【随時更新】とにかく面白い短編集おすすめまとめ【短編小説】

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今回は、本当に面白い短編集のおすすめ作品をご紹介させていただきます。

短編集の魅力は何といってもその読みやすさ。通勤の電車や休憩時間など、ちょっと空いた時間にサクッと読めるのも短編集の良いところですね。

長編小説は中断するのが嫌で、時間のある時に一気に読みたい!って人に短編集はピッタリ!一冊でたくさんのストーリーが楽しめてお得な気分にもなります。

今回は、そんな短い話の中に面白さをギュッと詰め込んだ「本当に面白いおすすめの短編集」を紹介させていただきます〜。

どうぞ参考にしていただければ幸いです(=゚ω゚)ノ

目次

阿津川 辰海『透明人間は密室に潜む』

「透明人間は密室に潜む」は計4編を収録した短編集。

表題作「透明人間は密室に潜む」は、透明人間による不可能犯罪計画を描いたミステリー。

舞台は、細胞の変異によって透明人間になってしまう奇病が蔓延している世界。

主人公はこの奇病にかかっている患者の一人で、自分が透明人間であることを利用して、この病気を研究している研究者の殺害を企てる。

しかしその完全犯罪計画も、予想外の事態の発生により次第に狂っていき…。

透明人間だから何でもアリと思わせておいて、実際には犯罪は容易ではなく、様々な制約の中で逃げ切れるのか見つかるのかのドキドキ感が楽しめる作品です。

ほか、探偵が超人的な聴力を持っているという設定がユニークな「盗聴された殺人」。

脱出の謎解きに随所に膝を打つ仕掛けが満載の「第13号船室からの脱出」。

そしてアイドルヲタクと裁判官が絡むコミカルな法定ミステリー、『六人の熱狂する日本人』。

いずれも奇抜な状況設定でありながらロジカルな謎解きが描かれた必見の本格推理ものです。

榊林 銘『あと十五秒で死ぬ』

第12回ミステリーズ新人賞佳作「十五秒」を含む、4編収録のデビュー作品集。

〈十五秒後に死ぬ〉というトリッキーな状況設定で起きる四つの事件。

「十五秒」では、撃たれた「私」の前に死神が現れ、余命15秒を好きに使えと言う。

死神から与えられた余命十五秒をどう使えば、「私」は自分を撃った犯人を告発し、かつ反撃できるのか。

「私」と犯人の一風変わった攻防が描かれるが、二転三転する展開に、この後いったいどうなるんだ?!と意表を突かれまくる作品です。

犯人との攻防が見ものかと思いきや、衝撃の結末が。

残り3編も〈十五秒後に死ぬ〉というトリッキーな状況設定がベースになっています。

2編目「このあと衝撃の結末が」は、犯人当てドラマの最終回、エンディング間際で登場人物が前触れもなく急死。

もう展開はわかりきっているとテレビの前を離れていた十五秒の間に起こった出来事とは?

3編目「不眠症」は、何とも幻想的な作品。事故に遭うまでの十五秒を繰り返し夢に見る。やり直すことはできるのか?

4編目「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は、首が外れても15秒以内に胴体につなぎ合わせれば死なない、というシュールな世界観を見事に活かした作品。

どれも面白いですが、4編目「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」が特に傑作。ミステリ好きならばこれだけでも読む価値ありです。

伊坂幸太郎『終末のフール』

伊坂幸太郎(いさかこうたろう)さんの名作短編集。

巨大隕石が落ちてきて3年後に人類は滅亡する。そんな状況に置かれた人々の生き方を描く8つの物語が収録されています。

皆が同じ状況ながら、当然人によってその生き方は違います。3年後にはみんな死ぬとわかっている時、彼らは誰と過ごしどう生きるのでしょうか。

設定だけ聞くとお涙頂戴のありきたりな感動モノだと思われるかもしれませんが、そんな単純なものではないのが伊坂さんの魅力。

伊坂ワールド満開の「生きる」ことの意味と、家族の暖かみを感じる物語。

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。

星新一『ボッコちゃん』

「短編集」といえば、まず一番に星新一(ほししんいち)さんの名前を挙げる人も多いでしょう。

一般的な短編よりもっと短い「ショートショート」というジャンルの作品です。

バラエティ、SF、ファンタジー、ホラーなどの様々なジャンルに富んでおり、数ページでサクッと読める話がなんと50編も入っています。

しかも一つ一つの話が本当に面白く、完成度の高い作品ばかり。

星新一さんの作品でどれを読むか迷ったら、ぜひこの『ボッコちゃん』にしてください。

この『ボッコちゃん』を読んで星新一さんの世界観にハマっていただけたなら、他にも『悪魔のいる天国 (新潮文庫)』や『ノックの音が (新潮文庫)』など数多くのショートショート作品があるので、ぜひそちらも読んでみて欲しいです。

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。

『短編工場』

超有名な作家さんたちの、選りすぐりの12編を詰め込んだ超贅沢な短編集。

その作家さんは

桜木紫乃さん、道尾秀介さん、奥田英朗さん、桜庭一樹さん、伊坂幸太郎さん、宮部みゆきさん、 石田衣良さん、乙一さん、浅田次郎さん、荻原浩さん、熊谷達也さん、村山由佳さん、の12名。

これがどれだけ豪華なことか。

そんな作家さんたちの厳選された12編ですもの。面白くないわけがないでしょう。

厳選された作品だけあって、どの作品も何か引き込まれるものがあります。「生きること」と「死ぬこと」が様々な形で描かれており、深く考えさせられる短編も多いです。

一本一本すぐに読み切れる丁度いい長さでありながら、完成度高く読み応えのあるストーリーばかり。

読んだその日から、ずっと忘れられないあの一編。思わずくすりとしてしまう、心が元気になるこの一編。本を読む喜びがページいっぱいに溢れるような、とっておきの物語たち。

乙一『ZOO』

ホラーとサスペンスが入り混じる、乙一さんならではの強烈な5編からなる短編集。

短編ならではのテンポの良さで読みやすさとスリルも倍増。乙一さん入門の一冊にも良いかもしれませんね。

乙一さんらしさを漂わせながらも、5編ともまったく違うタイプの面白さが楽しめるのもポイント。

中でも『SEVEN ROOMS』は後味が強烈。うわあ、こういうラストかあ……と思わず絶句してしまいます。

文章のうまさはもちろん、まずこの設定を思いつくところが天才だと思う。

双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され…(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(「SEVEN ROOMS」)など、本書「1」には映画化された5編をセレクト。

乙一『箱庭図書館』

読者が創作しボツになってしまった小説を乙一さんがリメイクして蘇らせる、という面白い企画から生まれた6編の短編集。

冒険モノだったりミステリだったり青春だったり。一つに絞らずいろんなジャンルの話が楽しめるのも良いですね。

全ての作品の舞台が同じであり、各作品の中で、そのつながりが散りばめられているところも面白いポイント。

最後にあとがきで乙一さんのリメイクの際に考えたことが書かれてるのもまたいい。

どの短編も良いですが、「ホワイト・ステップ」は特に名作でしょう。

上に紹介した『ZOO』とはぜんぜん違うタイプですのでご安心を(◎ゝ∀・)ノ

僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった(「小説家のつくり方」)。ふたりぼっちの文芸部で、先輩と過ごしたイタい毎日(「青春絶縁体」)。雪面の靴跡にみちびかれた、不思議なめぐり会い(「ホワイト・ステップ」)。

歌野 晶午『ハッピーエンドにさよならを』

名作ミステリ『葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)』でお馴染みの歌野晶午(うたのしょうご)さんの作品。

