今回は、絶対読んでおきたいアガサ・クリスティのおすすめ名作ミステリー小説をご紹介です!
おすすめさせていただきたいアガサ・クリスティの作品ですが、選ぶのが非常に難しかったです。
なにが難しいって、名作が多すぎるんですよ。もう全作品が名作といっていいくらい。だから全部読んでみてほしいってのが正直なところなわけですが。
さてさて、そんな名作の数々を生み出したクリスティですが、名前や本のタイトルは聞いたことがあるけど実は読んでいない、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。
クリスティの作品は多すぎてどれを読めばいいかわからず、「いつか読もう」と思いながらも時間だけが過ぎていってしまうものです。
そんなわけで今回は、数多くあるクリスティ作品のなかで、「まずはこれを読んでおけば間違いない!」という代表作を15作品に厳選しました。
ポワロ、ミス・マープル、バトル警視など様々なシリーズを含んでおります。
どうぞ参考にしていただければ幸いです。
1.『スタイルズ荘の怪事件』
何を隠そう、『スタイルズ荘の怪事件』こそがアガサ・クリスティのデビュー作。
そして探偵エルキュール・ポアロの初登場作品なのです。言わば「伝説の始まり」。これはもう読むしかないでしょう。
スタイルズ荘で起きた殺人事件をポアロが推理していく、という至ってシンプルな内容。
序盤で提示した手がかりを終盤でキレイに回収し、二転三転としながら意外な犯人へと導く、というお手本のようなミステリ小説です。
典型的なフーダニット、しかも登場人物も多くないのに、極上の面白さを誇ります。
なんというか、キャラクターに命が吹き込まれているんですよね。
デビュー作ながら、そのクオリティの高さは言うまでもありません。
他の作品と比べて地味だ、という意見もありますが、それがスタイルズ荘の良さです。
戦争で負傷したヘイスティングズは、旧友の招きにより、閑静なスタイルズ荘で静養することになった。しかし、彼はそこで、奇怪な事件にまきこまれることになる。
2.『ABC殺人事件』
クリスティ代表作の一つ。ミステリ小説をあまり読まない方でも、タイトルは聞いた事があるのではないでしょうか。
A・B・Cのアルファベット順に起こる殺人事件を描きます。もうこの設定だけでもワクワクしちゃうでしょう。
全く関係ないと思われる被害者たちの繋がりを探っていく〈ミッシング・リング〉ものの名作です。
ストーリーの組み立て、展開が面白くて、とにかく「この次どうなるの?!」と気になって仕方がなくなる。
それでいて、流れるようなテンポの良さでスルスルと読める。特に後半は止まらない。
そしてやっぱりどんでん返しが気持ち良くて。
また犯人の深層心理、犯罪者の精神状態の説明などもわかりやすいのも特徴。
今でこそトリックやABCなどは使い古されたネタに感じますが、これが約100年前に書かれたと思うと、なんと素晴らしいことだと思います。
注意することだ―ポアロのもとに届けられた挑戦状。その予告通り、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。
3.『アクロイド殺し』
アガサ・クリスティの小説の中で、というより、この世に存在するミステリー小説の中でも特に有名な超傑作。
初めて読んだ頃、ミステリー小説というものにあまり慣れていなかった私は声をあげてひっくり返りました。とにかく衝撃的。
終盤が近づくにつれどんどん面白くなってきて、クライマックスでは「もしかして…?」となって真相を突きつけられたときは気持ち良さすら感じました。
発表された当時は、あの衝撃に関して「フェアかアンフェアか」についての討論が繰り広げられていたそうです。
ただ一つ注意なのですが、あまり他のレビューなどを読んで予備知識をつけないようにしておきましょう。油断していると、思わぬところでネタバレをくらいます。
犯人やトリックがわかっていたって面白いのがクリスティ作品の魅力ですが、この作品に関しては絶対にネタバレに気をつけてください。
とにかく、何も言わずに読んでみましょう。
