感動して泣ける小説おすすめ30選

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今回おすすめさせていただくのは「感動!泣ける小説」ということなのですが、「泣ける小説」と「感動する小説」は似ているようでちょっと違う。

必ずしも「泣ける小説=感動する小説」という訳ではないんです。

例えば、「愛する人の死」は泣けますけど感動はしないです。これは「悲しい」から「泣ける」わけですね。でもこれだけだと読んでいて辛いだけ、苦しいだけなんです。

こればっかりは読んでみないとわからないのですが、そういうものなのです。

なので今回は、悲しいだけでなく「感動」して「泣ける」作品を厳選させていただきました。

もちろん全て実際に私が読んで「これはおすすめしたい!」と感銘を受けた作品のみです。

同じ著者さんが続いたり、定番の作品が多いですが、ご了承くださいませ。

それではどうぞ、参考にしていただければ幸いです(=゚ω゚)ノ

目次

1.辻村 深月『かがみの孤城』

本屋大賞2018を受賞した作品。

いじめを受けて学校での居場所をなくし、閉じこもっていた女の子“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めました。

光る鏡をくぐり抜けると、その先にあったのは城のような不思議な建物。

そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていました。

この城のホストである仮面の少女、“オオカミさま”によると、城内には願いが叶う鍵が隠されていているといいます。

なぜこの7人が、なぜこの場所に?そもそもこの世界は何なのか?