タイトル通り、ハッピーエンドにさよならしちゃった11編からなるミステリー短編集です。

後味が悪くてブラックユーモアに満ちた作品ばかりなんだけど、どうにもクセになるんですよねえ。

皮肉を込めたオチが意外性とがうまく絡み合って面白く、タイトルからある程度のストーリーは想像できますが、その期待値を超える短編集になっています。

毎回「オチはどうなるの?!」とドキドキさせて、ゾクッとするどんでん返しを決めてくれるから好き。

夏休みのたびに私は母の実家がある田舎へ行った。新鮮な山海の料理に、いとこたちとの交流。楽しい夏の日々だ。あの部屋にさえ入らなければ…。(「死面」)理恵が合コンで出会い、付き合ったのは、容姿はよいがかなり内気な男。次第に薄気味悪い行動を取り始め、理恵は別れようとするのだが…(「殺人休暇」)。

荻原浩『押入れのちよ』

『誘拐ラプソディー』『噂』『オロロ畑でつかまえて』など、名作を挙げたらキリがない荻原浩(おぎわら ひろし)さんによるホラー短編集。

心あたたまる作品が多い荻原浩さんのホラーってだけでも結構レア。

それでも怖さは控えめで、荻原さんらしい独特な世界観がマッチした傑作の集まりです。

荻原さんならではのサイコ的な要素が盛り込まれた作品が多くとても私好み。

表題にもなっている『押し入れのちよ』では恐怖よりもホッコリ感があり、『しんちゃんの自転車』では、しんみりと、

ホラーが苦手な人でも楽しめる不思議な短編集です(●゚∀゚)ノ

失業中サラリーマンの恵太が引っ越した先は、家賃3万3千円の超お得な格安アパート。しかし一日目の夜玄関脇の押入れから「出て」きたのは、自称明治39年生れの14歳、推定身長130cm後半の、かわいらしい女の子だった(表題作「押入れのちよ」)。

綾辻行人『どんどん橋、落ちた』

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)』で始まる「館シリーズ」でお馴染みの綾辻行人さんの作品。

「読者への挑戦状」の形式をとったミステリー5編からなる短編集です。

館シリーズの本格ミステリのイメージが強いですが、こちらは、そんなのあり?てくらいとんでもないストーリー。

でもちゃんと本格ミステリのルールからは外れず、ちゃんと読めば犯人当ても楽しめるお話ばかり。

頭の固い人には絶対解けないであろう”超難問”をあたなた解けるでしょうか。

私はまったく解けませんでしたが、騙された時の爽快感は素晴らしいです。

崩落した“どんどん橋”の向こう側で、殺しはいかにして行われたのか?表題作「どんどん橋、落ちた」や、明るく平和なはずのあの一家に不幸が訪れ、悲劇的な結末に言葉を失う「伊園家の崩壊」など、五つの超難問“犯人当て”作品集。

坂木 司『短劇』

不気味で奇妙なストーリーが26編も詰め込まれているショートショート。

1編が短くしっかりとまとまって読みやすく、完成度も高い。幽霊怖い!っていう怖さではなくで、不思議で苦味のある物語みたいな感じ。

『和菓子のアン』のみたいなほのぼのミステリのイメージが強かったので、奇妙でブラックユーモア溢れる作品の数々にとてもびっくり。でもそこがいい!

どの話も個性的で、飽きずにスラスラ読み進めることができます。

「世にも奇妙な物語」みたいなのが好きな人にはもってこいの作品です(●´人`)

懸賞で当たった映画の試写会で私が目にしたのは、自分の行動が盗撮された映像だった。その後、悪夢のような出来事が私を襲う…(「試写会」)。とある村に代々伝わる極秘の祭り。村の十七歳の男女全員が集められて行われる、世にも恐ろしく残酷な儀式とは?(「秘祭」)。

道尾秀介『鬼の跫音』

6つの短編が収録されているサスペンスホラー短編集。

どの話も道尾さん独特の世界観を混ぜ込んだ味のある不気味なストーリーになっています。

一話一話が濃厚でイヤーな後味を残してくれるのも個人的に好きなポイント。

ミステリー要素もあり、ファンタジー要素もあり、どんでん返しもあり、の贅沢な短編集です。

よくもこれだけ短いページ数で不快にさせてくれるものだと嬉しくなってしまいます。

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)』で有名な道尾さんは長編のイメージしかなかったですが、短編もここまで面白いのかとびっくりしましたね。

私のお気に入りは「冬の鬼」。

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「〓(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。

小池真理子『妻の女友達』

女性の怖さを存分に描いた6編からなるサスペンス短編集。

犯人捜しのタイプの推理ものではなく、恋愛関係のもつれなどから犯罪が起き、そうした犯罪が予想しない展開になっていく心理サスペンスの物語で、どんどん読み進められます。

文章も読みやすいのでサクッと読めるのですが、ドキドキしっぱなしで結構疲れましたね。背筋にゾクッとくる感じがたまらないです。

しかもただドキドキするだけでなくしっかりとヒネリもきかせ、よくあるサスペンスとはひと味違う物語ばかり。

中でも表題作『妻の女友達』は傑作でしょう。これだけでもぜひ読んでほしいです(●´ω`●)

市役所の戸籍係をしている夫と美人ではないが清楚で控えめな妻。平和で波風の立たない人生をこよなく愛する夫婦の前に、突然現れた妻の学生時代の女友達。女流評価家として活躍するスキャンダラスな女の登場が平穏な家庭をいつのまにか破滅的状況に追い込んでいく…。

池井戸潤『シャイロックの子供たち』

池井戸潤さんといえば『オレたち花のバブル組 (文春文庫)』が有名ですが個人的にはこちらの作品の方が好み。

銀行を舞台に、そこに勤める人々の視点から見た物語を描いた10編からなる短編集です。

1話1話銀行員の人生というものが登場人物の想いとともに緻密に描かれている作品。 私は銀行員ではありませんが、「リアル」だなぁと思わずにはいられません。

短編集なのに1編読みだしたら全編読み終わるまで止まらない構成ですので、長編小説を読む覚悟で取り掛かりましょう。

もちろん銀行に関する知識が無くてもスイスイ読めるのでご安心を。

さらにはどんでん返しまで楽しめちゃう、完成度高すぎの傑作ミステリーです。

ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。

ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』

ミステリ好きの間では知らない人はいないくらい有名な8編からなる名作ミステリー短編集。

本人は現場にいかず、手元にある証拠や情報だけで事件を推理する「安楽椅子探偵」ものの超定番です。

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」という言葉だけから推論していく展開は見事の一言。

表題作はもちろん、「おしゃべり湯沸かし」という短編も非常に面白いです。

言いたいことはただ一つ。ミステリー小説が好きならとにかく読むべし!

9マイルは遠すぎる。アームチェア・ディテクティブ・ストーリーの定番。 ニッキィ・ウェルト教授は『九マイルは遠すぎる、まして雨の中ともあれば』と言う言葉を耳にし、この言葉を頼りに前日起きた殺人事件の真相を暴き出す!! 難事件を次々に解き明かしていく、教授の活躍を描く傑作短編集8編。

小松 左京『霧が晴れた時』

ホラー&SFが融合した、不気味な話ばかりを詰め込んだ短編集。

結構古い作品なんですがその分「深み」があるというか、独特の雰囲気があって余計に怖く感じるんですよね。SFっぽいのもあるし。

普通の日常に突如現れる恐怖がどれも怖くて不気味で、昭和(戦後)の独特な空気が漂ってきます。

特に「影が重なる時」は単なる幽霊話かと思いきや予想の斜め上を行く結末で衝撃的!

