櫛木理宇『監禁依存症』- 目には目をでは済まない残虐非道な復讐劇

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小諸は主に性犯罪者を弁護する弁護士。

過去に何件もの性犯罪を強引に示談にしてきたため、裁きを求める被害者側からはひどく憎まれていた。

ある時、出張で海外に向かった小諸のもとに、妻から連絡が入る。

一人息子が何者かに誘拐され、身代金を要求されたという。

しかも犯人からの連絡がなぜか突然途絶え、身代金を渡そうにも渡せない状態らしい。

犯人の目的は、身代金ではないのか?

だとすると、小諸への復讐が目的?

妻からの通報を受けた警察は、小諸に恨みを抱いているであろう性犯罪の被害者家族を当たってみるが、誘拐犯の正体は依然つかめない。

犯人は一体どういうつもりなのか、そして息子は無事でいるのだろうか。

この時の小諸は、事件の裏に一人の残忍な女が潜んでいることを、まだ知らなかった―。

目次

性犯罪者を助ける弁護士

『監禁依存症』は、凄惨な事件と、それを裏から操る女・浜真千代を描いた「依存症シリーズ」の第三弾です。

浜真千代のキャラクターがとても強烈なので、「真千代シリーズ」とも呼ばれていますね。

イヤミスとして人気のあるシリーズなのですが、今作もご多分に漏れず、良い意味でエグくて胸糞が悪いです。

まず、メインキャラクターの弁護士・小諸が酷すぎる。

この人は決して正義の弁護士ではなく、性犯罪者の味方ばかりして、被害者にとっては敵でしかない悪徳弁護士です。

なんせ性犯罪を受けた女性やその家族に対し、心の傷を抉るようなことを言い続けるのです。

「同意の上のことでしょう?」とか、「裁判を起こすなら、傍聴人たちの前で、被害の体験をひとつひとつ詳しく説明することになりますよ」とか。

被害者側は、ただでさえ傷付いているのに、こんなことを言われたら心がポッキリ折れて、裁判を起こす気力が失われてしまいます。

すると性犯罪者は不起訴処分となって、無罪放免。小諸はこれを狙っているのです。

もう本当に胸糞が悪くて、読みながら「小諸こそ裁かれればいいのに!」と思うほどです。

そして読者のそんな思いを汲むかのように、小諸に災難が訪れます。

一人息子が誘拐されてしまうのですが、真の災難はそれではなく、もっともっと残酷で無慈悲。

もちろん偶然起こる災難ではなく、入念に準備され、狙いすましたタイミングで起こり、小諸に最大のダメージを与えます。

そして裏で糸を操っている人物こそ、シリーズの立役者である浜真千代なのです!

忍び寄る真千代の影

浜真千代は、作者である櫛木理宇さんの作品の中でも最悪と言われている女性キャラクターです。

極めて冷酷で残虐非道な人物であり、己の理由や欲望に任せてターゲットを徹底的に痛めつけます。

相手が最もダメージを受ける方法を選んで、まるで凌辱するかのように苦しめ続け、やがて肉体も精神も崩壊させるのです。

この鬼畜の所業こそがシリーズの醍醐味であり、今作でもその残虐性は如何なく発揮されますよ。

今作の真千代のターゲットは、悪徳弁護士の小諸と女子大生の架乃です。

架乃は、一作目『殺人依存症』でも登場したキャラクターで、当時のトラウマを引きずりつつも強く生きようと頑張っています。

かつて性犯罪に遭ったという女子大生・絢と親しくなり、笑顔が増えていくのですが、そんな架乃に、真千代はあの手この手でジワジワと近づいていきます。

もうこれだけでも怖くて、真千代が架乃に何をしでかすのか、読者はハラハラドキドキ!

なんといっても架乃は、真千代の因縁の相手である浦杉刑事の娘なので、真千代が接近する以上、絶対に無事で済むはずがありません。

ここも、本書では大きな見どころとなっています。

でもやはり一番の見どころは、小諸に対する真千代の制裁でしょう。

小諸があまりにも性根の腐った男なので、読者は半ばワクワクしながら彼が報いを受けるのを待つかもしれません。

でもそんな読者ですら、すぐに顔をしかめずにはいられなくなるくらい、真知子の仕打ちは残酷です。

「目には目を、歯には歯を」なんていうレベルじゃ全然ないです。

情や道徳を完全に無視しており、もはや狂気の域であり、吐き気をもよおすほどグロくてえげつない。

架乃や小諸が、一体どんな目に遭うのか。

終盤では、読者すらトラウマになりかねない地獄絵図が始まります!

悪事で悪を裁くダークヒーロー

櫛木理宇さんの「依存症シリーズ」の第三弾『監禁依存症』をご紹介しました。

いや~、今作もエグかったです!

特に後半は、小諸家の悲惨すぎる状況といい、架乃が直面する酷すぎる現実といい、読みながら目を覆いたくなる瞬間が何度もありました。

ただ、今作は「残酷さ」だけで終わる物語ではありません。

性犯罪がテーマであり、その性犯罪を助長していた小諸が報いを受けるわけですから、ノリとしては勧善懲悪モノに近いのです。
作中には、性犯罪の被害者たちがどれほど苦しんでいるかが細かく描かれているので、読み手によっては、彼女たちを間接的に救った真千代がヒーローに見えるのではないでしょうか。

もっとも、報復のやり口が異常にえげつないので、ヒーローと言うよりダークヒーローと言うべきかもしれませんが。

とにかく今作の真千代は、過去作と比べるとヒーロー寄りに変化してきており、個人的にはそこがとても興味深かったです。

過去作を読んだことのある方は、今作を新鮮な気持ちで楽しめると思います。

逆に読んだことのない方は、ぜひ先に一作目『殺人依存症』と二作目『残酷依存症』を読んでみてください。

真千代がいかに手段を選ばない非道な人物であるかがわかりますし、その上で今作『監禁依存症』を読むと、より一層深く味わえるはずです。

グロ描写が多いので、好みが分かれる作品ではあるのですが、社会の善悪について考えるきっかけになることは間違いない傑作ですので!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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