『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』- クリスティ好きが一致団結して事件に臨む!

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雑誌編集者のアリシアと妹のリネットは大のミステリ好きで、とりわけクリスティのファンだった。

ある日姉妹は、ミステリ限定の読書会「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」を立ち上げる。

集まったメンバーは、専業主婦のバーバラ、医師のアンダース、古着屋のクレアと、性別も職業も異なる面々。

アリシアたちを含め計7名となり、さっそく第一回読書会をバーバラの家で開催した。

各々ミステリについて談話を楽しみ、会は成功したかに思えたが、しかし第二回の読書会の開催時に問題が起こった。

バーバラが行方不明になり、警察に捜索願が出されたのだ。

奇妙なことに彼女の夫は、妻の失踪をさほど気に留めていない様子だった。

訝ったアリシアたちは、真相を求めて独自に調査を始める。

ところがそんな時、バーバラの夫がゴルフ場で撲殺死体となって発見されて――。

目次

大満足の読書会からの事件発生

『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』は、クリスティ好きの方には「必読!」と言える一冊です。

というのも主人公のアリシアはミステリとクリスティが好きすぎて、誰かと語り合いたくてミステリ専門の読書会を開くのです。

新聞でメンバーを募集したところ、集まったメンバーが揃いも揃ってクリスティ好き。

毒薬マニアの医者のアンダースに、クリスティ作品のファッションに注目している古着屋クレア、名探偵ポワロの大ファンの博物館学芸員などなど、皆が皆クリスティにどっぷり浸かった人生を歩んでいます。

こういうメンバーですから、読書会は当然大いに盛り上がり、シェフの卵であるリネットがおいしい料理を振舞ったおかげもあり、皆が大満足。

読み手的にも、読んでいるだけで楽しそうな雰囲気が伝わってきますし、クリスティ作品の色々な感想や見解も興味深いし、まるで自分も読書会に参加しているような気持ちになれます。

でも、これだけ楽しく終わった第一回読書会ですが、第二回でトラブルが起こります。

メンバーの一人・主婦のバーバラが突然参加をやめ、行方不明になるのです。

バーバラの乗っていた車は発見されますが、彼女の姿はどこにもなく、しかもよりにもよって彼女の夫が殴り殺されるという事件まで発生。

バーバラはどこに?そして彼女の夫を殺したのは誰?

ブッククラブのメンバーたちは、ミステリ好きの血が騒ぎ、団結して推理と調査を始めます。

ミステリやクリスティ作品における知識を生かし、事件をどう解決していくのか、その様子が『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』で一番の見どころです。

ミステリマニアの素人探偵集団

ブッククラブの面々は、ミステリマニアとは言え素人ですから、さすがにプロの探偵や警察のようにはスマートにはいきません。

どこか泥臭く、でもそこが逆に面白いのです。

それぞれに得意分野があり、時折それを炸裂させて鋭すぎる発見や分析をするので、読者に「なるほど!うまい!」と思わせてくれます。

また、素人だからこそノリも深刻になりすぎず軽快で、サクサクとテンポ良く進むところも良いですね~。

彼らにとってリアルな謎解きに参加できるのは至福なので、そのテンションが行間から溢れまくっているところも良き!

何より、推理の合間にクリスティ作品のネタが出てくるところがたまりません。

「クリスティなら、あるいは名探偵ポワロなら、きっとこう考える」

と、彼らを主軸とした推理を進めていくので、元ネタを知る方ならその都度ニヤリとしてしまうと思います。

一見それとは気づかないようなさりげないクリスティネタもふんだんに織り交ぜてあるので、そこを見つけ出すのも楽しみのひとつですね。

そして最終的には、このようなミステリマニアの面々だからこそ、事件の真相に辿り着きます。

これがまたマニア冥利に尽きるというか、マニアとしての夢が現実になったような高揚感があり、読んでいてこちらまで嬉しくなったり羨ましくなったり(笑)

とにかく『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』は、「自分も一度は事件を解決してみたい」というミステリ好きの夢を叶えてくれるような作品です。

また、これだけ趣味の合う男女が集まれば、当然のごとく(?)ブッククラブ内でいくつかの恋が始まります。

たとえばアリシアは、毒薬大好きイケメン医師のアンダースにおネツになるのですが、その恋模様も本書の面白味のひとつですよ。

クリスティ作品から読むのがおすすめ

まさに、「ミステリ好きによる ミステリ好きのための ミステリ」と言うべき作品です。

ただ、ミステリが好きであれば誰でも面白く読める作品……ではないかもしれません。

上でご紹介した通り、クリスティに関するネタがとにかくたくさん出てくるので、クリスティ作品をある程度読んだ方でないと、この作品の隅々まで味わうのは難しいかも?

逆に言えば、クリスティ好きの方であれは間違いなく楽しんで読めますし、読むことでクリスティ愛がますます深まることも必定!

ですからクリスティ作品未読の方は、そちらから読んでみることをおすすめします。

その上で『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』を読めば、きっと数倍面白く読めると思います。

また、『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』はシリーズ化しており、日本でも既に第二弾が刊行されています。

今作で意気投合したブッククラブのメンバーたちが、やはりクリスティネタで盛り上がるので、今後もこのシリーズと楽しく付き合っていくためにも、クリスティ作品にもぜひ触れてみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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