内容も面白く、ストーリーもキレイにまとまっているのでとても読みやすいです。中でも「くだんの母」は知る人ぞ知る超名作。あと「召集令状」も好き。

太平洋戦争末期、阪神間大空襲で焼け出された少年が、世話になったお屋敷で見た恐怖の真相とは…。名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづけているホラー短編の金字塔。

阿刀田高『冷蔵庫より愛をこめて』

強烈なブラックユーモアたっぷりのショートショート集。

なさそうでありそうな日常のなかに潜むヒネリのきいた恐怖の数々を描いています。

阿刀田高さん独特の魅力がたっぷり詰まった一級品ホラー作品ですね。

ラックユーモアとショートミステリーの混ざった世界に魅了されます。

ハッピーエンドはひとつもない。だがそれがいい!どれも秀逸ですが、中でも特に好きなのは表題作「冷蔵庫より愛をこめて」「わたし食べる人」。これはぜひ読んでほしい。

この作品の雰囲気が好きならば、同じ著者の『ナポレオン狂 (講談社文庫)』も絶対に気に入っていただけるでしょう。

事業に失敗して精神病院に逃げこんだ男が退院してみると、妻はいきいきと働いていた。巨額の借金も返済したという。そんなとき、あの男とめぐり合った。あの男は妻の不貞を告げ、一緒に新商売をやろうと誘う。あの男の正体がやがてあばかれ……。

小林 泰三『玩具修理者』

小林泰三さんの代表作。小林泰三さんの作品の中で一つ選ぶなら間違いなくコレ。

「玩具修理者」「酔歩する男」の2作が収録された作品集。そして2作とも超傑作なのです。

男女の会話から始まり、女が玩具修理者について語り始め、ラストにはとんでもない衝撃を与えてくれる「玩具修理者」。

「酔歩する男」は精神的にやばい。少し哲学的っぽい話ですが、その恐怖ゆえ頭がおかしくなりそう。

一度読んだだけでは理解できないかもしれません。しかし何回も読むと、その恐ろしさがよくわかります。

玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。

新堂 冬樹『吐きたいほど愛してる』

見事にタイトル通りの内容。吐きたくなっちゃうくらい気持ちの悪い物語が収められた4編からなる短編集。

新堂冬樹さんの表現力が素晴らしすぎるが故に余計に気分が悪くなります。

グロいのとか胸糞悪いのとか、結構耐性があるものだと思っていたのですが、甘かったですね。この作品の気持ち悪さは異常です。

内容がグロいというのもありますが、登場人物の性格も普通ではないため余計に気持ち悪い。

食欲はなくすしテンションも下がるのにグイグイ読まされちゃうんです。なんなんでしょうこの魅力は。

愛―、それは気高く美しきもの。そして、この世で最も恐ろしいもの。毒島半蔵の歪んだ妄想が、この世を地獄へと塗り替える。虚ろな心を抱える吉美が、浮気を続ける亭主に狂気をぶつける。

『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』

「本屋」をテーマにした物語を、著者《大崎梢》さんが選んだ10人の作家さんがそれぞれ描いたアンソロジー。

本を読むことが好き。もちろん、本屋さんも大好き。だったらこのテーマのアンシロジーが面白くない筈がない。

参加した作家さんは「大崎梢」さんを含めた、「飛鳥井千砂」さん、「有栖川有栖」さん、「乾ルカ」さん、「門井慶喜」さん、「坂木司」さん、「似鳥類」さん、「誉田哲也」さん、「宮下奈都」さん、「吉野万理子」さんの10名。

いやいやいやいや!これめっちゃ贅沢なんですよ!読まないわけにはいかないじゃないですか!

それぞれの作品にその作家さん独特の世界観や特徴が出ていましてね、その違いがストーリーとは別に楽しめるんです( ´ ▽ ` )ノ

読書家としても知られる大崎梢が、今いちばん読みたいテーマを、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して作った、夢のようなアンソロジー。

貫井徳郎『崩れる 結婚にまつわる八つの風景』

8編からなる短編集。共通するテーマは《結婚》。

結婚といえば華やかなイメージを持つ方もいるかもしれません、この作品には華やかさとは程遠い物語ばかりが詰まっています。怖いのです。

それぞれの作品の完成度が高く、抑圧された人間の本心にぞっとするもの、ホラーもの、最後のどんでん返しなどバラエティーに富んでいて飽きることなく楽しめます。

いずれの作品も狂気に溢れたゾクッとする物語ばかり。人間の狂気じみた心理描写の表現がとてもお上手なので余計に怖い。

次はどんな不幸が訪れるのか、予測しながら読み進めるのも面白いですね。

特に、追い詰められた主婦の狂気を描いた表題作『崩れる』は傑作。

家族崩壊、ストーカー、DV、公園デビューなど、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリ短編集。

平山夢明『他人事』

グロくて怖いで有名な《平山夢明》さんの代表作の一つ。

奇怪で吐き気のするようなお話が14編も詰まった贅沢な短編集です。

相変わらず人間の汚さと鬼畜さに満ちた「平山夢明ワールド」が展開されています。

暴力として凄惨なだけでなく、不安・恐怖・嫌悪を掻き立てるような不穏な物語ばかりで、読んでいて精神的に大いにダメージを受けるのでご注意ください。

短編ながら一話一話の後味は濃厚すぎて、最高に気分が悪くなりますが、それでも止まらない面白さです。

交通事故に遭った男女を襲う“無関心”という恐怖を描く表題作、引きこもりの果てに家庭内暴力に走った息子の殺害を企てる夫婦の絶望(『倅解体』)。

井上夢人『the TEAM ザ・チーム』

インチキ霊能力者の《能城あや子》と、彼女に’’霊能力があるように見せかけている’’スーパーチームを描いた痛快エンターテインメント連作短編集。

彼らのチームに任せれば《能城あや子》の霊能力が本物み見えてしまう。

その見事なチームプレイが最高に面白くカッコイイのです!まさに現代版必殺仕事人のよう。

確かに詐欺グループなのですが、結果的に事件を解決したり人助けをしている面々の活躍ぶりが面白いです。

なんかカッコよさすら感じてしまうんですよねえ。

ストーリー展開も読後の爽快感も抜群に良いので安心して読んでみてください!

黒いサングラスをかけた派手な衣装のおばさん。この人こそ、今をときめく、霊導師・能城あや子。テレビ番組の人気コーナーを持ち、個別の相談は30分8万円にもかかわらず、5カ月待ちという盛況ぶり。

真梨幸子『人生相談。』

新聞に掲載されている人生相談に焦点を当てた連作短編集。

一見なんの関係もないような別々の人生相談に隠された驚愕の真実とは……。

登場人物が多く時系列もバラバラで混乱しがちな為、時間を空けずに一気読みするのをおすすめします。

登場人物や時系列をしっかり理解しながら読めば、この作品の凄さと面白さがわかります。

昔のあの出来事、セクハラにあたるのでしょうか?…西城秀樹が好きでたまりません!占いは当たるのでしょうか…すべては“あなたの悩み”から始まった―。

京極夏彦『厭な小説』

大人気ミステリー小説『姑獲鳥の夏』から始まる《京極堂シリーズ》で有名な京極夏彦さんによる短編集。

もうタイトルそのまんま。イヤ〜な物語が詰まった単純に’’厭な小説’’です。

読んでいて、どんどん厭な気持ちが膨れ上がっていき、後読感も最悪。これじゃあ読み進められないのも納得ですよね。どの物語も全く救いがない。

間違いなくテンションは下がりますので、気分が落ち込んでいるときに読まないように。

厭だ。とにかく厭だ。それでも引き込まれて読み続けてしまうのが厭だ……。

「厭だ。厭だ。厭だ――」同期深谷の呪詛のような繰り言。パワハラ部長亀井に対する愚痴を聞かされ、うんざりして帰宅した“私”を出迎えたのは、見知らぬ子供だった。

皆川博子『蝶』

これぞ皆川博子さんらしい、幻想的で美しい雰囲気の傑作。

第二次世界大戦時代の日本を舞台とした8編からなる短編集です。

ダークで哀しい物語ですが、どういうわけかその美しさに見惚れ作品の世界に引き込まれてしまう。これぞ皆川ワールド!

