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短編集
『ほしのはじまり』- 星新一というジャンルを一冊に詰めた決定版【私の宝物】
読書人生を長く歩いていると、時折「これは特別な宝物だ」と思える本に出会うことがある。 私にとって、それが『ほしのはじまり ――決定版 星新一ショートショート――』だ。 星新一のショートショートは、たしかに文庫で読めるし、図書館にも全集が並んでい... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.1】『訪問販売』
さびれた港町のはずれ。海沿いに並んだ平屋建ての中の一軒だった。 陽子は肉を切るのに疲れてそっと包丁を置いた。したたる汗を手の甲でぬぐった。 夏の潮風と一緒に魚を煮付ける良い匂いが漂ってきた。隣の濱田だろう。 現役漁師の家の夕飯はいつも陽子の... -
海外ミステリー小説
シヴォーン・ダウド『ロンドン・アイの謎』- 乗っていた観覧車から消えた少年の謎
人とは違った物の見方をする「症候群」の少年テッドは、ある日家族や従兄弟のサリムたちと一緒に大型観覧車ロンドン・アイに乗ることになった。 チケットを先に手に入れたサリムが最初に乗り、テッドは姉のカットと一緒に地上から見上げながら待っていた。... -
国内ミステリー小説
井上悠宇『不実在探偵の推理』- 実体のない探偵とダイスで推理を構築する、斬新な謎解きミステリー
マンションの一室で、女性が手に藍の花を強く握りしめた状態で毒死していた。 そして彼女の恋人も、死を聞かされた後、後を追うように自殺してしまった。 なぜ彼女は、藍の花を持って亡くなっていたのだろうか。 そもそも彼女は自殺したのか、それとも何者... -
自作ショートショート
【自作ショートショートNo.68】『歪んだ愛』
大通りに面したオフィスビルの自動ドアが開き、女が現れた。 女はガードレールの切れ間で手を挙げた。タクシーが止まり、女を乗せて走り出す。 間違いない。今日で確実に女を仕留められる。俺は物陰から離れて目的地へ急ぐ。 今回の依頼主は冴えない中年の... -
短編集
『ウは宇宙船のウ【新訳版】』 レイ・ブラッドベリが夢見る少年に託した、17の時間旅行【読書日記】
「さよならをいうのは嫌いなの」 この一文にピンときたら、もうあなたはブラッドベリの魔法に片足を踏み入れている。 今回読んだのは、東京創元社から刊行された『ウは宇宙船のウ【新訳版】: ブラッドベリ自選傑作集』。 新刊といっても、もとは1962年に出... -
短編集
忘れられた巨匠? とんでもない! 今こそ読みたい物語の怪物だ – 『死の10パーセント: フレドリック・ブラウン短編傑作選』
フレドリック・ブラウン。 名前は聞いたことがある。でもちゃんと読んだことはない。 そんな人も多いんじゃないだろうか。 昔のSF作家? ミステリも書いていた? そんな印象のままスルーされがちなこの作家は、実はとんでもない物語の魔術師である。 とい... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.64】『傲慢な女』
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?それはもちろん私だわ。うふ」 そうよ、私はこの世の誰よりも美しいの。 でもこの美貌を維持するには、もっともっとお金が必要。 ううん、お金だけじゃないわ。私に釣り合うステキな王子様も必要よね。 マリアは... -
短編集
『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』- ボルヘスとビオイが本気でふざけたミステリ講義
ボルヘスとビオイ=カサーレスが組んで探偵小説を書いた──それだけで、ミステリ好きならテンションが上がるに決まっている。 そして生まれたのがこの『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』だ。 しかも、ただの探偵ものじゃない。安楽椅子どころか、独... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.61】『家賃の安い部屋』
「たしか、この辺りのはずなんだけどな」 街の中心部から少し離れた、降りたシャッターの目立つ商店街を、ひとりの若い男が歩いていた。 男は、手元のスマートフォンに表示された地図を何度も見ながら、あたりをキョロキョロと見まわしている。どうやら、...
