『真っ白な嘘』-新訳版が登場!『後ろを見るな』だけは、必ず最後にお読みください。

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ショートショートの名手であるフレドリック・ブラウンにより書かれ1962年に出版された短編集。

江戸川乱歩が編集したアンソロジー「世界推理短編傑作集」にも選出された「危ないやつら」など、確かな読み応えの短編ミステリが18篇収録されています。

「笑う肉屋」「アリスティードの鼻」「むきにくい小さな林檎」など、題名を見るだけでもどこかうすら寒い印象を受けませんか?

どの短編も奇抜な発想と軽快なプロットで物語が進み、最後にはあっと驚く結末を迎えます。

どの部分から読んでもOKですが、最後の短編「後ろを見るな」だけは“必ず”最後に読んでください

往年の名作ミステリ短編集を、新訳でお届けします。

目次

奇抜な発想と予想外の展開が魅力の18編

まず目に飛び込んでくるのが、

「どの作品から読んでも楽しめます。ただし、一番後ろに収録されている『後ろを見るな』だけは“必ず”最後に読んでください」

という旨の注意書き。

こう忠告されてしまうと、かえって先に「後ろを見るな」を読みたくなる気持ちにかられますが、この順番だけは絶対に守ってください!

読者が最後に『後ろを見るな』を読む前提で全ての構成が組み込まれています。

この仕掛けが斬新で、半世紀以上前の小説であるにもかかわらず新鮮さを感じることができました。

そのほかの短編も斬新な発想で書かれており、先も先もといった調子でぐいぐいと読み進めることができます。

短編それぞれのタイトルもとても秀逸で、読む前から不安な気持ちを植え付けられる感覚に。

本を手に取った瞬間、本を読む前からこの本・この作者の世界に引き込まれます。

小説自体の内容は、トリック・完全犯罪もの・どんでん返しものなど、いわゆるミステリと言われるようなジャンル。

とは言っても怖い話・ゾッとするような短編だけではなく、どことなくほっとするような話やとことん切なさを誘う短編もあり、作者のカラーの幅広さを実感することができます。

例えば、ゾッとしたい気分であれば「叫べ、沈黙よ」。

「誰も聞く人のいない森の奥で木が倒れたら、それは無音か、音はあるのだろうか」という哲学的な問いを下地に、とある事件の経過が語られます。

木が倒れた時に傍に聾者しかいなかったら、もしくは聾かどうかわからない人物しかいなかったら、その木は音を立てたのだろうか?

この問いかけを効果的に使うことで、犯人の非情さや人間の憎しみの深さが印象的に際立っています。

「普通の人が一番怖い」という話の展開で、読み終われば背筋がスーッと寒くなること間違いなしです。

ハッピーエンドのものを読みたかったら、「メリー・ゴー・ラウンド」。

カーニバルの会計係の者が殺され、金庫の中の金が消えていた。

その後カーニバルの所有者の甥のベッドの下から金が発見され、容疑者として捉えられてしまうが……という話です。

始まりは不穏なものですが、気持ちよく読み終わることができます。

ものによってはオチがわかりづらくちょっともやもやすることもありますが、そんなときはもう一度ゆっくり読み返せば解決できることも。

毒やブラックユーモアのえぐみはそれほどなく、今読まれているミステリの源流を感じることができるので楽しく読み進めることができます。

短いどんでん返し話が好きな方に特にオススメ!

この短編集の発表年が1962年ということもあり、現代のさまざまなミステリもの小説に大きな影響を与えているとされるこの短編集。

各話、奇抜な発想・予想外の展開に加えて思いがけず幅広い作風で、読者を飽きさせません。

限られた字数の中で話を展開させる「ショートショート」という形式の先駆けであり、それぞれの話にアッと驚く仕掛けや意外なオチが施されているので、短いどんでん返し話が好きな方に特にオススメな作品と言えます。

日本の有名なショートショート作家・星新一が推していたと言うと期待値が上がるのではないでしょうか?

またミステリものが中心ということもあり、人の悪意や猜疑心から生まれるドロドロとした恐怖を感じたい、「結局は人間が一番怖い」話を読みたい、という欲求にも応えてくれます。

発売以来何度か翻訳されてきた本作、今回また新たな新訳バージョンとして発売されることに!

ミステリ好き、怖い話好き、救いのない話好きの方は、読んで損はないはずです。

さらにこの作者、ミステリものの短編集だけでなくSFものや長編シリーズも刊行している多彩な作家。

この短編集でフレドリック・ブラウンを知ったという方は、他のSFや長編を読むという楽しみも残されています。

フレドリック・ブラウンのミステリ傑作選と言っても過言ではない本作、期待値を上げられるだけ上げて読んでみてください!

ただし、くれぐれも最後の話を読む順番だけにはご注意を。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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