法月綸太郎おすすめミステリー小説10選

  • URLをコピーしました!

本格ミステリ好きならぜひ読んでおきたい、というか必読の法月綸太郎(のりづきりんたろう)さんのおすすめ名作をご紹介させてください。

法月さんといえば名探偵・「法月綸太郎シリーズ」が有名であり、エラリー・クイーンを意識したロジカルな推理を堪能できます。

シリーズと言ってもどの作品から読んでも大丈夫なのでご安心を。

もちろんシリーズ以外の作品も十分に面白いので、参考にしていただければ幸いです。

目次

1.『頼子のために』

14年前の交通事故で半身不随となった妻と、17歳の娘、頼子を愛していた西村。

ある日、頼子が何者かに殺され、近所の公園に遺棄されてしまいます。

西村は通り魔事件と判断した警察を信用せず、自分で犯人を探し出して殺害し、その顛末を手記に残して自殺を図りましたが未遂に終わります。

その手記を読んだ法月綸太郎が、隠された真相を探るべく調査に乗り出す、という物語です。

冒頭の手記を見る限り、娘を殺された父親の悲しい復讐の物語、だと思ってしまうのですが……。

名探偵・法月綸太郎シリーズの長編作品にして、シリーズ最高傑作だと私は思っております。

謎解きは西村の手記をなぞり、様々な人物と会うことで断片的に解明していきます。手記の矛盾点を突き止め、緻密に推理していく綸太郎には驚きの一言。

歪んだ愛の形と、どんでん返しとなる事件の真相はもちろん、綸太郎が最後に下す決断がとても衝撃的です。

また、読む前と読んだあとで「頼子のために」というタイトルの持つ意味が変わることでしょう。

犯行トリックの解明ではなく、人の心理や感情の表現に注力しており、オチが分かっていても再読できる稀有なミステリー小説です。

作者の法月綸太郎氏は、アメリカのハードボイルド作家、ロス・マクドナルドを愛好しており、本作は同氏へのリスペクトの一つでもあります。

2.『法月綸太郎の冒険』

法月綸太郎シリーズ6作目の短編集。珠玉の7編が収録されています。

最初の「死刑囚パズル」では、死刑の執行直前に何者かによって死刑囚が殺害されてしまいます。

なぜ、今から死刑で確実に命を落とす人間を、わざわざその寸前に殺さなければならなかったのか?

なぜ前日でもなくこのタイミングだったのか?謎解きでは、驚きの人間関係と犯行動機が明かされていきます。

次の「黒衣の家」は、老人のお葬式の1ヵ月後、その妻も毒殺されてしまうという短編。

「なぜ犯行に及んだのか?」に焦点を当てた作品です。常軌を逸する純真な狂気。「これがサイコパスか」と、ラストで戦慄してしまうこと間違いありません。

3編目の「カニバリズム小論」は、犯人はすでに捕まっており「なぜ人食に至ったのか」を解く流れです。こちらも、ラストシーンでとんでもないサプライズがあります。

「切り裂き魔」「緑の扉は危険」「土曜日の本」「過ぎにし薔薇は……」の4編は、図書館の司書が綸太郎の相棒として登場するシリーズものです。

「緑の扉は危険」のみ、殺人が発生しますが、前半の3編と比べるとライトな印象です。

3.『法月綸太郎の新冒険』

名探偵・法月綸太郎シリーズの短編集、第2弾です。

前作から7年のブランクがありますが、相変わらず冴え渡る主人公・綸太郎の推理。5編が収録されています。

「配信の交点」では、綸太郎が電車で事件に巻き込まれます。

鉄道ミステリーの王道とも言えるトリックで殺人が行われるのですが、さらにもう一捻り加わり、同シリーズらしい、アッと驚く展開となります。

「身投げ女のブルース」は、主人公・綸太郎が登場しない異色作。

警視庁捜査一課の警部の視点で物語が進みます。車で極秘の事情聴取に向かう途中、身投げをしようとしている女性に遭遇。その女性は占い師を殺したと証言しますが……。

綸太郎が話に出てこないことが、読者が真相に近づくための最大のヒントになっています。この短編集で、一番インパクトのある作品です。

また、超能力トリックの「世界の神秘を解く男」と、時事ネタを元にした「現場から生中継」、交換殺人が主題の「リターン・ザ・ギフト」の他、冒頭には「イントロダクション」として、綸太郎の人となりが分かる短編が挿入されますが、前作の短編集「冒険」とは異なり、全編が本格ミステリーとなる作品集です。

