自作ショートショート– category –
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【自作ショートショート No.63】『死ねない男』
「う、うわあああ」 ふぅ、た、助かった。どうにか雪崩には巻き込まれずに済んだようだ。 「だ、誰か助けてくれー。おーい」 何時間経ったんだろうか。雪崩を避けたはいいものの、俺は崖から転がり落ちてしまっていた。 「おーい、誰かいないかー。俺はこ... -
【自作ショートショート No.62】『悪魔のちから』
街灯ひとつない、夜の路地。 仕事帰りの青年は、とぼとぼと帰路についていた。 彼は一流企業の社員だが、まだ新卒二年めで、毎日、上司にこっぴどく叱られていた。 こんなことなら、車にでも轢かれたい。 そう思って横断歩道をわたっていると、急に角から... -
【自作ショートショート No.61】『家賃の安い部屋』
「たしか、この辺りのはずなんだけどな」 街の中心部から少し離れた、降りたシャッターの目立つ商店街を、ひとりの若い男が歩いていた。 男は、手元のスマートフォンに表示された地図を何度も見ながら、あたりをキョロキョロと見まわしている。どうやら、... -
【自作ショートショート No.60】『毒殺夫婦』
ある夫婦がいた。 大きな屋敷に、多くのメイド。広い庭園に、ズラッと並ぶ高級車。 まさに裕福そのもの。誰もがうらやむ暮らしぶりだった。 しかしこの夫婦は、お互いに恨み合っていた。 度重なる浮気、軽蔑、無関心。 そんなものが積み重なり、もはや憎し... -
【自作ショートショート No.59】『未来ミラー』
サトミは鏡からそっと視線を外すと、顔を上げた。 視線の先にはボリュームのある髪を後ろに撫でつけて、引き締まった体躯の彼がいる。 サトミはもう一度、鏡に視線を戻して彼に気づかれないよう小さくため息をついた。 彼女が今その手にしているのは、ただ... -
【自作ショートショート No.58】『音痴』
オリエント大学で教授を務めるエフ氏、彼はその筋では名の知られた言語学の権威である。 しかし学生時代の彼の成績はビリから数えたほうが早く、決して優秀とは言えなかった。 いや、包み隠さず言ってしまえば落ちこぼれだった。 そのため学者として成功し... -
【自作ショートショート No.57】『魔法のスパイス』
魔法のスパイスなる発明品が発売された。 魔法を名乗るだけあり、その効能はすごい。 例えどんなに不味い料理であっても、魔法のスパイスをかけるとあら不思議。 なんと三ツ星シェフも驚きの絶品料理に変わってしまうのだ。 当初は広告も特になく、ひっそ... -
【自作ショートショート No.56】『肉』
アキラは仕事で出張へ出た帰り、田舎のとあるレストランへと立ち寄った。 外観は見窄らしく、とても小洒落たレストランとはほど遠いものだった。 昼食を食べる場所を探していたアキラであったが、このレストランには立ち寄るまいと通り過ぎるところであっ... -
【自作ショートショート No.55】『ダイエットサプリ』
「あーあ、また太っちゃったわ」 ポチャ美は昔から食べることが大好きだった。 特に甘い物には目がなく、食後のデザートは欠かせなかったし、それ以外にもおやつに夜食にと隙あらば口が動いていた。その結果がこれ。 いよいよ体重は百キロの大台に乗りそう... -
【自作ショートショート No.54】『宝箱』
悪魔の海域と呼ばれ、漁師から恐れられている場所がある。 この海域では船の事故が頻繁に起こっており、いつしかそう呼ばれるようになっていたのだ。 さて、そんな悪魔の海域ではある伝説がまことしやかに囁かれている。 それは金銀財宝の湧き出る宝箱が眠...