【森博嗣】S&Mシリーズの読む順番とあらすじ【すべてがFになる】

  • URLをコピーしました!

森博嗣(もりひろし)さんの『S&Mシリーズ』の読む順番やあらすじをまとめました!

森博嗣さんの代表的作品であるS&Mシリーズ。

Sは犀川創平、Mは西之園萌絵のファーストネームを表しており、このシリーズの探偵役であり主人公たちの名前です。

シリーズの中でも1作目の『すべてがFになる』は、ミステリファンなら知らない人はいないであろう超名作。

ぜひ読んでいただけたらと思います。

目次

推理だけでなく世界観を楽しもう!

さて、このS&Mシリーズはミステリー小説ではあるのですが、面白いところはミステリ部分以外のところにも多くあるのです。

それは、著者独特の世界観の中にある犀川と萌絵の二人の関係性だったり、掛け合いだったり、シリーズを通しての成長だったり。

要は、たとえミステリー要素がなかったとしても小説として面白い。

逆に「ミステリー小説はあっと驚くどんでん返しのトリックや展開があってこそだ!」という人には、このシリーズは向かないかもしれない(とはいっても、『すべてがFになる』は読むべき)。

普通の小説としても、この作品の世界観や、個性的な登場人物たちによる人間ドラマが非常に魅力的なのです。(作品タイトルも超美しい)

長くなりましたが、以下がシリーズの順番です。

参考にしていただければ幸いです(=゚ω゚)ノ

1.『すべてがFになる』

孤島を旅する犀川研究室のメンバー。

島には、優秀な研究者が集まる「真賀田研究所」があり、天才工学博士・真賀田四季が隔離された生活を送る。

研究所を訪れた一行は、その彼女の部屋から、ウエディングドレスをまとい、両手両足が切断された死体を発見する。

密室で行われた殺人事件に、大学助教授の犀川創平と女子大生の西之園萌絵が挑む。

真賀田四季の圧倒的な存在感と、狂気の天才ぶりに注目

森博嗣のデビュー作にして、理系ミステリーの金字塔とも言われる一冊。

プログラミングの概念を殺人の計画に組み込んでしまう、非常に斬新な作品です。

また、初出は1996年でWindows95の時代、インターネットも普及途上と、コンピュータが一般化していない中で発表された驚異の小説。

タイトルもコンピュータの要素が絡んでいます。

専門用語が出てきて苦手な方もおられるかも知れませんが、それが気にならないほど夢中になれる話の展開で、あっという間に読めてしまうでしょう。

また見どころは、真賀田四季というキャラクターの圧倒的な存在感。会話シーンは、不思議な緊張感があります。

狂気のような天才ぶりで、特にラストは背筋が凍ることでしょう。

登場人物のセリフから、それぞれの人生観や哲学が見て取れる、他の小説とは違った特徴も。

2014年には、武井咲さんと綾野剛さんのダブル主演でテレビドラマが制作され、さらに翌年にはテレビアニメ化に。

プレイステーション用ゲームも2002年に発売、漫画版も存在するなど、メディアミックス作品となりました。

その人気は、とにかく原作が面白いからなのです。

2.『冷たい密室と博士たち』

「全てがFになる」から1年後、犀川と萌絵のコンビが所属する大学の、低温実験室で起こる密室殺人。

実験室で学生2人の死体、ダクトスペースでは腐乱死体が発見され、たまたま訪れていた2人が巻き込まれる。

実質上のデビュー作。前作から一転、王道のミステリー

「すべてがFになる」に続く、森博嗣の2作目。いい意味で常軌を逸していた前作とは異なり、スタンダードなミステリーが展開されます。

実はこちらがデビュー作となる予定でしたが、デビュー作は派手な方がいいという出版社の判断で、前作が先に発売されたという経緯があります。

ミステリーとして地に足のついた流れで、一つの事件だけでは終わらず、二転三転する物語。

一方で、モデムやフロッピーなど、懐かしいコンピュータ用品が出てくるところは、理系ミステリーならではでしょう。

前作にはなかった複雑な人間関係の要素があり、登場人物たちの感情の移り変わりが透けて見えるドラマチックな展開に、読了後は切なくなることでしょう。

引き続き登場する、犀川と萌絵のコンビによる掛け合いも、作品の楽しむポイントの一つ。

命の危険にさらされた萌絵に、犀川が駆けつけるシーンも見どころです。

初登場となる喜多助教授は、今後のシリーズ作品にも出てきます。

あなたは、大切な人のために、自分の命をかけることができますか?

