クローズドサークルミステリー小説おすすめ50選

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クローズド・サークル(closed circle)とは、ミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。

過去の代表例から、「嵐の孤島もの」「吹雪の山荘もの」「陸の孤島もの」「客船もの」「列車もの」などの様に分類されることもある。

クローズド・サークルは密室の一種とされることも多いが、密室と非密室の境界を問題とする不可能犯罪ではなく、ドラマを室内に限定する密室劇である。

ウィキペディア(Wikipedia)より引用

クローズドサークルって最高だ……!

そうは思いませんか。

ただクローズド・サークルといっても色々あり、人為的なクローズド・サークルなのか、災害などによるクローズド・サークルなのか、「嵐の孤島もの」「吹雪の山荘もの」「陸の孤島もの」「客船もの」「列車もの」なのか、その種類は様々。

そして私はこのクローズド・サークルが大好きなんです。

そこで今回は、本当に面白いクローズド・サークルミステリ小説を50作品選ばせていただきました。

どれも面白いものばかりで、クローズド・サークルがお好きな方にはたまらないものとなっているはずです。

ぜひ参考にしていただければ幸いです。

目次

1.知念実希人『硝子の塔の殺人』

地上11階、地下1階の巨大かつ唯一無二の美しさを誇る硝子の塔で次々と悲劇が繰り返される。

雪深き森の中で燦然と輝く塔の中では、謎に包まれた遺体が発見される。

霊能力者、料理人、刑事、小説家といった一癖も二癖もあるゲスト全員が容疑者であり、次の被疑者。犯人は誰なのか?

予想の遥か上をいく展開と伏線の数々にあなたは驚愕する!

個性的なゲストのそれぞれの思惑

本書では、性格も職業もバラバラのゲストが登場します。

それぞれが曲者であり、それぞれに考えがあり、その思惑が物語を謎に包んでいく。

1つの真実を隠すかの如く、それぞれが暗躍するため、最後まで全貌を掴み切れません。

しかし、読み終わると、「そういう事だったのか!」と強制的に納得してしまう話作りが圧倒的にうまい作品となっています。

500ページとは思わせない爽快感

本書は500ページを超える長作です。

しかし、長作ならではの中だるみがなく、巧みな話づくりと感情移入してしまうゲストの登場で一気に読み終えられる爽快感に溢れています。

完璧なまでに計算された緻密さと繊細さは読者を一気読みへと誘うでしょう。

重厚感はありながらも胃もたれしない展開は驚愕の一言。

ミステリを愛するすべての人に読んでいただきたい作品です。

2.今村昌弘『屍人荘の殺人』

神紅大学の名探偵・明智恭介と優秀な助手・羽村譲は、ひょんな事で参加した映研の夏合宿で訪れたペンション紫湛荘で想像にもしなかった連続殺人事件に巻き込まれる。

同じ大学に通うもう一人の名探偵・剣崎比留子とともに事件の解決に挑むも、事件は彼らの想像を遥かに上回る方向に!

彼らは無事に事件を解決できるのか!?

可憐な名探偵、剣崎比留子の推理が冴え渡る!

本書では主人公・明智恭介&羽村譲コンビの魅力は推理するだけではありません。

誰にも負けない情熱から空回り気味の明智の人間らしさとそれを支える羽村のキャラ立ちが際立っています。

ミステリーの重さや恐怖をかき消す程の塩梅が絶妙で、剣崎比留子の変人ぶりがアクセントになって物語の幅を広げているのです。

本格ミステリーと奇想天外が見事にマッチした展開づくり

本格ミステリーとしての王道を貫きながらも、これまでのミステリーにはなかった奇想天外さやトリッキーな殺害方法は読む人の目を離しません。

王道ミステリーを読んでいるのに、別のジャンルを読んでいるのかと錯覚させる程の巧みさは圧巻。

ミステリーを読み尽くした人や初めての方にも楽しめる一作となっています。

3.今村昌弘『魔眼の匣の殺人』

「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」。

人里離れた施設の孤独な予言者の予言が、羽村譲と剣崎比留子を恐怖の底に貶める。

そして、魔眼の匣に訪れた人が予言通り死んでいく。

謎の予知能力を持つ女子高生も登場し、事件は加速化する。

外界とのつながりだった橋が燃え落ちた中、羽村と剣崎は無事生き残ることができるのか!?

感嘆と圧巻の謎解きワールドが全開

正当なミステリーかつ推理小説の教科書といえる程の読みやすさは前作以上!

魔眼の匣・予言者・女子高生・予言者のセリフ、全てが物語を解決するヒントになっているため、読み飛ばしは厳禁。

緻密な設定と展開はこれまでにない程の没入体験を引き起こします。

また、羽村の剣崎とのコンビは明智とはまた違った味を出して、前作では味わえない魅力をもたらしています。

予言&予知能力の魅力を余すことなく使われる巧みさ

普通の殺人事件に予言と予知能力というスパイスを加える事で斬新さを演出しています。

王道ミステリーなのに読んでいてSFっぽさを感じられるのは、予言&予知能力の魅力を引き出しているからこそ。

一見、繋がらないと思える展開が最後には綺麗にまとまるなど、ミステリーのさらなる魅力を引き出した一作となっています。

4.今村昌弘『兇人邸の殺人』

地方で「生きる廃墟」として人気を博すテーマパーク内には異様な建物「兜人邸」が異様な空気を漂わせていた。

神紅大学の羽村と剣崎は依頼主とともに兜人邸に侵入する。

しかし、そこには、恐ろしい殺戮と異様の存在が二人を待ち受けていた。

同行者が次々と首のない死体となる中、二人は無事に謎を解いて生き延びることができるのか?!

絶妙な残忍さが快感をもたらす

本書では、これまでのシリーズよりも残忍さが増しています。

廃墟の恐怖さやテーマパークの狭苦しさ、迫りくる殺人鬼が見事に融合して読み応えたっぷりの重厚感を生み出します。

話が進むにつれて、読む手が震えるのは緻密な残忍さによるもの。

怖いけれど次のページを読みたいと思わせる塩梅さは他では味わえない快感です。

残忍さと勇敢さのコントラスト

本書では、これまでのシリーズと比較しても各キャラの心理描写が細かく描かれています。

そのため、事件に立ち向かうキャラの勇敢さが鮮明に伝わってきます。

緊張と恐怖が迫る中、それぞれが前に立ち向かう姿は闇の中でも輝く光のよう。

だからこそ、キャラに感情移入してしまい、ページをめくる手が止まらなってしまうのです。

5.方丈 貴恵『時空旅行者の砂時計』

主人公・加茂には重い肺炎を患っている妻がいた。

妻の祖先である“竜泉家”には過去に一族のほとんどが亡くなるような惨劇が襲いかかり、妻を救うためにはその惨劇の真相を解明する必要があるのだと言う。

謎の声にいざなわれ1960年代へとタイムスリップすることにした加茂は、真実を見つけ出し妻を救うことができるのか―?

SF設定を盛り込んだドラマ性のあるミステリもの

主人公・加茂が妻を救うため過去へ行くことを選択するタイムトラベルものとなっている本作。

本格ミステリとも言える要素にタイムトラベルをミックスするという発想がまず面白いですよね。

一歩間違えば破綻してしまいそうな話でもありますが、作者の力量によりしっかりとしたミステリとして楽しめるようになっています。

また、本作は登場人物が多いですが、様々な図が用いられているためワクワクしながら読み進めることができるでしょう。

混乱してしまいそうな部分も図があることにより読者が楽しめるよう工夫されている印象です。

ミステリのトリックはもちろん、最後の最後、主人公の決断まで見どころは満載となっています。

ページをめくる手が止まらない、第29回鮎川哲也賞受賞作品。必見です。

6.方丈 貴恵『孤島の来訪者』

テレビ局のADとなった竜泉佑樹。

彼は殺された幼馴染みの復讐を誓い、無人島のロケに参加することにした。

復讐のターゲットとなる人間は3人。

いずれもロケに参加しているメンバーだが、あろうことかそのうちの1人が殺されてしまう事件が発生する。

しかもその事件には人ではない“何か”が関与していた―!?

