人気記事
-
読書日記
近藤史恵『ねむりねずみ【新装版】』- 梨園という見えない壁に囲まれた、最も美しく最も閉ざされたミステリ
華やかな世界を描いた小説のはずなのに、読んでいるうちに妙に息が詰まってくることがある。 しかもその息苦しさが、露骨な陰惨さではなく、美しさとほとんど見分けがつかないかたちで迫ってくるタイプのやつだ。 近藤史恵『ねむりねずみ【新装版】』は、... -
読書日記
マルク・ラーベ『スズメバチ』- ロックスター殺害事件の奥に、東ドイツの毒がある【読書日記】
血の入ったアルミケースに、小さな白い羽根が一枚。 マルク・ラーベ『スズメバチ』は、冒頭から嫌なものを差し出してくる。 派手なロックコンサートの熱狂。二万人を超える観客の歓声。スターのもとへ届く謎めいた封筒。その中身が、血と羽根である。 この... -
読書日記
ケイト・モートン『時計職人の娘』- 一軒の古い屋敷が150年分の記憶を抱えていた【読書日記】
『時計職人の娘』 著者:ケイト・モートン 没入度 : (4.5) 読み応え : (5.0) 歴史ロマン: (4.5) 人間ドラマ: (4.0) この作品を一言でいうと 一軒の古い屋敷を舞台に、150年へ散らばった人々の記憶と1862年の悲劇を結び直す歴史長編。 Amaz... -
国内ミステリー小説
井上悠宇『不実在探偵の推理』- 実体のない探偵とダイスで推理を構築する、斬新な謎解きミステリー
マンションの一室で、女性が手に藍の花を強く握りしめた状態で毒死していた。 そして彼女の恋人も、死を聞かされた後、後を追うように自殺してしまった。 なぜ彼女は、藍の花を持って亡くなっていたのだろうか。 そもそも彼女は自殺したのか、それとも何者... -
読書日記
『オカルト・クロニクル 暗黒録』- 怪異より怖い、いまだ埋まらない現実の空白【読書日記】
北海道の大雪山で、倒木を組んだ巨大な「SOS」が空から見つかる。 近くには人骨と日用品、さらにテープレコーダー。再生すると、男の声で「たーすーけーてーくーれー」という悲痛な叫びが流れてくる。 もう、現実の出来事とは思えない。 『オカルト・クロ... -
読書日記
ローラン・ビネ『HHhH: プラハ、1942年』- 感動することへの居心地の悪さを、そのまま最高のスリルに変えた一冊【読書日記】
私はふだん、歴史小説をそこまで熱心に読むほうではない。 嫌いというわけではないのだが、どうしても少し構えてしまうところがある。 題材が題材だけに、軽い気持ちでのめり込んでいいのか迷うことがあるし、史実の重みと小説としての気持ちよさがうまく... -
海外ミステリー小説
アビール・ムカジー『マハラジャの葬列』- 訪問中の王太子が暗殺!?藩王国に潜む陰謀とは
帝国警察のウィンダム警部とバネルジー部長刑事は、カルカッタ訪問中の藩王国王太子の一団に同行していた。 バネルジーは王太子の同窓生であり、あだ名で呼び合う親しい間柄だったのだ。 その道中で、二人は王太子から私的に相談を受ける。 王太子がカルカ... -
読書日記
小鷹信光『探偵物語』- もうひとりの工藤俊作は、下北沢の片隅で煙草をくゆらせる【読書日記】
探偵という職業には、なぜか妙な魔力がある。 警察ではない。名探偵みたいに華麗な推理を披露するわけでもない。基本的には面倒ごとを嫌がり、金にはうるさく、できれば厄介な事件には関わりたくない顔をしている。 なのに、いざ放っておけないものに出く... -
海外ミステリー小説
ジェシー・ケラーマン『駄作』- これは紛れもなく、駄作である。【エッセイ】
『駄作』 著者:ジェシー・ケラーマン 駄作度 : (5.0) 暴走度 : (4.0) 予測不能度: (4.5) エンタメ度: (5.0) この作品を一言でいうと 死んだ親友の原稿を盗んだ売れない文学教授が、まさかの展開に放り込まれるメタ娯楽小説。 Amazonで... -
短編集
宮内悠介『超動く家にて』- ミステリとSFのくだらなくて幸福な衝突【読書エッセイ】
宮内悠介『超動く家にて』を読んでいると、なんとも言えない妙な気分になってくる。 これはSFなのか、それともミステリなのか。 いや、たぶんどちらでもあるし、どちらでもない。むしろもっと厄介で、もっと楽しい何かだ。 宮内悠介という作家は、デビュー...