読みながら自分がどこか遠くへいってしまっているような気分になる。それは夢の中のようであり、狂気と恐怖と幻想が入り交じった不思議な世界へと。

引き込まれたら最後、読む手が止まりません。

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…

有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』

有栖川有栖さんによる《火村英生&有栖川有栖》のコンビが活躍する「作家アリスシリーズ」で、’’国名’’をタイトルに含めた「国名シリーズ」の一作目。

表題作を含む短編集で、どの話も緻密であるが大胆なトリックを見せてくれます。

短編であるが故に、変な余韻は残さずにスマートに完結しているのも素晴らしい。スマートで、鮮やかで、「ああ、これがミステリなんだ」と思うほどです。

短編集ながら一つ一つがしっかりした読み応えで、ミステリーとしてのクオリティは流石!

読者への挑戦、密室、暗号、ダイイングメッセージなど、ミステリー好きが大好物な要素の詰まった作品です。

1993年、夏。カンボジア、バッタンバン州。地雷除去NGOのスタッフ・坂田洋は、同僚のアネット・マクヒューと、対人地雷の除去作業をつづけていた。突然の爆発音が、カンボジアの荒れ地に轟く。誰かが、地雷を踏んだのだ!

北森鴻『花の下にて春死なむ』

北森鴻さんによる「香菜里屋」シリーズの一作目。

路地裏にあるバー「香菜里屋」のマスターが、お客さんが持ちこむいわゆる「日常の謎」を解決していく連作短編集。

ビアバーで繰り広げられる推理合戦、美味しそうなおつまみたち、余韻の残る解決編。どれをとっても面白いです。

全ての謎を暴露するのではなくて、慎ましやかに客の想いに寄り添いつつ一つの解答案を提示するマスターが素晴らしい。

この「香菜里屋」シリーズの特徴は、とにかく登場する’’料理’’がめっちゃ美味しそうなのです本当にお腹が空きます。

もちろんミステリー小説としても十分に面白いですのでご安心を。

年老いた俳人・片岡草魚が、自分の部屋でひっそりと死んだ。その窓辺に咲いた季節はずれの桜が、さらなる事件の真相を語る表題作をはじめ、気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤が、謎と人生の悲哀を解き明かす全六編の連作ミステリー。

ジェイムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』

刑事である息子がママとの食事中に難事件の話をすると、ママたちまち謎を解明してしまうという短編集。

現場を見ずに話を聞いただけで事件を解決してしまう、いわゆる「安楽椅子探偵」モノの傑作です。

とにかくママの洞察力には脱帽。2、3程度の’’簡単な質問’’をするだけでたちまち事件は解決しちゃうのです。

ディナーの席での話なので、陰惨な感じはほぼないし、ママの料理上手は伝わるし、翻訳も良く、ウイットに富んだ会話も面白い。

海外作品の中でもかなり読みやすい部類ですので、翻訳ものが苦手な方でも安心しておすすめできます。

毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。ママは“簡単な質問”をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件をいともたやすく解決してしまう。

恒川 光太郎『秋の牢獄』

3編からなる作品集。奇妙で不可解な世界に入り込んでしまった人たちを描きます。

《11月7日水曜日》を何度も繰り返してしまう女子大生を描く表題作『秋の牢獄』をはじめ、ほかの作品も独特で奇妙な世界観満載。

同じ1日の繰り返しを淡々と描いてますが、得体の知れない存在が適度な緊張感を生んでて良いです。

ホラーと言えるほど、怖い、恐ろしい描写はなくて、わかりやすく言うなら「世にも奇妙な物語」の不思議なお話。

人間の陰の部分が描かれていて、何というか生々しいけれど、このうす気味悪い世界観は好きなんですよねえ。

十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。

上田 早夕里『魚舟・獣舟』

全6編からなるSF短編集。ほぼ陸地がなくなってしまった水没した世界が舞台とした表題作「魚舟・獣舟」。

彼らは双子で生まれ、一方はヒト、一方は魚として生きるというなんとも独特でSFらしい世界観!

よくこんな設定思いつくなあ、と思わせるものばかりで、どの作品も短編には勿体ないくらい世界観が作り込まれています。

短編集でありながら一話一話が濃厚。読み応え抜群。もちろん表題作以外も面白いです。

難しくないので、SFが苦手、という方にも読んでみていただきたいですね。

現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。

乾 ルカ『メグル』

女性大学職員から奇妙なアルバイトを紹介された学生達を描く連作短編集。

どのアルバイトも普通ではなくて、ホラーっぽくて幻想的な雰囲気が漂います。

「あなたは行くべきよ。断らないでね。」と、バイトの求人情報を何気なく目にする学生に放つ悠木さんの一言。

学生は不審に思いながらもバイトを引き受け、バイトが終わった頃には、自身にとって大切なものを得る。バイトに相応しい人物を見抜く彼女の才能には驚きますね。

この学生はどうなっちゃうの?!とドキドキしながら一気読みでした。

世にも奇妙な物語系の連作短編なのですが、読後の嫌悪感はなく、心温まる話が多い。

読後感もそれぞれ違った味わいがあり、バラエティ豊かで面白いです。続編が読みたい!

「あなたは行くべきよ。断らないでね」無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、突然に声をかけられた学生たち。

大山 誠一郎『密室蒐集家』

五つの密室殺人が収められたミステリー短編集。

密室を蒐集している謎の男がふらりと現れ、密室の謎を解決して、ふらりと立ち去る。

あの手この手で様々な形の密室の謎を構築しているのが非常に面白いです。

舞台となる時代が様々で、昭和初期から平成までその時代らしいストーリーを堪能できる。

「密室」と一言にいえど、その方法や理由は様々。

意外性もあり、そういう密室もありなのか!と驚きを与えてくれました。密室好きには非常に楽しめる作品です。

鍵のかかった教室から消え失せた射殺犯、警察監視下の家で発見された男女の死体、誰もいない部屋から落下する女。名探偵・密室蒐集家の鮮やかな論理が密室の扉を開く。

森沢 明夫『虹の岬の喫茶店』

岬に佇むカフェを舞台とした連作短編集。

人生に悩める人々を温かく迎えいれ、コーヒーと素敵な音楽で癒してくれる素敵なカフェ。

喫茶店のオーナーと人生に迷ったお客さんの触れ合いを描いたハートフルストーリー。

読んでいるこっちまでとても温かい気持ちにさせてくれる、優しい物語の詰まった作品です。

心が弱っている時に読むと泣きそうになりますね(*ノД`)

その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人々――彼らの人生は、その店との出逢いで、変化し始める。

深緑 野分『オーブランの少女』

2016年本屋大賞で話題となった『戦場のコックたち』。その作者である深緑野分さんのデビュー作です。

「少女」をテーマにした5編からなるミステリー短編集なのですが、これが実に面白く、美しく、怖い。もっと話題になっても良かったのに。

読者を物語に引き込む圧倒的な文章力が魅力的。各物語は舞台も時代も異なりますが、それぞれの特徴を捉えていて、読みやすく自然な文章になっています。

ミステリーとしても面白いですが、何より物語が純粋に面白いのでそれだけでグイグイ読めますね。

『戦場のコックたち』だけでなくこちらの作品もぜひ。

美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった―

乃南 アサ『家族趣味』

人の心のもろさ、愚かさを描いた、乃南アサさんのミステリー傑作短編集。

イヤ〜な感じの短編が5話。イヤな感じなのに先が気になりページをめくる手が止まらず、最後に当然イヤな気分になる。だがそれがいい!

