。できれば旧家の蔵から、何かよくない巻物の一本くらいは出てき... -
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似鳥鶏『新学期にだけ見える星座』- 市立高校に戻ってきたら、後輩たちが星をつないでいた【読書日記】
長く続いているシリーズの新刊を読むとき、少し変な気分になる。 久しぶりに母校へ遊びに行ったら、知っている廊下や部室はそのままなのに、そこにいる生徒は少し入れ替わっている。懐かしいのに、新しい。安心するのに、ほんの少しだけ知らない場所にも見... -
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『悪党たちのシチュー』- 腐った政治を、洒落た会話と悪党の手際で煮込んだ危険なご馳走【読書日記】
世の中には、タイトルだけで妙に気になってしまう小説がある。 ロス・トーマス『悪党たちのシチュー』も、まさにそのタイプだ。 悪党。シチュー。もう、ろくでもない匂いしかしない。鍋の中で何が煮えているのか、できれば知りたくない。でも蓋を開けたく...