疑心暗鬼の中展開される予測不能な特殊設定ミステリ

本作は幼馴染みの復讐のためにテレビ局のADとなり無人島ロケに参加するところから物語が始まります。

一見普通のミステリものですが、本作の場合はここからが一味違った作品となっています。

復讐のターゲットとなる人物のうち1人が殺されてしまいますが、なんとその犯行には人出はない未確認生物が絡んでいるというもの。

かなりの特殊設定ではありますが、だからこそ先の読めない展開にワクワクさせられること間違いなしでしょう。

特殊設定だとなんでもありになりがちなことも懸念されますが、本作には限定的な要素もあることからミステリとしても非常に完成度の高いものとなっています。

斜め上の展開や二転三転する結末など複雑で読み応えたっぷりの作品となっていますので、最後まで気を抜かないでください。

7.綾辻行人『十角館の殺人』

大学ミステリ研究会の7人は、とある九州の孤島を訪れる。

そこは半年前、凄惨な四重殺人が起きた場所だった。

果たして島に建てられている奇妙な建物「十角館」で待ち受ける罠から逃げ延びることはできるのか?

一方で島に行かなかったミステリ研究会員の元に届けられた脅迫めいた手紙の謎とは一体―?

鮮烈なトリックに魅せられる館ミステリもの

十角館という館を舞台に展開されるミステリとなっている本作ですが、なんといってもその見どころは鮮烈なトリックにあります。

正統派でありながらけっして読者に先を読ませないようなトリックの数々はまさに「素晴らしい」の一言でしょう。

ミステリファンに絶賛されることが多いのも頷けます。

また、ミステリ作品はトリックや犯人が明かされた時点で、見せ場は終わった印象になる作品も多いですが、この作品はそうではありません。

犯人が明かされてからも疑問符はなくならず、予測不能な結末を確かめるため思わずページを捲り続けてしまうような仕上がりになっています。

ミステリファンはもちろん、あまりミステリを嗜んだことがない方にもおすすめできるような魅力的な作品ですので、ぜひチェックしておきましょう。

8.綾辻行人『迷路館の殺人』

迷路館と呼ばれる奇怪な館に集結した4人の作家。

その館を舞台に4人は推理小説の競作を行いはじめる。

しかしその競作を始めた途端、現実の世界において惨劇がもたらされる。

完全な密室である地下の館で発生した連続殺人事件、その恐怖の先にある結末とは一体―?

最後まで結末が読めない本格長編ミステリ

4人の作家が推理小説の競作を行うものの、実際に殺人が起きてしまい恐怖に陥れられてしまう本作。

密室やダイイングメッセージなど、推理小説の醍醐味とも言える要素がふんだんに盛り込まれた作品です。

テンポ感もよくサクサク読んでいけるのも魅力的ですね。

もちろんミステリに用いられているトリックなども素晴らしいのですが、なんと言っても本作は「エピローグ」が見どころでしょう。

キレイに収まっている作品の衝撃のエピローグは、読者に凄まじい刺激を与えてくれること間違いなしです。

またこんな作品を読みたいと思わせるような力さえ感じますし、初見の方には注意深く物語を読むことをおすすめします。

最後に全てを理解できたときのすっきり感はこの作品ならではのものとも言えますので、興味のある方は1度読んでみてください。

9.綾辻行人『時計館の殺人』

少女の亡霊が徘徊すると言われている時計館。

そこは時計が108個も置かれている不気味な建物だった。

そんな時計館を訪れたのはとある9人の男女。

幽霊検証のために集まったものたちであったが、1人、また1人と密室で殺されてしまう。

果たして殺人から逃れ生き残るものはいるのだろうか?

悪夢の3日間が幕を開ける―!

圧巻の雰囲気を感じさせるクローズド・サークルミステリ

時計館というなんとも不気味な館を舞台にしたクローズド・サークルミステリとなっている本作ですが、まずこの時計館に関する描写が圧巻です。

恐ろしさを感じさせる雰囲気と目に浮かぶような内部の様子にゾッとすること間違いなしでしょう。

時計館の住人や周囲の人々の独特な雰囲気も相まって、本作ならではのおぞましい雰囲気が造りあげられています。

そんな「時計館の殺人」は作者の見せ方の上手さも際立つ逸品。

何が起きているのかドキドキハラハラしながら物語の世界に引き込まれていくでしょう。

館シリーズ最高峰の美しいクライマックスシーンにも注目です。

犯人、そして殺人のトリック、どれをとっても本格ミステリの名に恥じない、日本推理作家協会賞受賞作品となっています。

10.綾辻行人『霧越邸殺人事件』

季節外れの猛吹雪で遭難してしまった劇団員の8人。

道に迷い困り果てる中、突如出現した「霧越邸」という洋館に泊めてもらえることになった。

助かったと安堵する8人であったが、そこに襲いかかるのは童謡になぞらえた“死”だった―。

逃げ場のない吹雪の中の密室。

おそろしき連続殺人犯の正体は誰なのか―?

王道本格ミステリ好き必見の見立て殺人もの

雪で館に閉じ込められたところから始まる見立て殺人を描いた本作。

とある童謡の歌詞になぞらえた殺人や遮断された外部との連絡手段、関係者の謎めいた発言など序盤から本格ミステリとしての風格を感じさせる展開が魅力的です。

館そのものにも不思議な設定が付いているため、グッと引き込まれる作品となっているでしょう。

また、王道本格ミステリを楽しむ上で欠かせない伏線や意表を突く真相は大きな見どころの1つ。

読者の予想を裏切るような展開が何度も用意されているため退屈することもありません。

霧越邸という舞台そのものが魅力的ですから、事件以外の部分も楽しむことができるようになっています。

味わい深いラストまでじっくりと堪能したくなるような、幻想的な雰囲気を感じさせる1冊をぜひ自分の目で確かめてみてください。

11.斜線堂 有紀『楽園とは探偵の不在なり』

2人以上の人間を殺すと天使によって地獄に落とされる―。

そんな世界で青岸焦は探偵業を営んでいた。

ある日青岸は大富豪である常木王凱に誘われて天使が集まる常世島を訪れる。

しかしそこで待っていたのは、起こるはずのない連続殺人だった。

2人以上殺すと即座に地獄に落ちる世界で、殺人を続けられるのはなぜ―?

特殊設定のもと描かれるひと味変わったミステリ

舞台は2人以上の人間を殺すと不気味な“天使”によって地獄に落とされるという世界。

この非常にユニークで特殊な設定が物語を盛り上げてくれます。

ある種の“縛り”とも言えるこの設定のもとでは連続殺人は起こりえないのですが、次々と殺人が実行されるため「なぜ可能なのか?」といった疑問に探偵が立ち向かいます。

普通の推理小説でも犯人やトリックは楽しむポイントですが、本作ではさらに“ルールをかい潜る方法とは?”という視点でも楽しめるようになっています。

また、1人であれば殺しても大丈夫、どうせ地獄に落ちるのであれば多く殺した方がいい、などいった倫理観の破綻が及ぼす影響なども見どころの1つと言えるでしょう。

特殊設定ものが好きな人必見の作品となっています。

12.白井 智之『そして誰も死ななかった』

その館は絶海の孤島に経つなんとも不気味な建物だった。

中には泥人形が並べられており、招待主の姿はない。

5人の推理作家は覆面作家・天城菖蒲から天城館へ招待される。

不穏な空気のなか次々と不可解な死を遂げる作家であったが、本当に事件の幕が上がるのはここからであった―。

理解を超える発想・展開の連続する本格ミステリ

招かれた館で次々と推理作家が死を遂げていくミステリの本作。

まず注目すべきはそのタイトルですよね。

死を遂げているにもかかわらず「そして誰も死ななかった」。

一体これはどういう意味なのか?