独特な人生観を持つ登場人物によりあっという間に物語に引き込まれてしまいます。

最初はちょっと踏み外しただけなのに、人生を狂わせ、取り返しがつかないほどに壊れていってしまう様子が痛々しいです。

どれもゾクッとするブラックなお話ばかりで読み応えもバッチリ。

ハズレなしの面白さですが、特に表題作と「忘れ物」が好き。お見事です!

夫と中学生の息子をもちながら家族も仕事も趣味と断言、若い男たちとの恋も奔放に楽しんできた主人公。そんな日常が突然、呆気なく壊れていく…。

曽根 圭介『鼻』

ホラー短編集の決定版。表題作「鼻」の他に「暴落」「受難」の計3作が収めてあります。

どれも個性的な雰囲気で、後味も良くない。でもそこがいい!嫌な雰囲気なのに引き込まれてグイグイ読んでしまう。

『暴落』は個人が株価で評価される世の中を描いた物語で、筒井康隆さんや阿刀田高さんを彷彿させる黒い笑いに満ちています。ブラックな後味が好きな方はぜひ。

『受難』は人通りないビルの谷間に手錠で拘束された男の話で、不条理な味わいがたまらない。

『鼻』は衝撃度も高く、単純に「良くできた物語だな〜」と感激してしまいます(*´ェ`*)

人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。

奥田 英朗『イン・ザ・プール』

精神科医・伊良部の元にやってくる患者の物語を描いた短編集。

神経科に通う患者達の話なので重い話かと思いきや、変人医者・伊良部の存在により非常に愉快で気楽に読むことができます。

患者たちの悩みも独特で面白いし、なにより精神科医・伊良部のクセが強い。無茶苦茶なんだけど、このバカバカしさが面白くて魅力的なのです。

こんなめちゃくちゃな医者なのに、 心に刺さる言葉がたくさんある不思議。

読みやすさも抜群。楽しく読める短編集の決定版です。

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。

朱川 湊人『花まんま』

大阪の下町を舞台に、切なくて不思議な物語が収められた6編からなる短編集。

ゾクッとする時もあれば、心温まって泣きそうにもなる。それぞれ読後感は異なり、いろんな感情が楽しめます。

ただ怖いだけのホラーだけなら数多にありますが、朱川湊人さんが描く世界は余韻を残して心に引き止めてくれます。

「花まんま」が何なのか分からず読み進めましたが、その意味を知ったとき、親が子を思う愛に感動しました。

当時の大阪の下町のことなんて全く知らないのに、なぜか「懐かしい」と感じてしまう不思議な作品です。

昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。

綾辻行人『フリークス』

精神病院で繰り広げられる奇妙な物語3編。

綾辻行人さん独特の、幻想的ホラーな雰囲気が漂います。この不気味な世界観にグイグイ惹かれてしまう。

どの作品も読み終わると、良い意味で「今まで読んでたのはなんだったんだ?」という気持ちになる。

精神病の危うい雰囲気がでていて良いし、それでいてホラーだけではない楽しさがあります。

患者の話すことはどこからどこまでが妄想で、どこからが真実かが分からなくなる感覚はたまらないですね。

またミステリー小説としても面白く、捻りのあるオチもあって楽しめる作品となっています。短編ですが、順番に読みましょう。

「J・Mを殺したのは誰か?」―巨大な才能と劣等感を抱えたマッドサイエンティストは、五人の子供に人体改造術を施し、“怪物”と呼んで責め苛む。

松村 比呂美『女たちの殺意』

タイトル通り、様々な女たちの「殺意」を描いた5編からなる短編集です。

¥ページ数も少ないので一気に読めます。程よくブラックで、どのお話もひねりがあって面白い。

平凡な日常の中で生まれる殺意。一体何が彼女たちに殺意を芽生えさせたのか。

松村比呂美さんによる女性の心理描写が上手すぎて怖い(* ゚Д゚)

「仕事辞めちゃったのよ」―夫の姉・久里子がまた転がり込んできた。主婦・時子は無神経でルーズな久里子の行動がいちいち目障りで仕方ない。大切な「我が家」を侵食していく義姉の存在。

阿刀田高『ナポレオン狂』

短編の名手・阿刀田高さんの傑作作品集。

時代背景に関係なく今でも十分に通じるブラックユーモア13編からなる。

ブラックユーモアたっぷりなオチは切れ味抜群、ゾクッとする感覚が非常にクセになります。

オチでゾッとさせられる話が多くて、やはり最初の「ナポレオン狂」が1番面白くて、そこから阿刀田高ワールドに一気に惹き込まれます。

星新一さんのショートショートを更にブラックにした感じ。大好きです。

阿刀田高さんの作品を読んだことがない方もぜひこの作品から読んでみてほしいです。

自らナポレオンの生まれ変りと信じ切っている男、はたまたナポレオンの遺品を完璧にそろえたいコレクター。その両者を引き合わせた結果とは?ダール、スレッサーに匹敵する短篇小説の名手が、卓抜の切れ味を発揮した直木賞受賞の傑作集。

連城 三紀彦『夜よ鼠たちのために』

短編集として、そしてミステリー小説としての傑作。

どんでん返しのオンパレード。お見事過ぎて気持ちがいいです。騙されるのが大好きな方はぜひ。

短編集って好きな作家さんでも1つか2つは微妙な作品があったりするものですが、この作品に関しては全ての短編が作品がハイレベル。

各々30~50ページくらいの短編なのに、どれも予想通りの結末には決して着地しない、想定を超えて裏切ってくれる展開に凄みを感じます。

騙されまいと注意深く読んでいても「やられた!」という感覚を味わえる。

文章がとても読みやすく、難解なトリックの種明かしもすぐ理解できるのもさすがです。

脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか…?

ジョン・ディクスン・カー『妖魔の森の家』

アメリカを代表する推理作家の一人、ジョン・ディクスン・カーの傑作。

ちょっと長めの全五作品が収録されており、シリーズキャラクターであるH・M卿とフェル博士が登場する、カー初心者には入り易い作品集です。

カーの傑作をあげればキリがないですが、その中でも表題作の「妖魔の森の家」は最高傑作と言われるほどのクオリティ。細かな手がかりも素晴らしいが、何よりも真相が衝撃的です。

しかも面白いのは表題作だけじゃないから凄い。傑作の集まりなのです。カーの作品を読んだことがないという方も、今作を読めばきっとファンになることでしょう。

海外ミステリーを漁る上でも絶対読んでおきたい作品集です。

エドガー・アラン ポー『モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集』

史上初の推理小説『モルグ街の殺人』が収められた短編集。

はい、もう一度言います。史上初の推理小説です。説明不要、これはミステリ好きなら読まねばなりません。発表されたのは1841年。うむむ、凄い。

初めてのミステリのはずなのに、もう名探偵が名探偵らしい立振る舞いをしていること、意外な犯人に結び付く伏線の完成度がすごいです。

これらの作品から、現在の推理小説が始まったと考えると感慨深いものがありますね。

同時収録されている暗号解読小説の元祖「黄金虫」も必見ですぞ!