4.『法月綸太郎の功績』

こちらもシリーズ短編集で、収録されているのは5編。直球のパズルを解く楽しさを味わえます。

「都市伝説パズル」は、殺人事件が起こっていることを知らずに、知人の部屋に忘れ物を取りにきた女子大生。

翌朝、知人の死体と共に「電気をつけなくて命拾いしたな」というメッセージが……。

有名な都市伝説の見立てという出だしで、綸太郎と父親の会話メインで構成されており、シンプルで切れのある本格ミステリー。

ラストは背筋がゾーッとしますよ。第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した作品です。

「イコールYの悲劇」はダイイングメッセージもの。

もちろん、このメッセージは捻りが加わっており、内容を巡って様々な仮説が出ては否定されていく形で、真相までたどり着くことになります。綸太郎の論理的な推理が見どころです。

その他、殺人現場が密室かつ部屋の物が全て上下逆さまという「中国蝸牛の謎」、3度も嘘の殺人を自供する男を巡る「ABCD包囲網」、不倫相手が首吊り自殺するが、死因は後頭部打撲という
不可解な滑り出しの「縊心伝心」が収められています。

俗に言う「安楽椅子探偵もの」が多く、綸太郎と父親の法月警部の掛け合いも楽しい一冊です。

5.『誰彼』

法月綸太郎シリーズ2作目の長編。

宗教団体に教祖の殺人予告が届きます。教祖は教団の塔で瞑想していましたが、直後にアパートの一室で首のない状態となって発見される。

教祖はなぜ、見張りもついていた塔から消えてしまったのか、なぜ犯人は予告をしたのか、なぜ首が無くなっているのか・・・。

教団から調査依頼を受けた綸太郎は、様々な仮説を展開しながら、真相に迫っていきます。

消失トリックをはじめ、密室、暗号、新興宗教、双子の人物など、ミステリー小説の王道をいく素材が揃った作品です。

その手が好きな方にはぜひ読んでいただきたい一冊。

綸太郎の推理は、自分が立てた仮説を自ら否定し、新たな仮説を立てるという、トライアンドエラーを重ねていく形で展開していきます。

飛躍した仮説を繰り出す綸太郎と、冷静な法月刑事の対比も注目です。

長編ですが、この作品の真価は最後まで読み切るまで分かりません。気を抜かず、最後までしっかり読みましょう。

6.『赤い部屋異聞』

2019年12月刊行の9編の短編集。古今東西のミステリー名作へのオマージュがコンセプトという、珍しい一冊です。

表題作の「赤い部屋異聞」は江戸川乱歩がモチーフ。”赤い部屋”に集まり交代で話をする「猟奇趣味の会」メンバー。

その一人、新入会員のT氏が語るのは「絶対にバレない殺人」でした。今まで99人の命を、法に触れることなく奪ってきたと語ります。

原典の「プロバビリティーの犯罪」をうまく利用しつつ、原典とは違う形で落ちをつけるという、誰にも予想できない結末と、2転3転するどんでん返しに、あなたはきっと驚愕することでしょう。