このタイトルの意味が分かったとき、すっきりとした喜びを味わえるでしょう。

そして本編の見どころとしてはやはり推理作家が繰り広げる各々の推理があげられます。

説得力のある推理が次々と繰り広げられるため、読者としても真相がどれだか予想が付かない展開が続きます。

いわゆる推理合戦のようなものを堪能できる仕様になっていますので、終盤の鮮やかな解決まで興味深く読んでいくことができるでしょう。

トリック、伏線、意表を突く展開など、見事なまでの本格ミステリに独特の薄気味悪い雰囲気が合わさった傑作をぜひ堪能してみてください。

13.周木律『眼球堂の殺人』

天才建築家と名高い驫木煬が立てた巨大な私邸「眼球堂」。

そこに招待されたのは各界の著名人と数学者の十和田只人であった。

ルポライターの陸奥藍子も十和田を追い眼球堂へと赴くが、そこで目にしたのは奇想天外な状況での変死体。

連続殺人が発生する狂気的な状況のなか、十和田と陸奥は真実の証明へと挑む―!

ひねりが効いたトリックが魅力の本格ミステリ

眼球館という特殊な建造物を舞台に繰り広げられるクローズドサークルミステリとなっている本作。

なんと言っても舞台となっているユニークな建造物がかなり活かされているのが魅力的でしょう。

館内の図面なども出てくるため分かりづらさは感じにくく、読者も楽しんで読み進めることができます。

また、用いられているトリックも見どころの1つ。

謎を解いていくプロセスも含め、のめり込んでしまうような面白さがあります。

ラストの真相も中々ひねりの効いたものになっているので、エピローグまで目が離せません。

事件そのものは狂気的で奇怪な雰囲気を漂わせますが、ミステリとしてはその面白さを存分に堪能できる作品です。

第47回メフィスト賞も受賞している本格ミステリをぜひ味わってみてください。

14.阿津川辰海『紅蓮館の殺人』

高校の合宿を抜け出した田所と葛城。

その目的は山中に隠棲している文豪に会うことだった。

しかしその最中、落雷による山火事に遭遇。

2人は助けを待つうちに館に住むつばさと仲良くなるものの、翌朝彼女は吊り天井で圧死した状態で発見されてしまう。

全焼までの限られた時間のなか、真相に辿り着くことはできるのか―?

生存と真実の選択を迫られるクローズドサークルもの

本作は男子高校生2人が避難不可能な状況で殺人事件に挑むストーリーとなっていますが、なんといっても注目すべきは生存を優先するか、真実を優先するかという選択を迫られるシチュエーションです。

親しくなった女性の死の真相を解き明かしたいという思いがある一方、館が全焼してしまうまでの時間も限られているという状況では、ゆっくりと真相を解明している時間はありません。

そんなタイムリミットが迫る状況のなか、大がかりなトリックに挑む高校生達の姿は必見です。

また、登場人物も曲者揃いで楽しめますし、抜群のストーリー展開で最後まで目が離せません。

特に後半は怒濤の展開に読む手が止まらないでしょう。

数々のランキングにも名を連ねた注目作品となっています。

15.阿津川辰海『蒼海館の殺人』

高校生探偵としての自信をなくし、自宅に引きこもっていた葛城輝義。

そんな葛城のことを心配し、友人である田所は三谷とともに葛城の元を訪ねることにした。

葛城の自宅は「青海館」と呼ばれ、そこに住む家族はいずれも名士ばかりの有能一家。

明るく家族に出迎えられるものの、突如として水害と殺人が2人に襲いかかる―!

事件と災害に翻弄される舞台設定を活かしたミステリ

本作は友人の元へ訪ねた際、水害で孤立し殺人事件に巻き込まれてしまうところから物語が始まります。

自分達ではどうしようもない災害によりクローズドサークルのような状況が実現され、そこから事件に入っていくまでの流れも見事なので読者としても話に入り込んでいきやすいでしょう。

また、本作はミステリに用いられているトリックも存分に楽しめるものとなっていますが、それ以外の描写やストーリーがとても上手くまとまっているのも印象的です。

主役となる高校生はもちろん、お金持ち家族の裏と表など人物描写も秀逸。

全体的に完成度の高さが伺える1冊となっています。

2021本格ミステリ・ベスト10国内ランキングで1位を獲得するなど数多くのランキングにランクインしている傑作ですので、ぜひチェックしてみてください。

16.西村京太郎『殺しの双曲線』

東京都内に住む男女6人の元へと届いた招待状。

差出人は不明だが、いずれも東北の山荘へ招待するというものだった。

半信半疑で出かけつつも楽しんでいた彼らだが、殺人の発生により空気は一変。

そして同じ頃、都内では双子を利用した強盗が繰り返されていて―?

双子トリックを明言する挑戦的なミステリ

双子トリックは予め知らせておかなければアンフェアであるとのことから、本作では冒頭で双子トリックを利用したものであることが明言されます。

トリックを解明していくミステリ作品において、このようなある種のネタバレからスタートする作品も珍しいですよね。

しかし何より素晴らしいのは、このような宣言から始まるにも関わらずトリックの詳細や先の展開が予測できない点でしょう。

まさに考え抜かれたミステリであり、読者が作品を楽しむ余地が存分にあります。

本作はクリスティの名作、「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品であり、作者ならではの作風で終始楽しめるのも魅力的です。

綿密に作り込まれた2つの事件がどう絡まりそのような真相に行き着くのか、ぜひその目で確かめてみてください。

17.有栖川 有栖『月光ゲーム』

夏休み、合宿のためキャンプ場を訪れた英都大学推理小説研究会のメンバー。

しかし火山の噴火により、偶然一緒になった3グループは突如として孤島に閉じ込められてしまう。

最悪とも言える状況のなか、事態はさらに悪化していく。

出没した殺人鬼により、キャンプ仲間が次々と殺されていってしまうのだ―。

緊迫感あるクローズドサークルミステリ

孤立したキャンプ場での殺人事件に学生であるアリスが挑む内容となっている本作。

大学生同士の楽しい合宿の空気は火山の噴火を合図に一変。

迫る自然災害に追い詰められている状況のみならず、殺人事件まで起きてしまうことで物語は一気に緊迫感を増していきます。

読者としてもハラハラしてしまいますし、雰囲気の見せ方がとても上手いですね。

また、内容としては連続殺人ものとなっていますが、 やはりポイントは残されたダイイングメッセージです。

このような要素はいかにもミステリといった感じでワクワクするのではないでしょうか。

もちろん全体を通してミステリとしての完成度も高く、 犯人を推理・考察していくのが好きな方にはとてもおすすめできる作品です。

まっすぐなストーリーに青春も感じられる完成度の高い1冊となっています。

18.有栖川 有栖『孤島パズル』

アリスと江上部長は英都大学推理小説研究会初の女性メンバー・マリアとともに南海の孤島へ赴く。

その目的はモアイ像のパズルを解き、時価数億円のダイヤを手に入れることだった。

しかし嵐の夜、密室殺人事件が発生。

連絡船が再来するまでまだ数日あるという状況のなか、孤島に滞在する人々を悲劇が襲う―。

島を舞台に繰り広げられる美しくも切ないミステリ

モアイ像が点在する島を舞台に繰り広げられる本作。

時価数億円にもなるお宝を探すという楽しい目的から入る序盤ですが、嵐の夜、不慮の死、など徐々にその様相が変化していきます。

事件を取り巻く環境など、いかにもミステリといった怪しさ漂う雰囲気が魅力的ですね。

また、トリックや謎解きにおいては非常にキレイですっきりとしているのは有栖川さんの良さでしょう。

作中には読者への挑戦も明示されていますので、ぜひその辺りも楽しんでください。

もちろん本作はミステリ要素だけでなく登場人物たちのストーリーも魅力的。

若さを感じさせる青春模様にグッとくる人も多いでしょう。

どことなく時代を感じさせるような、美しくもせつなさを残すようなお話をぜひ堪能してみてください。

19.有栖川 有栖『双頭の悪魔』

山中には芸術家たちが創作に没頭する過疎地・木更村があった。

そんな村に迷い込んだマリアから連絡が途絶えてしまう。

マリアの父に頼まれ英都大学推理研のメンバーは村へ潜入を図ることにするが、豪雨で川の両側に分断。

さらには双方で殺人事件まで発生し―?

