【自作ショートショート No.34】『第一回宇宙対抗大食い選手権』

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デイブは地球人代表として、スピカ星にやってきた。

代表者に選ばれたのは他に9人、みんな彼と同じ巨漢の持ち主だ。

それもそのはず、彼らはこの星で開催される大食い大会に出場するため、はるばる地球からやってきたのだから。

事の始まりは一か月前のこと——

その日、地球のとある施設に宇宙からメッセージが届いた。

その内容は『第一回宇宙大食い選手権』を開催する、スピカ星で開かれるその大会に地球人を招待するというものであった。

この招待を受けて、政府は歓喜した。

というのも銀河系にある多くの惑星に比べて、地球の科学は大幅に遅れをとっていたからだ。

そのため、これまでは宇宙規模で開かれるこうした交流会に参加できたことは一度もなかった。

ようするに地球人は宇宙人たちから仲間外れにされていたわけである。

それが初めて招待を受けたのだから、政府が喜んだのも無理はない。

ようやく我々も認めてもらえた、これが宇宙進出の偉大な一歩になると沸き立った。

そこから地球人代表を選ぶための選考会議が始まった。

大食い大会というからにはたくさん食べる者じゃないと始まらない。

ここで失敗したら二度目はないかもしれないのだ。

地球人の名に恥じない者を選ぶ必要があると、各国首脳陣は検討に検討を重ねた。

こうして代表者を選ぶための大食い大会が各地で開かれることとなった。

そこで勝ち残った者同士がさらに競い合い、最終的にデイブたち10人が決まったのだ。

デイブはその中でも自他共に認める実力者であった。

幼い頃から人一倍大食らいで、物心ついた頃には食パン一斤をおやつにし、夜食にどんぶり飯を三杯食べていたほど。

三食しっかり食べた上でこれだけの量食べていたのだから、体重も相当なもので、150kgは優に超えていた。

そんな体型ゆえ、その頃からずっとからかわれ続け、大人になってからは女性に見向きもされず、暗い人生を送ってきた。

それが地球人代表に選ばれ、やっと胸を張れる時が来たのだ。デイブはメラメラと闘志を燃やしていた。

スピカ星に出発する日、他の9人もみんなデイブと似たような人生を送ってきたらしく、絶対に宇宙人たちに勝利して見返してやると意気込んでいた。

そして今日、スピカ星に降り立ったのである。

この星でデイブたち一行を出迎えてくれたのは、『第一回宇宙対抗大食い選手権』の主催者でもあるスピカ星人だった。

「ようこそはるばるいらっしゃいました。我々は地球の皆様を歓迎します」

「こちらこそ招待いただきましてありがとうございます」

デイブが代表して挨拶をした。

「それにしても皆さん、良い体格をしていますね。この大会にぴったりだ」

「そうでしょう。この大会に備えて体を作ってきましたから」

デイブの次に体の大きな代表者の一人が、気さくな口調で応じる。

「それはそれは。さすが地球の方だ」

スピカ星人が感心したように言う。

「さあさあこちらへ。長旅でお疲れでしょう」

スピカ星人に案内された場所には、地球の風呂に似たものがあった。

「まずはこちらで体をお清めください。後でまた呼びに来ます」

そう言うとスピカ星人は去っていった。

早速10人はその風呂らしきものに入る。

「あー、気持ちがいいな」

「本当だなあ」

「ちょうどいい温度じゃないか」

緊張がほぐれた10人が、思い思いに喋り出した。

「宇宙人達も風呂に入るのかな?」

「我々のためにわざわざ用意してくれたのかもな」

「なんと親切な」

巨漢のデイブにはやや窮屈な入浴だったが、それでも十分にリラックスできた。

大食い選手権本番に備えて、リラックスしすぎないようにしなくてはと気を引き締める。

そしていよいよその時がやってきた。

大食い選手権の会場は熱気に包まれており、デイブたちはいやが応にも緊張が高まった。

これから初めて宇宙人と対決をするのだ。

失敗するわけにはいかない、地球人代表として来たからには絶対勝たなくては、デイブたち10人はお互いに目配せをする。

そこへスピカ星人が近づいてきた。

「いよいよですね皆さん、準備はできましたか」

「もちろんです。いつでもいいですよ」

デイブが胸を張って言う。

「そうですか。ではこちらへどうぞ」

スピカ星人に連れてこられた先には、巨大な釜があった。

「これが大食いの料理ですね?」

デイブはその大きさに目を見張る。

「そうですよ。ではこの釜の中にお入り下さい」

数人のスピカ星人が近づいてきて、デイブたちを担ぎ上げた。

「えっ?」

「何驚いているんですか?準備はできているんでしょう」

「準備って何の準備ですか?僕たちは大食い選手権のために招待されたんですよね?今から始まるんですよね?」

なんとなく嫌な予感のしたデイブが、立て続けに質問をする。

「ええ、そうですよ。皆さんはそのための食料なんですから」

「ええっ?!」

「皆さん大きな体ですから食べ応えがあります。この日のために体を作ってきたんですよね」

スピカ星人が悪びれることなく言う。

「違う!俺たちは食べられるため体を大きくしてきたわけじゃない」

「俺達が食料だと?!い、いやだ」

「そ、そんな、話が違うぞ」

体を担ぎ上げられたデイブたちは慌てて抵抗するが、そのまま釜の中へドボンと入れられてしまう。

「いやーそれにしてもうまそうだ。地球人は脂が乗ってると言うからなぁ」

「さて『第一回宇宙対抗大食い選手権』始まりました!今回皆様に食べて頂きますのは、地球人です!!では、はりきってどうぞ……」

(了)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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