パリで起きた残虐な母娘殺人事件を、人並みはずれた分析力で見事に解決したオーギュスト・デュパン。彼こそが後の数々の“名探偵”たちの祖である。

津原泰水『11 eleven』

怪しさ満点の、なんとも言えぬ雰囲気の物語が11編。

入り込んではいけない世界に入り込んでしまったような、でも一度入ってしまったらもう出られない。

ファンタジーというより幻想小説とでも呼べばいいのか。独特の世界観が魅力的。

特に『五色の舟』は印象的というか脳裏に焼き付いて離れない。

「幻想的」「気味が悪い」「不気味」「奇妙」などのキーワードがお好きならぜひ。

百年に一度生まれ、未来を予言するといわれる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が「異形の家族」に見せた世界の真実とは(「五色の舟」)―各メディアでジャンルを超えた絶賛を受け、各種ランキングを席巻した至極の作品集がついに文庫化!

津原泰水『蘆屋家の崩壊』

上に同じく、続いても津原泰水さんの幻想的短編集。

気持ち悪いし怖いし不気味な物語が7編。

ホラーとかミステリとか、カテゴリー分けできないこの世界観は本当に癖になります。

私が特に好きなのは「猫背の女」。ひたすらに怖いです。

津原泰水さんの作品を読むなら『11 eleven』と『蘆屋家の崩壊』はぜひ読んでおきたいですね。

定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。

笹沢 左保『セブン殺人事件』

ライバル同士である宮本部長刑事と佐々木警部補を探偵役としたミステリー7編を収録。

このコンビの掛け合いが実によく、ストーリーもトリックもクセがないのでシンプルに楽しめるミステリ小説です。

二人の推理は真っ向から対立しますが、テンポよく話は進む。はたしてどちらの推理が正しいのか、ドキドキしながらも、結末にいつもあっと驚かされてしまう。

事件はアリバイトリックあり、本格推理あり、とバラエティーに富んでおり、読者を楽しませてくれる。

理詰めで推理が展開されるので、読んでいて納得でき、良質なフーダニットになっております。

1980年に書かれた作品ですが2016年に復刻。なぜ復刻したかというと、面白いからです。

新宿淀橋署の宮本刑事部長と、本庁から来た佐々木警部補。年齢も容姿も経歴も好対照の2人は、その名前から「宮本武蔵と佐々木小次郎」にたとえられるライバル同士。そんな異色の凸凹コンビが7つの難事件に挑む。

島田荘司『御手洗潔の挨拶』

『占星術殺人事件』でおなじみ、島田荘司さんによる「御手洗潔シリーズ」の第一短編集。

相変わらずダイナミックで、真っ当に折り目正しい本格ミステリ。

4編どれも面白いですが、特に「疾走する死者」がすごく好き。まさかのトリックに驚愕しましょう。

この作品はどちらかと言うとトリックより御手洗の人間性メインのものになっています。つまり御手洗ファンにはたまらない一冊。

人物像もより深く知れるので、御手洗潔シリーズを読む上でもぜひ読んでおきたい作品です。

嵐の夜、マンションの十一階から姿を消した男が、十三分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。

若竹七海『プレゼント』

若竹七海さんの「葉村晶シリーズ」第一弾。

運の悪い探偵・葉村晶があらゆるトラブルに巻き込まれ事件を解決していくハードボイルドミステリーです。

どの短編もゾクっとする後味の悪さがありますが、それがクセになります。ラストの一行が効いていて、やられたな、と思わせてくれるんですよねえ。

非常に面白いシリーズですので、今作が面白いと感じたならシリーズ全作品読むことをおすすめしますよ(*>∀<)ノ

ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで悲しい八つの事件とは。

平 安寿子『こんなわたしで、ごめんなさい』

いろんな女性のいろんな生き方を描いたいろんな「わたし」の痛快コメディ。

それぞれの女性が様々なコンプレックスを抱えているのですが、重い話ではなく軽い気持ちで面白く読めます。

女性であるがゆえの悩みや迷い。かっこわるくて、みっともなくて、憎めなくて。

恋人や友人、どんな人と付き合っていくにしても、まずは自分自身と上手く付き合うコツを掴まなくちゃいけないんだね、と思わせてくれます。

「気軽にサクッと読める面白い短編集」という言葉がぴったり。

人も羨むキャリアウーマンのはずが、仕事も家庭も雲行きが怪しくなって―表題作ほか、結婚願望がないのに求婚されたOL、男性不信の巨乳女、対人恐怖症の美女など、いろんな「わたし」が主人公。

山口 雅也『キッド・ピストルズの冒涜』

キッド・ピストルズシリーズ第一弾。

英国のマザーグースをテーマにした事件を、パンク刑事キッドピストルズが解決していくミステリ短編集です。

キャラクターも個性的だし事件も面白いものばかりですが、何よりこの世界観が好き。

名探偵達が活躍するパラレルワールドのイギリスで起こる、マザーグース絡みの殺人事件とか最高すぎます。

ハチャメチャでぶっ飛んだキャラ設定なのに推理に関しては実に本格。中でも「曲がった犯罪」は傑作中の傑作。ミステリ好きならばぜひ一読を。

パンク族の陰鬱なミネルヴァ神とも言うべきキッド・ピストルズと悪戯好きのニンフ、ピンク・ベラドンナが関わった四つの事件記録をまとめた第一短編集。

乃南 アサ『最後の花束』

女性のドロドロ短編集。友情、恋愛、嫉妬、妬み、恨み、狂気が満載。

乃南アサさんの描く女性の恐ろしさは、怖いのになぜか魅力的で物語への引き込みがすごい。

そんなアサさんの「傑作短編集」なんですもの。そりゃあ面白いに決まっているでしょう。

全体的にドス黒い空気が漂いますが、しかし全てがそうではなく、闇の中に光りが差し込む作品もあり飽きさせない構成です。

短いけれどラスト1文の破壊力が凄い「薬缶」と、最後の最後までオチが読めない「最後の花束」がとくにお気に入り。

色恋をめぐる狂気は、その女たちを少しずつ蝕み、少しずつ壊していった……。ある女は大阪に引っ越してまで愛人を追いかけ、またある女は親友の婚約者を欲しがる。

加納 朋子『ななつのこ』

『ななつのこ』の著者に、自分の身近で起きた謎を書いたファンレターを出した女子大生・駒子。

すると著者本人から返事が。そこには駒子の書いた謎の回答が書かれていた!という連作短編集です。

最終章ではそれまで断片的だったやりとりがすべて繋がるといういわゆるコージーミステリー。物語の作りが秀逸すぎます。

実に優しい雰囲気のミステリで、読後感もほっこり。日常系ミステリの名作です。

表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック「スイカジュース事件」をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作家本人から返事が。

中山七里『ヒポクラテスの誓い』

『連続殺人鬼カエル男』『さよならドビュッシー』などでおなじみの中山七里さんによる作品。

法医学をテーマとした医療ミステリながら、難しさは全くなく気軽に楽しめる連作短編集です。

個性的なキャラクターだらけで、まるでアニメを見ているような勢いで読める。中山七里さんの作品は本当に読みやすいですね。

別に大きなどんでん返しがあるわけでもないのに、明らかになる真相にはハッとする驚きを楽しめます。

浦和医大・法医学教室に「試用期間」として入った研修医の栂野真琴。彼女を出迎えたのは偏屈者の法医学の権威、光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。