珍しい舞台装置によるダブル殺人事件

連絡が途絶えたマリアを探しにいった先で2つの事件に巻き込まれてしまう本作は、その舞台装置や設定により序盤から引き込まれます。

川の両サイドで起こる2つの事件に繋がりはあるのか?ないのか?といった疑問や、その舞台となっている村の怪しさなどミステリ好きには堪らない要素にグイグイ惹きつけられていくでしょう。

また、それだけではなく傷心のマリアの心情や葛藤などの描写も魅力的。

その他登場人物の慕情やユーモアなどもあり、重すぎずバランスの良い作品に仕上がっています。

いわゆる青春小説のような良さも味わえるのも良いですね。

事件解決に向けては学生サークルのらしさも感じられ、3度に渡り読者への挑戦も突きつけられるなど面白さにも溢れています。

自分自身でも事件の推理を楽しんでいきたい人にはとてもおすすめできる1冊です。

20.有栖川 有栖『女王国の城』

推理小説研究会に所属するアリスは姿を見せない部長・江神を心配し下宿を訪れる。

どうやら江神は主教団体の聖地・神倉へと向かったらしい。

どうにか再会を果たすものの、襲いかかるのは殺人事件という悲劇。

主教団体は警察の介入を嫌い、アリス達を幽閉してしまう―。

事件と脱出劇を楽しめる新興宗教をめぐるミステリ

サークルの部長を探して辿り着いた宗教都市を舞台に事件に巻き込まれていく本作。

殺人事件そのものはもちろんですが、人の手により幽閉されてしまうという状況をどう打開していくのかというのも見どころの1つです。

まず主人公達の置かれている状況がなかなかスリリングで読み手としてもドキドキ感を味わえます。

また、宗教団体というだけあってその思惑などなんとも不気味な雰囲気がありますし、頑なに警察の介入を拒む理由など気になるポイントは盛りだくさん。

先が気になってどんどん読み進めてしまうような魅力に溢れています。

終盤の謎解きパートは見事な推理に爽快感すら覚えるような仕上がりに。

かなりの長編にもかかわらず終始面白く読ませてくれる飽きのこない1冊となっています。

21.有栖川 有栖『乱鴉の島』

臨床犯罪学者・火村英生は友人である作家・有栖川有栖と休暇を利用し三重沖の島へ向かうことに。

しかし手違いから実際に辿り着いたのは別の島であった。

鳥島と呼ばれるそこは数多くの鳥が乱舞している絶海の孤島。

秘密めいた人々の集まる島で部外者として滞在することになった2人だが、そこでまさかの殺人事件が発生し―?

孤島ものの魅力を存分に活かした完成度の高い1冊!

まさかの目的地間違いから始まる孤島ものミステリとなっている本作。

怪しい人々の集まりに島民の秘密など、序盤から惹きつけられる要素が盛りだくさんです。

島そのものも数多の烏が乱舞する絶海の孤島というだけあって非常に雰囲気があります。

また、主人公たちは部外者でありどちらかというとアウェイな展開に。

そんな状況下で謎を解明していく姿は見応えばっちり。

いわゆる種明かしのシーンは面白く読めること間違いなしです。

事件までの入りはどちらかというと長めな印象ですが、それも無駄ではなく終盤真相に辿り着いたときによりグッとくるストーリーに仕上がっているでしょう。

島民の謎、外部との連絡ができない、怪しい人々など、孤島ものの良さが存分に味わえる素晴らしい1冊となっています。

22.北山猛邦『アリス・ミラー城』殺人事件

鏡の国のアリスをモチーフにした洋館「アリス・ミラー城」。

そこには様々な探偵たちが集められていた。探偵たちは“アリスミラー”を探すことに。

しかしその最中、探偵たちが次々と殺されていく。

突如として襲う悲劇を乗り越えることはできるのか―?

アリスをモチーフにしたスピード感溢れる推理もの

本作は孤島に建つアリス・ミラー城を舞台に展開されていくストーリーです。

その名からも想像できるよう鏡の国のアリスがモチーフになっていますから、そういったテイストが好きな方にはより一層楽しめるお話でしょう。

場所が孤島というのも、ミステリ好きにはたまらない要素の1つではないでしょうか。

また、作中には複数の探偵が登場しますがどのキャラクターも非常に個性的で惹かれるキャラがたくさん。

その上物語もかなりスピーディに展開していくため飽きることなくどんどん読み進めていくことができます。

設定と世界観がとても魅力的な作品ですね。

ミステリとしてはやはり次々と人が殺されていくため緊迫感も感じられます。

謎やトリックについても抜群に面白いので、終始楽しく読んでいくことのできる作品です。

23.門前典之『屍の命題』

ある湖畔の別荘には不気味なコレクションの数々が並んでいた。

雪に閉ざされたそこに集められたのは男女6人。

切れた電話線、切り裂かれているタイヤ。

絶望的な状況でひとり、またひとりと殺されていく。

そして最後には全員が死体となって発見され―?

バカミスの代表作とも言われる奇想天外の本格ミステリ

冒頭、読者への挑戦状から始まる本作。

雪山の別荘を舞台に繰り広げられる連続殺人ものとなっており、怪しく雰囲気のあるプロローグで序盤から惹きつけられます。

また、バカミスと言われるようにその内容には驚きがありインパクトも抜群。

とても突き抜けた展開を終始楽しんでいけるでしょう。

ただもちろんバカミスといえどもミステリの部分は本格的。

事件のとんでもない真相はぜひその目で確かめてみてください。

謎を解いていく探偵のキャラクターも良く、読者へもしっかりとヒントが暗示されていますよ。

本作はとにかく事件のトリックやシチュエーションなど読者の度肝を抜くような驚きの要素に魅せられる内容となっていますので、読み手に衝撃を与えてくれることは間違いありません。

まさかの真相を楽しみたい人にはぜひともおすすめしたい、上質なミステリ作品となっています。

24.市川 憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』

特殊技術で開発された小型飛行船「ジェリーフィッシュ」。

その発明者・ファイファー教授ら6人は、新型ジェリーフィッシュの確認試験に臨んでいた。

ところがその試験中、メンバーの1人が他殺体として発見される。

その上飛行船は助けの来ない雪原に不時着し、さらなる犠牲者まで出て―?

SF的要素を取り入れた精緻な本格ミステリ作品

SF感を感じさせる小型飛行船を舞台に起きる殺人事件となっている本作。

科学用語なども登場し、理系の方などには特に楽しく読んでいけるような精緻な描写も伺えます。

また、本作は次々と死んでいく殺人事件ものとなっていますがその全てが他殺。

なぜ?どうやって?という疑問にページを捲る手が止まりません。

物語は刑事の捜査と事件の様子の2つの視点で進んでいき、その構成も巧みで話に入り込みやすくなっています。

中でも見応えがあるのはやはり終盤の真相が解明されていくシーン。

トリックや動機も面白く、そのアイデアが非常に高く評価できる作品でしょう。

第26回鮎川哲也賞も受賞した、読み進めていくに連れてどんどん引き込まれていくような本格ミステリとなっています。

25.東野圭吾『仮面山荘殺人事件』

結婚直前に事故で亡くなってしまった女性・明美。

そんな彼女の父に招かれ、明美の婚約者であった高之を始めとする男女8人は別荘を訪れていた。

だが楽しい時間となるはずのそれは逃亡中の銀行強盗の侵入により一変。

脱出もできずついには人が死に恐怖と緊張に包まれる。

その上状況から犯人は強盗ではないと考えられ―?

