背筋『穢れた聖地巡礼について』- ヤバすぎる心霊スポットと愚かな三人。次は誰の番…?

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フリー編集者の小林は、ホラー系YouTuberチャンイケのファンブックを出版する企画を立てた。

チャンイケこと池田は、様々な心霊スポットへの潜入動画『オカルトヤンキーch』の配信で人気があり、ファンブックの需要がありそうだったのだ。

しかしこの企画を出版社に認めてもらうには、もっと読者が喜びそうな形にする必要があった。

そこで小林と池田は、動画の再生回数が特に多かった心霊スポットについて、背景を脚色することにした。

ありていに言えば、ヤラセ。いわくありげな話をでっち上げることで、より大衆ウケしそうなネタに改変するのだ。

しかしいくつかの心霊スポットを調べているうちに、二人は予想外に根深いモノが潜んでいることを知り―。

目次

まさに鳥肌モノ!三つの心霊スポット

『穢れた聖地巡礼について』は、YouTuberの池田が書籍化のために心霊スポットを調べる物語です。

より面白くするために脚色していく過程で恐ろしい事実を知り、逃れようのない闇に沈んでいきます。

体験者の証言や写真も掲載されているためリアリティがあり、ページをぱらぱらとめくっているだけで怖気立ってくる、嫌な気配ムンムンの一冊です。

まず取り扱われている三ヶ所の心霊スポットが、超怖い!

①変態小屋
山奥の不気味な廃屋に、人を隠し撮りしたような写真が大量にバラ撒かれています。
カラー写真から古い白黒写真まであり、目的は不明です。
でも調べていくうちに、ターゲットの写真を投げ捨てることで呪い殺す場所だと判明。
どうやら呪いは成功するようですが、その後呪いをかけた人の子供が狂ってしまうらしく…?

②天国病院
死者に会えると噂されている廃病院です。
かつてある女性が、退院していた祖母の死を願ってしまったことがありました。
そのせいか祖母は死んでしまうのですが、その後生まれた我が子が、祖母の霊が入って来たかのように、恨みを口にするようになります。
死者に会えるって、もしかしてそういう意味…?

③輪廻ラブホ
行くと必ず妊娠すると言われていた廃ラブホ。
なんとも薄気味の悪い妊婦の絵があり、そばには「げんきなあなたがうまれます」という、これまた不気味なメッセージが…。
交際相手の死や赤ちゃんの置き去りなど、血生臭い事件も起こっており、いろんな意味でヤバい場所です。

いずれのスポットも、怖い要素が満載ですよね!

意味不明なところがまた恐ろしくて、本来なら幸せなはずの妊娠ですら、なんとなく汚らわしく思えてくるほど。
一体これらの場所には、何が隠されているのでしょう。

呪われた人と呪った人が辿る道

『穢れた聖地巡礼について』は池田を中心に物語が進んでいきますが、池田以外に注目すべき人物が二人います。

池田に書籍化の話を持ってきた編集者の小林と、霊を視る力がある女性ライターの宝条。

三人はそれぞれ、人を死なせてしまったかもしれない、という過去を持っています。

かもしれない、というのは、彼らが直接殺したわけではないからです。

たとえば池田の場合、「鈴木優子」という女子大生が好きだったのですが、フラれたため、つい彼女の死を願ってしまいました。

すると後日、ニュースで「鈴木優子」が轢き逃げで死んだことを知り、池田は大ショックを受けます。

小林にも宝条にも、自ら手を下したわけではないにしても、結果的に人を死に追いやってしまった過去があります。

ここで大事なのが、例の心霊スポットでも、直接的ではない死が絡んでいる点。

変態小屋では写真で人を呪い殺し、天国病院でも祖母をある意味呪い殺しています。

池田たち三人の過去と、どこか通ずるところがあると思いませんか?

そしてもうひとつの心霊スポット・輪廻ラブホには、「げんきなあなたがうまれます」という謎のメッセージがありました。

「うまれる」といえば、変態小屋でも天国病院でも、呪いをかけた本人の子供が後に生まれるのですが、どちらも奇妙な言動をとるようになりますね。

死んだ祖母の恨みを口にしたりと、まるで祖母が生まれ変わってきたみたいです。

カンの良い人はここで気付いたかもしれませんね。

そう、3つ目の心霊スポットの名前は、「輪廻」ラブホ。

死んだら生まれ変わるのです、呪い殺された人ですら、きっと―。

かつて人を殺したかもしれない池田と小林と宝条は、これらの心霊スポットを調べた末、どんな真実に辿り着くのでしょうか。

そして彼らが迎える結末は?

ラストでは呪いと陰謀にまみれた恐ろしい展開が待っています!

数々の仕掛けで骨の髄まで凍り付く一冊

『穢れた聖地巡礼について』は、小説投稿サイト「カクヨム」でデビューした注目のホラー作家・背筋さんの二作目です。

一作目『近畿地方のある場所について』では、近畿地方の怪談や事件を扱うモキュメンタリーで読者を恐怖のどん底に叩き落してくれましたが、今作も負けず劣らず怖いです。

何が怖いって、各心霊スポットのリアリティと、呪いの禍々しさ!

掲載写真は正視できないくらい迫力があるし、呪いも人間の生理的な部分を逆撫でしてくるような厭らしさがあります。

その上「六部殺し」という実在する怪談や、ヒトコワ要素も絡んできますし、さらには目を疑いたくなるようなどんでん返しも!

もう冒頭からラストまで、一瞬も気が休まる暇がないくらいビクビクさせられますよ。

ミステリーとしての仕掛けも見事で、各心霊スポットの真実と、池田たちの後ろ暗い過去との関連性がジワジワと見えてくる過程は、新鮮かつ巧妙。

読者は予想だにしなかった展開に驚きつつも、背後に隠されていた繋がりに着実に気付いていくのです。

そして真相があらかた読めた後、ラストで目に入ってくる一言がたまらない!

これ、本気で心臓が縮み上がります。

心臓に自信のある方は、その一言を見た後、本書のカバーを外してみましょう。

更なる仕掛けが、トドメとばかりに読者に襲い掛かってきますよ〜。

このように『穢れた聖地巡礼について』は、超絶恐ろしく作り込まれた一冊です。

ホラー好きは必読!

骨の髄まで凍り付くような恐怖を、ぜひお楽しみください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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