オオカミさまや子供たちの会話の端々に散りばめられた違和感を拾い上げていくと、あらゆる伏線が回収され、全ての謎が解き明かされていきます。

そして、すべてが明らかになったとき、驚きとともに大きな感動に包まれることでしょう。

物語の後半は読み進める度に謎が解き明かされていくところがとても面白く、ファンタジーとSFがミックスされてハッピーエンドに導かれるストーリーは秀逸のひとことです。

2.辻村 深月『ぼくのメジャースプーン』

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。

ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失いました。

彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることは…。

重いテーマで、途中胸が苦しくなるような描写もあります。

無垢な小学生が苦しめられている姿は辛いですが、ラストは救いのある展開になっています。

内容は、罪と罰について深く考えさせられるものです。

理不尽かつ絶対的な悪意に対して、どのように立ち向かうべきか。

秋先生と「ぼく」のやり取りのなかで、もしも自分だったら…と何度も考えさせられます。

人間の身勝手さや、そもそも許せない悪に対してどう対応をするべきなのかなど、どうしようもない問題の中を手探りで読み勧めていく感じです。

最後に出した答えは、小学生の少年が全力で考え悩んで出したものだと思うと切ないです。

責任感もあり優しいけれど、「ぼく」を決して子ども扱いせず、厳しい現実をはっきりと突き付ける秋先生の姿勢が印象的です。

3.辻村 深月『ツナグ』

『スロウハイツの神様』など、私好みの作品が多い辻村深月(つじむら みづき)さんの作品。映画化もされ話題にもなりました。

一度だけ死者と合わせてくれる「ツナグ」という存在を中心に描いた連作短編集。

感動的な話が人生の歩みを躊躇させ後悔を晴らしてくれるような、そんな設定は他にもありそうだけど、この作品は一味違います。

生者の独りよがりだけでなく、死者の側の気持ちとか他人の人生に立ち会う人間の葛藤にもフォーカスしていて、強く納得できるような感心があるのです。

また連作短編ならではのストーリー構成や死者と会うルールがまたとても凝っているんですよねえ。

亡くなった人と会う系の作品って大体泣けるものですが、この作品は特別に面白いです。

もしOKしてくれたら、絶望的な孤独から私を救ってくれた「あの人」に、ただ一言、お礼が言いたいんです――。

4.有川 浩『旅猫リポート』

ある事情で猫を飼えなくなった青年サトルと、拾われた愛猫ナナが新しい飼い主を求めて旅をする話です。

サトルはナナが大切で大好きなのに、どうしても手放さなければならない事情ができて、友人の元を辿っていきます。

しかし、サトルがナナを手放さなければならない理由がのちのち判明するのです。

サトルは生みの親から捨てられ、家族を失ったり病を患ってしまい、一般的には可哀想だと思われるかもしれません。

しかし、愛されず捨てられたサトル自身は自分のことをむしろ、育ての親からもたくさんの友達からも愛してもらって幸せ者だと言います。

幸せについて考えさせられる作品でもあります。

サトルとナナの関係性はもちろん、友人たちや家族、旅で出会った人々や動物達の温かさも深く感じることができます。

主役だけでなく登場人物それぞれの視点で描かれており、その過去も掘り下げられているので、全員に感情移入しながら読むことができます。

前半はコミカルで微笑ましい展開、後半は思わず涙してしまうかもしれません。

5.百田 尚樹『永遠の0』

戦争を体験していない私たちの世代にとって、戦時中の出来事を知るきっかけになる一冊であると思います。

また、戦争への見方も様々な登場人物からの視点で描かれています。

生きがいを見失っていた健太郎は、姉の依頼で祖父・宮部久蔵の生涯を調査することに。

彼は生命を惜しむ卑怯者か、狂信のテロリストか…?戦後60年を経て、浮かび上がる彼の生涯は…。

久蔵という一人の青年の生きざまが緻密に描かれるとともに、太平洋戦争をはじめとする第二次世界大戦の悲惨さや残酷さが大いなる臨場感をもって描写されています。

特に衝撃的だったのは、愛国心などよりも遥かに愛する妻子や自分の生を大事にしていた神風特攻隊のパイロットの心境です。

久蔵は、彼らが口には出せない心の奥底に押し込めていた本心を社会全般に訴える代弁者のような存在であったかもしれません。

戦争がなぜ起きたのか、国のトップだけではなく当時のメディアにも責任があったという部分はなるほどと思わされます。

6.七月 隆文『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

過去と未来が交錯する恋愛小説です。

京都の美大に通う20歳の学生・南山高寿は、いつものように大学まで向かう電車の中で出会った女性・福寿愛美を一目見た瞬間、恋に落ちます。

勇気を振り絞って声をかけ、「また会える?」と約束を取り付けようとした高寿でしたが、それを聞いた彼女は、なぜか、突然涙してしまいます。

その理由を知る由もない高寿は、不器用な自分を受け入れてくれる愛美にますます惹かれてゆき、交際をスタートさせることに。

しかし、初めてキスをした日、高寿は、愛美から想像もできなかった大きな秘密を明かされます…。

二人を結ぶ複雑な設定を理解するまでに時間はかかるかもしれませんが、それが分かると改めて読み直したくなるのではないでしょうか。

これからどんなことが起こるかを全て知っていて、その歴史を変えないように過ごしていくことは、相手を想っていなければ出来ないことだと思います。

その意味で、何も知らない高寿と過ごす愛美の気持ちを考えるととても切なくなる作品です。

7.成田 名璃子『東京すみっこごはん』

店主のいない定食屋、料理人は客で、その日の来客者からくじ引きで決めるという、すみっこごはんという名の不思議な食堂と、そこに集う仲間たちの連作短編集。

この食堂(といっても、店舗ではなく共用台所)に集うのはいずれもワケありの人々。

いじめを受ける女子高生の楓は味噌汁作りを経ていい出汁が出て、料理が苦手なOLの奈央さんはハンバーグを上手く仕上げて婚活も前向きに、生きがいをなくしたタイ人の留学生ジェップ君は肉じゃがで…と、それぞれが「すみっこごはん」で料理と出会い自らの道を見出していきます。

国籍も年齢も性別も違う人々が、誰かの手作りごはんを食べて繋がる。

この変わった店の完成とレシピノートに関わる秘密が、冒頭の一話から始まり、最終話で完結することに。

すみっこごはんのメンバーは皆温かくキャラが立っており、楽しく読み終えることができます。

高校生の楓に対する同級生のいじめは読んでいて辛く暗い気持ちになりますが、すみっこごはんの成り立ちや楓の母親が娘に遺したレシピノートに泣かされ大団円で終わる物語です。