連城 三紀彦『顔のない肖像画』

連城さんお得意の、最後でくるりと世界をひっくり返してくれるどんでん返し短編集。贅沢すぎます。

1993年に発売され絶盤状態となっていましたが、2016年に実業之日本社文庫さんより復刻。狂喜しました。

復刻されたのはそれだけ面白いからです。ぜひ読みましょう。

読んでいない方は『夜よ鼠たちのために (宝島社文庫)』もぜひ。

死後に注目された萩生仙太郎の絵画が、30年ぶりにオークションへ出品されることになった。そこには幻の傑作も出品されるらしい。萩生の絵に魅せられた美大生の旗野康彦は『顔のない肖像画』という絵を必ず競り落とすよう未亡人から依頼される。

三津田信三『ついてくるもの』

『厭魅の如き憑くもの』で始まる「刀城言耶シリーズ」でおなじみ、三津田信三さんによるホラー短編集。

怖いのは当たり前として、三津田さんの描くホラーはただ怖いだけでなく「面白い」。

相変わらず三津田信三の作品は、読んでいると自分の家にも何かいるんじゃないかって不安になりますね。

好きなのは表題作の「ついてくるもの」や、「ルームシェアの怪」ですね。三津田さんは、擬音の使い方や心理描写がすごいなと思います。

三津田さんならではの擬音を使ったこの背筋がゾワゾワする感じ。クセになりますよ〜(*´∪`)

実話怪談の姿をした七つの怪異譚が、あなたを戦慄の世界へ連れていく。薄気味の悪い男が語る夜毎の恐怖(「夢の家」)、廃屋から人形を持ち帰ってしまった私の身の上に次々と…(「ついてくるもの」)、同居人の部屋から聞こえる無気味な物音の正体は…(「ルームシェアの怪」)。

三津田信三『怪談のテープ起こし』

上に同じく三津田さんのホラー短編集。

作品を制作するにあたってのエピソードや編集者とのやりとりを取り入れることで現実味がグッと増しており余計に怖いんです。

説明がつかない怪異の恐ろしさ。一編一編がとても濃くて、「死人のテープ起こし」「黄雨女」「すれちがうもの」が特に好みです。

とにかくゾッとする話ばかりで後を引くというか、読み終わってからもしばらく怖いし、たまに思い出しても怖い。

恐怖は全て、日常にひそむ。自殺する者は何を語るのか。怪女「黄雨女」とは一体―。

ジェフリーディーヴァー『クリスマス・プレゼント』

名作『ボーンコレクター』から始まる「リンカーンライムシリーズ」。

その著者ジェフリーディーヴァー氏による傑作短編集です。

なんとなんと、みんな大好きどんでん返しが16連発。キレッキレです。

どの話も最後でコロっとひっくり返される感じがたまりません。驚かされたり、思わずニヤリとさせられたり、ほっと胸を撫で下ろしたり。読み応え抜群。

長編が面白いのは知っていたけど短編もこんなに面白いのか!と驚愕させてくれた作品です。素晴らしきジェフリー ディーヴァー。

著:ジェフリー・ディーヴァー, 翻訳:池田真紀子

スーパーモデルが選んだ究極のストーカー撃退法、オタク少年の逆襲譚、未亡人と詐欺師の騙しあい、釣り好きのエリートの秘密の釣果、有閑マダム相手の精神分析医の野望など、ディーヴァー度が凝縮されたミステリ16作品。

ジェフリーディーヴァー『ポーカー・レッスン』

上に同じく、ジェフリー ディーヴァー氏のどんでん返し短編集。

ひねってひねってくるくるり。あっぱれです。

ぜひ『クリスマス・プレゼント』と合わせてお読みください∩^ω^∩

著:ジェフリー・ディーヴァー, 翻訳:池田真紀子

「犯人は犯罪の現場に必ず微細な証拠を残す」という原理を裏切る難事件を描く「ロカールの原理」他、多彩なドンデン返しであなたを驚愕させる16の物語。

泡坂妻夫『煙の殺意』

泡坂妻夫(あわさかつまお)さんの面白すぎるミステリ短編集。

収録されている8編全てが良作という贅沢さに加え、泡坂さんらしい独特の作風とユーモアさが楽しいです。

バラエティーに富んでいるけれど、結末でキレを見せるような話ばかり。

不可解な出来事を少しだけ角度を変えて見ることで、驚きの真相に繋がる展開が素晴らしい。

軽快でユーモラスな語り口で読みやすく、気楽に楽しめる。ブラックなオチもなかなか。

泡坂妻夫さんの作品をまだ読んだことがない!という方の最初の一冊にもおすすめ。ハマっちゃうのです。そして他の泡坂作品も読み漁っちゃうのです。

愛すべき傑作「紳士の園」や、殺人現場に赴いた風変わりな捜査官が織り成す推理の妙「煙の殺意」など八編を収録。興趣の尽きないストーリーと騙される快感が堪えられない名作品集。

泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』

続いても泡坂妻夫さんの作品。

青年カメラマン亜愛一郎(あ あいいちろう)を探偵役とした8編からなる短編集です。

見事な伏線にまさかのトリックで楽しませてくれるのはもちろん、何より亜愛一郎のキャラクターがとても魅力的。読んだら亜愛一郎ファンになるでしょう。

意外性のあるストーリーは面白いし、亜愛一郎の絶妙なキャラ設定でグイグイ引き込まれます。

このほか『亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)』『亜愛一郎の逃亡 (創元推理文庫)』と合わせて全3部作となっておりますので、ぜひとも続けてご覧ください。

ユニークなキャラクターの探偵、亜愛一郎とともにその飄々とした姿を現わした著者の、会心の笑みが聞こえてきそうな、秀作揃いの作品集。

有栖川有栖『作家小説』

作家アリスシリーズなどでお馴染み、有栖川有栖(ありすがわ ありす)さんによる「作家」をテーマとした奇妙な短編集。

ミステリーではないのですが、なんともブラックな世界観を醸し出しておりゾクゾクしっぱなし。有栖川さんはこういうタイプの作品も面白いんですねえ。

じゃあ「ホラーなのか」と言うと、別にホラーでもない。SFっぽくても、SFでもない。でも面白い。そんな不思議な世界観の作品です。

いわゆる〈奇妙な味〉系に近いですね。筒井康隆さんや星新一さんの作品が好きな私にはたまらないのです。

デビューして二年あまりたつが、いまひとつぱっとしないミステリ作家・益子紳二は、ある出版社の編集長に銀座で接待を受ける。そこで、大ベストセラー作家への野望に火をつけられた益子は、そのまま会社へ連れていかれた。その地下室で彼が見たのは…(「書く機械」)。

鳥飼 否宇『死と砂時計』

第16回本格ミステリ大賞受賞作。

〈ジャリーミスタン終末監獄〉という世界各国から集められた死刑囚を収容する監獄を舞台にした、6編からなる連作短編ミステリ。

もう設定だけでも面白いですが、起こる事件も内容もさらに面白い。

「数時間後に死刑になる二人をなぜわざわざ殺す必要があったのか?」、という謎や、「男性が絶対に入れない女囚居住区でどうやって妊娠したのか?」など、監獄という特別な環境ならではの事件が魅力的。

そして、あの強烈な後味です。たまりません。

鳥飼否宇さんの最初の一冊にもどうぞ

『メフィスト賞』第三回受賞作。大笑いか激怒かっ!?決して読む者の妥協を許さぬ超絶アホバカ・ミステリの決定版、遂に登場!

