MWクレイヴン『グレイラットの殺人』- 首脳会談を狙ったテロ?世界を揺るがす事件の真実とは

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英国カンブリア州の売春宿で、男が金属バットで撲殺された。

現場は首脳会談が開催される予定のスカーネス・ホールの近くで、被害者は首脳会談の参加者を輸送するヘリコプター会社の社長だった。

この奇妙な符合に、政府は首脳会談を狙ったテロの可能性を疑い、NCA(国家犯罪対策庁)が捜査することになった。

任命を受けたのは、NCAでも腕利きの正義漢であるポー刑事。

さっそく相棒ティリーと共に事件を追うが、MI5(英国情報局保安部)に妨害され、捜査はなかなか進まない。

それでもポーの諦めの悪さとティリーの天才的頭脳により徐々に黒幕の正体が見えてくるが、そこには想像以上の深い闇が潜んでおり―。

途切れることのない緊迫感に一気読み不可避の、「ワシントン・ポー」シリーズ第四弾!

目次

ジェームズ・ボンド軍団が金庫破り?

『グレイラットの殺人』は、殺人事件の専門家であるポー刑事が、相棒の女性分析官ティリーと共に、国際的な陰謀を阻止すべく奮闘する警察小説です。

過去シリーズでも様々な殺人事件を解決してきた二人ですが、今作の事件はなんとシリーズ最大のスケール!

殺害現場が首脳会談(サミット)の開催予定地ですし、被害者もその関係者ということで、否が応でも各国のトップあるいは会談そのものを狙った犯行であることが予想されます。

だから必然的に、英国情報部のMI5や米国のFBIなど国家に属する組織がゾロゾロ集まってきますし、敵側にも裏世界の大物が登場したり、戦争が絡んできたりで、とにかく派手!

つまり今作のポーとティリーは、世界的な大事件に対峙するわけですよ。

今までシリーズを追ってきた読者には、絶対に見逃せない一冊です。

まだ出だしもエキサイティングで、3年前の強盗事件から始まるのですが、なんと強盗たちは顔を隠すために、有名な俳優のお面をかぶっています。

ショーン・コネリーや、ダニエル・クレイグや、ロジャー・ムーアなど、いずれも007ことジェームズ・ボンドを演じたことのあるハリウッドの大スター。

現場では、いきなりこのジェームズ・ボンド軍団がドカドカと押しかけてきて、電光石火のごとく金庫破りをして、颯爽と撤収するのです。

いや~、この演出は素晴らしい!冒頭のわずか数ページですが、インパクト抜群で、ミステリー好きの心を一気に鷲掴みにします。

そして主人公ポーは、この事件と首脳会談関連の事件とがどこかで繋がっているのではないかと疑い、捜査を進めていく。

インパクトがあるからこそ、読者はポーの捜査にも興味津々になり、夢中になって読み進めることになります。

さて、このジェームズ・ボンド軍団の正体と、サミット絡みの国際的な大事件の真相は?

圧倒的なリーダビリティが、読者をこの特大スケールの物語へと引き込みます!

ますます深まる二人の関係性

『グレイラットの殺人』では、ポーとティリーの関係性も見どころのひとつです。

これは「ワシントン・ポー」シリーズを通しての見どころでもあり、前作『キュレーターの殺人』ではティリーがポーの家でシャワーを浴びて、そのガウン姿にポーがドキッ……というシーンまで出てきて、ファンの心を大いに沸かせてくれました。

今作でも二人の絡みは、ニマニマさせてもらったりホッコリさせてもらったりで、面白味バツグン!

個人的に特に胸に響いたのは、コンビとしての信頼関係がますます深まったところ。

ポーは熱い魂を持っている分無鉄砲なところがあるので、頭脳明晰なティリーが冷静に道を示すことで守ってあげて、逆にポーは、天才だけどコミュ障なティリーの生きづらさを受け止め、支えます。

この「互いになくてはならない存在」という感じが、今作ではものすごくアップしているのです。

スケールの大きな物語なので、正直二人が危険な目に遭うシーンも多いです。

国家機密だの、裏世界のドロドロだの、挙句の果てには戦争だの自爆テロだの、とにかく恐ろしい展開が続くので、読者的には二人がどうなってしまうのかハラハラが止まらないのですが、その都度ポーもティリーも自分たちの持ち味を生かして乗り越えながら、絆を深めていきます。

その流れが胸アツで、キナ臭いことだらけの事件なのに胸糞悪くなることは一切なく、むしろ心地よい高揚感を楽しみながら一気読みできるでしょう。

最終的にはもちろん衝撃的すぎる真相が待っていますから、最後の1ページまでハイテンションが持続します!

シリーズ最高の一冊

実は本書は、スケールの大きさだけでなく、ページ数もシリーズ中トップです。

このシリーズ、もともとページ数が多めで、だいたい600ページ前後あるのですが、今作はそれを大きく超えた736ページ!威圧感のある厚みで、重さもズッシリです。

登場人物の人数も前作を上回っており、しかも過去作に登場した人物が再び出てくるというオールスター感まであって、ファンを喜ばせてくれます。

本当にいろんな面で、『グレイラットの殺人』はシリーズ最高の一冊だと言えます。

また『グレイラットの殺人』は、イアン・フレミング・スチール・ダガー賞を受賞しました。

英国推理作家協会がその年で最も優れたスリラー小説に贈る賞であり、そのことからも本書がいかにスリル抜群でグイグイ読ませる傑作であるかがおわかりいただけるかと思います。

ちなみにイアン・フレミング・スチール・ダガー賞は、「007シリーズ」の作者イアン・フレミング氏の名にちなんだ賞なので、冒頭のジェームズ・ボンド集団のことを考えると、受賞にますます納得です笑。

ということで、大人気の「ワシントン・ポー」シリーズの中でも、『グレイラットの殺人』はより強く太鼓判を押せる大傑作!

シリーズ初の方でも問題なく読めるので(なんせオールスターズですから、登場人物のおさらいもバッチリできます)、ぜひ多くの方に手に取っていただきたい作品です。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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