犬飼ねこそぎ『密室は御手の中』- 宗教施設で起きた密室殺人の謎に迫る

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人里離れた山奥に、弱体化した新興宗教「こころの宇宙」の施設・心在院があった。

そこからさらに山を登ると瞑想室である掌室堂が存在するのだが、そこは昔修験者が消失したという逸話の残る場所でもあった―。

ある日探偵である安威和音は、取材と偽り「こころの宇宙」へ潜入する。

しかしそこで起こったのはまさかのバラバラ殺人事件だった。

宗教団体内部で発生した密室殺人事件の謎を解くべく、和音は探偵として調査を始めるが……?

外聞が悪いため警察に頼らず事件を処理したい新興宗教、連続する凄惨な殺人事件、多発する地震。

一体この新興宗教で何が起きているのか?

安威和音が山奥で起こる不可解な謎に挑む―!

目次

新興宗教施設で起きた密室殺人の謎

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新興宗教団体である「こころの宇宙」には、密室で修行していた信者が山奥で発見されたという噂がありました。

事故のせいで信者が減ってしまって以来、「こころの宇宙」はその神秘的な噂をより強く信じるようになっていました。

そして宗教施設の中で密室殺人事件が起こります。

新興宗教、外科医と断絶された山奥の施設、その施設の見取り図、密室で起きる連続殺人事件など、ミステリー小説好きにはたまらない設定が盛りだくさんです

事件を解決するためにさまざまな推理がなされますが、最初はそれが正しいと思っていても一つひとつ証拠を辿っていくと辻褄が合わなくなり、そんな展開を何度も繰り返して真相に迫っていきます。

探偵たちと一緒に事件の謎を追っている気分を味わえるので、推理が苦手な方でも楽しめるでしょう。

バカミスとも言えるような壮大な事件の仕掛けにも驚かされます。

ミステリー小説ではよくある密室殺人事件や宗教団体といったテーマを扱いながらも、また一味違った読後の印象を受けました。

本格ミステリー小説の重厚さを求めると少し肩透かしを食らうかもしれませんが、興味深いテーマを扱いながら軽いテイストで読めるので少し息抜きに読書をしたいときにもぴったりです。

二転三転する展開が魅力!

山奥にある宗教施設で起きた殺人事件を、信者たちは内密に処理しようとします。

警察の仲介が入らず、外部と連絡を取ろうとする信者もいないため、物語は完全な陸の孤島状態で進んでいきます。

その中で数多くの信者が登場するわけですが、「こころの宇宙」の教祖を完全に信じている信者ばかりではなく、ひょうひょうとした態度の真意が読めない信者や意味不明な質問をしてくる信者など、それぞれに特徴がありどの人物も犯人に見えてきてしまうんです。

当然物語の中で彼らも疑われていきますが、その中で本来の意思や過去などが見えてくるのも今作の見どころの一つ。

そして探偵役として活躍するのが、安威和音という人物です。

近年の新しいミステリー小説にはライトノベルのような強烈な個性を持つ探偵が多いですが、彼女はかなりフラットで常識的な人物です。

個性的すぎる主人公が登場する小説は読みにくい、抵抗があるという方でも安心して読み進めることができるでしょう。

ですがそんな彼女にも知られざる過去があり、作中でも重要なヒントとなっています。

本作で活躍した安威和音をまた見てみたいという読者も多く、シリーズ化も期待されています。

注目の新人賞Kappa-Two受賞作

今作は犬飼ねこそぎ氏のデビュー作品です。

光文社が主催のKAPPA-ONEという新人賞を引き継ぐ形でできたKappa-Twoという新人賞を獲得しました。

このKappa-Twoはプロアマを問わず本格ミステリー小説を募集する賞です。

犬飼氏は先に受賞して華々しいデビューを飾った阿津川辰海氏に次ぐ期待の作家とも言われています。

作品は古典的なミステリー小説の要素も含みながら、これまでにないトリックなども仕掛けられています。

登場人物の心理描写や動機の掘り下げなどは粗削りな部分もありますが、それゆえのスピード感やハラハラ感も楽しめて、新人ならではのみずみずしさが感じられました。

今後さらに本格的なミステリー小説を発表してくれるのか、今作の主人公が活躍するシリーズものが読めるのかなど、すでに次回作を期待する読者も多いです。

また、このKappa-Twoはまだできたばかりの賞ですが有名作家が受賞していたり、実際に出版社の編集部が審査をしていたりなどからミステリー小説ファンの中でも注目度が高い賞です。

現在第三期の募集が始まっていますので、次にどんな作家のどんな作品が読めるのか、今から楽しみにチェックしておきましょう。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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