東川篤哉『仕掛島』- 孤島の館で繰り広げられる、抱腹絶倒のユーモアミステリー

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弁護士の沙耶香は、瀬戸内海に浮かぶ孤島・斜島にやって来た。

ここには西大寺家の別荘『御影荘』があり、沙耶香は当主の遺言状を親族たちの前で読み上げる大役を任されていたのだ。

親族の一人を捜していた探偵の小早川も、同席した。

しかし遺言状を読み上げた次の日、相続人の一人が死体で発見された。

警察に連絡するも、嵐で船もヘリも来ることができず、一同は島に閉じ込められることに。

しかもそれを嘲笑うかのように、館では奇妙な出来事が起こり続ける。

やむなく自力で事件解決に挑む沙耶香と小早川。

やがて二人は、西大寺家がひた隠しにしていた23年前の悲劇を知ることになり―。

孤島での怪事件を、大胆なトリックと奇抜な展開とでユーモアたっぷりに書き上げた、空前絶後のミステリー!

目次

シリアスな舞台にユーモア満載!

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東川篤哉さんと言えば、シリアスとユーモラスとを絶妙に混ぜ込んだミステリーが特徴ですが、今作『仕掛島』もまさにそのものズバリな作品です。

孤島の殺人事件というコテコテの本格ミステリーでありながら、ギャグやツッコミが満載!

シリアスな流れの中、隙あらば笑いのタネがねじ込まれるので、時にハラハラ、時に大笑いしながら満喫できる一冊です。

舞台は岡山県の架空の孤島・斜島。

表紙絵でわかる通り、海から斜めに鋭く飛び出していて、全体が断崖絶壁のようになっている島です。

この島の構造が後々大きな鍵となってくるのですが、それはさておき、ここに岡山県有数の資産家・西大寺家の親族たちが集まり、弁護士立ち合いのもと遺言状を開示します。

弁護士は主人公の矢野沙耶香、同席するのは私立探偵の小早川隆生。

横溝正史の世界を彷彿とさせる始まりであり、今にも相続をめぐって一族での争いが始まりそうでワクワクさせてくれます。

そして期待を裏切らず、まずは遺言状開示の翌朝に、相続人の一人が死亡!(ニヤリ)

続いて嵐が来て、島はクローズドサークル状態に!(ニヤリ)

さらに一同が閉じ込められた館「御影荘」は、凝りに凝った作りで謎が多い!(ニヤリ)

このように『仕掛島』は本格ミステリーの超王道であり、孤島の館モノが好きな方にとってはニヤリ要素が満載!

しかもここから奇妙な出来事が次々に起こります。

鬼が夜中に宙に浮いていたり(!)、謎の小屋が突然現れたり消失したり(!)と、ビックリ展開の連続。

その合間合間に沙耶香と小早川の掛け合い漫才的なギャグが連発するので、息をつく暇が本気でありません。

推理で脳が、笑いで腹筋がかなり刺激されるので、ご覚悟を!

前代未聞の大仕掛け

さて、見どころが非常に多く、全てが見どころと言いたいくらいの『仕掛島』ですが、あえてひとつ挙げるとすれば、「仕掛け」でしょう。

タイトルもなっている通り、仕掛けはこの物語の最大のポイントであり、クライマックスを大いに盛り上げる一種の黒幕。

念のため言っておきますが、この仕掛けは一般的なミステリーの仕掛けやトリックと全く異なっており、まず見破ることはできません。

過去にどれほど本格ミステリーを読んできた方でも、たとえ灰色の脳細胞を持っていたとしても、おそらく予測は不可能。

それほど突拍子がなく、荒唐無稽であり、前代未聞の大仕掛けです。

あまりに「そんなのアリ!?」な展開に、度肝を三つくらい抜かれます、ええ本当に!

さすが東川篤哉さん、どこまでも読み手をギョッとさせてくれますね。

また、この大仕掛けの真相によって多くの伏線が回収されるのですが、その過程も実に見事です。

最初は全く推理も分析もできなかった謎の数々が、それはもう鮮やかにみるみる片付いていくのです。

さりげなく挿入された伏線も、後から「こういうことだったのか!」と合点がいき、読んでいて気持ち良くなるくらいです。

特に宙に浮く鬼の真相には、大いに納得!

それも含めて「仕掛け」は今作の中軸であり、これから読む方はぜひその正体や真相を楽しんでください。

そして目を丸くしながら、超ド派手なフィナーレを迎えてください。

約20年ぶりの期待の続編

『仕掛島』は、実は東川 篤哉さんの2005年の作品『館島』の続編だったりします。

続編と言っても事件に関するつながりはなく、時代も異なっています。

しかし設定やシチュエーションは非常に似通っており、『館島』も嵐の中クローズドサークルとなった館で起きた殺人事件を描いたものですし、舞台も瀬戸内海に浮かぶ架空の孤島と、『仕掛島』にそっくりです。

さらに主人公は私立探偵の小早川沙樹で、この名字からわかるように今作の探偵役・小早川隆生とはある関係があります。

他にも前作絡みのネタがちらほらと出てきます。

このように『仕掛島』は、『館島』と同じ世界での物語であり、時代の流れから「続編」と呼べる作品です。

約20年という時を経て登場した続編ですから、それだけで注目度が高く、期待の新作と言えますね。

物語としては独立しており、前作を読んでいない方でも問題なくついていけるのでご安心を。

とにかく、前作『館島』を読んだ方、クローズドサークル物が好きな方、ユーモアミステリーを愛する方に『仕掛島』はとことんおすすめです。

もちろん東川篤哉さんのファンの方も、畳みかけるようなギャグとシリアスとの応酬は、見ていてテンションが上がることでしょう!

読んで損なし、大仰天と大笑いとが約束されたような一冊です。

また『館島』もそうですが『仕掛島』も岡山県の瀬戸内海が舞台ですので、登場人物の多くが岡山弁を喋ります。

「~じゃけぇ」「~しちょる」といった語尾が特徴で、独特の温もりがあるので、ノスタルジーな雰囲気が好きな方にも親しみやすいかと思います。

様々な方向から楽しめる作品ですので、ぜひご一読を!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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