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【自作ショートショート No.31】『食糧危機』
「……次の議題は、食糧危機についてだったな。それでは、まずは状況報告を聞こうか」 世界的に有名な超高級ホテルの会議室では、なんとも重たい空気で会談が行われていた。 重厚感のある広いテーブルの周りでは、大国の首脳たちが、本音か建て前か、みんな... -
【自作ショートショート No.20】『願いの代償』
ある男が魔神の出てくるランプを見つけた。 男が早速ランプを擦ると、モクモクと煙が立ち上って魔人が飛び出してきた。 「お前の願いを叶えてやろう」 出て来た魔人は男に向かってそう言った。 「叶えられる願いはいくつだ?」 「いくつでも構わない」 男... -
【自作ショートショート No.44】 『見習い天使の失敗』
エンゼはこれまでニ度の天使昇格試験に失敗した、落ちこぼれの見習い天使だ。 そして今回が三度目となる試験である。 次こそは絶対に合格してやると、勢い勇んではるばる人間たちの暮らす下界へとやってきたのだが—— 「久しぶりの下界だなぁ。前に来たのは... -
【自作ショートショート No.30】 『神のきまぐれ』
それは何の前触れもなく、突如、宇宙空間に現れた。 果てしなくどこまでも広がる宇宙にあって、あまりにも場違いなそれは、当初、帯状の何かに思われた。 広い宇宙にどこまでも伸びた帯状の何か、しかしよくよく観察してみると、それの両端はある地点でぶ... -
【自作ショートショート No.7】『父と子』
「ねえねえ、おとうさん、これはなあに?」 息子は大きな図鑑を抱えて、無邪気そうに私の下にやってきた。 「どうしたんだい?」 「これは、なんていうたてものなの?」 そう言うと、息子は大きな図鑑のあるページを開けて私の方に見せてくる。 そのページ... -
【自作ショートショート No.37】『雪女』
「はぁはぁ、あともう少し」 雪深い山で遭難しかけていたサブロウは、寒さで意識が朦朧とする中、必死で山小屋を目指した。 「寒い。このままじゃ凍え死んじまう」 最後の力を振り絞って雪の中を進むも、とうとう足が止まってしまい、サブロウはその場に倒... -
【自作ショートショート No.29】『幸せテレビ』
テレビ局に勤めるアス氏が、しばらくぶりの休日に街をぶらぶらしていた時のこと。 道行く人々の顔が揃いも揃って元気のないことに気づいた。 誰もがみんな疲れた顔で下を向いて歩いているのだ。 大人も子供もおじいさんもおばあさんも。 元気なのは赤ちゃ... -
【自作ショートショート No.36】『銀行強盗』
病院の建物を出たティー氏が振り返ると、娘がこちらに向かって手を振っているのが見えた。 病室の窓から健気に手を振る娘の姿に、ティー氏は胸が締め付けられる思いだった。 彼はもう一度、娘に笑顔を返してから、後ろ髪を引かれる思いで病院を後にした。 ... -
【自作ショートショート No.15】『悪魔のささやき』
「ようやくお前ともお別れだな」 「はい、お世話になりました。これからは真面目に働きます」 五、六メートルはあろうかという灰色の塀の下では、ワイシャツ姿の男が、紺色の制服を着た男に向かって頭を下げていた。 「そうだぞ。やっと刑期を終えたんだか... -
【自作ショートショート No.27】『海色のドリンク』
太陽が傾き始めた頃、遠藤進は外回りの営業から会社へ戻った。 疲れた体中に汗が染み、今日も体中が悲鳴をあげている気がしていた。 暑い夏を通り過ぎ、日が沈むのが早くなってきたとはいえ、まだ最高気温は30度をこえるときがある。 ただ今日は気温が下が...