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1932年の奇跡 – エラリー・クイーンおすすめ4大傑作をご紹介
1932年――それは、推理小説の歴史において特別な輝きを放つ、まさに「奇跡の年」として記憶されています。 世界が大恐慌の暗い翳に包まれ、ナチズムの台頭や満州国の建国など、激動と不安が渦巻いていたその年、一人の作家が、静かに、けれど驚くほど鮮烈に... -
麻耶雄嵩『メルカトル鮎シリーズ』徹底解説|おすすめ・魅力・見どころ・読む順番
麻耶雄嵩氏は、日本のミステリ界において、常に挑戦的な「問題作」を世に問い続けてきた、極めて稀有な作家です。 読者の予測を鮮やかに裏切り、既存の枠組みを意図的に攪乱するその作風は、しばしば「異端」と評されながらも、ひときわ強い光を放ち続けて... -
飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』- 禁断の問題作にして幻の傑作、再び。
飛鳥部勝則氏は、1964年に新潟県に生まれ、新潟大学大学院教育学研究科を修了された異色の経歴を持つ作家です。 1998年、『殉教カテリナ車輪』にて第9回鮎川哲也賞を受賞し、以来、ミステリという形式の中に独自の美学と倒錯を織り込んだ作品群で、多くの... -
ジョン・ディクスン・カーおすすめミステリ10選 – 密室と怪奇の巨匠、その魅力と傑作選
ジョン・ディクスン・カーは、ミステリ黄金時代を象徴する作家のひとりであり、特に「密室殺人」という一見不可能な状況下の犯罪において、空前絶後の高みに到達した人物として知られています。 その想像力は、ただ巧妙というだけではありません。 読者の... -
その一言が、沈黙の底を割った―― アガサ・クリスティ『葬儀を終えて』【エッセイ】
誰かの死が、すべての終わりであるとは限りません。 むしろ、それは、ある物語の静かな始まりなのかもしれません。 アガサ・クリスティの『葬儀を終えて』は、まさにそんな“余白から始まる”物語です。 コーニッシュ地方のエンダビー荘。 重々しい天蓋の下... -
京極夏彦『百鬼夜行シリーズ』徹底解説|おすすめ・魅力・見どころ・読む順番
京極夏彦氏が『姑獲鳥の夏』で文壇に鮮烈なデビューを飾ったのは、1994年のことでした。 以来、「百鬼夜行シリーズ(あるいは京極堂シリーズ)」は、現代日本文学におけるひとつの異界として、多くの読者を魅了し続けています。 このシリーズが描き出すの... -
『ボタニストの殺人』- シリーズ最高傑作か。「毒殺」と「雪の密室」の二つの不可能殺人に迫る
英国の作家M・W・クレイヴン氏が手掛ける「刑事ワシントン・ポー」シリーズは、一度読み始めたら止まらない、中毒性の高い人気ミステリーシリーズとして確固たる地位を築いています。 その物語の中核を成すのは、型破りな言動の裏に揺るぎない信念を秘めた... -
有栖川有栖『国名シリーズ』徹底解説|おすすめ・魅力・見どころ・読む順番
有栖川有栖氏は、現代本格ミステリの世界において揺るぎない地位を築き上げ、多くの読者を魅了し続けている作家です。 論理という名の美を、ひたむきに追い求めるその筆致は、まさに知の迷宮を描く職人芸の域に達しています。 とりわけ、「新本格ミステリ... -
切断と再生の果てに咲くもの―― 島田荘司『眩暈』【エッセイ】
この世界にまだ「物語」が可能だとすれば、それは崩壊の果てにこそ現れるものでしょう。 瓦礫の中に転がる真理。 異形の肉体が立ち上がる地平。 うす曇りの午後、火照った脳裏に冷たい雨粒が落ちるような衝撃で『眩暈』は始まります。 青年が遺した手記――... -
井上夢人おすすめ小説10選 – 読後に“世界がズレる”作家、唯一無二の傑作選
現実と虚構の境目が、ふいに曖昧になる瞬間。 それは、井上夢人という作家の世界に足を踏み入れたときに訪れます。 緻密な構成、ユニークな着想、柔らかでありながら鋭さを帯びた筆致。 彼の小説は、ジャンルを横断しながらも一貫して「読む者の常識を揺さ...