結城真一郎『#真相をお話しします』- ギョッとせずにはいられない、違和感と衝撃に満ちた短編集

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家庭教師を依頼されて訪問したのに、家の様子も母子の様子も明らかにまともではなかったり。

マッチングアプリで独身と偽って若い女の子と出会ったものの、思わぬ落とし穴が待ち受けていたり。

15年前に提供した精子で生まれてきた娘と会うことになり、驚愕の真実を告げられたり。

予想のつかない展開で読者を振り回し続けるストーリーを、全5編収録。

騙され、踊らされる快感を存分に味わえる一冊!

目次

胡散臭い始まりと、度肝を抜くオチ

『#真相をお話しします』は、ひねりにひねったストーリー展開が魅力的な短編集です。

全5話あり、それぞれ舞台設定は異なるものの、どの話も決まって序盤から胡散臭い。

営業で訪問した先が異様な雰囲気だったり、友達との楽しい飲み会で物騒な話が出てきたり、徐々に「あれ?なんだかおかしいぞ?」という流れになっていくのです。

最初は軽い違和感ですが、それがどんどん大きくなり、やがてギョッとするような出来事が立て続けに起こります。

そのめまぐるしさたるやもう、読み手はドキドキさせられっぱなし!

もちろんラストでは、度肝を抜くようなどんでん返しや、意表を突くオチが炸裂します。

ツイストの利いた短編が好きな方であれば、ワクワクしながら一気読みできること間違いなしの一冊です。

各話のあらすじと見どころ

『惨者面談』

家庭教師の派遣会社でバイトをする現役東大生の片桐。

ある日、面談を申し込んできた家庭を訪問すると、玄関先で長く待たされた上、家の前は生ゴミだらけでした。

母親は子供の成績も通う塾の名前も把握しておらず、それどころかヒステリックで挙動不審。

子供は子供で、どこかビクビクと怯えている様子。

あまりの違和感に片桐は―。

ページをめくるたびに母親のボロが出てきて、サスペンス感が強まっていきます。

タイトルが「三者」面談ではなく「惨者」となっているところがミソ!

『ヤリモク』

40代の妻子持ちなのに、30代の独身と偽ってマッチングアプリを利用している男の物語です。

娘と同じくらいの年齢の少女と出会い、興奮しながら有頂天でシャワーを浴びます。

しかし部屋に戻ると―。

二転三転する状況に、ハラハラドキドキ!

なんと主人公の実の娘も、お小遣いでは買えないようなブランド品を大量に持っており、こちらも何か裏がありそうでドキドキさせてくれます。

『パンドラ』

不妊治療で悩む人のために、15年前に精子を提供した男の物語です。

その時に生まれた子供が14歳になり、会うことになるのですが、彼女の口からは恐ろしい真実が次々に出てきて―。

倫理を問うヒューマンドラマかと思いきや、バリバリのサスペンスで、ゾッとする場面が多いです。

主人公の見た目がある人物に似ているらしく、そこがさらなる恐怖を生み出します。

『三角奸計』

大学時代に友人だった桐山、茂木、宇治原の3人が、5年ぶりにリモートで飲み会をします。

楽しく盛り上がっていたはずが、桐山のチャットボックスに突然、宇治原からメッセージが届きます。

「いまからあいつを殺しに行く」

宇治原は飲み会の間に、ある理由から茂木に殺したいほどの憎しみを覚えたのです。

リモートなので、登場人物同士が直接会っていないところがポイントです。

お互いの居場所が離れている分、殺すのはもちろん殺しをやめさせることもできず、そこが読み手を一層ハラハラさせてくれます。

三角関係を思わせるタイトルもウィットに富んでいていいですね!

『#拡散希望』

主人公が住む島は、島民が150人ほどしかおらず、その中で小学生は主人公を含めて4人だけ。

4人はiPhoneを使って島の動画を配信しますが、そのせいで大変な事件に巻き込まれてしまいます。

迷惑系YouTuberとの接触、彼の謎の死、急によそよそしくなった島民、そして仲間の死―。

息をつく暇なくトラブルが襲い掛かってくる、スリル満点の物語。

のどかな島が、どんどん閉鎖的で逃げ場のない場所に変わっていく様子が恐ろしい…!

口コミで異例の翻訳出版が決まった作品

二転三転どころか四転も五転もして、全く予測できない展開が続くので、ワクワクとドキドキが止まりません。

文章のテンポも良く、読み始めたが最後、一気読みせずにはいられなくなる作品です。

特に『#拡散希望』は高く評価されており、第74回日本推理作家協会賞の短編部門で受賞したほど。

ちなみにこの受賞により結城真一郎さんは、「平成生まれで初めて日本推理作家協会賞を受賞した作家」として、より名前が知られるようになりました。

さらに『#拡散希望』は、発売前にプロモーションとしてWEB公開されていたのですが、あまりの面白さにあっという間に話題となりました。

そして口コミがなんと海を越えて韓国まで広がり、日本での発売前にもかかわらず、韓国での翻訳出版が決まったそうです。

これはかなり異例のことであり、本書の話題性をさらに高めました。

展開の面白さもさることながら、今の時代ならではの風潮やツールが多く出てくるところも、魅力のひとつです。

激化する中学受験、マッチングアプリやパパ活、精子提供で生まれた子供、リモート飲み会やウーバーイーツ、孤島にまで普及したiPhone。

いずれも令和のリアリティに溢れており、作品に「身近な世界での異常な出来事」という面白さを与えています。

めまぐるしい展開やイマドキ感のあるミステリーを楽しみたい方は、ぜひ『#真相をお話しします』を読んでみてください!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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