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『ポルターガイストの囚人』- それって本当に幽霊のしわざ? 傑作『深淵のテレパス』に続くシリーズ第二弾【読書日記】
襖(ふすま)が勝手に開く。電気が消える。落下する遺影。壁の向こうから、誰もいないはずの足音が響く。 けれど本当に怖いのは、そんな現象じゃない。この家にいるのは、もしかすると私自身なのかもしれない。 上條一輝の『ポルターガイストの囚人』は、... -
『9人はなぜ殺される』- 静かな日常に、突然突きつけられる「死のリスト」【読書日記】
もし、ある日突然、自分の名前が「死のリスト」に載っていたらどうする? ピーター・スワンソン『9人はなぜ殺される』は、そんな悪夢のような設定から始まる物語だ。タイトルからして嫌な予感しかしないんだけど、内容はその想像を軽く飛び越えてきた。 物... -
櫻田智也『失われた貌』- 顔を失ったのは、死体だけじゃなかった―― 三人の最強作家が揃って絶賛するんだから読むしかないでしょ【読書日記】
『失われた貌』を手に取ったきっかけは、帯に踊る三人の名前だった。 伊坂幸太郎が「ミステリーが好きで良かった」と感慨を述べ、恩田陸が「捜査と謎解きのハイブリッド」と驚き、米澤穂信は「ガッツポーズ」した。 こう並ぶと、もはや推薦文というより「... -
今村昌弘『でぃすぺる』- 殺人事件を追いながら七不思議の謎を解く、オカルト×ミステリ
ユースケは、オカルト好きの小学六年生。 学級新聞でオカルト特集を組みたくて掲示係に立候補したところ、意外なメンバーと一緒に活動することになった。 一人目は、優等生のサツキ。 去年、従姉妹のマリ姉を何者かに殺され、残されたヒント「奥郷町の七不... -
『隣の家の少女』- 禁断の扉を開ける衝撃作:ジャック・ケッチャムの深淵
ホラー小説というジャンルには、読者の心臓を掴み、精神を深く揺さぶる力を持つ作品が存在します。その中でも、ジャック・ケッチャムによる『隣の家の少女』は、単なる恐怖を超えた、人間の暗黒面と社会の病理を抉り出す問題作として、発表以来、絶えず議... -
『卒業生には向かない真実』- 警察や司法、正義の在り方を問う衝撃のシリーズ完結編
大学入学を目前に控えたピップだが、気持ちは暗く沈んでいた。 前回の事件の結末に深く悲しみ、傷つき、憤り、精神的にボロボロの状態になってしまったからだ。 そんなピップに、新たな悲劇が襲い掛かる。 無言電話がかかってきたり、家の前に不気味な絵が... -
結城真一郎『どうせ世界は終わるけど』- 希望という名の小惑星が落ちてくる、そのとき僕らは何をするのか。【読書日記】
結城真一郎という名前を聞いて、まず思い出すのはあの鋭利な〈どんでん返し〉と、社会を映す冷徹な視線だ。 『#真相をお話しします』の読後に味わう、軽いめまいのような感覚。ミステリの文法を知っている者ほど深くえぐられる“黒結城”の毒。それは確かに... -
『アリス・ザ・ワンダーキラー~少女探偵殺人事件~』アリスが仮想空間で謎解きに挑戦
名探偵の父を持つ少女・アリス。 母はアリスに探偵の才はないと言い、固い仕事に就くようすすめていたが、アリスは自身のことを名探偵・アリスザワンダーキラーと名乗っていた。 そんなアリスは10歳の誕生日を迎えたその日、探偵である父親から『極上の謎... -
『ブラウン神父の不信』- これを読まずしてブラウン神父は語れない傑作「犬のお告げ」「ムーン・クレサントの奇跡」
G・K・チェスタトンの『ブラウン神父の不信』は、ブラウン神父シリーズの中でもひときわ異色の作品集です。本書に収められた短編は、いずれも「信仰とはなにか」「奇跡とはなにか」といった重厚なテーマを、ユーモアと逆説の技法で描き出しています。 タイ... -
柳広司『パンとペンの事件簿』- どんな事件もペンで解決!大正時代の文筆集団・売文社
「ぼく」はさんざん殴られ、蹴られ、路上に打ち捨てられた。 暴行を受けた理由は、勤務先の工場で労働条件改善の交渉をしたからだ。 それを苦々しく思った工場は、ヤクザを雇い、ぼくを暴力で追い出したわけだ。 重傷を負って路上に倒れたぼくは、社会主義...