8.川村 元気『世界から猫が消えたなら』

主人公「僕」は30歳の郵便配達員。「キャベツ」という名前の猫と一緒に暮らしていました。

ある日、僕が体調不良を感じて病院へ行くと唐突に「脳腫瘍」と告げられます。余命は、あとわずか。

呆然と命の終わりについて「僕」が考えていると、目の前に「僕」そっくりな誰かが現れました。

「アタシ、悪魔です!」ハイテンションにそう告げた悪魔によれば、僕が息を引き取る日は「明日」なのだという。

「ひとつ方法があるんです」続けて話す悪魔は、寿命を延ばすことと引き換えに「取引」を申し出てきた。

「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりに、あなたは一日の命を得ることが出来る」と…。

消えていくものは悪魔が決める。電話、映画、時計、猫、…世の中から消しても大丈夫? それとも「僕」が消える?

ファンタジーの世界の話でありながら、非常に現実について考えさせられます。

地球上の全ての物には存在する理由があり、なくてはならない大切なもの。

どれかひとつでも足りないと歯車が上手く噛み合わない。そんなことを感じる本です。

9.住野 よる『君の膵臓をたべたい』

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾いました。

タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳でした。

そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくらもないと書かれていました。

共病文庫を拾ったことが原因で僕は彼女にとって「ただのクラスメイト」から「秘密を知るクラスメイト」となったのです。

彼女と食事したり、旅行したり、様々なことを話していくうちに、僕は自分と正反対の性格をしている彼女に徐々に惹かれていきました。

余命残り一年の彼女とどう過ごすか考えていた矢先、世界は、平等に残酷な現実を僕に突き付けます。

高校生の青春恋愛ストーリーとしてありがちな展開をするのかと思いきや、最期は急展開で衝撃です。伏線回収もお見事。

主人公の視点からの語り口が軽快でストーリーのテンポもよく、重いテーマの割にはサクサクと読むことができます。

単なる恋愛物語ではなく、命の大切さを教えられます。

また自分のことを必要としてくれる誰かと出会えることがどれだけ幸せなことなのか考えさせられる作品です。

10. 東野 圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

累計500万部を突破しているベストセラーで、東野圭吾史上最高の感動作とも評されています。

東野圭吾というとミステリーが想起されますが、本作は良い意味でこれまでの東野作品とは異なります。

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店でした。

廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきます。

それは、何十年も前からの相談の手紙でした。3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くものの…。

次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

全5章構成で、基本的には章ごとに視点が切り替わり、異なる人物に焦点が当たっていくのですが、最終的にはすべてが絡み合い繋がります。

一つ一つも短編として面白いですが、それらを絡み合わせてきれいな長編になるという形で感動があります。

11.小坂 流加『余命10年』

20歳の茉莉は、数万人に1人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知ります。

笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。

そのような未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていきます。

そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉でしたが…。

小説の冒頭に書いてある一文。『あと10年しか生きれないとしたら、あなたは何をしますか。

長いと思い悠然と構えられますか。短いと思い駆け出しますか。

あと10年しか生きれないと宣告されたのならば、あなたは次の瞬間、何をしますか。』この言葉を読むと、否応なく自分自身がその立場になったらどうするのだろうか、と考えさせられます。

また、実際に作者・小坂流加さんは、本作の編集後、病気が悪化して亡くなっています。

ですから、この作品はフィクションでありながら、作者の実体験や思いも込められているのではないでしょうか。

だからこそストーリーがとてもリアルに感じ、心に響く作品となっています。

12.朱川 湊人『花まんま』

昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子供だった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。漂う昭和の雰囲気がとても良いんです。

主人公の子供達が色々と不思議な出来事を体験するのですが、登場人物たちの’’人間愛’’と言うんですかね。人の温もりがすごいんです。またその描写が非常にお上手。

ほんのり余韻のある話や嫌な話まで、各話の語り手が何を語るのかはページをめくり続けなければわからない。本作は、ページをめぐる指を止めるのが惜しくなるような、そんな読書の魅力に溢れています。