その他の短編も、原典の流れを踏襲しながら、それ以上の落ちが用意されており、本格ミステリーとしてとても読み応えがあります。

なお、各話の間には「裁断されたあとがき」が挿入されており、原典を知らなくても楽しめるようになっています。また、作者の原典へのリスペクトを感じることができます。

表題作の他に「砂時計の伝言」「続・夢判断」「対位法」「まよい猫」「葬式がえり」「最後の一撃」「だまし舟」「迷探偵誕生」を収録しています。

7.『密閉教室』

ある日の早朝、遺書を残した高校生の死体が教室で発見されました。

教室は密室で、48組あるはずの机と椅子がなく空っぽの状態に。主人公となる高校生の工藤は「自殺か他殺か」「なぜ机と椅子が消えたのか」という謎に迫っていきます。

作者である法月綸太郎氏の、23歳時でのデビュー作です。初出は1988年。

学園ものという雰囲気が感じられ、物語は校内スキャンダルや恋愛模様も絡みながら展開される、甘酸っぱい青春小説の側面も。

一方で、なぜか登場する高校生たちは皆、芝居がかったセリフを発しており、独特の雰囲気があります。

謎解きの要素は、きちんと文中に提示されていきますので、最後の解決編までに推理することが可能で、読者はトリック考察も楽しめます。

理詰めで解き明かされる謎ですが、最後にはお約束のどんでん返しもありますので、最後まで気が抜けません。

これがデビュー作とは思えないほど、完成度の高い長編です。

8.『ふたたび赤い悪夢』

法月綸太郎シリーズの長編。

深夜、綸太郎にアイドル歌手・畠中有里奈から一本の電話が。ただならぬ雰囲気を察知した綸太郎は、彼女を迎えに行きます。

固く口をつぐむ有里奈でしたが、パトカーがすれ違うと激しく動揺し、近くで死体が見つかると正気を失いながら「私が殺したのかも知れない」とつぶやきます。

「頼子のために」の事件で心にキズを負い、探偵という立場を恐れるようになっていた綸太郎が、なりゆきで新たな事件に巻き込まれていきます。

割り切って活動できず、探偵業に正面から向き合い葛藤する主人公。

推理小説は淡々と推理を展開していくものが多いですが、この作品では、この人間臭い描写と心の成長、そして探偵業に復帰するという決意までの過程が見どころです。

また、ヒロインの有里奈にも過去にある事情があり、それが今回の一件と思いがけない形でつながっていくところも見逃せません。

同シリーズ長編「頼子のために」を読まれた方には必読書と言えます。

9.『雪密室』

名探偵・法月綸太郎シリーズの記念すべき第一作。父の法月警視も登場します。

とあるパーティに参加すべく、冬の山荘を訪れた法月警視は、明くる日の朝、離れのコテージで死体が発見される事件に遭遇します。

全員に動機があり、さらに「足跡がない積雪」という密室ミステリーもの王道の展開。

法月警視は綸太郎に援軍を求めますが、小説の締切に追われておりなかなか到着しないこともあって、法月警視がほぼ主人公で描かれ、自身の過去とも関わる当事件に向き合います。

自殺説と他殺説で論争が繰り広げられ、決着を付ける綸太郎のロジカルな推理が見どころです。

また、法月家の家族関係、特に母親について言及がありますので、そちらも興味深いものがあります。

本格ミステリーファンとして嬉しい「読者への挑戦」も組み込まれていますので、真相編の前に犯人特定に挑戦してみてはいかがでしょうか。

10.『一の悲劇』

法月綸太郎の4作目。作者によると「頼子のために」「再び赤い悪夢」とともに、三部作をなす作品。

2016年にはシリーズ初のテレビドラマにもなった、誘拐ミステリーの傑作です。

物語は父親である山倉の視点で進行していきます。

息子が誘拐されたと妻から知らされた山倉は急いで帰宅しますが、当の息子は熱を出して布団で眠っています。

実は、誘拐されたのは息子の同級生でした。警察は誤認誘拐と捉え捜査に乗り出しますが、誘拐された子供はそのまま殺されてしまうという展開をたどります。

ラストシーンまで読み進めたあなたは、日常の何気ない行動にも犯人の考え抜かれた思惑が隠されていることに気づき、唖然とするはずです。

登場人物は皆、怪しげな素振りを見せ「この人物が犯人か」と読者のミスリード誘うような伏線がいくつも張り巡らされています。

最後まで真相はわからず、先が気になって仕方がありません。

どんでん返しに次ぐどんでん返し。読了後に「一の悲劇」というタイトルの意味が分かる仕掛けです。誘拐事件に秘められた犯人の真意とは?

ぜひその結末を目にしてください。

おわりに

最後までご覧いただき本当にありがとうございました。

ミステリ好きたるもの、今回紹介した法月綸太郎さんの作品はぜひ読んでおきたい名作です!

どうぞ参考にしていただければ幸いです。

それでは、良い読書ライフを!(=゚ω゚)ノ

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

目次