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【自作ショートショート No.64】『傲慢な女』
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?それはもちろん私だわ。うふ」 そうよ、私はこの世の誰よりも美しいの。 でもこの美貌を維持するには、もっともっとお金が必要。 ううん、お金だけじゃないわ。私に釣り合うステキな王子様も必要よね。 マリアは... -
井上悠宇『不実在探偵の推理』- 実体のない探偵とダイスで推理を構築する、斬新な謎解きミステリー
マンションの一室で、女性が手に藍の花を強く握りしめた状態で毒死していた。 そして彼女の恋人も、死を聞かされた後、後を追うように自殺してしまった。 なぜ彼女は、藍の花を持って亡くなっていたのだろうか。 そもそも彼女は自殺したのか、それとも何者... -
『危険な蒸気船オリエント号』- クリスティ愛好家の読書会、豪華クルーズで捜査に乗り出す
夜の海に浮かぶ豪華客船。 その甲板のどこかに、名もなき死の気配が忍び寄るとき、謎を解くのは名探偵ではなく、本を愛する小さな読書会の仲間たちです。 C・A・ラーマーの『危険な蒸気船オリエント号』は、そんな幻想と軽快さが見事に溶け合った、現代の... -
【自作ショートショート No.61】『家賃の安い部屋』
「たしか、この辺りのはずなんだけどな」 街の中心部から少し離れた、降りたシャッターの目立つ商店街を、ひとりの若い男が歩いていた。 男は、手元のスマートフォンに表示された地図を何度も見ながら、あたりをキョロキョロと見まわしている。どうやら、... -
『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』- 紙とフィギュアの蘊蓄が真相を暴き出す
紙の銘柄、厚み、密度など、紙のことなら何でもござれの紙鑑定士・渡部のもとに、新たな依頼が来た。 小学3年生の女の子からの依頼で、「紙粘土の鑑定をしてほしい」というもの。 紙は紙でも、紙粘土はさすがに専門外。 しかし依頼の目的が、 「可愛がって... -
【自作ショートショート No.63】『死ねない男』
「う、うわあああ」 ふぅ、た、助かった。どうにか雪崩には巻き込まれずに済んだようだ。 「だ、誰か助けてくれー。おーい」 何時間経ったんだろうか。雪崩を避けたはいいものの、俺は崖から転がり落ちてしまっていた。 「おーい、誰かいないかー。俺はこ... -
『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』- 紙とプラモデルの専門知識で謎を追うミステリ
紙の銘柄を鑑定する渡部の事務所に、なぜか浮気調査の依頼が来た。 依頼主の女性はどうやら「紙鑑定」を「神探偵」と間違えたらしい。 話を聞いてみると、浮気を疑っている理由は、彼氏が急にプラモデルに凝り始めたこと。 渡部は小遣い稼ぎのつもりで依頼... -
【自作ショートショートNo.65】『平等な国』
この小さな国ではすべての国民が、そっくり同じ形の家に暮らしている。 違っているのは扉にでかでかと刻まれた番地だけ。 外観だけでは区別がつかないので、この番地で自分の帰る家を見分けているのだ。 幼い子供たちの間では、番地の数字を頼りに友達の家... -
『コロラド・キッド 他二篇』- スティーヴン・キングの「幻の作品」が収録された日本オリジナル中篇集
スティーヴン・キング氏の作家デビュー50周年という、文学界にとっても記念すべき節目に、日本独自の編集による特別な中篇集『コロラド・キッド 他二篇』が文藝春秋より刊行されました。この一冊は、単なる新刊の枠を超え、半世紀にわたりエンターテインメ... -
『毛糸のズボン』- 焼け跡から蘇った恐怖。直野祥子のトラウマ少女漫画に飲み込まれて
「幻の一冊」という言葉はよく使われるけど、直野祥子『毛糸のズボン』ほど、この言葉がぴったりくる本も珍しい。 筑摩書房から『毛糸のズボン』が復刻されたと聞いたとき、正直「まさか」という気持ちになった。だって、この作品群は阪神・淡路大震災で原...