青崎有吾「裏染天馬シリーズ」の読む順番とか魅力を語りたい【平成のエラリークイーン】

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「裏染天馬シリーズ」とは、アニメオタクのダメ人間・裏染天馬を探偵役としたミステリーシリーズ。

そのタイトルを見てみると『体育館の殺人』『水族館の殺人』『図書館の殺人』と全てに「館」が。

綾辻行人さんの館シリーズ?!と見せかけておいて全くの別物です。

このシリーズに描かれたその見事なロジック(論理)による推理はエラリー・クイーンを彷彿とさせ、著者である青崎有吾さんは「平成のエラリー・クイーン」とも呼ばれています。

そうなれば読みたくなるでしょう!平成のエラリー・クイーンがどんなものかを!

ちなみに、エラリー・クイーンとは『Xの悲劇』や『Yの悲劇』「国名シリーズ」などで知られる、アメリカを代表する作家さんの一人。

海外ミステリ好きならば知らない人はいないほど有名な作家さんです。

それではではどうぞ、平成のエラリー・クイーンによる人気シリーズをご堪能あれ(●´∀`●)ノ

目次

1作目.『体育館の殺人』

激しい雨が降る中、放課後の風ヶ丘高校内旧体育館ステージ上で、放送部の少年が何者かによって刺殺された。

実質密室状態だった体育館には唯一女子卓球部部長が居たため、警察は彼女の犯行だと決めつけてしまう。

女子卓球部部員の1人柚乃は、部長を助けてもらいたい一心でアニメオタクのダメ人間だが学校内一の天才と謳われる裏染天馬に事件解決を依頼する。

特別な仕掛けや特殊なものを使わずに作り出す驚きの密室トリック

裏染天馬シリーズの記念すべき1作目。

中高校生向けの青春ライトミステリーでしょ?と思いきや、意外や意外、「読者への挑戦」をも含まれた王道本格ミステリーなのです。

『体育館の殺人』はタイトル通り「体育館」を舞台に起こる密室殺人事件を、主人公である天才高校生裏染天馬が解き明かすといった内容になっています。

舞台となる体育館はどこの高校にも存在する一般的な体育館で、特殊なものや特別な仕掛けなどはないごくごく普通の体育館です。

そんなどこにでもあるような体育館で特殊なものや特別な仕掛けなど一切無しに密室が作られており、解き明かされる密室トリックに驚かされます。

さらに面白いのが密室そのものが〇〇によって生まれたもので、それを全て解き明かした裏染にもびっくりさせられるでしょう。

米国の推理作家エラリー・クイーンを彷彿とさせる推理展開が人気な青崎有吾先生が、大学在学中に執筆し第22回鮎川哲也賞を受賞した珠玉の作品です。

風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。

卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。

2作目.『水族館の殺人』

夏休み真っ最中の8月初旬、風ヶ丘高校の新聞部部員達は取材で訪れた丸美水族館で、飼育員の男がサメに食い殺される瞬間を目撃する。

駆けつけた警察の操作により浮上した容疑者は全部で11人おり、どの容疑者も完全なアリバイを持っていて捜査が暗礁に乗り上げ始める。

刑事の1人袴田は、以前事件解決に協力してもらったダメ人間裏染天馬の力を借りるため、渋々妹の柚乃に連絡を取るが……。

容疑者11人からたった1人の犯人を見つけるためのアリバイ崩し

水族館でサメによる殺人が行われるという、推理小説の中でもなかなかお目にかからないような殺人事件がメインとなっています。

それでいて安定の本格ミステリーで、相変わらずエラリークイーンを思わせる作風が好き!

あがった容疑者は11人と多いうえに、全員完璧なアリバイを持っており、事件の重点はたった1人の犯人を見つけるためのアリバイ崩しにあります。

青崎有吾先生の裏染天馬シリーズでは、事件を推理するための材料を解決編前に全て提示して読者に擦りしてもらう「読者への挑戦」という部分があるのも特徴的です。

果たして水族館で起こったサメを使った殺人事件の犯人とは誰なのか、どんなトリックで鉄壁のアリバイを作り上げたのか、推理編を読む前にじっくり考えるのもこのシリーズの醍醐味です。

なにより、たった一つの証拠から論理的な推理を繰り広げる展開はやっぱり面白いですね。

前作同様、ヒントの配置がフェアなのが好印象。だけど読者への挑戦状は難しすぎる……。

11人もの容疑者を徐々に減らしていく過程は「これぞミステリ!」って感じがして最高。

夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。

3作目.『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』

『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』

裏染天馬を始め袴田柚乃など、風ヶ丘高校の生徒達は夏のある夜、開催されていた夏祭りへとやってきた。

たこ焼き屋やかき氷屋・ヨーヨー釣りなど様々な屋台が出ているが、どの屋台でお金を払ってもなぜかお釣りが50円玉だらけという点から、天馬はその謎を解き明かす。

表題作「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」を始め「もう一色選べる丼」など短編作品を集めた、裏染天馬シリーズ初の短編集です。

天馬・柚乃だけでなく風ヶ丘高校の面々が大活躍

今作はシリーズ初の短編ばかりを集めた短編集となっており、殺人事件は一切無しで日常の謎を解き明かしていく内容になっています。

学食で食器の返却をせず放置した犯人とその動機をつきとめる「もう一色選べる丼」や、針宮をメインにした「針宮理恵子のサードインパクト」など、日常の謎や登場キャラのスピンオフ作品などが掲載されています。

しかし殺人が起きないと言っても、キレのある論理的な推理は健在。

青春小説としても楽しめるし、ミステリとしての完成度も高め。中でも『針宮理恵子のサードインパクト』は名短編。

「その花瓶にご注意を」では天馬の妹・鏡華を主人公に、彼女が通う緋天学園中等部を舞台とした謎解きが展開。

本格的なミステリーの形は残しながらも、中・高生の夏らしい瑞々しい感じが描かれているのもこの作品の特徴となっています。

4作目.『図書館の殺人』

9月のとある日、風ヶ丘図書館内で撲殺された大学生の死体が発見された。

大学生は図書館が閉館後に侵入して、山田風太郎の「人間臨終図巻」を使って撲殺されたことが警察の調べで発覚。

更に現場には一冊の本と謎のメッセージが書かれており、困った警察は風ヶ丘高校の天才かつダメ人間である裏染天馬に事件の捜査を依頼することになる。

ダイイングメッセージに隠された謎をロジカルに解き明かしていく

これまで密室やアリバイといったミステリーの王道を題材にしてきた裏染天馬シリーズ長編第3弾。

図書館で発生した大学生の死体が残したダイイングメッセージから、そこに隠された謎を裏染天馬が解き明かしていきます。

平成のエラリー・クイーンと謳われている青崎有吾先生の作品だけあって、今作も素晴らしいロジカルな謎解きが炸裂!

また今作では、犯人に対して天馬の配慮や葛藤が最後の方でわかるようになっており、彼自身の成長が感じられる内容にもなっています。

果たして大学生を殺したのはだれなのか、メッセージ隠されている謎とはなんなのか、あなたの目で確かめてみてください。

シリーズを順番に読んでいるとニヤニヤできるネタもあるので、やはり順番に読んでおく事をおすすめします。

おわりに

ふふふ。

このシリーズは読みやすさも抜群ですので、ぜひお気軽に読んでみてくださいな。

エラリー・クイーン作品を読んでいるとニヤリとするシーンも(゚∀゚ゞ)

どうぞ、楽しんでいただければ幸いです!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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