ホラー小説– category –
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『この会社は実在しません』- 「社員は家族です」という呪い【読書日記】
古びた段ボール箱。赤いマジックで書かれた「開封厳禁」の四文字。 始まりは、そんな地味で、でもちょっと不穏な光景だ。 舞台はどこにでもありそうな製菓会社。その新入社員が書庫の隅で見つけた段ボールを開けてしまったことから、ヨシモトミネの『この... -
『書店怪談』- ほんとうに読んでいいのか? 本に救われた私たちが、本に呪われる夜【読書日記】
書店っていうのは、なんだかんだいって、聖域みたいなものだったと思う。 賑やかな駅前の通りを抜けて、ドアを開けた先に広がる、紙とインクの香り、整然と並ぶ背表紙。あの空間は、疲れたときにふらっと立ち寄る避難所だった。 でも、岡崎隼人の『書店怪... -
『英国幽霊屋敷譚傑作集』- 19世紀の館に取り憑かれる。ヴィクトリア朝怪談アンソロジーの魅力【読書日記】
「イギリスには幽霊がつきもの」 こう言っても、あまり大げさじゃない。 イギリス旅行のパンフレットを開けば必ず出てくる「怪談ツアー」や「幽霊の出る館」。歴史が古いだけに、城や館の数も多く、そのどれもが「何かあっても不思議じゃない」雰囲気を漂... -
曽根圭介の傑作『鼻』と『熱帯夜』という短編集について語らせて – 恐怖でもなく、救いでもなく、ただ地獄がある
2007年、日本の文壇がちょっとざわついた。 というのも、その年、ある作家がまさかの二冠を達成したのだ。 曽根圭介(そね けいすけ)。 ミステリ界の権威・江戸川乱歩賞を長編『沈底魚』で獲得しつつ、ホラー界の頂・日本ホラー小説大賞(短編部門)まで... -
2025年8月に読んで特に面白かった本17冊 – パーシヴァル・エヴェレット『ジェイムズ』ほか
2025年8月の読書の中から、これは面白い!と思った17冊を紹介するよー。 1.狙われたキャンピングカーと、信じたい嘘―― ホリー・ジャクソン『夜明けまでに誰かが』 RV車で春休みの旅。6人の若者たちがキャンプ気分で出発した先に待っていたのは、まさかの... -
『毛糸のズボン』- 焼け跡から蘇った恐怖。直野祥子のトラウマ少女漫画に飲み込まれて
「幻の一冊」という言葉はよく使われるけど、直野祥子『毛糸のズボン』ほど、この言葉がぴったりくる本も珍しい。 筑摩書房から『毛糸のズボン』が復刻されたと聞いたとき、正直「まさか」という気持ちになった。だって、この作品群は阪神・淡路大震災で原... -
『廃集落のY家』- これは霊の話じゃない。もっと生々しくて、もっと足元をすくう何かの物語だ【読書日記】
現代ホラーの怖さは、何も血まみれの化け物や悲鳴だらけの展開だけじゃない。むしろ、ありふれた日常が静かにずれはじめる瞬間にこそ、本当の恐怖は潜んでいる気がする。 『廃集落のY家』も、冒頭は拍子抜けするほど穏やかだ。大学の新歓合宿。まだ春の空... -
「あしか汁」って何だ?と口にした瞬間から、あなたは終わり――三浦晴海の呪われた記録【読書日記】
三浦晴海『なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか』。 タイトルを見た瞬間から、何とも言えない違和感が喉の奥に引っかかる。 あしか汁? なんだその昭和の漁師町にありそうなメニューは。 ほっこりした郷土料理の本かと思いきや、これが全然ほっ... -
『堕ちた儀式の記録』-「これは本当にフィクションか?」って思った時点でもう遅い【読書日記】
最初に言っておく。この本は、小説じゃない。いや、小説なんだけど、たぶん違う。 ページをめくってると、物語を読んでるって感覚がどんどん薄れていって、「これは……どこかで本当に起きたんじゃないか?」と思えてくる。それくらい、読後感が不気味に残る... -
平山夢明おすすめ小説10選 -「二度と読みたくない」と言いながらハマる。これは、小説という名の拷問だ
平山夢明(ひらやま ゆめあき)の小説を読んだことがある人なら、きっと一度は思ったことがあるだろう――「なんでこんなものを書けるんだろう?」と。 グロテスクで、残酷で、容赦がなくて、それなのにどこか笑ってしまう。あるいは、心の奥にひっそりと置...