新着記事
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国内ミステリー小説
島田荘司『異邦の騎士』- 魂を救う物語は、探偵小説の顔をしてやって来る【傑作小説エッセイ】
島田荘司の『異邦の騎士』を初めて読んだとき、自分がどんな気持ちになったのか、いまだに言葉にしづらい部分がある。 「泣けるミステリ」なんて安直な言葉は使いたくない。けれど、これは間違いなく心を揺さぶられた読書体験だった。そう簡単に忘れられる... -
読書日記
恒川光太郎20年目の異端作『ジャガー・ワールド』- 地獄の王国で、僕らは「生贄」だった【読書日記】
恒川光太郎と聞いてまず思い浮かぶのは、『夜市』のあの幻想的な切なさだとか、『秋の牢獄』の静かな異界感とか、そういう「短めだけど濃いやつ」だと思う。 私もそうだった。「恒川光太郎=短編」と、脳に刷り込まれていた。 だからだ。この『ジャガー・... -
読書日記
『悪魔情報』- あの頃のインターネットに戻りたいあなたへ。オモコロ発、笑って震えるネット怪談の新境地【読書日記】
インターネット怪談と聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。 某まとめブログ? 2ちゃんの怖い話? あるいは、深夜にYouTubeを漁ってたどり着いた変な都市伝説動画かもしれない。 私にとってそれは、小学生の頃に見てしまった「洒落にならない話まとめス... -
読書日記
『ナイフ投げ師』- 濃すぎる傑作短編集。ミルハウザーは、なぜこんなに怖くて、美しいのか【読書日記】
スティーヴン・ミルハウザーの本を初めて読んだとき、「絶対ハマるやつだ」と直感した。現実と幻想の境界を曖昧にし、緻密な筆致で美と不安を同居させる作風。その代表とも言える短編集が、この『ナイフ投げ師』である。 収録作は12編。それぞれがまるで異... -
読書日記
『妹が死んだ時の海亀』- 何が怖いって、説明できないことだ【読書日記】
「怖くないのに、不穏で気になる」 そんな読後感を、何度も何度も味わった。 朱雀門出の『妹が死んだ時の海亀』は、「怪談」として棚に並んでいながら、私たちがよく知る恐怖体験とはちょっとばかり毛色が違う。いや、「ちょっと」なんてものではないかも... -
国内ミステリー小説
【二階堂黎人】二階堂蘭子シリーズ入門ガイド- フェアプレイの快感、論理の暴力、ここに極まれり【読む順番】
「これでもか」と言わんばかりに詰め込まれた不可能犯罪。 山奥の村、古城、病院、雪に閉ざされた孤島……そんなクラシックな舞台で連発される、殺人、連続殺人、そして時にはそれっぽくないものまで殺される。 そう、それが二階堂黎人(にかいどう れいと)... -
読書日記
『拷問依存症』- 「イヤ」じゃ済まない、おぞましさの向こう側【読書日記】
ミステリ好きなら一度は出会ってしまう、イヤミスというジャンル。 読み終わったあとに気分が悪くなる、あれだ。 でも櫛木理宇(くしき りう)の『拷問依存症』は、その中でもかなり別格だ。これはもう、イヤを通り越しておぞましいに達している。「おぞミ... -
海外ミステリー小説
2025年10月に読んで特に面白かった本15冊 – 『本好きに捧げる英国ミステリ傑作選』ほか
2025年10月に読んだ本の中から、特にこれは面白い!と思った15冊を紹介するぞ。 ・2025年9月に読んで特に面白かった本15冊 – アンソニー・ホロヴィッツ『マーブル館殺人事件』ほか ・2025年8月に読んで特に面白かった本17冊 – パーシヴァル・エヴェレット... -
読書日記
『新・黄色い部屋』- 読者への挑戦状、再び。日本の犯人当て小説黄金時代へようこそ【読書日記】
まず、書名からしてミステリ好きにはたまらない。 『新・黄色い部屋』というタイトルを見た瞬間、反射的に「ガストン・ルルーか!」と叫んだ人も多いはずだ。 そう、あの『黄色い部屋の謎』へのオマージュである。ミステリ史における「密室」という概念を... -
読書日記
有栖川有栖『濱地健三郎の奇かる事件簿』- この探偵は死者の声を聞き、読者と納得をつくる【読書日記】
探偵という職業には、常に二つの顔がある。 冷徹な論理の使い手としての顔と、人の痛みに寄り添うセラピストとしての顔。濱地健三郎は、その両方を兼ね備えている珍しい探偵だ。 東京・南新宿の裏通りにある小さな事務所。ここにやって来る依頼人は、みん...