3.『笑わない数学者』

「三ツ星館」には、著名な数学者である天王寺翔蔵博士が住む。自宅で開いたクリスマスパーティで、大きなオリオン像を消してみせる博士。

翌日、オリオン像が現れ、同時に2つの死体も発見される。

館の謎と殺人事件のトリックに、犀川と萌絵のコンビが挑む。

ラストにゾワッとさせられる、森博嗣初の館もの

森博嗣の3作目は、山奥にある風変わりなデザインの館が舞台。

いわゆる「館もの」とあって、天王寺翔蔵博士の周りにはドロドロとした人間関係が渦巻いています。

「内側と外側」の定義を主体として、博士から提示された謎を解いている最中に起こる殺人事件。

オリオン像が消えた謎と、殺人事件の謎を同時に追っていく必要があり、読者の頭はフル回転させられます。

作中、美しい描写で表現される三ツ星館は、現実離れした非日常空間という雰囲気で、複雑な人間関係と様々な謎も組み合わさり、非常に濃厚な作品です。

なお、ラストに明かされる、とある事実に、あなたはゾワッとすることでしょう。

最後まで、読み手の気が抜けない作品です。

4.『詩的私的ジャック』

週に1回、別の女子大へ講義に赴くことになった犀川。

その初日、密室のログハウスで全裸の女子大生が殺害される。

その後も、歌の歌詞に沿って行われる連続殺人と、操作線上に浮かぶ人気ロック歌手。

彼の担任である犀川は、否応なく事件に巻き込まれていく。

歌詞に沿って行われる連続殺人と、急接近するコンビ

コンビのイニシャルを取って呼称される、”S&Mシリーズ”4作目。

必ず密室にしての犯行と、猟奇的な死体に残された文字、そして犯行現場と一致する人気歌手の歌。

謎は次々と深まっていきますが、前作までとは違って、犯行トリックより「なぜ殺したのか?」に焦点が当たる話となります。

こちらも犀川と萌絵のコンビの話ですが、中盤はある事情で犀川が登場せず、警察の操作に積極的に介入していく萌絵の視点で、話が進んでいきます。

そして終盤、犀川が再登場してから、真実に向かって推理が加速していきます。

シリーズを重ねますが、作品ごとに趣きが違う、さすがの森博嗣ミステリー。

そして、知的な言い回しが多い文章が光り、登場する人物も相変わらず魅力的です。

今回、急接近することになる主役コンビの犀川と萌絵の関係も、気になってきますね。

5.『封印再度』

50年前、家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残し、密室で果てた日本画家。

その死と家宝の謎は説かれないまま、時は過ぎていた。そして現代、今度はその息子が死体で見つかる。

2人の”自殺”と不思議な家宝に、犀川と萌絵のコンビはどう立ち向かうのか。

親子2代にわたる不審な”自殺”と、目が離せない2人の関係

S&Mシリーズでも、ファンの間で1-2位を争う人気の一作。

当初はこの5作目で完結予定だったS&Mシリーズですが、一作目の「すべてがFになる」を最初に持ってきたため再構成され、さらに5作が新たに執筆されたという経緯があります。

作中では、伴がかかった「無我の匣」と、その伴が入っている「天地の瓢」が家宝として登場します。

そして、伴は”瓢”の口よりも大きいため、取り出せないという謎。

これまでのシリーズ作品同様、密室トリックも気になりますが、さらに今作は「”瓢”を割ることなく、中にある伴をどう取り出すのか」という謎解きも見どころです。

読みすすめると浮き上がるサブタイトルの意味と、読了後に作品タイトルが示す事実に、あなたは驚愕することでしょう。

萌絵の大胆な行動に動揺する犀川も、この作品の注目すべきシーンの一つです。

6.『幻惑の死と使途』

「どんな密室でも抜け出してみせよう」日本で最も有名な天才マジシャン有里匠幻が、脱出マジックのさなか、衆人環視のもとで殺害される。

さらに霊柩車から消える匠幻の遺体。その後、周囲の人物も次々と殺害されていく。この怪事件に、犀川と萌絵のコンビはどう推理するのか。

何が真実で何が幻惑なのか。美しきイリュージョン殺人

S&Mシリーズ6作目は、密室ではなくマジックがテーマ。

しかし、奇術という要素が入っても、期待を裏切らないのが森博嗣ミステリー。

今作はさらに、事件と並行してコンビの心情が深堀りされる描写が盛り込まれ、500ページを超えるボリュームとなっています。

また、萌絵の成長が見られるのも今作の特徴で、シリーズ初作から読んでいるファンは、萌絵が犀川の思考を追えていることに驚くはず。

20年以上前に書かれた作品ですが「だんだん価値がない個人の日記や独り言で溢れかえるようになる」など、現在のブログやSNSの登場を予言するセリフなどは、本当に驚きの一言です。

