自作ショートショート– category –
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【自作ショートショート No.10】『痩せた魔人』
もうダメなのではないかと思っていた。 どこまでも続く広大な砂漠をもう一ヶ月も歩き続け、食料も水も残りわずか、強い日差しは情けも容赦もない。 隣で双眼鏡を覗く召使いRは、何人も連れてきたうちの最後の生き残りだった。 「どうだ、宮殿は見えたか。... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.9】『殺し屋の需要』
殺すのは簡単である。 しかし、その後に関してはそうはいかない。 当然警察が殺人について捜査を始め、殺めた側を突き止めんと追ってくる。 隠すにも、今日人が足を踏み入れない場所も少なくなってきている。 探す側の技術が日進月歩の一方で、探される側... - 自作ショートショート
【ショートショート No.8】『万能殺虫剤噴霧装置』
「……F博士! ようやく……ようやく完成しましたね!」 計らずも僕の口から溢れ出た歓喜の雄叫びは、上擦ってしまった。 長年に渡る試行錯誤。心が折れかけたことだって、一度や二度ではない。 そんな悠久にも思えた終わりの見えない研究に、ついに終止符が... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.7】『父と子』
「ねえねえ、おとうさん、これはなあに?」 息子は大きな図鑑を抱えて、無邪気そうに私の下にやってきた。 「どうしたんだい?」 「これは、なんていうたてものなの?」 そう言うと、息子は大きな図鑑のあるページを開けて私の方に見せてくる。 そのページ... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.6】『セケルの加護』
由美は涙をこらえて夜道を急いだ。 団内オーディションの帰りだった。 悔しくて仕方なかった。なぜ私ではなく瑞希が主役に選ばれたのだろう、と。 由美は、顔もスタイルも演技力も瑞希より自分の方が上だと思っていた。それだけに今日はプライドをひどく傷... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.5】 『キカイな看護師』
この頃、病院は看護師が不足してきている。 近年の感染症騒ぎやらで離職者が増え、新たに看護師になる人数も減少傾向にある。 看護師がいなくなれば、病院の業務は回らなくなる。 看護師の減少は病院の危機でもあるのだ。 そこでS大附属病院はある奇手を... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.4】『患者』
この病院では、毎日患者ひとりひとりとの面談が行われている。 私は多くの患者を担当しているので、面談の数も多い。 その内容は人によって違うが、患者たちは皆誰もが特徴的であった。 「では、どうぞ」 私が声をかけると、最初の患者がやってきた。 「お... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.3】『悪魔にも』
彼は悪魔を呼び出した。 そう行動するに至った原因も、欲求も確かにあり、多くの労力を注ぎ込み、悪魔召還の術を調べ上げ準備を整えたのだ。 この社会にあっては彼の欲求は叶え得ない、法の正義も彼には味方しなかった。 満月の夜、地下室に描いた血の召還... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.2】 『宇宙人がやってきた』
ボクは半信半疑でX君と丘を登っていた。 前を行くX君はワクワクしているのだろう、いつもよりも余計に浮いている。 時間は夜、見たところ周囲の様子におかしなところは少しもない。 ボクはやはりからかわれているのではないかと思って彼に尋ねた。 「X君... - 自作ショートショート
【自作ショートショート No.1】『訪問販売』
さびれた港町のはずれ。海沿いに並んだ平屋建ての中の一軒だった。 陽子は肉を切るのに疲れてそっと包丁を置いた。したたる汗を手の甲でぬぐった。 夏の潮風と一緒に魚を煮付ける良い匂いが漂ってきた。隣の濱田だろう。 現役漁師の家の夕飯はいつも陽子の...