監禁状態の別荘で死の真相に迫るどんでん返しのミステリ作品

山荘にて男女8人が監禁されてしまうことから展開していく本作。

侵入する銀行強盗、1人目の殺人など序盤からハラハラと緊張の展開が続きます。

また、犯人は銀行強盗でないのでは?といった疑問から疑心暗鬼になっていく登場人物たちにも注目です。

ただし本作は大前提として明美の死から始まる物語。

集められた男女8人のなかには明美は殺されたのでは?と疑うものもおり、あらゆる死や逃亡犯の真相から目が離せません。

多くの要素がありつつもラストはキレイにまとまっているところには作者の手腕を感じますね。

もちろん、だからと言って簡単に先が予想できるような単調な物語ではありません。

物語のスピード感と面白い展開で読者をグイグイと引き込む魅力的な1冊となっています。

26.東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』

オーディションで選ばれた男女7名は乗鞍高原のペンションに集まっていた。

ここで行われるのは山荘での殺人劇の舞台稽古。

しかし稽古のはずが1人、また1人と消えていく。

果たしてこれは本当に芝居なのだろうか?

徐々に彼らは疑念を抱きはじめ―?

芝居か事件か?疑念渦巻くクローズドサークルミステリ

3泊4日の演劇合宿を舞台に描かれるクローズドサークルミステリとなっている本作。

演劇合宿という設定だけにお芝居なのか、事件なのか、それすら疑問であるという状況が面白いですね。

また、物理的には外部と連絡が取れるものの、オーディション合格を取り消される可能性などから心理的クローズドサークルという状況になっているのも非常に良いアイデアと言えます。

数多くの設定が活きている作品ですね。

もちろんミステリ作品としての完成度も高く、伏線やその回収の仕方はお見事でしょう。

終わり方も設定を活かしたならではと言えるものとなっており、エンディングまで楽しく読んでいける作品に仕上がっています。

どのような展開になっていくのか予測不能でワクワクするミステリですので、クローズドサークルものが好きな人にはとてもおすすめです。

27.伽古屋 圭市『断片のアリス』

人々は現実世界から離れ、VRシステムのなかで生活するようになっていた。

そのVRシステムの名はALiS。

そこは穏やかな仮想空間であったが、椎葉羽留は突如として謎のクラスタに閉じ込められてしまう。

そして痛覚も死も存在するその場所で連鎖する殺人事件。

ログアウト不可の状況で生き残ることはできるのか―?

VR空間を舞台にした脱出ミステリ

VRという空間を舞台に展開していく物語となっている本作。

序盤、穏やかな仮想空間から恐怖の仮想空間へと舞台は移ります。

クローズドサークルの作り方には新鮮さを感じられますし、全体を通して恐怖やスリリングさを与える描写はとても巧みですね。

また、ミステリとして犯人は誰なのかという要素はもちろん、どうすれば脱出できるのかという部分にも注目です。

VRというとなんだかSFちっくな印象も覚えますが、ミステリとしてもしっかり完成しており面白く読めること間違いなしでしょう。

設定を活かしつつよく作り込まれている作品だと言えます。

話もテンポ良く進んでいき、どんどん気になる謎が出てくるので飽きてしまうようなこともありません。

先の気になる展開に惹きつけられる魅力的な作品に仕上がっています。

28.倉知淳『星降り山荘の殺人』

UFO研究家、スターウォッチャー、人気女流作家。

そんな一癖も二癖もある人物たちが山荘に集められていた。

その山荘は雪に閉ざされ外部との連絡も通じない。

しかしそんなことお構いなしに次々と発生する殺人事件。

犯人を見つけ生き延びることはできるのか―?

読者にフェアな挑戦を突きつけるクローズドサークルもの

山荘で起きた殺人事件に探偵と助手が挑むストーリーとなっている本作。

本作は各章の冒頭に注意すべき事柄として説明文が書かれており、読者へのフェアさが徹底されている作品です。

その上登場人物も個性的で人数が多すぎないことから、自分でも謎解きをしながらミステリを楽しみたい人にはとてもおすすめと言えるでしょう。

また、最初は比較的穏やかに話が進行しますが事態が動き出してからはグイグイ惹きつけられるようなストーリー展開が目白押し。

文章そのものも読みやすく、情景描写も巧みなので雰囲気の良さを感じられるのも魅力的ですね。

もちろんミステリとしても読み応えは抜群で、トリックも巧みです。

伏線などもあるのでぜひ注視しながら読んで見てください。

謎解きしながらミステリを嗜みたい人には非常におすすめできる1冊となっています。

29.早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』

アウトドア好きが年に1度集まる夏休み恒例のオフ会。

今年も仮面の男・黒沼が所有する孤島で初参加の赤毛の女子高生を含む8人が集まっていた。

しかし孤島に着いた翌日、2人が失踪。

そして巻き起こる殺人事件。

意図不明の密室まで連続するが、一体犯人の目的とは―?

タイトルの伏せ字を当てる斬新なミステリ作品!

本作は孤島を舞台にしたクローズドサークルミステリ。

なんと言っても斬新なのが“タイトルの伏せ字部分を当てるクイズ”という主旨。

いわゆる読者への挑戦状なのですが、かなり凝った趣向のミステリとなっているので、いつもと少し違った推理小説を楽しみたい人にはおすすめです。

また、本作は比較的ライトな文体ですがその内容としては本格物。

伏線も大胆に散りばめられており、トリックも論理的なので読み終えた後はストンと胸に落ちます。

それでいて簡単には読めない展開と真相ですので、やはりミステリとしては非常に良くできていると言うほかないでしょう。

設定や登場人物には意外性やインパクトのある部分も多数。

印象に残る魅力的な推理小説となっていますので、ぜひ伏せ字当てクイズにもチャレンジしながら読んで見てほしい作品です。

30.早坂吝『殺人犯 対 殺人鬼』

孤島のとある児童養護施設。

ある日嵐のため職員が戻れなくなったそこは子どもだけの空間となった。

その機会にいじめを繰り返す剛竜寺の部屋に忍び込む網走。

殺害するための計画だったがなんと剛竜寺はすでに殺されているという状況。

その上その殺され方はまるで殺人を楽しむかのような猟奇的なもので―?

孤島を舞台に繰り広げられる子どもたちだけのクローズドサークルもの

孤島の児童養護施設を舞台に残忍な殺人が繰り広げられる本作。

主として登場するのは8歳から17歳までの子どもたちであるというのもゾッとするポイントですね。

子どもたちしかいない空間にも関わらず、その殺され方が猟奇的というのもインパクトは大でしょう。

しかしそんな恐ろしい設定、状況にも関わらず作中の登場人物たちは比較的能天気でライトな印象。

重くなりすぎず読んでいけるのはこのバランスの良さなのかもしれません。

また、ミステリとしての仕掛けも見事で読者としては騙されてしまう人も多いでしょう。

結末が最後まで読めないのでじっくりとミステリを堪能することができます。

子どもたちだけという少し珍しい戦慄のクローズドサークルものは読んで見る価値ありです。

31.今邑 彩『金雀枝荘の殺人』

若き日に曾祖父が妻のために建てた洋館で、集まった5人のひ孫と管理人が殺された。

その殺人はグリム童話に見立てたものであり、真相が分からぬまま1年の月日が流れた。

しかし今後ここで暮らしていくという杏那を筆頭に、残りのひ孫たちは事件の真相を解明すべく動き出す。

霊感女性なども巻き込み、事件の検証を開始するが―?

