芦花公園『ほねがらみ』- 怪談収集家の元に寄せられた怖い話が実は……。

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大学病院に勤める医者である「私」の趣味は怪談の収集。

手元に集まるものは意味不明で不気味な知人のメールや民俗学者の手記、インタビューのテープ起こしまで様々であった。

そんな奇妙な話に登場するのは呪われた村や手足のない体、白蛇の伝説など特別繋がりがあるようには思えないものばかり。

しかし一見バラバラでしかないそれらは虚構なのか現実なのか、それすら曖昧になってくる雰囲気を漂わせながら徐々に繋がりを見せ始める。

私の元に届けられた怪談の共通点とどことなく感じられる異様さとは……。

気付いたときにはすでに恐怖の沼に引きずり込まれている?

恐怖の実話を集めた先に見えてくるものとは一体―?

目次

ネットで話題になったあのホラー作品が書籍化

「ほねがらみ」は2019年にネットに投稿されたホラー小説を大幅に加筆修正、改題した作品です。

ネット上で語られた、事実かフィクションかわからない不気味さが話題となりました。

主人公である「私」は全国の怖い話や都市伝説などを集めるのが趣味であり、呪いのかかった村や手足を切断された死体、白い蛇の伝説などさまざまな怖い話を紹介していきます。

まったく無関係に思える怖い話の一つ一つが最終的につながっていき、事実に近づくにつれて「私」が壊れていく様子には思わず鳥肌が立ってしまいます。

ネットで有名な怖い話もいくつか登場するため、普段からこの小説の主人公のように怖い話を読むのが好きな方なら没頭してしまうことでしょう。

そして「私」と同じように、読み終わったあとも小説内で起きた奇妙な出来事に自分も引き込まれてしまうのではないかと恐ろしくなってしまうこと間違いなしです。

現在ネットではもとの文章の一章分が掲載されています。

どんな内容のホラー小説なのか気になるという方はネットで試し読みをしてから購入してもいいでしょう。

ネット版にはネット版の不気味さがありますので、それぞれ違った楽しみ方をしてみるのもおすすめです。

ホラー好きにこそ読んでほしい一冊

日本に古くから伝わる怪異、学校に伝わる怪談、幽霊のパブリックイメージをより強固なものにしたホラー映画、そしてネットで語られる都市伝説など、怖い話はこの世に無限にあります。

ネットで怖い話を集めていたらつい夜更かしをしてしまった、怖くて眠れなくなったという経験がある方も多いはず。

とくに匿名掲示板などで語られる怖い話は結末がはっきりしない謎が多いものも多く、そのモヤモヤした結末がかえって「あれは何だったんだろう…」と後を引く恐ろしさを演出しています。

今作は、そんなホラー好きの方、ネット上の怖い話をつい読んでしまうという方にぜひおすすめしたい一冊です。

ネットで有名な話から地方に伝わる伝説までさまざまな怖い話が登場しますが、その内のどれが実際に語られている話で、どれが筆者の創作なのかがどんどんわからなくなっていきます。

筆者と同じように怖い話を集めていたら自分もこんな風になってしまうのではないか?という後味の悪さ、不気味さが読後に襲い掛かってくることでしょう。

今作が有名になったのはホラー小説界の巨匠三津田信三氏がSNSで取り上げたことが発端です。

「ほねがらみ」の筆者も三津田氏に強く影響を受けたと作中で語っているので、三津田氏のホラー小説が好きな方もぜひチェックしてみてください。

自分もこうなるかもしれないという恐怖

ホラー小説の多くは、主人公が心霊スポットに訪れるなどの何かのきっかけがあって展開されていきます。

ですが今作ではこれといったきっかけがなく、主人公はただ趣味で怖い話を集めていただけ。

フィクションとしてホラー小説やホラー映画、ネットの怖い話を楽しむ方はたくさんいますが、そんな些細なことでも今作のような恐ろしい体験をするかもしれない…という怖さを強く感じました。

引用されている怪談も徹底的に調べられており、怖い話や都市伝説などに詳しい方でもどこまでが本当にある話でどこからが作者のフィクションなのかが見極めにくいです。

そんな曖昧さがさらに今作の怖さを引き立てています。

作者の芦花公園氏は今作で作家としてデビューしました。「ほねがらみ」の直後に「異端の祝祭」というホラー小説も発表しています。

さらに「星の瞬く」や「海が滴る」などの過去作品もまだネットに公開されています。

怖くてもつい怖い話を読むのをやめられない…という方はぜひ読んでみてください!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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