【二階堂黎人】二階堂蘭子シリーズのオススメと読む順番

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二階堂黎人作家生活25周年記念、ということで「二階堂蘭子シリーズ」を振り返ってみましょうか。

映画女優のような豊かな巻き毛が特徴の美人探偵・二階堂蘭子(にかいどうらんこ)が活躍するシリーズで、中でも「世界最長の推理小説」である『人狼城の恐怖』が有名ですね。

非常に面白いシリーズなのですが、本格好きとしてオススメできるものとそうでないものがハッキリ分かれてしまっているのも特徴。

どうぞ、参考にしていただければ幸いです。

目次

1.『地獄の奇術師』

二階堂蘭子シリーズの1作目であり、二階堂黎人さんのデビュー作。

「蘭子」という名前が「乱歩」を意識しているように、江戸川乱歩を彷彿とさせる雰囲気が満載で、超王道の古き良きミステリーです。

本作で扱われる密室トリック、私的には結構好きなんですけど、どうやら賛否あるらしい。

トリックが凄い!というのではなく、物語の雰囲気や蘭子のキャラクターを楽しむ作品ですかね。

十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか?

というあらすじだけでも十分魅力じゃないですか。

この頃、蘭子はまだ女子高生。時が経つのは早いものです。

オススメ度:★★★★

2.『吸血の家』

過去に起きた密室事件と、現在で起こる密室事件の謎を蘭子が解いていくシリーズ2作目。

ズバリ、超おすすめです。

江戸川乱歩、横溝正史っぽい雰囲気もポイントですが、なにより24年前の「足跡なき殺人」で使われるトリックが絶品。

初めて読んだ時の衝撃は今でも忘れられません。これは味わっておきましょう。

少々詰め込みすぎでは?と思ってしまうくらい色んな要素が含まれていて、とにかく贅沢な作品という印象。

蘭子シリーズの中で、という意味ではなく、本格推理小説としての名作として強くオススメします。

シリーズ1作目の『地獄の奇術師』を読んでいなくても十分に楽しめるので、まずはこの作品からでも蘭子シリーズに挑戦してみてください。

オススメ度:★★★★★

3.『聖アウスラ修道院の惨劇』

ヨハネ黙示録に見立てた殺人、密室殺人、暗号文、修道院、首無し死体、地下の秘密、脱出劇、などなど、本格ミステリな要素が詰め込まれた第3長編。

解説に「本格ミステリマニアのための本格ミステリ」とありますが、その通りとしか言いようがありません。

これを嫌いな本格ミステリマニアなんていないでしょう。

とにかくプロットとシチュエーションが冴え渡る、文句無しの探偵モノ。

思わず「そうそう!コレだよコレ!」と叫んでしまうような、ザ・本格ミステリーです。

そして、物語の最後にどんでん返る。

オススメ度:★★★★

4.『悪霊の館』

二重鍵密室の首なし死体に、洋館を彷徨い歩く西洋甲胄の亡霊。遺産を巡って争う一族に、双子やら魔術やらを詰め込んだ、これもまた贅沢すぎるシリーズ第四弾。

文庫本でも870ページ超えの大作ですが、人狼城を先に読んでいると物足りなさを覚えてしまう不思議。

「古き良き本格推理小説」という言葉がぴったりで、横溝作品のようなおどろおどろしい雰囲気が読む手を加速させていきます。

加えて〈密室講義〉まで披露しちゃいますからねえ。この〈密室講義〉だけでも読む価値アリ。

蘭子シリーズの中でも上位で好きな作品です。

オススメ度:★★★★

5.『人狼城の恐怖』

世界最長の推理小説にして、やはり二階堂蘭子シリーズの最高傑作でしょう。

「第一部 ドイツ編」「第二部 フランス編」「第三部 探偵編」「第四部 解決編」の全四部作からなる超大作。だいぶ時間を費やすことになりますが、ミステリ好きなら読んで損ということはまずありません。