グリム童話に見立てたクローズドサークルもの

舞台は70年前にも殺人事件が起きたという金雀枝荘。

そこで再び事件が起きて物語は進行していきます。

本作は『狼と七ひきの子やぎ』に見立てた事件となっており、グリム童話がお好きな方ならより一層楽しめる作品でしょう。

被害者や探偵役なども含め登場人物は多い印象ですが、相関図などもあり情報も整理しやすく読み進めやすい仕様となっています。

また、登場人物のなかには亡霊が見えるという女性なども登場し、怪しく先の読めない展開は魅力的。

全体的に幻想的な雰囲気を感じさせる作風とも非常にマッチしているでしょう。

何より「序章という名の終章」がとても秀逸なので、最後まで読んでみてからその意味を噛みしめてみてくださいね。

密室や招かれざる客などの要素が好きな方にはぜひとも手に取ってほしい1冊です。

32.辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』

雪が降るある日、私立青南学院高校へいつも通りに登校した8人の高校生たち。

しかしその日の学校には自分達以外の気配がなかった。

5時53分で止まった時計、開かないトビラ。

不可思議な状況下で閉じ込められるなか、彼らは2ヶ月前に自殺した同級生のことを思い出していた。

ただし、その顔と名前だけは分からないのである―。

閉じ込められた校舎で自殺の謎をめぐる青春ミステリ

学校に閉じ込められた8人が学園祭で自殺した生徒の名を思い出せないという展開からスタートしていく本作。

本作はミステリですが犯人捜しものではなく、一体誰が、どうして自殺してしまったのかを紐解いていく物語です。

たくさん情報が提示されていきますが、その答えが簡単に予測できないのは作者の手腕と言えるでしょう。

また、本作では1人1人のエピソードがかなり深く掘り下げられています。

登場人物の過去や抱えている悩み、そして関係性。

緻密な心理描写に思わず感情移入さえしてしまいます。

青春小説のようでありながら閉塞感や緊張感、そしてこの作品特有の怖さなども存分に味わえる第31回メフィスト賞受賞作品となっています。

33.米澤 穂信『インシテミル』

アルバイトを探していた学生・結城。

そんな彼の目に飛び込んできたのは時給11万2000円という超高額アルバイトの求人であった。

1週間「ある人文科学的実験の被験者」になる。

怪しさ感じる内容ではあったが、結城を始めとする男女12人がそのアルバイトに集まっていた。

しかしその実験内容は彼らの想像を絶する内容で―?

恐怖の高額時給アルバイトで繰り広げられるデスゲーム

破格の好条件アルバイトに応募したことをきっかけにデスゲームに巻き込まれていく本作。

アルバイトの内容は多額の報酬をめぐり参加者同士が殺し合う犯人当てゲームになっています。

地下の実験用施設「暗鬼館」を舞台に繰り広げられるクローズドサークルものですね。

初手から高額アルバイトと言われているので怪しさ漂う展開ではありますが、実際にアルバイト会場に参加者達が集ってからは緊迫の展開です。

1つ目の殺人を皮切りに疑心暗鬼になる参加者たちの描写は臨場感溢れるものとなっているでしょう。

また、密室で繰り広げられる心理戦も見応えは抜群。

二転三転する展開に目が離せません。

不気味なシチュエーションを活かした緊張感溢れるサバイバルデスゲームとなっています。

34.近藤 史恵『凍える島』

夏の休暇旅行として孤島を訪れた若者たち8人。

楽しい慰安旅行のはずだったが、それは殺人事件の発生により一変する

外部との連絡が取れない状況下で1人、また1人と増える被害者。

密室と化した孤島で生き残ることはできるのか―?

孤島ミステリの醍醐味を味わえる新本格派の1冊

楽しい旅行のつもりで島を訪れた人々が殺人事件に巻き込まれてく本作。

密室や孤島など、クローズドサークルが好きな人には堪らない要素が盛りだくさんでしょう。

孤島ミステリと言えば、というような醍醐味を味わいたい人には非常におすすめです。

トリックも緻密に練られた読み応えのあるものになっています。

舞台に合った閉塞感や空気感なども感じられますし、レトロテイストな雰囲気のある作品に仕上がっているのはとても魅力的ですね。

物語に登場する人物も一癖も二癖もあるようなキャラクターとなっており、人数の多さに対し覚えやすく読みやすいです。

そこに絡む複雑な恋愛事情なども含め、ぜひ注目してみてください。

第4回鮎川哲也賞を受賞した本格推理小説となっています。

35.矢野龍王『極限推理コロシアム』

夏の館と冬の館、2つの館に強制的に集められた14名の男女。

彼らに下されたのは今から起きる殺人事件の謎を当てよという命令だった。

被害者は彼らのなかから選ばれる。

当たれば1人1千万、外せば皆殺し。

生きて脱出するために相手チームより先に犯人を当てることはできるのか―?

館を舞台に繰り広げられるチーム対抗のデスゲーム

2つの館にそれぞれ7名の大人が閉じ込められた状態で始まるデスゲームとなっている本作。

ストーリーは各チームにいる殺人犯を推理し脱出を試みるものとなっています。

まずその設定に読者をグッと引き込むような面白さがありますね。

本編はクローズドサークルという状況で行われるデスゲームですから、命の危険はもちろんのこと、誰が敵で誰が味方か分からない緊迫感を楽しめます。

犯人を推理するための情報戦や駆け引きなどは大きな見どころです。

2つの館はそれぞれ通信のやり取りのみに限定されているため、どのように答えを導き出すのかにも注目しましょう。

また、全体的にストーリーのテンポもよく、読みやすい仕上がりになっているのも良さの1つでしょう。

重いミステリ作品は少し苦手だと言う方でも楽しんでいただけるような良作となっています。

36.小野 不由美『黒祠の島』

“邪教”が伝わるという夜叉島。

失踪した作家仲間の友人・葛木志保を探すため、式部剛はその地を訪れていた。

しかし住民は葛城に関して口を閉ざし調査を妨害してくる始末。

排他的で怪しげなその場所で、さらには惨殺死体までもが発見され―?

土着信仰が色濃く映るゾッとするミステリ

失踪した友人を探すため訪れた孤島で事件に巻き込まれていく本作。

今なお残る邪教という土着信仰や閉鎖的な島民の様子などが序盤から怪しげな雰囲気を漂わせます。

嵐の孤島というシチュエーションも絶妙ですね。

背筋が寒くなるようなおどろおどろしい民俗学などの雰囲気が好きな人にはとてもおすすめできる作品です。

また、発生する事件もそのおぞましい雰囲気に引けを取らないような凄惨なもの。

果たして発見された遺体は探していた友人なのか?はたまた別の人物なのか?非常に興味深く読んでいけるようになっています。

終始不穏な空気のストーリーではありますが、破綻のないキレイな終わり方となっているためスッキリと読み終えることができるでしょう。

全体を通してミステリとしての完成度も高く、飽きることなく読んでいける作品です。

怪しい民族ホラーなどが好みの人にはぜひともおすすめしたい1冊となっています。

37.深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』

年末に放送される番組「ミステリーアリーナ」。

それは過去に起きた事件の犯人を推理し当てる番組だった。

勝てば一攫千金のチャンス、ただし負ければ待つのは死。

数々の出場者が退場するなか、果たして真相に辿り着くものは現れるのか―?

命を賭けたクイズ番組を舞台にした多重解決もの

本作はとあるテレビ番組で命を賭けて事件の真相に挑んでいくところから物語が展開します。

真相が分かればいつでも解答可能で一攫千金のチャンス、しかし間違えれば臓器提供者をして死ななくてはならないという手に汗握るシチュエーションです。

そんな設定の面白さにも惹かれますが、本作はそのテレビ番組と事件の本題パートが交互に進行していく巧みな構成も魅力的。

読者をグイグイ世界観に取り込んでいくような見せ方となっているため、続きが気になりどんどん読み進めていけます。

また、番組出演者たちとともに推理を楽しんでいけるような物語となっていますので、自分でも事件の謎を解いていきたいという人にはとてもおすすめです。

ミステリのなかでも推理模様を存分に堪能したい人にはぴったりの1冊となっています。

38.西澤保彦『人格転移の殺人』

ファーストフード店で突如として大地震に襲われた6人。

彼らが逃げ込んだ先は人格を入れ替えるという実験施設であった。

隔絶されたその空間では法則に則って人格が入れ替わる。

頻繁に人格が入れ替わるなか連続殺人が発生するが、一体それは誰の人格によるものなのか―?

