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【自作ショートショート No.13】『死神の存在』
そのバーは、歓楽街の中心から、歩いて十五分ほどのところにあった。 ほどほどに薄暗く、心地いい音量のジャズをビージーエムに、二人の男が酒を酌み交わしている。 どうやら二人は旧知の仲らしく、久々に再開した、といった様子だった。 思い出話に花が咲... -
【自作ショートショート No.41】『善行ポイント』
自分のことだけを考える人間が少しずつ増えてきて、だんだん世の中がギスギスしてきていた。 犯罪も増えており、些細な喧嘩は毎日のようにあちらこちらで起こっている。 そんな世の中を憂えた政府は、善行カードなるものを作り、国民に配布した。 このカー... -
【自作ショートショート No.56】『肉』
アキラは仕事で出張へ出た帰り、田舎のとあるレストランへと立ち寄った。 外観は見窄らしく、とても小洒落たレストランとはほど遠いものだった。 昼食を食べる場所を探していたアキラであったが、このレストランには立ち寄るまいと通り過ぎるところであっ... -
【自作ショートショート No.54】『宝箱』
悪魔の海域と呼ばれ、漁師から恐れられている場所がある。 この海域では船の事故が頻繁に起こっており、いつしかそう呼ばれるようになっていたのだ。 さて、そんな悪魔の海域ではある伝説がまことしやかに囁かれている。 それは金銀財宝の湧き出る宝箱が眠... -
櫻田智也『失われた貌』- 顔を失ったのは、死体だけじゃなかった―― 三人の最強作家が揃って絶賛するんだから読むしかないでしょ【読書日記】
『失われた貌』を手に取ったきっかけは、帯に踊る三人の名前だった。 伊坂幸太郎が「ミステリーが好きで良かった」と感慨を述べ、恩田陸が「捜査と謎解きのハイブリッド」と驚き、米澤穂信は「ガッツポーズ」した。 こう並ぶと、もはや推薦文というより「... -
【自作ショートショート No.59】『未来ミラー』
サトミは鏡からそっと視線を外すと、顔を上げた。 視線の先にはボリュームのある髪を後ろに撫でつけて、引き締まった体躯の彼がいる。 サトミはもう一度、鏡に視線を戻して彼に気づかれないよう小さくため息をついた。 彼女が今その手にしているのは、ただ... -
【自作ショートショート No.5】 『キカイな看護師』
この頃、病院は看護師が不足してきている。 近年の感染症騒ぎやらで離職者が増え、新たに看護師になる人数も減少傾向にある。 看護師がいなくなれば、病院の業務は回らなくなる。 看護師の減少は病院の危機でもあるのだ。 そこでS大附属病院はある奇手を... -
【自作ショートショート No.35】『記憶喪失の男』
「ん!?」 男はゆっくりと起き上がり、周囲を見回す。 「ここは……?」 見覚えのない部屋だった。男には自分がなぜそこにいるのか、全く記憶になかった。 室内は薄暗く、窓にはカーテンがかかっている。 「なんだここは?俺はいったい……」 なぜこんなとこ... -
【自作ショートショート No.9】『殺し屋の需要』
殺すのは簡単である。 しかし、その後に関してはそうはいかない。 当然警察が殺人について捜査を始め、殺めた側を突き止めんと追ってくる。 隠すにも、今日人が足を踏み入れない場所も少なくなってきている。 探す側の技術が日進月歩の一方で、探される側... -
【自作ショートショート No.47】『天使になりたい』
あるところに、一人の悪魔がいた。 この悪魔は正真正銘生まれながらの悪魔であり、これまで何百年間も、悪魔らしく生き、悪魔らしく働いてきた。 悪魔の仕事と言えば、もちろん人間の世界に紛れて悪さをすることだ。 人間が急いで探しものをしている時に、...