伊坂幸太郎『アイネクライネナハトムジーク』

伊坂幸太郎さんによる恋愛短編集。

収められている6編のお話がバラバラなようで少し繋がっている、という伊坂さんのお得意のパターンのやつです。

テーマは「出会い」と「繋がり」であり、とにかく優しい物語。数ある伊坂作品の中でもかなり心が温まる作品です。それでいて、いつもの面白さは変わらず。

殺人は起きないし、死神や強盗団、殺し屋なんて特殊な人物も登場しない。

普通の人たちの、普通の日常の中で起きる、小さな奇跡を描いているのです。

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。

今邑彩『よもつひらさか』

時鐘館の殺人 (中公文庫)』と並ぶ、今邑彩さんの最高傑作の一つ。

12編からなるホラー短編集であり、霊的なものから人間の怖さを描いたものまで幅広く収められています。

とにかく今邑彩さんの「巧さ」と「魅力」が存分に詰め込まれた宝石箱のような作品。面白すぎるのもいい加減にしてほしいです。

まだ今村さんの作品を読んだことがない方もぜひ。ハマっちゃいましょう、今村ワールドに。

一人でこの坂を歩いていると、死者に会うことがあるという不気味な言い伝えを描く表題作ほか、戦慄と恐怖の異世界を繊細に紡ぎ出す全12篇のホラー短編集。

今邑彩『時鐘館の殺人』

というわけで『時鐘館の殺人』です。『よもつひらさか』がホラー短編の傑作、こちらがミステリ短編の傑作でしょう。

ホラーも作中作もあり、不思議な話もあれば狂気染みた話もある。

ボリューム的にもバリエーション的にも丁度良い全六篇。そしてもちろん、白黒が反転する意外な真相も仕込まれており、ミステリーとしての醍醐味も堪能できます。

『黒白の反転』のひっくり返し具合、表題作『時鐘館の殺人』の構成と展開も最高ですわ。

他にも『隣の殺人』や『恋人よ』などサスペンス溢れる名作がズラリ。このゾッ!とする感じがたまりません。

作家、評論家をはじめミステリーマニアの集まる下宿屋・時鐘館。編集者の催促を前に「原稿は一枚も書けていない。勝手ながら『消失』する」との手紙を残し、締め切り直前の老推理作家が姿を消した。

海野十三『獏鸚』

日本SFの始祖の一人と呼ばれる海野十三さんの傑作ミステリ短編集。

名探偵・帆村荘六が挑む奇怪な事件が10編も収録されています。海野さんといえばコレコレ!という短編ばかり。帆村荘六シリーズの面白さ全部入りです。

乱歩のような怪奇小説や『探偵ガリレオ』の元祖のようなSFミステリありで楽しい。

古き良き探偵小説の味わいを楽しみつつ、ぜひこの奇想天外っぷりを堪能しましょう。

科学知識を駆使した奇想天外なミステリを描き、日本SFの先駆者と称される海野十三。鬼才が生み出した名探偵・帆村荘六が活躍する推理譚から、精選した傑作を贈る。

連城三紀彦『小さな異邦人』

連城三紀彦さんの名作短編集。

連城さんといえば『戻り川心中』や『夜よ鼠たちのために』『顔のない肖像画』などなど、面白い短編集をあげたらキリがありません。

そしてこの『小さな異邦人』も安定の面白さ。何度も騙され、最後には鮮やかにひっくり返される手法が楽しい。

家に子供全員が揃っているのに「子供の命は預かった」という脅迫電話がかかってくる表題作は特に見ものです。そうきたか!というオチはぜひ目にしていただきたい。

この作品に限らず、連城三紀彦さんの作品って、読み始めるとグッと引きつけられて出てこれなくなるんですよねえ。

高校二年生から三歳児まで、八人の子供と母親からなる家族の元へかかってきた一本の脅迫電話。「子供の命は俺が預かっている。三千万円を用意しろ」。

若竹七海『暗い越流』

クール・キャンデー (祥伝社文庫)』や「葉村晶シリーズ」などで有名な若竹七海(わかたけななみ)さんの短編集。

面白いのはもちろんのこと、ブラックな後味と「そうきたか!」と思わせてくれるオチが嬉しい。苦い後味が好きな人にはたまらない一冊となっています。

「葉村晶シリーズ」のお話もありますが、シリーズを読んでいなくても問題なく楽しめるようになっております。

絶妙にキレのある短編ばかりで、初めて読んだとき改めて若竹七海さんの面白さを実感しました。若竹さんの作品の中でも特に好きなんですよねえ。。

先の読めない展開と思いがけない結末―短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。

米澤穂信『満願』

言うまでもありません。米澤穂信さんの大傑作ですね。

①2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位

②2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位

③2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位

という3冠に輝いた、紛れもなく面白い作品です。読みましょう。

ただ全体的に後味はよくありませんので、読後感の良い物語を求める方には不向きです。

そのぶん苦い後味がお好きな方には最高の一冊となるでしょう。私は、大好物中の大好物です( ゚∀゚)

鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。

田中 啓文『シャーロック・ホームズたちの冒険』

「あの歴史上の有名人が名探偵だったら」 というミステリを収めた短編集。

その人物はシャーロック・ホームズを始め、アドルフ・ヒトラーや小泉八雲、アルセーヌ・ルパンなどなど。

この設定だけでもう面白いんですよ。あの有名な歴史上の出来事の裏に実はこんなことがあったのか!っていうのも楽しめます。

しかもどこかオカルト的なんですよね。非現実的なものが登場したりするんです。それがまた良いアクセントになっていて。

ただし、普通のミステリとして期待すると間違いなく評価は分かれますね。だってブッ飛んでいますもん。私は大好きですけど。

異才が虚実を織り交ぜ纏めあげた、奇想天外な本格ミステリ短編集。

田中啓文『異形家の食卓』

「食」にまつわるグロテスクなお話が11編。

もはや感動してしまうほどに、グロテスク。巧妙な、グロテスク。突き抜けた、グロテスク。

「グロテスク」とは、こういうことさ、と言わんばかりに言葉選びのセンスが飛び抜けています。

めっちゃ面白いんだけど気持ち悪い。気持ち悪いけどめっちゃ面白い。だから読んじゃう。短篇だからサクサク読めるのに後味はしっかり。

こんなにグロくて面白い話をよく思いつくなあと思います。

ただグロいだけでなく物語がちゃんと面白いっていうのが良いですよね。

「グロテスク」「奇妙」「ホラー」とかそういう物語がお好きな方はぜひ。クセになります。

国際会議のため来日した、ゾエザル王国の外務大臣・ジュサツ。独裁国家に対する強い風当たりにもめげず、常に笑顔をたやさない彼を癒す、おぞましいストレス解消法。つぶれかけたフレンチ・レストランを救った、魅惑の食材の正体。

鮎川哲也『五つの時計』

本格ミステリ『リラ荘殺人事件 (角川文庫)』やアリバイトリックの傑作『黒いトランク (創元推理文庫)』などでお馴染み、鮎川哲也(あゆかわてつや)さんによる傑作短編集です。

鮎川さんらしいアリバイトリックものが収められているのですが、見事にどれも傑作。

そりゃあタイトルに「短編傑作集」とありますからね。面白いわけです。

短編の中にトリックとそれを支えるアイデアそしてフェアに伏線が張られる、どれも素晴らしい作品ばかり。

鮎川哲也さん入門として最初の一冊にもおすすめ。とにかく読みやすいので。

まさに古き良き本格推理物。アリバイトリックものってなんか苦手だなあ、という方も一度読んでみて。

乱歩編輯の第一号に掲載された「五つの時計」を始め、三箇月連続作「白い密室」「早春に死す」「愛に朽ちなん」、花森安治氏が解答を寄せた名高い犯人当て小説「薔薇荘殺人事件」など、巨星乱歩が手ずからルーブリックを附した全短編十編を収録。

おわりに

以上になります。

またどんどん追加していく予定ですので、よろしくお願いいたします!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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