【自作ショートショート No.46】『ロボット介護士』

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高齢化が進む時代。

若者が減った代わりに増えたものがある。

それはロボットだ。

ロボットはさまざまな分野で活躍するようになり、人類を労働から開放した。

それは介護士業界でも同じことが言えた。

介護士業界の仕事は、すべてロボットが担うようになっていたのだ。

それではとある事例を見ていこう。

これは介護ロボットとS氏の日々を記録したものだ。

「昔は俺が老人の介護をしてたんだ。それが逆に介護される立場になるとはなぁ」

「誰もが老いてしまうものですよ」

介護ロボットの言葉に、S氏は力なく笑う。

S氏は体調不良が原因で、長いこと続けていた仕事を辞め、介護ロボットと余生を過ごすことにした。

介護ロボットは老いたS氏のために、勤勉に働いている。

しかし、S氏はかつてのように元気よく働きたいと、時々癇癪を起こすことがあった。

「邪魔だ! 車椅子なんていらん!」

「しかし、あなた様の足はもう……」

「うるさい! 私を働かせろ! 私はまだ仕事ができるんだぁーーー!」

「あなた様……」

介護ロボットが優しくS氏を抱きしめる。

するとS氏の瞳からぽろりと粒がこぼれた。

「私には仕事しかないんだ。それを奪われたら、どう生きればいい? 頼む、教えてくれ……」

「それを私に教えることはできません」

「……だよな」

「ですが、答えを一緒に探すことはできます」

介護ロボットから飛び出した予想外の言葉。

それにS氏は目を見開いて驚いた。

「そうか、一緒に探してくれるか」

「はい、もちろんです」

「では、一緒に旅へ出よう。青臭い言葉だが、自分探しの旅というやつだ」

「かしこまりました」

こうして、S氏は介護ロボットと共に旅を始めた。

S氏の旅はとても静かなものだった。

人混みを避け、できるかぎり静かな土地をめぐっていく。

自然の中で高級ボトルを開けて飲むのが、S氏の楽しみになっていた。

とある村では、幼い子どもがロボットとともに遊んでいる光景を目にする。

「懐かしいな、私も昔はあんなことをよくしたものだ」

「ロボットが使われるようになって、もう長いですからね」

「そりゃ私も老いるわけだ」

S氏は少し寂しそうに、そうつぶやいた。

旅を続ける中でも、S氏は癇癪を起こすことが度々あった。

それでも介護ロボットは不満ひとつもらさず仕事を続ける。

「すまない、どうしても自分が抑えられない時があるんだ」

「それだけあなた様が働き者だったという証です。恥じるものではありません」

「私は働き者じゃないさ。働き者という言葉は、君にふさわしい」

「ありがとうございます」

癇癪を起こし暴れたあと、介護ロボットと仲直りをする時間。

この時が、S氏にはとても大切なもののように思えた。

とある湖の湖畔のホテル。

そこについて、S氏に異変が起きた。

S氏の体はついに、旅を続けることすらできなくなったのだ。

「どうしますか、元の家へ帰りますか?」

「寿命を迎えるなら、この湖で迎えたい。ダメか?」

「かしこまりました」

介護ロボットはすぐさま湖が見える土地にある、屋敷を購入した。

そこで介護ロボットは、S氏との最後の日々を過ごす。

冬のある日、ついにS氏が寿命を迎える。

「おまえのおかげでいい老後を過ごせたよ。ありがとう」

そう穏やかにつぶやくと、S氏はそのまま眠ったように動かなくなる。

S氏が息を引き取ったことを確認すると、介護ロボットはこうつぶやいた。

「再起動不可能。労働者型ロボットSの故障を確認します」

そうつぶやいた後、介護ロボットもまた動かなくなる。

そこへ搬送用のロボットカーが現れると、S氏と介護ロボットを連れて行ってしまった。

二人がどこへ連れて行かれたのかは、誰も知らない。

高齢化と共にロボットが増えすぎた時代。

旧式ロボットの介護もまた、ロボットが担当していたのだ。

(了)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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