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キャロル・グッドマン『骨と作家たち』- 雪に閉ざされ、物語に閉じこめられた私たちへ
追悼式なのに、なぜ誰かがまた死ぬのか 閉ざされた場所には、人の心をほどく力があるのかもしれません。 あるいは、逆に、人の奥底に隠していたものを容赦なく引きずり出す力があるのかもしれません。 キャロル・グッドマンの『骨と作家たち』の舞台は、ニ... -
『あれは子どものための歌』- 本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集
美しい声の代わりに「賭けに必ず勝つ魔力」を手に入れたエミリア。 大金を稼ぐことが可能になったが、それゆえに父親が殺されたり仲間に恐れられたりと、うまくいかないことも増えた。 ある時エミリアは、上流階級のタシットと恋に落ち、結婚を意識する。 ... -
『キュレーターの殺人』- 切断された指があちこちに!猟奇的で不可解な事件の真相は?
英国カンブリア州のクリスマス。 パーティ中のフリン警部とポー刑事、ティリー分析官のもとに事件発生の連絡が来た。 州内の異なる3つの場所で、切断された指が2本ずつ発見されたというのだ。 しかもそれぞれの現場には「#BCC6」という謎のメッセージも残... -
アビール・ムカジー『阿片窟の死』- 暴動寸前のカルカッタで繰り返される猟奇的殺人事件
1921年12月、英国支配下にあるカルカッタで連続殺人事件が発生した。 まず最初に中国人風の男が、両目を抉られ、腹を刺されて死んだ。 次にインド人の看護婦が、同じように両目玉を抉られ、胸の二ヶ所を刺されて死亡。 さらにイギリス人の科学者が死亡。や... -
片岡翔『その殺人、本格ミステリに仕立てます。』- 死者を出さない殺人計画VS孤島のクローズドサークル
亡くなったミステリー作家の一族が、孤島の館でマーダーミステリーを開催することになった。 しかし探偵志望のメイド・風゛(ぶう)は、これがゲームを装った殺人計画であることに気付いてしまった。 そこでミステリープランナーの豺(やまいぬ)と一計を... -
辻村深月『この夏の星を見る』- コロナ禍ゆえの苦悩と新たな青春の形を描いた感動作
2020年、新型コロナウイルス感染症が流行し、全国の中学生・高校生たちの日常は、大きく変わった。 茨城県の高校2年生の亜紗は、天文部の合宿を楽しみにしていたが、コロナ禍におけるイベント制限により中止になり落胆する。 東京都の中学1年生の真宙は、... -
犬飼ねこそぎ『密室は御手の中』- 宗教施設で起きた密室殺人の謎に迫る
人里離れた山奥に、弱体化した新興宗教「こころの宇宙」の施設・心在院があった。 そこからさらに山を登ると瞑想室である掌室堂が存在するのだが、そこは昔修験者が消失したという逸話の残る場所でもあった―。 ある日探偵である安威和音は、取材と偽り「こ... -
『アミュレット・ワンダーランド』- 殺し屋も泊まるホテルで、探偵は掟を守りながら推理する【読書日記】
最初に言っておくと、このホテル、チェックインした瞬間から現実感が吹き飛ぶ。 名前は「アミュレット・ホテル」。 殺し屋、詐欺師、窃盗団…とにかく職業の欄に書いたらその場で警察を呼ばれそうな人たちが、悠々とロビーを歩いている。普通のホテルの「お... -
『交番相談員 百目鬼巴』- そのおばさん、尋常じゃない。『教場』の著者が描く新たな警察ミステリ【読書日記】
長岡弘樹(ながおか ひろき)という作家の名前を聞くと、まず思い出すのはやっぱり『教場』。 あの、警察学校を舞台にした緊張感たっぷりの物語は、多くの読者の心に残っているはず。そんな彼が次に選んだ舞台が「交番」だなんて、ちょっと驚きじゃない? ... -
大滝瓶太『その謎を解いてはいけない』- その探偵が暴き出すのは事件の真相か、人の黒歴史か
アフィリエイターをしながら探偵事務所を営む暗黒院真実(あんこくいんまこと)。 その助手で、翠色に輝く左目を持つ女子高生・小鳥遊唯(たかなしゆい)。 ある日二人は、フィールドワークのためにN県の山奥に訪れたが、途中で日が暮れてしまう。 困って...