『恐るべき太陽』- 鬼才が放つクリスティへの挑戦作。最後に残るのは誰なのか

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フランスの大人気作家ピエールが、セミナー「創作アトリエ」を開催した。

場所は南太平洋、太陽に照らされ輝くヒバオア島。

この小さな楽園に、セミナーの参加者として、5人の作家志望の女性がやって来た。

3万以上という応募者の中から選ばれた彼女たちは、この島に滞在し、数日間にわたるピエールの創作講座を受ける予定だった。

ところが当の本人であるピエールが、突然失踪してしまう。

さらに参加者の女性たちも、何者かに次々に殺されていく。

どんどん減っていく人数。

最後まで生き延びるのは誰か、そしてこの楽園での惨劇がもたらす意味とは何なのか。

アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』のオマージュ作品として生み出された、挑戦状的な一冊!

目次

ホストは消え、ゲストは殺される

著:ミシェル・ビュッシ, 翻訳:平岡敦
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『恐るべき太陽』は、ポリネシアの孤島ヒバオアを舞台とした本格ミステリーです。

タヒチから飛行機で4時間、青緑色に輝く海に浮かぶこの島は、画家ゴーギャンや歌手ジャック・ブレルがこよなく愛し、眠る地としても知られています。

作中でも、エメラルド色の山やヤシの木に囲まれた砂浜といった美しい描写が多く、異国情緒たっぷりな様子に読者はうっとり。

なのに、こんなにも美しい楽園で、血沸き肉躍るような連続殺人が起こるのです。

まずは主催者であるピエールが姿を消し、それを皮切りに参加者たちが続々と死体となって発見されます。

一人また一人と減っていく様子は、まさにアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』そのもの。

もちろんストーリーは全くの別物なのですが、暗雲が急激に立ち込めるような惨状、募る不安、止まらない疑心暗鬼は、クリスティ作品ばりの緊張感で読者を高揚させてくれます。

しかもピエールが失踪前に残した意味深な言葉が、ますますもって読者のテンションを上げるのです。

さらに面白いのが、参加者の女性たちが作家志望で、高い思考力を持っていること。

人気ブロガーやパリ警察の警部、黒真珠の養殖業者など個性豊かなメンバーが集まっており、それぞれがこれまた個性的なアプローチで事件を分析し、興味深い意見を聞かせてくれます。

読者はそれらを参考にしつつ自らも推理するのですが、「あの人物が怪しいぞ」とピーンと来たところで、まさにその人物が殺されたりするのですよね(苦笑)

この肩透かしの匙加減が抜群に上手いところも、本書の魅力です。

正体が見えない語り手

『恐るべき太陽』では、語り手にも工夫が凝らしてあります。

メインの語り手は大きくふたつに分かれており、まず一人目は、参加者に同行した10代の娘マイマ。

クルクルの巻き毛をした無邪気で可愛らしい女の子ですが、持ち前の勇気と好奇心とで事件に首を突っ込み、奮闘します。

そしてもう片方の語り手、これが非常に厄介で、正体がよくわからないのです。

参加者のうちの「誰か」であることはわかるのですが、作者が意図的に正体をはぐらかすような描写をしているので、読者は大いに惑わされます。

その人物がどの立ち位置から語っているのか、それ次第で状況の整理が違ってくるので、読者は事件の謎解きと並行して、語り手の正体についても推理をすることになります。

本来は推理のヒントをくれるはずの語り手が味方であるとは限らず、これが本書のミステリーとしての面白味をさらにアップさせています。

語り手の正体について読者にハッキリとわかるのは、終盤になってから。

その瞬間が、本書最大の見どころ!

おそらく多くの読者が、自分がずっと騙されていたことに気が付いてビックリし、最初から読み直したくなると思います。

注意深く再読してみると、あちこちにたくさんのカラクリがあったことがわかって、またビックリ。

一度目のみならず二度目までも新鮮な驚きで楽しませてくれるのですから、いやはや、作者の見事な手腕に脱帽です。

騙される喜びにやみつきに

『恐るべき太陽』の作者ミシェル・ビュッシ氏は、フランスで今、特に人気の高いミステリー作家です。

ルブラン賞やフロベール賞といった数々の文学賞を受賞し、フランス国内だけでも100万部を超えるようなベストセラーを出し、注目を集めています。

その作風を一言で言うなら「巧妙な隠し技」であり、ミシェル・ビュッシさんの作品には、魔術のような面白味があります。

何らかの仕掛けがあることはわかるけれど、明確には分からないので、読者は身構え、用心し、探りながら読むのですが、最終的に判明するのは全くの予想外の罠。

この種明かしの瞬間が楽しくて、やみつきになってしまうのですよね。

本書『恐るべき太陽』も、まさにその類の作品です。

読者はワクワクと警戒しながら読み、そして最終的には案の定、良い意味で裏切られます。

この騙される喜びこそがミステリーの醍醐味であり、そういう意味で『恐るべき太陽』は、ミステリー好きを心行くまで楽しませてくれる傑作です。

ただ、ひとつだけ老婆心から注意しておきたいのですが、本書は『そして誰もいなくなった』のオマージュ作品であることからもわかるように、アガサ・クリスティ絡みのネタが満載です。

その過程で、『そして誰もいなくなった』はもちろん、『アクロイド殺し』のネタバレも行われています。

未読の方は、先にこれらを読んでおくことをおすすめします。

そうすることで、本書をより深く気持ちよく楽しめるようになりますので!

著:ミシェル・ビュッシ, 翻訳:平岡敦
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著:アガサ・クリスティー, 著:青木 久惠, 翻訳:青木久惠
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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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