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『チェスナットマン』-手首のない死体の側には、栗の人形(チェスナットマン)が残されていた
1989年10月31日、斧を使った一家惨殺事件の発生から、物語は幕を開ける。 凄惨な事件から長い年月が経ち、コペンハーゲン警察重大犯罪課の女性刑事である主人公のナヤ・トゥリーンは、パートナーのマーク・ヘスとともに、若いシングルマザーを狙った連続殺... -
アリス・フィーニー『彼は彼女の顔が見えない』- 不仲の夫婦は閉ざされたチャペルで何を見たのか
夫婦として冷え切ってしまっているアダムとアメリア。 関係を見直すためにスコットランドへ旅行に行くが、道中も言い争いばかり。 しかも吹雪に見舞われてしまう。 ようやくたどり着いたチャペルは、古くて真っ暗で、まるでホラー映画のようだった。 引き... -
伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』- 江戸川乱歩賞受賞作は流石に面白い!
博士号を持ちながら、紆余曲折を経て30歳で北海道警察の警察官となった主人公・沢村依理子。 まだまだ男性社会の警察で、しかも異色の経歴を持つ彼女に、なんとなく周囲からの当たりは強い。 それでも、沢村に対して操作方法や取り調べの方法を教えてくれ... -
森バジル『なんで死体がスタジオに!?』- 出演俳優が殺され、爆破予告まで!生放送は一体どうなる?
ドジっ子プロデューサーの幸良には、もう次がなかった。 今回任されたゴールデンタイムの2時間特番バラエティ、ここで失敗すると、今後は制作から降ろされてしまうのだ。 幸良にとっては、絶対にコケるわけにはいかない、命運のかかった番組。 幸い大物俳... -
倉知淳『死体で遊ぶな大人たち』- 変な死体×本格ミステリ。奇想と論理が交錯する、デビュー30周年の挑戦
倉知淳氏は、日本のミステリ界において、ユニークな立ち位置を確立している作家さんです。『星降り山荘の殺人』や、『猫丸先輩シリーズ』などで知られ、緻密な論理と遊び心あふれる奇抜なトリック、そして軽妙なユーモアを融合させた作風で、多くの読者を... -
【自作ショートショートNo.71】『平和な薬』
「できたぞ!完成だ!」 とある街のはずれにある、モノで溢れた研究所の一室で、白衣を着た男が大きな声をあげた。 「この薬で、たくさんの人が幸せになるぞ。どこにも争いのない、平和な世界の完成だ!」 白衣の男は、長いあいだ人間の心理を研究していた... -
アリッサ・コール『ブルックリンの死』- 街の歴史から紐解く都市再開発の影
舞台となるのは、ブルックリンの古き良き時代の住宅街。 その町で生まれ育ったシドニーは、隣人の顔が次々と変わっていくことに気がつく。 そして、彼女は新住民のセオと手を組み、この謎を解明していくべく町の歴史を辿る冒険へ出かける。 ただ、その道中... -
『イーストレップス連続殺人』- 黄金期ミステリなのに、やたら現代的な早すぎた傑作
静かな海辺の町が、ひとりの殺人鬼によって崩壊していく。 フランシス・ビーディング『イーストレップス連続殺人』は、そんな悪夢のような連続殺人の記録だ。 1931年の古典ミステリだけど、2025年6月に日本で初めて翻訳された文庫が発売されたのだ。嬉しい... -
アビール・ムカジー『カルカッタの殺人』- その殺人は政治絡みか、それとも暴動の前触れか
1919年、大英帝国の統治下にあるインドのカルカッタで、白人の高級官僚が何者かに殺害された。 しかも喉を掻き切られ、片目をえぐられ、手足を折られ、指を切り取られ、さらに口に血まみれのメモを詰め込まれるという凄惨な殺され方だった。 メモにはベン... -
野島夕照『片翼のイカロス』- 上空500mでヘリと人間が衝突。奇々怪々な謎に迫るどんでん返しミステリ
ミステリ界に新たな才能が登場しました。野島夕照氏です。同氏は、島田荘司氏が選考を務める第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において、本作『片翼のイカロス』で見事優秀作を受賞し、華々しいデビューを飾りました。 この賞は、本格ミステリの書...