どのお話にも「死」が関連しており、胸が痛むものもあります。ちょっと怖いお話もあります。でも嫌な気分にならず、むしろ心が温まっていきます。

話も人情味溢れて素晴らしいのですが、何よりも文章が好き。読者を慮る工夫が徹底されているためか、漫画のような読みやすさがあります。

良作揃いですが、やっぱり表題作の「花まんま」が一番好き。

母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。

13.湯本 香樹実『夏の庭』

夏に読みたい名作でもあります。

三人の小学生が「人間の死」を見たいということで、とあるおじいさんを観察し始めます。

しかしおじいさんと交流しているうちに、その残酷とも言える好奇心はやがて友情へと変わっていき……。

「死」というものを改めて考えさせられるこの物語は、読む前から泣くとわかっていたけどやっぱり泣いてしまいました。

死を実感する小学生の心の揺れ動き、乗り越えていこうとする3人。

観察対象だったおじいさんに生きていくことを学んだ少年たちが、物語の終わりにはとても成長し大人になっていた。

人間の死を通じて成長する小学生たち。悲しいというより、爽やかで、暖かくて、心地いい作品です。

町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。

14.雫井 脩介『つばさものがたり』

有名菓子店で修行した主人公・小麦は、故郷の北伊豆に帰ってきて洋菓子店を開きます。

しかし甥の叶夢から「この店はやらない」と言われてしまう。なぜなら〈天使〉がそう言っているからだと……。

というような、〈天使〉というファンタジー要素の入った家族小説です。この〈天使〉の描きかたと物語への絡ませかたが素晴らしいのです。

子供の頃は家族小説って全く興味のなかったジャンルだったのですが、歳を重ねるにつれて不思議と読むようになりました。

何度も奇跡が起こってほしいと願いながら読み続け、美しくて、温かい、悲しみの中にも希望の見える感動のラスト。

もう涙が止まらず号泣。命が終わるその瞬間まで後悔しないような生き方をしたいと思えました。

しかも、温かい家族小説ってだけで泣けてきてしまうのは一体どういうことでしょうか。年々涙もろくなっていっている気がするんですが。

パティシエールの君川小麦は、自身の身体に重い秘密を抱えたまま、故郷・北伊豆で家族とケーキ屋を開いた。

15.浅田 次郎『椿山課長の七日間』

46歳で突然死んでしまったデパートの課長が「美女の姿」で七日間だけ現世に戻ってくる、という笑いあり涙ありの感動エンターテインメント作品です。

確かに泣かせる物語なんですけど、ユーモアたっぷりで楽しくスラスラ読めてしまうのがポイント。

序盤のあの世の描写は、作者独特のユーモラスな語り口で、まるで落語を聞いてるようで愉快です。

正体を知られない様に全く別の外見になるとか、必要なものが取り出せる鞄とか、各種設定や小道具、行動を制約するルールが楽しい。

サラリーマンだろうがヤクザだろうが子供だろうが、なんだかんだで皆、家族が一番大切なんですね。

「死」は登場人物に限らず、私にも訪れることなので、今をどう生きるか、考えさせられました。

日々生きることの大切さを感じ深く考えさせられまずが、重たすぎない。このバランスが絶妙なのです。でも最後は泣ける。本当に素晴らしい小説です。

働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った!

16.浅田 次郎『鉄道員』

同じく浅田次郎さん。表題作を含めた8編からなる短編集です。どの短編も人として、忘れてはいけない心を呼び起こしてくれます。

涙がとめどなく溢れる話もあれば、少し背筋がゾッとするような怖い話もあり、どれもが短編とは思えないほど濃密で読み応えのある作品ばかり。

短編だけど濃いんです。どれもタイプの違う物語で、8編のうちどれかは必ずスマッシュヒットします。

表題作の「鉄道員」は映画化もされ有名かと思いますが、原作もぜひ読んでいただきたいです。

もちろん表題作以外も名作ぞろいで、「ラブレター」「オリヲン座からの招待状」「ろくでなしのサンタ」「うらぼんえ」などもたまりません。

読後、柔らかく温かい手でそっと明日へと背中を押されたような余韻が残る一冊です。

娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた―。

17.浅田 次郎『天国までの百マイル』

またまた浅田次郎さん。泣ける感動小説といえばこの作品も外せません。

自分の会社をつぶしてしまった落ちぶれた中年主人公が、難病に苦しむ母の命を救うため、天才外科医のいる病院を目指して100マイルの旅に出る、というお話。

親子の物語なのですが、浅田次郎さんの作品は登場人物が魅力的すぎる。人の愛とか優しさがすごい。

しかも物語構成や人間描写、うまい文章力でグワッと泣かせにくるのです。ずるいですよ(´ノω;`)

