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紺野天龍『神薙虚無最後の事件』- いくつもの真相が興味をそそる多重解決ミステリー
大学で名探偵倶楽部に所属している白兎(はくと)と志希(しき)は、ある日道端で倒れそうになっていた唯を助ける。 彼女はミステリー作家・御剣の娘で、20年前に父が著したベストセラー『神薙虚無最後の事件』に残された謎を追っていた。 この本は実在の高校... -
藍上央理『完璧な家族の作り方』- 読むだけで怪異の共犯者になる。モキュメンタリー形式が仕掛ける罠【読書日記】
最初の数ページで、もう変な汗が出る。 本の冒頭に出てくるのは、角川ホラー文庫編集部に届いた一通の原稿と、一枚の不気味な家族写真だ。 これがただのフィクションじゃなくて、読者が手に取るこの本そのものが物語の一部だと宣言してくる。要するに「こ... -
山沢晴雄『ダミー・プロット』巧妙な替え玉トリックに翻弄される、幻の長編ミステリー
ルポライターの香子は、庁舎勤めの大幹がホテルで女性と一緒にいるところを目撃し、証拠写真を撮って金をせびろうとする。 一方服飾デザイナーの涼子は、自分と顔立ちがそっくりなOLの初子に、替え玉になるよう頼む。 また商社マンの風山は、殺人容疑をか... -
神が探偵だったら?『神探偵イエス・キリストの冒険』という異次元ミステリ
『神探偵イエス・キリストの冒険』――このタイトルを目にした瞬間、多くの読者は驚きと好奇心を禁じ得ないでしょう。名探偵役を務めるのは、他ならぬイエス・キリストその人。そして著者は、日本のミステリ界において、常に型破りな作品を世に問い、ジャン... -
恩田陸『薔薇のなかの蛇』- 英国の館で起きる怪事件を描く、理瀬シリーズ17年ぶりの最新長編
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天祢涼『拝啓 交換殺人の候』- 自殺を決めた青年は彼女のために人殺しができるのか?
秋元秀文は上司からのパワハラに耐え兼ねて退職し、自殺の名所として知られる「首つり桜」へ行った。 死ぬつもりだったが、根元の穴に白い手紙のようなものがあることに気付き、中を開けて読んでみる。 そこには「どうせ死ぬなら殺してみませんか?」とい... -
『正しい世界の壊しかた:最果ての果ての殺人』- ルールごとひっくり返す!特殊設定ミステリの快楽、ここに極まれり【読書日記】
彩藤アザミ。 この名前を聞いて、「誰だろう?」って首をかしげる人もいれば、「ああ、あのホラーとミステリ混ぜるのうまい人ね」ってすぐ反応する人もいるはず。自分は完全に後者だし、しかもけっこう前から追っかけている。 で、今回の新作『正しい世界... -
結城真一郎『救国ゲーム』- 陰謀とテクノロジーが日本を襲う!新世代ミステリー
時は202X年、日本は地方の過疎化と少子高齢化により、経営破綻の危機に陥っていた。 そんな折、動画投稿サイトに謎の仮面人物パトリシアが現れ、テロを予告。 「日本政府は60日以内に地方を切り捨て、資本を大都市に集中させろ。さもなくば地方を無差別に... -
荒木あかね『此の世の果ての殺人』- 人類の滅亡が確定した世界で起こる猟奇的な連続殺人事件
人類は、あと2ヶ月余りで滅亡することになった。 直径7kmを超える小惑星テロスが、地球に衝突すると判明したのだ。 世界中がパニックに陥り、特に衝突地点と予測されている日本の九州地方からはほとんどの人々が逃げ出した。 生き延びる可能性は皆無だが、... -
貫井徳郎『不等辺五角形』- 私が殺したの。――その一言から全てが崩れ始める【読書日記】
二十年以上続いた絆は、ひと晩で簡単に形を変える――それがこの物語の始まりだ。 貫井徳郎『不等辺五角形』は、読み始めたときの空気と、読み終えたときの空気がまるで違う。 最初は爽やかな夏の海辺、旧友たちの再会、葉山の別荘という閉ざされた空間。い...