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【自作ショートショート No.61】『家賃の安い部屋』
「たしか、この辺りのはずなんだけどな」 街の中心部から少し離れた、降りたシャッターの目立つ商店街を、ひとりの若い男が歩いていた。 男は、手元のスマートフォンに表示された地図を何度も見ながら、あたりをキョロキョロと見まわしている。どうやら、... -
青崎有吾「裏染天馬シリーズ」の読む順番とか魅力を語りたい【平成のエラリークイーン】
「裏染天馬シリーズ」とは、アニメオタクのダメ人間・裏染天馬を探偵役としたミステリーシリーズ。 そのタイトルを見てみると『体育館の殺人』『水族館の殺人』『図書館の殺人』と全てに「館」が。 綾辻行人さんの館シリーズ?!と見せかけておいて全くの... -
天祢涼『拝啓 交換殺人の候』- 自殺を決めた青年は彼女のために人殺しができるのか?
秋元秀文は上司からのパワハラに耐え兼ねて退職し、自殺の名所として知られる「首つり桜」へ行った。 死ぬつもりだったが、根元の穴に白い手紙のようなものがあることに気付き、中を開けて読んでみる。 そこには「どうせ死ぬなら殺してみませんか?」とい... -
【自作ショートショート No.60】『毒殺夫婦』
ある夫婦がいた。 大きな屋敷に、多くのメイド。広い庭園に、ズラッと並ぶ高級車。 まさに裕福そのもの。誰もがうらやむ暮らしぶりだった。 しかしこの夫婦は、お互いに恨み合っていた。 度重なる浮気、軽蔑、無関心。 そんなものが積み重なり、もはや憎し... -
木爾チレン『みんな蛍を殺したかった』- 少女の心を繊細に描く名手によるミステリ
時は2007年、京都の底辺女子高のさらにスクールカースト底辺の生物部に所属する三人のオタク女子高生たち。 親に隠れて小説を書く「栞」、母親の愛を期待する「雪」、オンラインゲーム上の彼氏がいるという「桜」。 そんな通称「オタク部」の元に、東京か... -
【自作ショートショート No.59】『未来ミラー』
サトミは鏡からそっと視線を外すと、顔を上げた。 視線の先にはボリュームのある髪を後ろに撫でつけて、引き締まった体躯の彼がいる。 サトミはもう一度、鏡に視線を戻して彼に気づかれないよう小さくため息をついた。 彼女が今その手にしているのは、ただ... -
矢庭優日『エゴに捧げるトリック』- 本書に仕掛けられた人類の存亡を左右するトリックとは?
2105年現在、Extraordinary Ghost Octopus – 通称「EGO」と呼ばれる怪物達に世界を支配され、人類は危機に瀕している。 そんな時代の中、「エスペリオン」と呼ばれる催眠術師の養成校に、「僕」こと、吾妻福太郎という一人の転校生がやってきた。 福太郎が... -
【自作ショートショート No.58】『音痴』
オリエント大学で教授を務めるエフ氏、彼はその筋では名の知られた言語学の権威である。 しかし学生時代の彼の成績はビリから数えたほうが早く、決して優秀とは言えなかった。 いや、包み隠さず言ってしまえば落ちこぼれだった。 そのため学者として成功し... -
逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』- 復讐と葛藤から見出した真の敵とは
1940年代、ソ連とドイツが血みどろの戦いを日夜繰り広げていた時代。 モスクワ近郊の農村が、突如ドイツ兵に襲撃される。 たった一人生き残った少女セラフィマは、強姦寸前のところを赤軍の女兵士イリーナに救われた。 「戦いたいか、死にたいか」 との問... -
【自作ショートショート No.57】『魔法のスパイス』
魔法のスパイスなる発明品が発売された。 魔法を名乗るだけあり、その効能はすごい。 例えどんなに不味い料理であっても、魔法のスパイスをかけるとあら不思議。 なんと三ツ星シェフも驚きの絶品料理に変わってしまうのだ。 当初は広告も特になく、ひっそ...