深夜の電話に駆けつけたシェパード医師が見たのは、村の名士アクロイド氏の変わり果てた姿。容疑者である氏の甥が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。
4.『ナイルに死す』
まるで旅行小説のような、エジプトに行ってみたくなるような雰囲気のある作品。
豪華客船で起きた殺人事件を、偶然乗り合わせたポアロが解決していきます。
クリスティ作品の中でもかなりの長編なのですが、飽きさせることなくドップリ読書の世界へ浸ることができます。
事件が起きるまでも長いんですけどね、そんなの関係なしに面白いからすごいです。
解決までの過程やトリックはもちろん、人間ドラマとしても魅せてくれるのがクリスティの好きなところ。
ミステリ云々の前に、ただただ小説として面白い。
沢山の登場人物それぞれの言動、小さな出来事を繋げてポアロが最後に見せてくれる真相には「なるほど!」と唸ってしまう。
美貌の資産家リネットと夫サイモンのハネムーンはナイル河をさかのぼる豪華客船の船上で暗転した。轟く一発の銃声。
5.『メソポタミヤの殺人』
メソポタミアで起きた事件にポアロが挑む。
物証の少ない中、容疑者の人間性に注目して推理を組み立てていくという典型的なポアロ作品。
今度こそこの人が犯人なんじゃない?!って思うんですがヤッパリ当たらない。
まいっちゃいますよ。このクリスティにまんまと踊らされている感じ、たまりません。思いっきりミスリードされてしまいました。
クリスティ作品には希少な、ある種の密室を扱っているのもポイント。
まさかの犯人はもちろん、そのトリックにも驚かされます。とりあえず「やられた!」と叫びたくなります。
いやあ、改めて読んでもこのトリック好きなんですよねえ。
しかし、ロマンスを絡めた殺人を描かせるとクリスティーの右に出るものはいませんね。
動機に重点をおいているので、人間ドラマとしても面白いんです。
分厚くて、登場人物の名前がややこしくなかなか覚えられなくても、スイスイ読めてしまうのは何故でしょう。
意外な犯人だろうとは分かっていても、真相に驚かされますね。
考古学者と再婚したルイーズの元に、死んだはずの先夫から脅迫状が舞いこんだ。さらにルイーズは寝室で奇怪な人物を目撃したと証言する。
6.『オリエント急行の殺人』
この作品を始めて読む人の中で、トリックを当てられる人はどれくらいいるのでしょうか?もしいるなら、本当に凄いと思います。
私が始めて読んだとき(中学3年生くらい)は、そのトリックと犯人に驚愕しすぎて「これやばいよ!やばすぎるよ!」と一人で悶絶したのを覚えています。
個人的には『アクロイド殺し』くらい衝撃でした。
それで興奮して友達にオススメしまくったんですけどね、全然読んでくれなくてがっくりしたのは良い思い出です。
あまりに有名なので何回も映像化されているので、結末を知ってしまっている方もいるとは思いますが、ぜひ原作も読んでみてください。本当に面白いです。
映像で見る『オリエント急行』と、文章で読む『オリエント急行』は別物です。映像化がダメだというのではなく、それぞれならではの良さがあるからです。
もしまだ映像版も見ていなく、結末も知らないというのなら、今すぐにでも読んでしまいましょう。
数日がかりでヨーロッパを走り抜ける豪華寝台列車、オリエント急行。さまざまな国の客が乗り合わせたその日の列車は、雪の中で立ち往生してしまう。
7.『そして誰もいなくなった』
永遠の傑作。
ミステリー小説が好きな人でこの作品を読んだことがない人はいないでしょう。
何か面白いミステリを読みたい、という人々がまず手に取る作品。オススメと言うより必読です。
国内ミステリー作品のなかでも『そして誰もいなくなった』をオマージュした作品がいくつもみられ、その影響力の凄さがわかります。
綾辻行人さんの『十角館の殺人 (講談社文庫)』や、西村京太郎さんの『殺しの双曲線 (講談社文庫)』などの傑作も『そして誰もいなくなった』をオマージュして書かれています。
孤島に集められた10人。降りかかる見立て殺人。その結末は……というわけですが、これもできる限りあらすじすら知らないで読んだ方が楽しめるでしょう。
完成された舞台設定、息つく暇も与えぬサスペンスな展開、クリスティならではの心理描写、最後に明かされる真相の衝撃、その全てが最高峰。
