ホラー小説– category –
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『毛糸のズボン』- 焼け跡から蘇った恐怖。直野祥子のトラウマ少女漫画に飲み込まれて
「幻の一冊」という言葉はよく使われるけど、直野祥子『毛糸のズボン』ほど、この言葉がぴったりくる本も珍しい。 筑摩書房から『毛糸のズボン』が復刻されたと聞いたとき、正直「まさか」という気持ちになった。だって、この作品群は阪神・淡路大震災で原... -
『廃集落のY家』- これは霊の話じゃない。もっと生々しくて、もっと足元をすくう何かの物語だ【読書日記】
現代ホラーの怖さは、何も血まみれの化け物や悲鳴だらけの展開だけじゃない。むしろ、ありふれた日常が静かにずれはじめる瞬間にこそ、本当の恐怖は潜んでいる気がする。 『廃集落のY家』も、冒頭は拍子抜けするほど穏やかだ。大学の新歓合宿。まだ春の空... -
「あしか汁」って何だ?と口にした瞬間から、あなたは終わり――三浦晴海の呪われた記録【読書日記】
三浦晴海『なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか』。 タイトルを見た瞬間から、何とも言えない違和感が喉の奥に引っかかる。 あしか汁? なんだその昭和の漁師町にありそうなメニューは。 ほっこりした郷土料理の本かと思いきや、これが全然ほっ... -
『堕ちた儀式の記録』-「これは本当にフィクションか?」って思った時点でもう遅い【読書日記】
最初に言っておく。この本は、小説じゃない。いや、小説なんだけど、たぶん違う。 ページをめくってると、物語を読んでるって感覚がどんどん薄れていって、「これは……どこかで本当に起きたんじゃないか?」と思えてくる。それくらい、読後感が不気味に残る... -
平山夢明おすすめ小説10選 -「二度と読みたくない」と言いながらハマる。これは、小説という名の拷問だ
平山夢明(ひらやま ゆめあき)の小説を読んだことがある人なら、きっと一度は思ったことがあるだろう――「なんでこんなものを書けるんだろう?」と。 グロテスクで、残酷で、容赦がなくて、それなのにどこか笑ってしまう。あるいは、心の奥にひっそりと置... -
『ハンニバル・レクター博士の優雅なお料理教室』- 食べたくないのに食べてみたい、サイコパスを極めた料理本
誰だって一度は「ハンニバル・レクター」という名前を耳にしたことがあるはずだ。 映画『羊たちの沈黙』の名優ホプキンスが演じた、あの上品で残酷なカニバリスト。彼は殺人鬼なのにやけに知的で、丁寧な言葉遣いと美食への執着が妙に魅力的だった。 そん... -
『寿ぐ嫁首 怪民研に於ける記録と推理』- 読んでも解けない、読んだのに怖い。三津田信三の呪いにかかった夜【読書日記】
三津田信三を読むと、毎回「あぁ、やっぱりこの人すごいな」と唸ってしまう。 ホラーとミステリを組み合わせる作家は他にもいるけれど、「曖昧性」そのものを物語のエンジンにしてる作家はそうそういない。 怖いのか? 謎なのか? どっちでもあり、どっち... -
2025年7月に読んで特に面白かった本10冊 – 夜馬裕『イシナガキクエを探しています』ほか
2025年7月に読んだ本の中から、特に面白かった10冊をピックアップした。 暑い日にゴロゴロしながら読んだものもあれば、気づけば夜更かしして一気に読み切ったものもある。 ジャンルはミステリー中心だけれど、今月はホラーが大当たりばかりだった。 そん... -
藍上央理『完璧な家族の作り方』- 読むだけで怪異の共犯者になる。モキュメンタリー形式が仕掛ける罠【読書日記】
最初の数ページで、もう変な汗が出る。 本の冒頭に出てくるのは、角川ホラー文庫編集部に届いた一通の原稿と、一枚の不気味な家族写真だ。 これがただのフィクションじゃなくて、読者が手に取るこの本そのものが物語の一部だと宣言してくる。要するに「こ... -
小林泰三おすすめ小説15選 – ミステリ、ホラー、SF、全てが最高峰の作家
小林泰三(こばやし やすみ)の小説を一言で説明するのは難しい。 ホラーを読んでいたはずが、いつのまにか本格ミステリになっている。SFだと思っていたら、哲学的な問いが突きつけられる。 ジャンルの境界なんて最初から無視しているような作風だが、それ...