特殊なSF要素強めのクローズドサークルミステリ

地震のため逃げ込んだ実験施設で人格転移と連続殺人に巻き込まれてしまう本作。

まずこの人格転移という設定が斬新ですよね。

読み手としても考える点が多くミステリとして非常に楽しめますし、法則性があるので決して無茶な設定ではないところもポイントでしょう。

とはいえ6人の人格が入れ替わっているため誰が殺人犯なのか推理するのも一筋縄ではいきません。

ただしそれだけに謎解き部分は読み応えのあるストーリーとなっているでしょう。

複雑な特殊設定でありながらトリックや真相に破綻がないのもお見事と言えますし、最後のオチまで秀逸な造りとなっています。

また、話の流れは非常にスピーディーなため飽きることなくどんどん読み進めることができるのも魅力的ですね。

よく練られた特殊設定ミステリがお好みの方にはぜひともおすすめしたい作品です。

39.二階堂黎人『人狼城の恐怖』

ドイツとフランスの国境、渓谷の上にそびえ立つ双子の古城「人狼城」。

そのドイツ側にある銀の狼城には10人の客が招かれていた。

しかしそこに用意されていたのは凄惨な殺しの宴。

二重に閉ざされている密室での首切りに中世を思わせる石弓を用いた殺害…。

伝説に彩られた古城の秘密とは一体―?

大量殺人事件に立ち向かう世界最長ミステリ

本作は人狼城を舞台に身の毛もよだつような大量殺人事件が発生していきます。

1人目の殺人からの怒涛の展開とそのスピード感は目を見張るものがあるでしょう。

どちらかというとグロテスクな殺人ではありますが、それ以上に気になる展開に読み進めたくなるようなワクワク感も感じられます。

手に汗握る攻防にも緊張が走りますね。

また、本作は世界最長と言われている長さも特徴です。

四部作を1つ1つじっくりと味わってみるのもよいでしょう。

その長さはかなりのものですが、スピーディな流れやハラハラする展開で読者を飽きさせない作りとなっています。

その他背景設定なども巧みで、物語は全体的に重厚感ある仕上がりに。

果たしてどのような結末にいきつくのか予測できないような面白さも感じられます。

時間をかけて、じっくりと堪能していきたい超大作です。

40.笠井 潔『オイディプス症候群』

ミノタウロス島はエーゲ海に浮かぶ島である。

そこには不思議な建造物・ダイダロス館があった。

ある日ダイダロス館に10人の男女が集まるが、彼らは次々と殺されていく。

それもギリシア神話をなぞった装飾を施されながら。

一体その意味と事件の真相とは―?

ギリシア神話も楽しめる絶品の孤島ミステリ

孤島を舞台に繰り広げられるギリシア神話を想起させるようなミステリとなっている本作。

もちろんギリシア神話になじみがない方も、本編でしっかりと触れられているので大丈夫です。

歴史など哲学的な記述も多く、ミステリを楽しむだけでなく知見を得られるようなステキな作品に仕上がっているでしょう。

ミステリそのものはクローズドサークルものとなっており、終盤にかけてスルスルと謎が解けていくのには爽快感を感じられます。

ラストには衝撃を覚えるシーンもあり、最後まで楽しめること間違いなしでしょう。

ギリシア神話が関わることで話の内容には神秘的な雰囲気も感じられ、単純で淡白な殺人ものになっていないのも魅力的です。

ミステリはもちろん、神話や歴史などが好きなひとにはぜひ手に取っていただきたい1冊となっています。

41.岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』

不審な事故で女性が死亡してから3ヶ月。

彼女の友人であった男女4人は遺族の手により地下シェルターに閉じ込められた。

脱出を試みたものの簡単には抜け出せそうにない状況。

極限状態で4人は過去の事件の真相を推理するが、果たして真相にたどり着き脱出することはできるのか―?

極限状態で繰り広げられる真相解明ミステリ

男女4人が密室空間に閉じ込められたところから始まる本作。

脱出と過去の事件の真相、2つのために試行錯誤していくストーリーです。

物語はずっと地下シェルターで進行していくワンシチュエーションですが、それを感じさせないほど面白くワクワクさせる展開が続いていきます。

少ない人数と場面でこれだけの物語が書けるのは、さすが岡嶋二人さんといった感じ。

また、二転三転するストーリーに後半は釘付けになってしまいます。

ミステリとしても衝撃があり、その読後感は気持ちの良いものとなること間違いありません。

いい意味で翻弄される感覚なども味わえます。

最後まで先の読めない面白い作品となっていますので、ミステリ好きの方はぜひ1度読んでみてほしいです。

42.天樹征丸、さとうふみや 『電脳山荘殺人事件』

吹雪の山荘に集った数人の仲間たち。

それはパソコン通信を介して知り合ったミステリ愛好会「電脳山荘」のメンバーだった。

しかし、初顔合わせのメンバーたちを迎えたのは恐怖の皆殺しゲーム。

互いにハンドルネームしか知らない状況で、無事犯人を見つけることはできるのか―?

王道のよさを楽しめる雪山の山荘ミステリ

雪山の山荘といういかにもミステリにはもってこいの舞台で物語が展開していく本作は、登場人物たちが皆ハンドルネームしか知らず顔を合わせるのは初めてという状況。

そんななかでも確かに漂う王道山荘系ミステリの雰囲気は、ミステリ好きには堪らないものがあるでしょう。

また、本作では伏線なども上手く張られており、それがキレイに繋がっていく様はまさにお見事。

ミステリのトリックや仕掛けの内容は高く評価されているのも頷けますし、細部までしっかり練られていることが感じられます。

最後まで犯人が予測できないような点からみても、完成度の高いミステリです。

見せ場ともいえる謎解きシーンは思わず息をのむような展開であり、全ての真相を知ったあとには素晴らしい読了感を味わえることが期待できます。

山荘系の王道ミステリを思う存分楽しめる作品となっているので非常におすすめです。

43.貴志 祐介『クリムゾンの迷宮』

ミステリというよりホラーですが、この作品も読まなければなりません。

ある日見覚えのない異様な光景のなかで目を覚ました藤木。

そこは鮮やかな深紅色の奇岩が連なる場所だった。

ふと傍らにある携帯用ゲーム機を見ると、メッセージが1つ。

「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」。

一体ゲームとは何のことなのか?