ドイツとフランス、両国の国境に跨った渓谷にそびえ立つ古城「人狼城」。

第一部ではそのドイツ側、《銀の狼城》に招待された10人が残忍な連続殺人に巻き込まれていきます。

第二部では、フランス側の《青の狼城》で惨劇が。

そして第三部でやっと蘭子が登場し、第四部をまるまる解決編に当てるという豪快っぷりです。

これ以上ないくらいに本格要素が詰め込まれていて、このボリュームでありながら無駄な部分がない。そして、メインとなる、あの大トリックの、完成度。

本作を読んでしまうと、どうしても他の作品に読み応えを感じなくなってしまうのが唯一の難点です。

オススメ度:★★★★★+★

6.『悪魔のラビリンス』

〈明智小五郎と怪人二十面相〉〈ホームズとモリアーティ教授〉のようなライバル関係にある、二階堂蘭子と「魔王ラビリンス」の対決を描きます。

時系列的には『人狼城の恐怖』より前の物語で、蘭子VSラビリンスを描いた「ラビリンス・サーガ」と呼ばれるシリーズのプロローグ的作品。

寝台特急での密室をメインに探偵と怪人が火花を散らす、という展開はこの手の探偵モノが好きは人にはたまらないでしょう。

しかし、ここら辺から蘭子シリーズのタイプが少し変わってくるので、初期の蘭子が好きな私にとっては評価が少し難しい……(-ω-。)

オススメ度:★★★

7.『魔術王事件』

『悪魔のラビリンス』に続き、蘭子と魔王ラビリンスの闘いを描いた長編。

『悪魔のラビリンス』を楽しめたなら読みましょう。

舞台も雰囲気も好きなので、冒険活劇としては面白いんですけど、最初の頃の蘭子シリーズと違うんですよねえ。

オススメ度:★★

8.『双面獣事件』

『魔術王事件』と同時期に起きた事件を描きます。

「双面獣」という魅力的な存在が登場しますが、ほとんど冒険小説であり、推理小説として楽しむ作品ではないでしょう。

あくまで冒険小説として割り切れば楽しめると思います。

ただし、シリーズを1作目『地獄の奇術師』から『人狼城の恐怖』まで順番に読んで蘭子シリーズを好きになった方には、少し疑問が残るかもしれません。

最初の頃とはほとんど別物と言って良い作風なので、好みが大きく分かれてしまうはずです。

オススメ度:★★

9.『覇王の死 二階堂蘭子の帰還』

魔王ラビリンスとの対決に終止符が打たれます。

『悪魔のラビリンス』『魔術王事件』『双面獣事件』と続いたラビリンスシリーズですが、やはり好みが分かれると思われます(実際にかなり賛否ありますね)。

もし初めて読んだ作品が『悪魔のラビリンス』であり、それを面白いと思って蘭子シリーズを読み続けたなら「そういうものだ」として楽しめるでしょう。

しかし、初期の頃の蘭子シリーズが面白すぎた。そして人狼城が傑作すぎた。

面白すぎる作品があるというのも罪なものです。

オススメ度:★★

10.『巨大幽霊マンモス事件』

一時はどうなるかと思いましたが、「ラビリンス・サーガ」よりグッと面白くなって帰ってきました!(歓喜)

人狼城より前の物語。

シュペア老人が書いた〈巨大幽霊マンモス事件〉という小説を読んで、蘭子が解決していくという構成です。

巨大幽霊マンモスという魅力的なキーワードに加え、作中で起きた密室殺人の真相が驚異的。そんなバカな!と言ってしまうくらいの奇跡の密室です。

ただし本作は、短編集『ユリ迷宮』に収められた「ロシア館の謎」の続編であるので、事前に「ロシア館の謎」を読んでおくことを強くオススメします。

オススメ度:★★★★

まとめ

長編は以上です。

つまり二階堂蘭子シリーズは、

1作目『地獄の奇術師 (講談社文庫)

2作目『吸血の家 (講談社文庫)

3作目『聖アウスラ修道院の惨劇 (講談社文庫)

4作目『悪霊の館 (講談社文庫)

5作目『人狼城の恐怖(講談社文庫)

までを強くオススメしたいということ。ここまでは本当に面白い。もうこれは、ミステリ好きなら絶対です。

しかし、6作目『悪魔のラビリンス』から『覇王の死 二階堂蘭子の帰還』までの「ラビリンス・サーガ」はお好みでどうぞ……という感じですかねえ(ノω`*)

短編集はどれもオススメ。

そんなわけで長編はどうしても評価が大きく分かれてしまうのですが、

短編集である、

・『ユリ迷宮 (講談社文庫)

・『バラ迷宮 (講談社文庫)

・『ラン迷宮 二階堂蘭子探偵集 (講談社文庫)

の3作品はどれもオススメできる内容になっております。

ぜひお気軽に。

でもやはり、『人狼城』が面白すぎるんですよねえ……。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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