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自作ショートショート
【自作ショートショート No.59】『未来ミラー』
サトミは鏡からそっと視線を外すと、顔を上げた。 視線の先にはボリュームのある髪を後ろに撫でつけて、引き締まった体躯の彼がいる。 サトミはもう一度、鏡に視線を戻して彼に気づかれないよう小さくため息をついた。 彼女が今その手にしているのは、ただ... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.5】 『キカイな看護師』
この頃、病院は看護師が不足してきている。 近年の感染症騒ぎやらで離職者が増え、新たに看護師になる人数も減少傾向にある。 看護師がいなくなれば、病院の業務は回らなくなる。 看護師の減少は病院の危機でもあるのだ。 そこでS大附属病院はある奇手を... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.9】『殺し屋の需要』
殺すのは簡単である。 しかし、その後に関してはそうはいかない。 当然警察が殺人について捜査を始め、殺めた側を突き止めんと追ってくる。 隠すにも、今日人が足を踏み入れない場所も少なくなってきている。 探す側の技術が日進月歩の一方で、探される側... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.47】『天使になりたい』
あるところに、一人の悪魔がいた。 この悪魔は正真正銘生まれながらの悪魔であり、これまで何百年間も、悪魔らしく生き、悪魔らしく働いてきた。 悪魔の仕事と言えば、もちろん人間の世界に紛れて悪さをすることだ。 人間が急いで探しものをしている時に、... -
短編集
G・K・チェスタトン『翼ある剣』- 翼を持ったのは剣か、それとも恐怖か【傑作小説エッセイ】
G・K・チェスタトンのブラウン神父ものは、ミステリ好きなら一度は通る道だと思う。 名探偵なのに見た目は地味、武器は推理よりも人生経験、そして何より「逆説」が武器になるという、ちょっと変わったシリーズだ。 その中でも『翼ある剣』は、個人的にか... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.51】『遭難』
まさか自分が遭難するとは夢にも思わなかった。 いや、思ったことはある。 小説や映画のように、前人未到の孤島に難破して、大自然を相手に悪戦苦闘しながらサバイバルして生き抜く妄想を。 実際には苦難の連続であろうが、どこかそういった行為にあこがれ... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.35】『記憶喪失の男』
「ん!?」 男はゆっくりと起き上がり、周囲を見回す。 「ここは……?」 見覚えのない部屋だった。男には自分がなぜそこにいるのか、全く記憶になかった。 室内は薄暗く、窓にはカーテンがかかっている。 「なんだここは?俺はいったい……」 なぜこんなとこ... -
読書日記
ゆっくり歩くこと、ゆっくり読むこと。『本と歩く人』が教えてくれた、もう一つの時間の流れ【読書日記】
ページをめくる指の感触。 少し重たいハードカバーの端っこ。 読みかけの文庫の間に挟んだ栞。 そういう本にまつわる記憶というのは、ふとしたときに蘇るものだ。 カルステン・ヘンの『本と歩く人』を読んで最初に感じたのは、そんな懐かしさだった。でも... -
自作ショートショート
【自作ショートショート No.48】『空飛ぶ泥棒』
ドロンは金に困っていた。 情けないことに明日の食事にも事欠く有様で、今朝から何も食べていない。 「ちくしょー、腹減ったな」 ぐぅっと大きな音を立てる腹をさすりながら、ドロンはそっと辺りを伺う。 「今夜はどの家を狙おうか」 そう、彼の職業は泥棒... -
自作ショートショート
【ショートショート No.8】『万能殺虫剤噴霧装置』
「……F博士! ようやく……ようやく完成しましたね!」 計らずも僕の口から溢れ出た歓喜の雄叫びは、上擦ってしまった。 長年に渡る試行錯誤。心が折れかけたことだって、一度や二度ではない。 そんな悠久にも思えた終わりの見えない研究に、ついに終止符が...