予期せぬ事態のなかでさらなる悲劇が襲い掛かる―。

凄惨なゲームが繰り広げられるホラーノベル

サバイバルゲームのような本作は、主人公が覚えのない場所で目覚めるところから展開していきます。

凄惨なゲームに巻き込まれるもののその目的や意味などは謎のまま。

そんなミステリアスな要素と独特の世界観で序盤から読者を虜にしていきます。

間延びするような展開もないため、最初から最後まで一気に読んでいけるような面白さがあるでしょう。

また、本作ではやはりそのメインとも言えるゲーム設定が魅力的。

ミステリやホラーとしての要素を高められるような、秀逸な作りになっています。

キャラクターの動かし方も上手いため、どんどん読み進めたくなるのもポイントですね。

ボリューム、テンポともに過不足なく上手くまとめられている作品ですので、ホラーなどの要素が平気な方にはぜひともおすすめしたい1冊です。

44.石持 浅海『月の扉』

那覇空港で240名の乗客を乗せた旅客機がハイジャックされた。

犯人たちの要求は留置されている自分たちの師匠を空港に連れてくること。

しかし、機内のトイレで1人の死体が発見されたことで状況は一変する。

ハイジャックという極限状態で残忍な殺人の犯人探しが始まる―。

予期せぬ事件が発生するハイジャッククローズドサークルもの

本作は3人の犯行グループが飛行機をハイジャックするところから始まります。

しかし、面白いのはそれだけが事件ではないところですよね。

ハイジャックしている機内ではまさかの殺人事件が発生し、犯人探しを行うことになります。

ハイジャックだけでも十分スリリングな状況ですが、さらに正体不明の殺人犯がいるというのは緊張感を感じさせるには十分過ぎる設定でしょう。

また、探偵となる座間見のキャラクター性がよいためスラスラと読めるのもポイント。

その他登場人物たちもしっかりと整理されており、読者が置いてきぼりにならないのもいいですね。

全体を通してテンポよく新たな展開が提示されるので、中弛みするような印象も受けません。

極限状態で起こる凄惨な事件が読みやすく描かれている良作と言えるでしょう。

45.麻耶雄嵩『蛍』

オカルトスポット探検サークルに所属する6人の学生。

彼らは京都の山間部にあるファイアフライ館を訪れていた。

そこは10年前に作曲家である加賀螢司が演奏家6人を殺害した場所であり、半年前には未逮捕の殺人鬼・ジョージに1人の女の子が殺害されている。

そんないわくつきの場所で合宿に臨むメンバーだったが、すぐに悲劇が幕を開けるのであった―。

トリックで魅せる館ものミステリ

いわくつきの館を舞台に殺人事件が発生していく本作。

登場人物がオカルト研究部ということでその恐ろしい場所も楽しんでいるような雰囲気でしたが、殺人の発生で空気が一変します。

一気に緊張感と怖さを与えるような話の運びは見事ですね。

いわくつきの場所に未逮捕の殺人鬼という要素がそれをより一層掻き立てます。

また、ミステリとしても捻ったトリックや伏線、仕掛けといった部分が大いに機能していることが感じられます。

いわゆるミスリードの巧さには麻耶雄嵩さんの力量のすごさを感じますね。

ラストにいたるまで絶妙な塩梅でミステリを楽しませてくれます。

最初から最後まで雰囲気が抜群の作品となっていますので、ぜひその空気感を味わってみてください。

46.麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)』

同窓会の取材のために孤島を訪れる烏有とアシスタントの桐璃。

そこは20年前に死んだはずの美少女、和音の影が全てを支配するという不思議な島だった。

しかしそんななか島で起こったのは凄惨な殺人事件。

島の主が首なし死体として発見されるが、果たしてその凄惨な事件の裏に潜むものとは一体―?

孤島を舞台にした驚愕の新本格ミステリ小説!

ミステリアスな雰囲気漂う絶海の孤島を舞台にした本作。

凄惨な殺人に怪しすぎる舞台など、ミステリファンが惹かれる要素が盛りだくさんです。

謎の提示の仕方も上手いため、真相を求めて読者がどんどん読み進めてしまうような魅力的な作品に仕上がっています。

本作には宗教的価値観やキュビズムについても綴られていますが、それすらも必要であると感じさせる筆力。

一見難しく理解しがたいと感じる内容でも、しっかりと読ませられるというのは麻耶雄嵩さんのすごさでしょう。

文体もあってか格調高い雰囲気を感じられます。

エピローグでさらに読者の度肝を抜くような展開は見事であり、物語そのものの完成度は非常に高いものと言えるでしょう。

新本格がお好きな方にはぜひとも手に取っていただきたい1冊となっています。

47.森博嗣『そして二人だけになった』

全長4000メートルにもなる世界最大級の建物があった。

そのなかにある“バブル”という空間に呼び出されたのは6人の医者や科学者たち。

しかし突如として通信システムが破壊され、そこは完全な密室と化してしまう。

閉ざされた空間で待ち受けていたのは恐怖の連続殺人。

残されたのは盲目の天才科学者とそのアシスタントであったが―?

真実が見抜けないクローズドサークル小説

出ることのできない施設に閉じ込められた人々が次々と殺されていくストーリーとなっている本作。

連続殺人ものではだれが最後まで残るのか?というあたりもポイントになることが多いですが、本作はあらすじで2人が残るということが明言されています。

しかしこの2人というのが少々特殊で、物語を盛り上げるキーとなっているでしょう。

話は二転三転し、先の読めない展開が続きます。

緊迫感やドキドキ感といったものも兼ね備えているので、ミステリとしては申し分ない出来栄えです。

そして最後の最後まで気を抜けない推理小説となっています。

タイトルの「そして二人だけになった」とはどういう意味なのか?

ラストまで読むとそのタイトルの秀逸さにも惹かれるような1冊となっています。

48.井上 悠宇『誰も死なないミステリーを君に』

災厄で死ぬ人が分かるという少女・志緒。

佐藤は彼女を悲しませぬため、死を回避させる役目を担っていた。

そんなある日志緒は秀桜高校文芸部の卒業生4人を襲う死の予兆を見る。

佐藤は4人を救うため、彼女たちを無人島に招き安全なクローズドサークルを作りあげた。

しかしそこに影をおとすのは高校時代の墜死事件で―?

死の回避のため奔走する一風変わったミステリ

死が見えてしまう少女とその少女のため死の回避に奔走する少年を描いた本作。

まず、死を回避するタイプのミステリであるというのが面白いですよね。

ミステリは事件が起きてからが本番であることも多いですが、本作は死を起こさないためのストーリーです。

そのためどちらかというと空気感も優しく、読みやすいミステリとなっているでしょう。

また、ミステリとしては死の回避のため奔走する佐藤の推理力が魅力的。

どのように行動していくのか予測できない点も、ミステリとしての魅力を高めているでしょう。

ラストに向けて伏線などが回収されてキレイにまとまっていく感覚もお見事の一言ですね。

優しく平和なミステリを堪能したい人にはぜひともおすすめしたい1冊になっています。

49.アガサクリスティ『そして誰もいなくなった』

クローズドサークルと言えばこの作品でしょう。

孤島に招かれた10人の男女。

彼らは職業も年齢もばらばらで、互いに面識もないメンバーだった。

しかし集められたその場に招いた主の姿はなく、夕食時には彼らの過去の犯罪が謎の声により暴かれていく。

さらには不気味な童謡になぞらえ1人、また1人と参加者が殺されていきー?

世界的にも高い人気を誇る傑作ミステリ

様々な事情で孤島に招かれた10人が、小さな兵隊を描いた童謡になぞらえた形で殺されてしまう本作。

有名作のため本作をオマージュした作品なども多く執筆されていますが、本家はやはりさすがと言わざるを得ないような見事な本格ミステリでしょう。

中弛みすることなく展開していく物語や、そのテンポ感により最後までどんどん読み進めてしまうような魅力があります。

また表現力もすさまじいので、読者としてはゾッとするような恐怖感を味わうこともできます。

トリックの完成度も高いので、謎解きも含めてあますことなく堪能できること間違いなしです。

多くの作家に影響を与えたと言われるアガサクリスティの名作ですから、ミステリ好きであれば1度は読んでおいて損はない作品と言えるでしょう。

50.アガサクリスティ『オリエント急行殺人事件』

厳しい寒さのなか雪で立ち往生した国際列車オリエント急行。

その車両は世界各地からの客でいつになく混雑していた。

癖のある乗客たちがつくる異様な雰囲気のなか、とある老富豪が刺殺される事件が発生する。

名探偵アポロが事件解決に乗り出すが、乗客たちには堅牢なアリバイがありー?

大胆なトリックに度肝を抜かれる圧巻のミステリ

立ち往生した列車の車内でまさかの殺人事件が発生してしまう本作は、序盤から乗客の全てにアリバイがあるという難しい状況から展開していきます。

それゆえやはりそのトリックは見どころの1つなのですが、なんとも大胆で予測できないような方法に驚愕してしまう読者も少なくないでしょう。

感服してしまうような素晴らしい探偵の推理にはぜひ注目してみてください。

また、舞台が混雑した列車になっているため登場人物は多いのですが、それが少しも苦にならないような文章には作者の筆力が感じられます。

それぞれの人物が個性豊かに描かれており、魅力的に感じられる点も良さの1つでしょう。

全体を通して完成度の高い圧巻のミステリとなっていますので、予想外の結末やトリックがお好きな方はぜひ1度読んでみてください。

おわりに

以上、『クローズドサークルミステリー小説おすすめ50選』でした!

最後まで読んでいただきありがとうございました(๑>◡<๑)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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