早坂吝『四元館の殺人』- 本格ミステリの奇才が館ミステリの新たなる地平を切り開く

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新たな犯罪計画を企て犯罪オークションを開催する犯人のAI・以相(いあ)。

そのオークションの落札主はとある館に住むたった10歳の少女だった。

何者かに殺された従姉の復讐のため、その少女は殺人を叶えたいという……。

そんな不穏な話を知った探偵AIの相以(あい)は、なんとしてもその犯罪を阻止すべく助手の輔と山奥の館へ向かう。

雪山にたたずむ奇怪な館・四元館、そしてそこに住まう怪しい四元一族とは何者なのか?

閉ざされた館で発生する不可思議な事件の真相とは一体。

物証が見つからないなか、相以は窮地を脱することができるのか?

館ミステリの謎に挑む―!

目次

本格館ものミステリーを楽しめる

大人気、探偵AIシリーズの第三弾です。

このシリーズは人工知能の探偵である相以が、以相による犯罪の謎を解き明かしていくというもの。

毎回人工知能を活かしたトリックを楽しむことができ、その斬新な発想が多くの読者に愛されています。

今回の舞台は、四元館という館の中で起きる事件。

ミステリー小説の定番でもある館ものですが、今作も例に漏れず「館あるある」のような出来事が次々に起こります。

遺産相続を巡る一族の争い、電話線が切れて外部と連絡が取れなくなる、橋が落ちて館から出られなくなるなどなど。

あえて意図して館もののミステリー小説で起こりうる要素を取り入れているというのがまたユニークです。

探偵AIシリーズは他のミステリー小説とは一線を画すような設定やトリックが使われていることが多いですが、今作ではきちんと本格ミステリー小説の要素もたっぷり楽しむことができるでしょう。

人工知能を活かした謎解きやトリックもふんだんに使われており、この物語だからこそ生きる仕掛けがさまざまなところに隠れています。

前作や前々作を読んであまり合わなかった……と感じた方も、館を舞台にしたミステリー小説がお好きならぜひ読んでみてください。

大掛かりなバカミスを楽しみたい方におすすめ

早坂吝氏は「○○○○○○○○殺人事件」でミステリー作家としてデビューしました。他にはない斬新な発想が高く評価され、その後の作品でもその発想力は健在です。

現実にはありえないようなトリックや奇想天外な展開、ラストを迎える作品に使われる「バカミス」という言葉で評されることも多いです。

ですが話のつじつまが合わない、作家だけが一人で楽しんでいるというものではなく、隅々まで伏線が張り巡らされています。

普通に読んでいても、早坂氏の作風に慣れていてもなかなか見破ることができないトリックの数科すは、ハマる人にはとことんハマる作風です。

この探偵AIシリーズは主人公が人工知能の探偵であるという点ですでにバカミスの要素がかなり強いですが、人工知能を活かした謎解きや昨今の現実の人工知能問題についても触れられており、その知識の深さに驚かされます。

前作、前々作でもその要素は十分に楽しめましたが、今作は「館もの」という、ミステリー小説の中では王道な設定の中で繰り広げられる大掛かりなトリックを楽しめます。

「そんなのありえない!」と思いながらもつい続きが気になってしまう、作者がこの物語をどう収束させるのかが気になってしまうような作品です。

ますますこれからが楽しみなシリーズ!

今作は探偵AIシリーズの第三弾です。

前作と前々作で主人公の相以と宿敵以相との関係性がじっくり描かれていたので、すでにシリーズを読んでいる方にとってはすんなり読み進めることができるでしょう。

このシリーズでは普通ならありえないようなトリックが使われていることも多いので、作風に慣れていることも読み進める上で大切なのかなと感じました。

ですがシリーズ未読の方が読んでも、館ものとして十分に楽しめる内容です。

登場人物の設定やこれまでの事件、以相との関係については前作、前々作を読んだ方がより詳しく理解できるでしょう。

普通の探偵ではなく人工知能を活かして謎解きをする探偵が主人公ですので、初見だとついていけないと感じる方もいるかもしれません。

早坂氏は2014年にデビューしたばかりの若手の作家です。作品数は少ないですがこの探偵AIシリーズは非常に人気が高く、今作が7月に発売されたばかりではあるもののすでに続編を楽しみにしているファンも多いです。

これまでにないようなミステリー小説が読みたいという方はぜひ手に取ってみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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