新着記事
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【自作ショートショート No.26】 『記憶を提供します』
古城のような邸宅だった。 黄昏時の淡い光に黒く浮かび上がったそれは、否応のない威圧感を放っていた。 ヒロコは息をのんでそれを見上げ、やがて意を決して重々しい扉を叩いた。 老婆が姿を現し、黙ってヒロコを邸内に招き入れた。 長く暗い廊下を老婆の... -
【自作ショートショート No.25】『致命的失敗』
博士は激怒した。 愛する妻の浮気現場を目撃してしまったのだった。 それも浮気相手は博士の助手ではないか。信頼する二人の裏切りに、博士の怒りは頂点に達した。 「く、くそっ、あいつらめ、ワシを裏切ってこのままで済むと思うなよ。必ず報いを受けさせ... -
【自作ショートショート No.24】『天気の神様』
あるところに、一人の少年がいた。 ごく普通の家庭に産まれ、ごく平凡に育っていったその少年は、ある日、自分がとある能力を持っていることに気づいた。 それは、自分の好きなように天気を操る力。 この少年が力を自覚したのは、小学校高学年になったころ... -
【自作ショートショート No.23】『ある商品』
ピンポーン。 チャイムの音が鳴り響き、家事に勤しんできた主婦は玄関に向かう。 玄関のドアについたのぞき穴から外を覗くと、そこには紺色のスーツを着たセールスマンと思しき男が立っていた。 「訪問販売かしら?」 主婦は出るかどうか迷っていた。 ピン... -
【自作ショートショート No.22】『前借り』
「くそっ!また負けちまった……」 悲鳴と歓声がひろがる競馬場では、中年の男が、悔しそうに馬券をクシャっと握りつぶしていた。 「うーん、俺も負けだ。八番の馬がもう少しがんばってくれたらよかったんだけどな」 「けっ、お前はさっきのレースで大勝ちし... -
【自作ショートショート No.21】『完璧な家』
街角にある家が売り出されていた。 なんでもその家は、近未来の技術を使った実験的な建物であるとのことだった。 そして『常に完璧な状態に保たれる非常に優れた家』というのが謳い文句であった。 どのようにして完璧な状態を保つのかというと、家の中を機... -
凪良ゆう『汝、星のごとく』- 母親の呪縛に囚われた二人の純愛と試練とは
瀬戸内海の島で生まれ育った暁海(あきみ)は、夫の不倫に傷付いて立ち直れないでいる母親を支えながら高校に通っていた。 ある時、島に同い年の男の子・櫂(かい)が引っ越してきた。 櫂の母親は男性にひどく入れ込むタイプで、島に来たのも京都で出会っ... -
逸木裕『五つの季節に探偵は』- 隠された本性を暴きたがる探偵の物語
女子高生のみどりは、父親が私立探偵だという理由で、クラスメートから何かと厄介事を頼まれている。 ある日いじめに悩んでいる怜に、英語教師の清田を調べ、弱みを握るよう依頼された。 いじめの主犯である好美が清田を慕っているらしく、清田を利用すれ... -
【自作ショートショート No.20】『願いの代償』
ある男が魔神の出てくるランプを見つけた。 男が早速ランプを擦ると、モクモクと煙が立ち上って魔人が飛び出してきた。 「お前の願いを叶えてやろう」 出て来た魔人は男に向かってそう言った。 「叶えられる願いはいくつだ?」 「いくつでも構わない」 男... -
【自作ショートショート No.19】 『始まりと終わり』
いくつもの惑星が浮かぶ銀河、その暗黒の中を一隻の宇宙船が航行している。 その周りには無数の小さな隕石が行き交っていたが、自動航行システムのおかげで航行には何の危険もなかった。 宇宙船を操縦するのは二体の宇宙人。この二体に性別はないが、ここ...