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自作ショートショート
【自作ショートショートNo.68】『歪んだ愛』
大通りに面したオフィスビルの自動ドアが開き、女が現れた。 女はガードレールの切れ間で手を挙げた。タクシーが止まり、女を乗せて走り出す。 間違いない。今日で確実に女を仕留められる。俺は物陰から離れて目的地へ急ぐ。 今回の依頼主は冴えない中年の... -
国内ミステリー小説
井上悠宇『不実在探偵の推理』- 実体のない探偵とダイスで推理を構築する、斬新な謎解きミステリー
マンションの一室で、女性が手に藍の花を強く握りしめた状態で毒死していた。 そして彼女の恋人も、死を聞かされた後、後を追うように自殺してしまった。 なぜ彼女は、藍の花を持って亡くなっていたのだろうか。 そもそも彼女は自殺したのか、それとも何者... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.64】『傲慢な女』
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?それはもちろん私だわ。うふ」 そうよ、私はこの世の誰よりも美しいの。 でもこの美貌を維持するには、もっともっとお金が必要。 ううん、お金だけじゃないわ。私に釣り合うステキな王子様も必要よね。 マリアは... -
短編集
『沈みかけの船より、愛をこめて』- パン買ってこい、からゾンビまで。乙一が分裂して挑む個展アンソロジー
ある文庫の背表紙に、こんな名前が並んでいる。 乙一、中田永一、山白朝子、そして安達寛高。 知らない人が見たら「人気作家による豪華共演だな」と思うかもしれない。でもこの並び、実は全部、ひとりの作家によるペンネームと本名である。 そう、これは奇... -
短編集
忘れられた巨匠? とんでもない! 今こそ読みたい物語の怪物だ – 『死の10パーセント: フレドリック・ブラウン短編傑作選』
フレドリック・ブラウン。 名前は聞いたことがある。でもちゃんと読んだことはない。 そんな人も多いんじゃないだろうか。 昔のSF作家? ミステリも書いていた? そんな印象のままスルーされがちなこの作家は、実はとんでもない物語の魔術師である。 とい... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.61】『家賃の安い部屋』
「たしか、この辺りのはずなんだけどな」 街の中心部から少し離れた、降りたシャッターの目立つ商店街を、ひとりの若い男が歩いていた。 男は、手元のスマートフォンに表示された地図を何度も見ながら、あたりをキョロキョロと見まわしている。どうやら、... -
短編集
『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』- ボルヘスとビオイが本気でふざけたミステリ講義
ボルヘスとビオイ=カサーレスが組んで探偵小説を書いた──それだけで、ミステリ好きならテンションが上がるに決まっている。 そして生まれたのがこの『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』だ。 しかも、ただの探偵ものじゃない。安楽椅子どころか、独... -
国内ミステリー小説
『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』- 紙とフィギュアの蘊蓄が真相を暴き出す
紙の銘柄、厚み、密度など、紙のことなら何でもござれの紙鑑定士・渡部のもとに、新たな依頼が来た。 小学3年生の女の子からの依頼で、「紙粘土の鑑定をしてほしい」というもの。 紙は紙でも、紙粘土はさすがに専門外。 しかし依頼の目的が、 「可愛がって... -
国内ミステリー小説
梓崎優『叫びと祈り』- ミステリが旅をはじめたとき、「動機」は世界を語りだす【傑作小説エッセイ】
梓崎優『叫びと祈り』を初めて読んだときの衝撃は、いまだによく覚えている。 それは単なる面白いミステリではなかった。読み進めるうちに、まるで地図の端っこがぐいっと引っ張られ、世界そのものの形が変わっていくような感覚があった。 収録された短編... -
自作ショートショート
【自作ショートショートNo.65】『平等な国』
この小さな国ではすべての国民が、そっくり同じ形の家に暮らしている。 違っているのは扉にでかでかと刻まれた番地だけ。 外観だけでは区別がつかないので、この番地で自分の帰る家を見分けているのだ。 幼い子供たちの間では、番地の数字を頼りに友達の家...