事業に失敗し愛する妻子とも別れたダメ中年の城所安男。重い心臓病を患う老母を乗せて天才心臓外科医がいるという病院までポンコツ車でひた走る。

18.川口 晴『犬と私の10の約束』

私は動物メインの感動小説に特に弱いんです。私は猫を飼っているのですが、犬ももちろん好き。

タイトルの通り、主人公とペット、いえ、「家族」である犬の10の約束を描いた物語です。こんなの泣けるに決まってますわ。

犬という存在を通じての成長と信頼、愛が素晴らしい。ペットを飼っている方はその子との付き合い方を改めて考えさせられるでしょう。

飼っていない方は、きっと新しい家族を迎えたくなるでしょう。

犬に限らず、生き物を飼っている全ての方に読んでいただきたいです。

「私を信じてください。それだけで私は幸せです」「私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください」。

19.重松清『流星ワゴン』

定番の名作ですね。重松清さんの名作です。

人生に絶望していた主人公は、謎のワゴン車に乗って時間の旅へ。

「今まで分かり合えなかった親子の物語」であり、読んでいると辛くなってくるところもあります。それでも最後までぐいぐい読まされてしまうし、思いっきり泣かせにきてくれます。

重松さんの小説は本当に感情表現が鮮明で、自分のことじゃないのに同じように悲しくなり、胸が痛む。

過去に戻ることはできても未来は変わらない。それでも過去に戻ってやり直す意味とは?と深く考えさせられます。

ドラマ化もされご覧になった方もいると思いますが、原作もぜひ読んでいただきたいです。

38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った――。僕らは、友達になれるだろうか?

20.重松清『とんび』

続いても重松さん。

父一人、子一人を描いた家族の物語。重松さんの家族作品は完全にツボです。しかも不器用な親父ってのがまたグッと来ちゃうんですよね。

ものすごく不器用で、怒りっぽくて、それでいて涙もろい父のヤスと、しっかりしていて親思いの息子アキラとの掛け合いがたまりません。

二人の親子愛と、お節介なほど世話好きな回りの人々の愛には何度も泣かされました。

『流星ワゴン』も良い作品ですが、ファンタジーの要素を取り払い、シンプルに人情味を出した今作もとても魅力的な作品になっています。

ゆっくりと、でも速く流れゆく家族の時間を切り取った章の構成も見事。

家族の日常の描き方もとってもお上手で、温かさに溢れています。だから余計に泣けてしまう。

親になる前の大人、親になった大人、そして子どもにも、すべての人におすすめできる一冊です。

昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。

21.重松清『その日のまえに』

これはアカン。

愛する人の「死」の話。そしてその家族を描いた連作短編集。

結末が分かっているのに毎回涙が流れてしまう。実際自分や身近な人が突然余命告知をされたら、どう行動できるだろうか。今の自分には全く想像がつきません。

死を迎える「その日」までをどの様に過ごし、如何に心構えをし、何を準備すべきかを考えさせられました。

正直キツかったです。だけど辛い話のはずなのに、温かい気持ちにもなれるのは、重松さんの凄さ。読み終わった後は「家族」と「死」についてしばらく考えてしまいます。

失ってから、あるいはもうすぐ失うと知ってから、いかに自分にとってかけがえのない存在であったかを知る。 人間ってそういうものだし、だからこそ尊いのでしょう。

大切な人が誰か一人でもいるのなら、一度は読んでほしい作品です。

「今を大切に」なんてありきたりな言葉、わかっているようで、わかっていなかった。

僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。

22.荻原 浩『明日の記憶』

若年性アルツハイマーと診断された主人公を中心に描いた物語です。

一人称で展開されているので、記憶をなくす辛さ、困惑、悩みがリアルで、まさか私もいつかなるんじゃないか、と不安になるほど迫るものがあります。

日々の備忘録として書いているメモが、次第に漢字が書けなくなり、難しい言葉がわからなくなっていく様子は悲しすぎます。そして大切な家族が分からなくなり、名前も分からなくなる。

