ツキがなく、やることなすこと全て裏目に出てしまう殺し屋・七尾。
今回の依頼は、「ウィントンパレスホテル2010号室にいる父に、プレゼントの似顔絵を届けてほしい」という簡単な仕事だった。
さっそくホテルに向かう七尾だが、やはりツキのなさが祟り、事件に巻き込まれてしまう。
驚異的な記憶力を持つがゆえに追われていた女性・結花を助けることになってしまったのだ。
ホテルには、彼女を付け狙う追手たちや、逆に彼女の逃亡のために雇われたボディガードなど、物騒な連中がどんどん集まって来る。
ほどなくホテルは彼らの戦場となり、過激な攻防により死体がみるみる増えていく。
ツキのない七尾は、結花を連れてこの窮地からどう脱するのか。
そもそも結花はなぜ追われているのか、事件の裏に潜む真相とは?
「殺し屋シリーズ」、ますます波に乗った第四弾!
今回もツキのなさが炸裂!
「殺し屋シリーズ」は、一癖も二癖もある殺し屋たちが登場するサスペンス&ミステリーの長編シリーズです。
2022年には第二弾の『マリアビートル』がハリウッドで映画化され、話題になりました。
『777 トリプルセブン』はその第四弾であり、しかも主役は『マリアビートル』と同じ殺し屋・天道虫こと七尾!
今回も様々な殺し屋が集まって大騒動を起こしますし、七尾の運の悪さも凄まじいので、原作ファンも映画ファンも大満足できる内容ですよ。
さて今回の七尾がどのように不運なのか、さわりだけご紹介しておきますね。
ツキのない七尾は、厄介な仕事だと大惨事を起こしかねないのですが、今回のお仕事は「ホテルに似顔絵を届ける」だけなので、とても簡単。
にもかかわらず、やっぱり失敗してしまいます(笑)
2010号室に届けたところ、出てきた人が似顔絵とあまりにも違う顔なので変だなーと思っていたら、実は届け先が2010号室ではなく2016号室だったというオチ!
それだけでも吹いてしまいそうに面白いのに、ここからがさらに面白くて、2010号室の客がなぜか突然襲い掛かってきて、七尾がビックリして避けると、相手は勢い余って頭をぶつけて死んでしまうのです。
回避しただけで人を殺してしまう七尾、この悪運っぷりが読者にはたまらなく魅力なのですよね~。
しかも死んでしまったその人物、実は理由あってホテルに潜伏中のヒロイン・結花のボディガードを務めるはずでした。
そんなこんなで七尾は事件に巻き込まれ、結花を連れて逃げる責務を負ってしまうわけです。
でもツキのなさすぎる七尾は、当然スムーズに逃げることなんてできず、行く先々で騒動をどんどん大きくしてしまいます。
この畳みかけるようなオモシロ展開に、読者は一瞬たりとも目が離せなくなるのです。
個性あふれる物騒な連中
『777 トリプルセブン』には七尾以外にも裏社会の人間が多く登場するのですが、これがまたそれぞれにクセがあって面白く、魅力的です。
まずは奏田(ソーダ)と高良(コーラ)で、名前からしてインパクトのあるこの二人は、爆弾の扱いに長けています。
結花の護衛として雇われたところ、高良の方は七尾の悪運に巻き込まれて、いきなりお陀仏です(苦笑)
そして同じく結花に味方する逃がし屋のココ。
高齢の女性ですが、ハッキングが得意で、なんと情報操作で人生すらリセットさせることが可能。
また、女子2人組の殺し屋のモウフとマクラも魅力的。
元は高校の女子バスケ部だったという二人は、清掃員に扮してホテルに潜り込み、シーツなどの布を使って芸術的な殺人技を見せてくれます。
さらに、結花の追手として派遣された6人組の殺し屋。
エドやヘイアン、カマクラなど、日本史の時代区分のようなコードネームのこの6人、見た目は麗しいのに人をいたぶることが大好きという、残忍で残念な集団です。
このように『777 トリプルセブン』には様々な特技を持つ物騒な連中が出てきて、物語を大いに盛り上げています。
中でも特筆すべきは、残忍な6人組でしょう。
彼らは毒の吹き矢で七尾をどんどん追い込んでいくのですが、このシーンは作中でも屈指の見どころ!
どこから飛んでくるかわからない毒矢のスリルといい、それをヒラリヒラリとかわしつつ彼らを撃退していく七尾のカッコよさといい、必見ですよ。
しかもなぜかその場には、七尾が倒した敵以外の死体も混ざってしまうという相変わらずのノリもあって、ワクワクとニヤニヤが止まりません(笑)
またヒロインの結花も注目すべきキャラクターで、彼女は記憶力が抜群で、一度見たものは忘れません。
ある重要なパスワードを記憶しているために追われるのですが、そこには驚きの真相が隠されています。
終盤にそれが明かされた時の衝撃と言ったら!
このカタルシスは、ぜひ実際に読んで味わってほしいです!
シリーズ最高峰!楽しめること間違いなし!
『777 トリプルセブン』の作者・伊坂 幸太郎さんは、著作の多くが映画化されている上、本屋大賞にも毎年ノミネートされているという、超人気の作家さんです。
その中でもとりわけ「殺し屋シリーズ」は好評を博しており、『777 トリプルセブン』が刊行された時点でのシリーズ累計発行部数は、なんと300万以上!
押しも押されぬ、超人気シリーズとなっています。
その中でも今作は、迫力とスピード感があり、ユーモアにも溢れ、控えめに言ってもシリーズ最高の一冊だと思います。
ツキのない七尾が行動するたびに、予想もつかない酷い状況になってしまい、その中でアワアワしながらも、ドサクサに紛れて敵をバッタバッタと打ち倒していく七尾の様子は、豪快にして爽快!
物語的にも、ピンチの連続が小気味良く、伏線の散りばめ方や回収の仕方が実にスマートで、全く退屈しません。
大興奮で読めること間違いなしの傑作ですので、「とにかく楽しんで読書をしたい」という方には、ぜひおすすめしたいです!