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。
8.『五匹の子豚』
16年前の事件の真相を知りたいと当事者の娘に依頼されたポアロが、事件と関わりがあった5人の発言から、真相を導いていきます。
有名な「名探偵ポアロ・シリーズ」でありながら、他の作品に比べて知名度は低め。なのに面白さは一級品!隠れ傑作というやつでしょうか。
言わゆる「回想の殺人」と呼ばれるジャンルの作品で、過去に起こった事件を当時関係者のわずかな証言や回想から解決していく、というもの。
で、その「回想の殺人」モノのミステリの中でこの『五匹の子豚』がずば抜けて面白いんです。その見事な構成と伏線にクリスティの凄さを改めて実感しました。
数あるポアロものの中でも最上位と言ってもいいでしょう。構成も上手いし、終わり方も好き。素晴らしいの一言です。
母は無実だったのです―娘の頼みにポアロの心は動いた。事件が起きたのは16年前。若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺、裁判の末に獄中死したのだ。
9.『杉の柩』
エリノアはロディーと婚約をしていたが、ロディーがメアリイに心を奪われてしまい婚約が解消してしまった。
しかしその後、エリノアが作った料理を食べてメアリイは死んでしまう。
どう考えても怪しいのはエノリアだが。
上質のミステリーとラブストーリーが見事に融合した一作です。どちらか一方だけでも作品として成立しそうな題材を、惜しげもなく使ってしまうところがさすがクリスティ。
丁寧な心理描写によってまるで恋愛小説を読んでいるかのような感覚に陥りながらも、しっかりミステリーも楽しめてしまうのです。
全体的に派手さはないんですが物語の展開が凄く良くって、特に後半、全く犯人像が掴めないまま進んでいく法廷でのシーンとか最高ですよね。
婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりをし、婚約は解消された。
10.『ホロー荘の殺人』
クリスティ自身が「ポアロを登場させない方が良かったのではないか」と語るラブミステリ。
読んでみるとなるほど。登場人物たちの魅力が凄まじく、恋愛小説として素晴らしすぎるゆえ、ポアロが邪魔なんじゃないかと思えなくもないんです。
確かにこの作品ではポアロの存在感は薄いです。
他のポアロシリーズのような、事件が起きて、ポアロが登場して、ズバッと推理を披露して解決!という黄金の流れではありません。
本書を「ミステリー小説」として読むと、他の作品の方が面白く感じられるでしょう。
しかしこれは「よくあるミステリー小説」ではなく「クリスティの小説」としてオススメなのです。
癖がある登場人物一人一人の描き方、心理描写が面白い。
恋愛の複雑さも巧妙に描かれていて、クリスティって本当にすごい作家だなと感じられます。
アンカテル卿の午餐に招かれたポアロは、少なからず不快になった。邸のプールの端で一人の男が血を流し、傍らにピストルを手にした女が虚ろな表情で立っていたのだ。
11.『火曜クラブ』
ポワロに次ぐ名探偵「ミス・マープル」をメインとした13編からなる短編集。
ミス・マープルものを読む上で欠かせない作品です。
甥のレイモンドを中心に様々な職業の人々がミス・マープルの家に集まり、過去に起こった事件を語ってそれぞれ推理をしあう「火曜クラブ」をでの出来事を描きます。いわゆる「安楽椅子探偵」モノ。
すぐに事件が起こりミス・マープルによりすぐに解決されていく。このテンポがいい。
ミス・マープル作品を読むなら、まずこの作品で彼女の魅力と素晴らしさを堪能してください。きっとファンになっていただけることでしょう。
そして「もっとマープルを読みたい!」と思っていただけた方も、「短編集はちょっと物足りないなあ」と思われた方も、続けて長編を読んでみてください。
甥のレイモンドを筆頭に、前警視総監や画家などさまざまな職業の人々がミス・マープルの家に集っていた。
12.『ポケットにライ麦を』
同じくミス・マープル。
童謡になぞらえての見立て殺人を描きます。
クリスティで見立て殺人といえば『そして誰もいなくなった』がまず思い浮かびますが、全くの別物として楽しめます。