正直、この作品を読むまで「記憶を失う」という怖さを甘くみていました。これは残酷すぎます。さらに不安、悲しみ、周りの人々。この作品はそれらを描くリアルさが凄い。

身体的な不自由は、もちろん辛いことだと思いますが、それよりも記憶の不自由、家族や思い出を忘れてしまうことが何よりも辛いと痛感しました。

2006年に映画化。原作はもちろん、映画も素晴らしかったです。

広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。

23.横山 秀夫『出口のない海』

舞台は第2次世界大戦。人間魚雷「回天」に乗ることになった青年を中心とした物語、っいうだけで胸にきますよね。

立ち上がることのできない狭い空間と暗闇の中で、確実な死に向かって突っ込んでいかなければならない搭乗員の苦痛はどれほどのものであったか。

お国のために死ぬことが美学。そんな馬鹿げた教育を受けた多くの若者たちが戦争で命を落とした事実。

なんという怖い世界でしょう。読んでいる途中も辛く悲しく切なく、胸が苦しくなる場面が多々あった。それを覚悟してでもこの作品は読むべきであると強く思います。

もし自分が「回天」の搭乗者となったら……。

戦争の残酷さを改めて思い知らされる作品です。

人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。

24.木皿 泉『昨夜のカレー、明日のパン』

テツコとギフを中心に、暖かくて悲しい時もあるけど丁寧な日常の物語。

大切な人を失ってしまった人々の何気ない日常を描く。

若くして大切な人を亡くした辛い過去があったにもかかわらず、決して辛気臭さを感じさせないギフとテツコの二人。

辛いことや悲しみを乗り越え、お互いに絶妙な距離感で、何でも無いような日常の風景をいつまでもいつまでも眺めていたい、そんな気持ちにさせてくれる物語。

「大切な人の死」をメインにしながらも重苦しい雰囲気はほとんど無く、笑いと涙が溢れるような心温まる作品です。

なんとない話なんだけど、なぜかとても面白いんですよねえ。

2014年にドラマ化。原作とはまた違った良さがありとても面白かった。

色々あるけど明日も何とか暮らしていこうという気持ちにさせてくれる読後感です。

悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。

25.伊藤 左千夫『野菊の墓』

切なすぎる愛の物語を描いた表題作「野菊の墓」を含めた作品集。そしてその「野菊の墓」がやばいです。

お互い惹かれ合いながらも、一緒になることを許されなかった少年少女の悲しい純愛小説。

野菊と竜胆に例えての、二人の遠回しの告白が、何とも健気で清らかで、切なく身に染みました。

自分の気持ちに素直にならなければならない、後悔しても遅いのだと痛感させられます。

大人になってしまったら、たぶんもう二度と経験することのない、ただ純粋な「好き」という感情。大切にして生きたいです。

正直、表紙絵や内容などからして、自分から積極的に手に取りに行くような作品ではないはずなのですが、やはりこの作品を手にとったことは運命なのでしょう。本当に読めてよかった。

