方丈貴恵『アミュレット・ホテル』- 犯罪者の楽園で禁を破った者たちをホテル探偵が追い詰める

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アミュレット・ホテルは、多くの犯罪者たちが利用している会員制のホテルだ。

凶悪な犯罪者でも宿泊できる上、ルームサービスも充実しており、偽造パスポートだろうが銃器だろうが部屋に届けてもらえる。

もちろん警察に通報される心配は一切なく、安全に身を潜めることができるため、アミュレット・ホテルは有力な犯罪者たちから信頼されていた。

ただし2つだけ、絶対に守らなければならないルールがある。

①ホテルに損害を与えないこと。

②ホテル内で傷害・殺人事件を起こさないこと。

この2つの鉄則さえ守れば、ここは犯罪者にとって楽園とも言える場所だった、

ところがある日、スイートルームで殺人事件が起こってしまった。

一体誰がどんな理由で禁を犯したのか。

ホテルの切り札である専属探偵・桐生が、犯人をとことん追い詰める!

目次

犯罪者とホテル探偵の頭脳戦

『アミュレット・ホテル』は、犯罪者御用達のホテルで起こった事件を探偵・桐生が暴いていく、全4編の連作短編ミステリーです。

宿泊客が上級犯罪者ばかりで、サポートも至れり尽くせりの独特すぎるホテルなので、ジャンルとしては特殊設定ミステリーですね。

まずこの設定が、面白い!

裏社会の大物たちから信頼され、悪の巣窟よろしく集まってくるホテルって、ミステリー好きにとってはかなりツボです。

各部屋で一体どんな陰謀や犯行計画が企てられているのか、想像するだけでワクワクしますよね!

とはいえ完全に無法地帯というわけではなくルールがあって、敷地内での傷害事件や殺人事件はご法度です。

犯罪者たちが安心して滞在できてこそのアミュレット・ホテルですから、このルールは絶対厳守の超鉄則!

でもだからこそこのホテルには時々、わざわざここで事件を起こそうとする輩が現れます。

なぜって、事件が起こることはホテルにとって非常に都合が悪いので、オーナーは明るみにならないよう遺体や凶器などを内々で処理するからです。

つまり犯人にしてみれば、アミュレット・ホテルでの殺人は、自分がやったとバレさえしなければ、後処理までしてもらえてかなり便利なわけですね。

なんともふてぶてしい考えです。

もちろんバレた時には、それ相応の制裁が待っています。

そしてそれを担当するのが、ホテル専属探偵の桐生!

桐生は抜群の頭脳の持ち主で、どんなトリックも暴き、犯人を必ず見つけ出し、キッチリと処理します。

ということで『アミュレット・ホテル』は、禁を破って事件を起こすふてぶてしい犯罪者と、それを逃さず追い詰める桐生との対決物語と言えます。

どちらもその道のプロですから、ミステリー好きを唸らせるハイレベルな頭脳戦が拝めますよ。

各話のあらすじと見どころ

〇Episode1『アミュレット・ホテル』

有名詐欺グループのボスが宿泊しているスイートルームで、殺人事件が起こります。

おかしなことに、殺されたのはボスではなく、別室に泊まっていた犯罪者でした。

しかも現場は密室状態で―。

第一話ということで、まずはホテルのルールや登場人物を紹介する感じです。

犯人の手口も見事だし、それをやすやすと見破る桐生もカッコよくて、一話目にして読者はハートをガッチリ掴まれます!

〇Episode0『クライム・オブ・ザ・イヤーの殺人』

犯罪者の表彰式が行われている最中に、殺人事件が起きてしまいます。

犯人と思われるのは、あまりにも意外な人物で……?

第二話ですが、「Episode0」ということで、桐生がホテル探偵になる前の様子が描かれています。

第一話を読んだ後だからこそ、過去のいきさつが興味深く、ホテルや人物への思い入れが強くなる作品です。

〇Episode2『一見さんお断り』

大物犯罪者が集まるこのホテルに、あろうことか下っ端犯罪者が忍び込もうとします。

幼馴染を救うことが目的のようですが……?

これまでの物語と違い、ホテル側ではなく犯罪者視点で描かれています。

ユーモアあり、スリルあり、難解なトリックやロジックありで、ミステリーとしての完成度が特に高い傑作!

〇Episode3『タイタンの殺人』

今回の殺人事件は、よりによって犯罪者のトップたちが集まる会議のさなか。

凶器の謎を始め、一筋縄ではいかないトリックの数々に、桐生が燦然と立ち向かいます。

収録された4作品の中で最も長く、ページ数は100を超えています。

その分、人間模様もロジックも丁寧に描き込まれていて、読み応えたっぷりの濃密な作品!

桐生がカッコよすぎるし、アミュレット・ホテルが素敵すぎて、大好きが溢れるようなフィナーレ!

現実世界だからこそ際立つ犯罪者

『アミュレット・ホテル』は、特殊設定ミステリーの描き手として知られる方丈貴恵さんの作品です。

本書もやはり特殊設定ミステリーですが、方丈さんの今までの作品とは毛色が違っています。

これまでの作品ではタイムトラベルや宇宙人といったSF要素が目立っていたのですが、『アミュレット・ホテル』は完全に現実世界の物語。

我々の生きるこの世界が舞台であり、ホテルも探偵も犯罪者もこの世に存在します。

でも組み合わせがぶっ飛んでいて、一見きちんとしたホテルなのにボス級の犯罪者ばかりが集まるとか、ルームサービスが違法の薬物だったりとか、とにかく物騒なのですよ。

舞台が現実的だからこそ、異様さや迫力が際立っており、それが『アミュレット・ホテル』の特徴であり面白味であると言えます。

犯罪者たちのタイプやトリックの内容が千差万別で、そこも魅力です。

ひとつひとつの事件が、素人の突発的な犯罪ではなく、プロ中のプロによる犯罪なので、一般人にはとても想像できないような緻密さと奇抜さがあるのですよね。

個人的には『タイタンの殺人』の凶器トリックが特に印象的で、ちょっと他ではお目にかかれないような発想に、正直舌を巻きました。

他のエピソードもそれぞれに魅力的で、短編集でありながら、その枠を超える密度を感じさせてくれます。

興味を持たれた方は、ぜひぜひお手に取ってみてくださいね!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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