マープル自身の登場は少ないものの、華麗なるストーリーの組み立ては文句の言いようがありません。
また、普段穏やかなマープルが激昂する希少な作品でもあります。
怪しい人だらけでどう繋がるのか見当つかないような中で、でも少しずつ明るみになる些細なことが最後にはバッチリ繋がる展開は本当に気持ちが良いです。
そしてなにより、この読後感。犯人当てもさる事ながら、非常に感情に訴えかけるものになっています。
この作品を読んでミス・マープルのファンになった、という声も多いです。
投資信託会社社長の毒殺事件を皮切りにフォテスキュー家で起こった三つの殺人事件。その中に、ミス・マープルが仕込んだ若いメイドが、洗濯バサミで鼻を挟まれた絞殺死体として発見された事件があった。
13.『予告殺人』
とある朝、新聞に載った殺人予告。誰かのいたずらか?と思いきや本当に殺人が起きてしまう。
まず謎が魅力的。序盤で一気に心を鷲掴みにされます。そしてストーリーが面白い。
さらに意外な犯人の、まさかの「動機」。あのどんでん返しはお見事です。
犯人はなんとなく予想がついたのですが、あの動機は全くわかりませんでした。
再読してみると、伏線の貼り方が絶妙すぎて、ついニヤリとしてしまいます。こんなのわかるわけないでしょう。
クリスティの良いところはミステリだけでなく、人物と背景にあるドラマをおろそかにしないところ。
ミステリでは疎かになりがちなところがしっかり描かれているのでしっかり読ませてくれます。
江戸川乱歩が褒め称え、多くの人からミス・マープルものの最高傑作と名高い作品です。
その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声を上げた。「殺人お知らせ申しあげます。12月29日金曜日、午後6時30分より…」いたずらか?悪ふざけか?しかしそれは正真正銘の殺人予告だった。
14.『ゼロ時間へ』
クリスティの天才さを再認識させられる一作。
クリスティお馴染みの名探偵「ポワロ」も「ミス・マープル」も登場しませんが、やはり外せない名作です。
事件が起きてから解決に至るまでの構成とストーリー展開は圧巻で、途中で読む手を止めるのは不可能でしょう。
発想が斬新といいますか、当たり前ですがこんなのクリスティにしか書けません。あらゆるエピソードが「ゼロ時間」へと収束していく様は芸術品のよう。
ポアロとはまた違った人間味のあるバトル警視も良いし、相変わらず随所に散りばめられた伏線の回収も神がかっています。
これは続けて2度読みましょう。すると1回目にはわからなかったモノが全て見えて、思わずため息が漏れてしまうのです。
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった
15.『春にして君を離れ』
この作品はミステリーではありません。しかし、とてつもなく怖い。ではホラーなのか?いや、ホラーでもありません。
詳しくは書けませんが、クリスティ作品を読む上で絶対に外すことのできない名作です。
これを読むと、クリスティがただのミステリ作家ではないことがよくわかります。
「ミステリー小説を読みたいんだ!」という方には向きません。
でも「クリスティの小説を読みたいんだ」という方には問答無用でオススメさせていただきます。
初めて読んだ中学生の頃、ミステリどハマりしていた私はこの作品の面白さがよくわかりませんでした。
だってミステリではないのですから。正直、退屈だとすら思った。
でも時間を開けて再読した時に、初めてこの作品の凄さがわかったのです。
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。
が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…
おわりに
さて今回なんとか15作品に絞ったわけですが、他にも面白い作品はめちゃくちゃあります。驚くほどにあります。
ご紹介させていただいた作品を楽しめたなら、ぜひ他の作品も片っぱしから読んでみてください。
たくさんありすぎてなにから読めばいいかわからない!という時に参考にしていただけば幸いです。