「僕はもとから野菊がだい好き」「民さんは野菊のような人だ」…。千葉の農家を舞台に、かなわなかった初恋を不器用なほどストレートに描いた純愛名作『野菊の墓』。

26.百田 尚樹『影法師』

百田尚樹さんといえば『永遠の0 (講談社文庫)』も泣ける作品として有名ですが、この作品もぜひ。

時代小説、そして男の友情、愛の物語です。ミステリー小説のような「謎」を含め、「伏線」の張り巡らせ方と見事な回収、物語の構成も素晴らしいです。

時代物はあまり手に取ることが少ないもですが、この作品は読んで良かった!と純粋に思いました。

数ページ読んだだけで「あ、これ泣くやつだ」と確信しましたもん。

深い友情で結ばれたふたりに、切ないけど感動。読み終わって、改めてタイトルを見ると、またまたグッときます。

頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男がなぜ不遇の死を遂げたのか。

27.浅倉 卓弥『君の名残を』

タイムスリップ小説の名作でもあります。

学生たち3人が平安末期にタイムスリップしてしまう。

しかもただタイムスリップするのではなく、歴史上の重要な人物として入れ替わってしまうのです。

SF要素を取り入れた歴史感動小説、といった感じでしょうか。物語自体も凄く面白く、ラストはどうなってしまうのかと一気読み。

苛酷な運命の結末を知っていても、愛する人を守ろうとする友恵の意志の強さ、武蔵の心根の優しさ。

時代の流れに翻弄されながらも今を懸命に生きる人々の姿に、歴史に全く疎い私ですら感動。

そして、さすがに泣きました。こんな最後であってたまるかと思いました。タイトル「君の名残を」がまた胸にくる。

その日、彼らの時は歪んだ。目覚めるとそこは戦乱の前夜だった―。

28.梨木 香歩『西の魔女が死んだ』

言わずと知れた名作です。

魔女と呼ばれるおばあちゃんと、学校へ行かなくなった中学生の少女「まい」の物語。そんな魔女の元で「まい」は日々を過ごすわけですが、優しさと温かさが半端ないです。

また、作品に出てくる言葉がいちいち胸に突き刺さります。おばあちゃんがすごい良い事言うんです。ストーリーも綺麗だし美しいし、何回でも読みたい作品です。

人生、いつ最愛の人とお別れがくるか分からない。悔いがないよう常に言葉で伝えて生きていけたらいいのに、そんなことを出来る方は数少ないでしょう。

本当に自分に必要で、大事だと思うもの。自分の意思で選んで、愛すること。人間の感情、情報が入り乱れる現代だからこそ、大切にしていきたい考え方だと思えました。

日々、時間や仕事や「効率」というものに追われて生きている中で、忘れてしまいそうになる人間の心や愛情というものを、忘れずに大切に生きたい。そう思わせてくれる作品です。

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。

29.森 絵都『カラフル』

号泣、というのではなく、しんみり泣けるような心にしみる感動物語。簡単に言えば、温かくてめっちゃいい話。

人は誰かに支えられて生きているんだ、と再確認。

ストーリーもちょうど良いページ数で読みやすい。サクッと読めるのに深く考えさせられ、暖かな気持ちになる読後感なのです。ほんと好き。

児童書を書いてる方というだけあり読みやすい。でもただただ単純な文章と言うわけでもなくて、心に響く言葉もたくさんあります。

私は大人になってから読んだけれど、もし10代のときにこの本に出会っていたら、日常の見え方が違っていたかもしれないなあ。

もし一度でも「死にたい」なんて思ってしまった事がある方は、ぜひ読んでみてください。大切なものに気がつくはずです。

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。

30.ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』

メジャーすぎるとは思いますが、この作品をオススメしないわけにはいきません。

大人になっても幼児ほどの知能しかないチャーリイ・ゴードンは、頭が良くなる手術を受けてどんどん知能を上げていった。しかし、知能が上がった彼を待ち受けるものとは。

日本を含め各国で映像化されるのも納得の名作です。ラストへ向かうまでの葛藤と最後の数ページの彼の姿には涙が出ました。

半世紀以上前の作品ですが、名作が名作たる所以、古さを感じさせない作品となっております。

本当に人生に大きな影響を与える作品ですので、気になったら早めに読むことをオススメします。

私が読んだのは20代の頃でしたが、もっと早く読んでおけばよかった、と思いました。

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。

おわりに

名作、と言われている作品はやっぱりそう言われるだけの面白さと感動があります。有名な作品だからこそ、敬遠せずに手にとってみてください。

参考にしていただければ幸いです。

それでは、良い読書ライフを!(=゚ω゚)ノ

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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