三津田信三『犯罪乱歩幻想』- 本格ミステリ大賞受賞の鬼才が乱歩に挑む

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江戸川乱歩の小説世界に魅了された作者による、トリビュート5編に短編2編を加えたミステリ短編集。

“退屈病”に侵された青年が引っ越し先のアパートで体験する小さな異変の数々(「屋根裏の同居者」)。

赤い部屋に招かれたゲストが語る、猟奇的な話とその結末(「赤すぎる部屋」)。

G坂に住むミステリ作家志望の“私”は、ある殺人現場に遭遇し……(「G坂の殺人事件」)。

その他、「夢遊病者の手」「魔境と旅する男」に加え、作者による短編集「骸骨坊主の話」「影が来る」を収録。

乱歩の小説独特の世界観を大事にしつつも、新たな展開とホラー風味を追求した、挑戦的・意欲的な短編たち。

乱歩好きの、乱歩好きによる、乱歩好きのためのホラー&ミステリ短編集が誕生!

目次

江戸川乱歩好きなら二倍楽しめる、お得な短編集

本作は「犯罪乱歩幻想」という題名の通り、江戸川乱歩によるミステリ小説をベースにした短編を中心に作成された短編集です。

作品を通しての作者は三津田信三氏で、幼少期から江戸川乱歩作品に親しみ、やがてアガサ・クリスティーやエラリー・クイーンといった海外本格ミステリにも熱中するほどのミステリファン。

そんな彼によって執筆された本作収録の短編集は、江戸川乱歩の小説を踏まえつつ、さらに発展させた内容となっています。

例えば、何をしてもすぐに飽きてしまうという“退屈病”に侵されたという青年が、偶然訪れたとあるミステリ作家に語るという形で話が進む「屋根裏の同居者」。

引っ越し先のアパートで遭遇する、日めくりが勝手に破かれる・置いたはずのないグラスが置かれている・チーズが急激に減るといった小さな違和感を、江戸川乱歩の小説になぞらえ、屋根裏に住む“同居者”の仕業と考える青年。

はじめのうちは興味深い様子で聞き始めるミステリ作家ですが、話の雲行きはどんどん怪しくなり……。

江戸川乱歩の小説を知っている人の方が、この話のオチに意外性を感じやすいかもしれません。

元となった小説の登場の仕方、話への影響の及ぼし方、話の顛末と、江戸川乱歩好きであればあるほど、この短編集を読んだときの楽しさは倍増するはず。

江戸川乱歩を読んだことがないという方は、ぜひ元の小説を読んでからこの短編集を読んでみてください。

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ホラー×ミステリの魅力を再発見できる

作者である三津田信三氏は、ミステリ界隈でも多数の賞を受賞している他、ホラー小説の分野でも多くの作品を発表しています。

特に有名なホラー物としては、作者の名前がそのまま主人公の名前となっている「作家三部作」、“家”に焦点を当てた「幽霊屋敷シリーズ」などで、どれも怖さ・読みごたえ等高い評価を受けているのです。

大学生の頃にホラーの面白さに目覚め、さらにスティーブン・キングの影響でジャンルを超えた作品の執筆にも興味を覚えた三津田氏。

この短編集は、彼のホラーへの造士の深さ・ホラー×ミステリの融合による“怖面白さ”が存分に発揮されたものとなっています。

本来、殺人事件の犯人や動機をめぐることが多いミステリは、それだけでどこか薄ら寒い、恐ろしい雰囲気を持っているもの。

ここに江戸川乱歩・三津田信三両氏のホラー描写の巧みさが加わり、作品の面白さや読んだときの臨場感を何倍にもしていると言えます。

ホラー×ミステリが好きな方は、読んで損はないはずです。

三津田信三初心者にもおすすめ、“読みやすい”短編集

短編だけでなく、長編ミステリ・長編ホラーにおいても数々の名著を発表し、評価され続けている三津田信三氏。

人気シリーズも多数抱えており、確実に“今読んでおくべきミステリ作家”の一人とも言えます。

そんな三津田信三氏の入門編としてもこの短編集は最適と言えるかもしれません!

短編集であり一つの話をすぐに読めること、ベースに江戸川乱歩の小説があり話をつかみやすいこと、短編ということもあり描写が軽めにされていることなどが、入門編と言える理由。

この短編集を読んで雰囲気を大まかにつかめば、三津田氏の長編も読みやすくなるでしょう。

「このミステリーがすごい!」や「本格ミステリ・ベスト10」、「ミステリが読みたい!」など、複数のランキングに毎年のようにランクインしている三津田氏。

既に彼の本を読んだことのあるという方も、まだ読んだことのないという方も、短編集・犯罪乱歩幻想をぜひ読んでみてください!

そして、彼のホラー×ミステリ世界の魅力に取りつかれてしまった方は、他の作品も読んでみることをおすすめします。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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