『チェスナットマン』-手首のない死体の側には、栗の人形(チェスナットマン)が残されていた

  • URLをコピーしました!

1989年10月31日、斧を使った一家惨殺事件の発生から、物語は幕を開ける。

凄惨な事件から長い年月が経ち、コペンハーゲン警察重大犯罪課の女性刑事である主人公のナヤ・トゥリーンは、パートナーのマーク・ヘスとともに、若いシングルマザーを狙った連続殺人事件の捜査にあたっていた。

被害者は身体の一部を生きたまま切断されており、凄惨な現場には、栗で作られた小さな人形「チェスナットマン」が残されていたのである。

事件の貴重な証拠品である栗人形には、1年前の誘拐事件で殺害された社会問題大臣の娘の指紋が付着していることが判明する。

トゥリーンはヘスと協力して、服役中の犯人や少女の母親など、関係者周辺の調査を始めるが、その間にも次々と事件が巻き起こる事態に……。

トゥリーンとヘスを代表とする警察側の奮闘と、見え隠れする犯人の正体や目的。

刑事と犯人の互いに譲らぬ戦いを巧みに描いた、デンマーク原産のミステリー小説をお楽しみください。

目次

ボリューミーだが、長さを感じさせないストーリー展開

本作品は700ページ近くもあり、ミステリー小説の中でも特にボリューミーな内容に仕上がっています。

これまで、長めの小説を読んだことがない方は、すべて読み切れるか分からない不安を感じてしまうかもしれません。

しかし「チェスナットマン」の物語は、各章ごとにコンパクトな構成となっており、かつスピーディーに展開されていくため、スラスラと読み進められる工夫が施されています。

そのため小説を読み慣れていない方でも、まるで映画やドラマを観ているかのような感覚で事件の真相に迫っていくことができます。

また、序盤から度重なる残虐な殺人事件、刑事の苦悩、多彩な登場人物などの描写がふんだんに盛り込まれているため、途中で飽きさせないほどの没入感を体験できるのも、この本の魅力です。

特に本書の冒頭では、生きたまま身体の一部が切断されるという残酷な事件が描かれており、いやでも脳裏に浮かんでくるほどのインパクトを受けることになります。

事件モノのミステリー小説が好きな方はもちろん、700ページというボリューミーな内容から集められた情報をもとに、じっくりと推理していきたい方にもおすすめの1冊です。

多方面で巻き起こる事件と紐付けて、犯人の真相に迫る面白さ

この本は、700ページというボリューミーな内容であるがゆえに、巻き起こる事件や登場人物、ストーリー展開に関する情報量がかなり多くなっています。

1989年に発生した一家殺人事件、トゥリーンとヘスが事件解決を目指すシングルマザー連続殺人事件、そして栗人形「チェスナットマン」の調査から辿り着いた1年前の少女殺人事件。

事件の要素を取り上げただけでも、時系列を追って情報を整理しなければ、犯人を推理することは至難の技といえます。

また、主人公をはじめとする多彩な登場人物も事件に絡んでくるため、最初のうちはキャラクターを覚えることだけで苦労するかもしれません。

しかし一度馴染んでしまえば、予想外の展開に度々驚かされる過程の中で、推理小説の醍醐味を味わうことができます。

物語の序盤から複数通りのストーリー展開を予想しながら読み進めるものの、途中で新たな事件が起きたり怪しい人物が登場したりするため、なかなか推理した通りにはいかないことでしょう。

この要素こそが本書の奥深さであり、興味深い点でもあります。

最初のうちは悔しい気持ちでいっぱいになるかもしれませんが、ストーリー中盤から終盤にかけてじわじわと犯人の真相に迫っていく描写が盛り沢山のため、最後にはスッキリとした気持ちで読み終えることができます。

Netflixドラマ原作の絶賛北欧ミステリー!

スヴァイストロプさんは、デンマークのコペンハーゲン大学で文学と歴史の修士号を取得した後に「デンマーク・フィルム・スクール」で制作・脚本の分野を志します。

そこで学んだ知見を活かして制作されたドラマ「The Killing」は、デンマーク史上最高視聴率を叩き出し、ハリウッドでもリメイクされたことで注目を集めました。

その後、小説家としての道を歩み始め、デビュー作として創作された「チェスナットマン」はバリー賞の最優秀新人賞を受賞するほどの人気作品です。

本作は、2021年9月29日に映像ストリーミングサービス「Netflix」で映画化されており、700ページものボリューム感満載の原作ストーリーを凝縮した構成に仕上がっています。

推理要素満載のストーリー展開は、原作・映画の形式を問わず楽しむことができますが、自身のペースでじっくりと推理をしていきたい方は、まずは原作から読むことをおすすめします。

また、ミステリー小説ならではの謎解き要素だけでなく、刑事のトゥリーンとヘスを代表とする警察側と犯人の攻防戦も本作の注目ポイントです。

事件解決という共通の目的によって団結力が強くなっていくトゥリーンとヘスの行末を見守りながら、「2人の力で真犯人を見つけ出してくれ!」と応援したくなってしまうことでしょう。

先の読めない推理ミステリー小説を求めている方はもちろん、事件解決に迫る登場人物の関係性の変化に感情移入したい方も、ぜひ読んでみてください。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

目次