読書日記– category –
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『修道女フィデルマの慧眼』- 中世アイルランドは、こんなにもミステリに向いている【読書日記】
歴史ミステリに手を出すとき、「難しそう」「知識が必要そう」と一歩引いてしまう人もいるかもしれない。 でも、もし最初の一冊で世界観に一気に引き込まれ、「歴史×ミステリってめちゃくちゃ面白いじゃん!」と感動したいなら、この『修道女フィデルマの... -
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『死と奇術師』『空に浮かぶ密室』- トム・ミードが蘇らせた「謎解きの遊園地」【読書日記】
「懐かしいだけじゃ、ここまでは書けない」 これが、トム・ミードの『死と奇術師』『空に浮かぶ密室』を読んだ私の最初の感想だった。 世の中には「黄金期ミステリ風」や「オマージュ系」と称される作品が山ほどある。だが、その多くは雰囲気に寄りかかっ... -
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小説版『サイレントヒルf』- ゲームの裏側に沈んでいた本当の恐怖。ノベライズという形式が持つ可能性【読書日記】
「ノベライズというのは、どうせゲームのおまけだろう」 ──そんなイメージを覆すような小説が現れた。それが、黒史郎氏による『サイレントヒルf』である。 この作品は、コナミの人気ホラーゲームシリーズ『サイレントヒル』の最新作『f』をベースにした完... -
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『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』- 封印されたこどもの記憶が、ページの隙間から這い出してくる【読書日記】
怪談を読むとき、「怖い」と「気味が悪い」というのは、じつはちょっと違う感覚だよな、と思う。 前者はびっくり系、後者はジメジメとくるやつ。 蛙坂須美の『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』は、まさにその「きみのわるさ」に全振りした一冊だった... -
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『謎ときエドガー・アラン・ポー』- 200年越しの挑戦状。誰も気づかなかった、もうひとつの完全犯罪【読書日記】
「なぜポーは、たった3本でデュパン終わらせたのか?」 ミステリ好きなら一度は疑問に思ったことがあると思う。 探偵小説の元祖、エドガー・アラン・ポー。あの『モルグ街の殺人』で世界初の名探偵オーギュスト・デュパンを登場させた伝説の作家だ。 しか... -
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『聖女の論理、探偵の原罪』- 聖女がすべてを見通す世界で、探偵は何をするのか【読書日記】
最近のミステリ界隈は、とにかく「特殊設定」が熱い。 タイムリープ、架空言語、記憶改変、謎の世界観……そうしたルールを作りあげた上で、それでも論理で殴ってくる作品が増えてきた。 そのなかでも、本作『聖女の論理、探偵の原罪』は群を抜いて挑戦的だ... -
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恒川光太郎20年目の異端作『ジャガー・ワールド』- 地獄の王国で、僕らは「生贄」だった【読書日記】
恒川光太郎と聞いてまず思い浮かぶのは、『夜市』のあの幻想的な切なさだとか、『秋の牢獄』の静かな異界感とか、そういう「短めだけど濃いやつ」だと思う。 私もそうだった。「恒川光太郎=短編」と、脳に刷り込まれていた。 だからだ。この『ジャガー・... -
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『悪魔情報』- あの頃のインターネットに戻りたいあなたへ。オモコロ発、笑って震えるネット怪談の新境地【読書日記】
インターネット怪談と聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。 某まとめブログ? 2ちゃんの怖い話? あるいは、深夜にYouTubeを漁ってたどり着いた変な都市伝説動画かもしれない。 私にとってそれは、小学生の頃に見てしまった「洒落にならない話まとめス... -
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『ナイフ投げ師』- 濃すぎる傑作短編集。ミルハウザーは、なぜこんなに怖くて、美しいのか【読書日記】
スティーヴン・ミルハウザーの本を初めて読んだとき、「絶対ハマるやつだ」と直感した。現実と幻想の境界を曖昧にし、緻密な筆致で美と不安を同居させる作風。その代表とも言える短編集が、この『ナイフ投げ師』である。 収録作は12編。それぞれがまるで異... -
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『妹が死んだ時の海亀』- 何が怖いって、説明できないことだ【読書日記】
「怖くないのに、不穏で気になる」 そんな読後感を、何度も何度も味わった。 朱雀門出の『妹が死んだ時の海亀』は、「怪談」として棚に並んでいながら、私たちがよく知る恐怖体験とはちょっとばかり毛色が違う。いや、「ちょっと」なんてものではないかも...
