『ブラックサマーの殺人』-『ストーンサークルの殺人』に続く期待の英国ミステリシリーズ第二作

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今作は、M・W・クレイヴン著の英国推理作家協会賞最優秀長篇賞(ゴールド・ダガー賞)受賞作『ストーンサークルの殺人』の続編となる、ワシントン・ポーシリーズ第二作。

前作の『ストーンサークルの殺人』同様、物語の舞台はカンブリア州。

過去に主人公の刑事ワシントン・ポーにより、ある一人の男が逮捕され有罪判決が下った。

その男の名は、カリスマシェフとして名声を誇ったジャレド・キートンである。

彼は、娘のエリザベス・キートンを殺した罪に問われたのだった。

しかし、その有罪から六年後、ポーがイアン・ギャンブル警視からの呼び出しによりカンブリア州警察署に駆け付けると、ポーとその相棒で優秀な女性分析官ティリー・ブラッドショーにも予想できない思わぬ展開が起きていることを知らされる。

それは父親であるキートンによって殺されたはずの娘エリザベスが、なんとやつれ果てた姿で現れ、六年間、彼女は見知らぬ男に拉致され、監禁されていたという。

殺されたはずのエリザベスが生きている……、では、キートンは無実なのか?

あらゆる証拠がキートンの冤罪を示し、窮地に立たされた主人公ポー。

監察医を訪ねたり、血液の再鑑定や最新の化学分析検査を依頼したりするなど奔走する彼を助けるべく、優秀な分析官であるティリー・ブラッドショーが立ち上がる。

前作に引き続き、謎が謎を呼ぶような強烈な展開と思わぬ伏線の数々に、ページを繰る手が止まらない本格派英国ミステリー!

目次

多彩なキャラクターたちの活躍が面白い

今作は好評だったワシントン・ポーシリーズの二作目ということもあり、前作に登場した個性豊かで、魅力的なキャラクターたちが引き続き登場しています。

さらに、M・W・クレイヴンの描くこのシリーズは物語のメインとなる主人公のポーやその相棒ティリーだけでなく、今作初登場のキャラクターたちでさえも特徴や役割などの人物描写が比較的はっきりとしています。

そのため各キャラクターが理解しやすくミステリー作品に今まで馴染みがなかった、という方でも物語に集中しやすいのも特徴であり、このシリーズの魅力であると言えるでしょう。

登場人物の成長にも注目

そして、前作から引き続き活躍するメインキャラクターのポーとティリーは前作から大きく成長しています。

特に、優秀でありながらも内気で融通が利かない相棒のティリーの成長は著しく、今作では積極的にチームを引っ張る様子が描かれており、主人公ポーの良き相棒としての姿がより強くなったと感じます。

また死体置き場にこもるのが好きな法医学のプロフェッショナル……エステル・ドイルという優秀な病理医が手を貸してくれたり、サイコパスなシェフキートンとポーの駆け引きが見られたりなど、多彩なキャラクター故の展開はこのシリーズの強みであり、今作でも見逃せないポイントの一つです。

単独行動も目立つ主人公ポーですが、その周りにはユニークな相棒や仲間たちがいて、ポーを中心とした警察のチームワークは勿論のこと、縦割り的な弊害やポーを陥れるようとするような同僚なども渦巻くリアルな人間模様も描かれているのです。

カンブリアという舞台にも意味がある

前作同様、今作もカンブリア州を舞台にしています。

そのため、比較的雨が多く作品内では嵐の様子なども描かれています。

また、カンブリア州を舞台にしているからこそ、捜査に取り入れられている最新IT機器・機能とそれを使おうにも使えなくなるカンブリアの地理的制約の組み合わせが描かれており、この作品の面白いポイントとなっています

ここまで、M・W・クレイヴンのミステリー小説『ブラックサマーの殺人』のあらすじやぜひ注目してほしい見どころを紹介してきました。

M・W・クレイヴンはカンブリア州カーライル出身一九六八年生まれニューカッスル育ちのミステリー作家です。

彼は十六歳のころイギリス陸軍に入隊、一九九五年に軍を退役した後には犯罪学や心理学などの福祉を専門的に学び保護観察官として十六年間勤務していました。

そして、二〇一五年にカンブリア州警察のエイヴィソン・フルークという刑事を主人公にしたBorn In A Burial Gownを発表し作家として活動し始めました。

そして、二〇一八年に今作『ブラックサマーの殺人』の前作でありワシントン・ポーシリーズの第一作目となる『ストーンサークルの殺人』が刊行されました。

2015年の作品もワシントン・ポーシリーズも著者自身が過ごしたカンブリアが舞台のため、リアリティある風景描写が可能になっているのかも知れませんね!

この作品で初めてワシントン・ポーシリーズを知った人はぜひ一作目の『ストーンサークルの殺人』から読むことをおすすめします。

前作にはカンブリア州生まれではまずあり得ないワシントンという名前をしている主人公ワシントン・ポーの生い立ちが描かれていたり、相棒ティリーとポーの一作目での関係性が描かれていたりするため、二人の成長をより楽しむことができるでしょう。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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