章は奇数のみで振られており、実は次作の「夏のレプリカ」との連作になっています。

あとがきは引田天功氏が書いており、最後までイリュージョンを楽しめる作品です。

7.『夏のレプリカ』

西之園萌絵の親友、簑沢杜萌の一家全員が仮面の男に拉致される。

誘拐犯の一人は逃走するが、射殺されて発見。そして盲目の兄が行方不明に…。

前作「幻惑の死と使途」と同時期に起こった事件が、杜萌の視点で描かれる。

シリーズ異色作。親友の視点で描かれる事件と、悲しきチェスシーン

奇妙な誘拐殺人と失踪が描かれる、シリーズ第7作。

萌絵の親友である、簑沢杜萌の視点で展開する異色の作品です。

奇数章で進んだ前作の裏で、今作は偶数章のみで物語が進行します。

同時期の事件ですが、いつもの犀川と萌絵のコンビは脇役となり出番は少なくなっています。

珍しく、理系ミステリー要素もありません。

しかしその分、美しくも哀しい、登場人物の心理描写に力が入っている作品です。

特に後半、怒涛のごとく進展していく物語のラスト、萌絵と杜萌のチェスシーンには、あなたはとても胸が締め付けられることでしょう。

奇数章の「幻惑の死と使途」と、交互に読み進めると面白いかも知れません。

8.『今はもうない』

嵐の夜、避暑地の別荘。電話も通じない中、隣り合わせる映写室と鑑賞室でそれぞれ一人ずつ、美人姉妹の死体が発見される。

密室状態の現場では、スクリーンに映画が投影されたままだった。

物語はエモーショナルに進んでいく。

【叙情的に進行する物語。シリーズナンバーワンとの声も】

S&Mシリーズの8冊目は、シリーズナンバーワンに挙げる声が多い一作。

密室の謎をはじめ、時系列、登場人物などのトリックが美しく並んで読者に提示されます。

また、読み進めるうちに、誰もが違和感を抱くことになりますが・・・多くを語るとネタバレになってしまう、解説が難しい作品です。

ラストには、シリーズの読者に対する、最大のサプライズが明かされます。

とある人物のセリフでガラッと変わる世界観と、タイトルとの繋がりに、あなたはこの作品がシリーズナンバーワンだと確信するでしょう。

この感覚を体感するためにも、ぜひ「すべてがFになる」から順番に、読み進めることをおすすめします。

9.『数奇にして模型』

模型イベントの会場で、首のないモデルの遺体が発見される。現場は密室で、横には他の殺人事件の容疑者が、後頭部を叩かれ昏倒していた。

単純かと思われた事件は複雑になっていく。

シリーズで一番猟奇的な犯行に、犀川と萌絵のコンビが対峙する。

シリーズ史上最難解の謎。キャラ総出演と2つの密室

S&Mシリーズ9作目。

シリーズを追うごとに増すページ数。今作は、1週間の出来事が700ページで語られます。

ですが、登場人物のキャラクターが濃く、テンポのいい会話、次々と起こる出来事も相成って、中だるみもなく、とても読みやすい作品です。

シリーズ終盤とあって、今までの登場人物が総出演といった感があり、それに加えて強烈な新キャラも。

シリーズ異端だった前2作から本筋に帰り、那古野を舞台に、2つの密室の謎を追います。

毎回、事件に関与することに消極的な犀川ですが、今作ではアクティブに動き回ります。

そして、相変わらず事件に首を突っ込みすぎて、危ない目に遭ってしまう萌絵。

また、ところどころでプラモデルやフィギュアなど、模型に対する作者の世界観が垣間見える表現も見どころですよ。

なお、最後の解説では、作者の意外な過去に触れられています。

次は、いよいよ最終作です。

10.『有限と微小のパン』

日本最大のソフトメーカ-「ナノクラフト」が経営する、長崎のテーマパーク。

ゼミの先遣隊として友人たちと訪れた萌絵は、謎の死体消失事件と密室殺人に遭遇する。事件の影には、あの真賀田四季博士が…。S&Mシリーズのラスト作品。

真賀田四季博士、再降臨。現実と虚構。シリーズラストにふさわしい完成度

S&Mシリーズの最終巻。900ページ近い、シリーズ最長のボリューム。

「すべてがFになる」の真賀田四季博士が再登場し、圧倒的な天才ぶりと存在感を見せつけます。

事件の裏に仕掛けられたトリックも、読者の予想を遥かに上回る壮大なスケール。

各章の頭には今までの作品からの引用文があり、この作品がシリーズ集大成だということを感じさせます。

1998年の作品ですが、当時はまだ一般化されていないVR(仮想現実)を駆使した展開や、人工知能、アンドロイドが登場し、作者の先見の明に圧倒されるでしょう。

当時以上に発達した仮想現実や拡張現実について、考えさせられますよ。

ひょっとしたら、2021年の今こそ、読むべきシリーズなのかも知れませんね。

真賀田四季博士の運命は?そして、2人の関係の行方は?

最後まで目が離せません。

最後に

最後までご覧いただき本当にありがとうございました。

このS&Mシリーズは非常に大好きな作品なので、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。アニメ版もぜひ見ていただきたいです。

他のシリーズもぜひ!

参考にしていただければ幸いです。それでは、良い読書ライフを!(=゚ω゚)ノ

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

目次