西村京太郎『七人の証人』 – 無人島で再現される殺人事件の真実とは? 

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ある殺人事件で無実を訴えながらも有罪となった男が獄中で病死した。

当時ブラジルにいた父親は事件を知らず、帰国後事件の再検証を試みる。

なんとその方法は、全財産をかけて無人島に町の一部をそっくり再現するというものだった。

その無人島に集められたのは事件の関係者8人。

息子にとって不利な証言をした7人と、中立な立会人役の十津川警部だった。

警部でありながら帰宅途中に襲われ誘拐されるなど不覚である。

次々と建物から現われる事件の目撃者たち。

検証していくうちに明らかになる証言の矛盾や、揺らぐ信憑性。

疑念渦巻く中、やがて狂気のシーンが展開され―?

事件は冤罪だったのか、十津川警部が真相に迫る。

目次

重厚なクローズド・サークルを味わえる

無人島という閉ざされた空間の中で事件が起きるというのはクローズド・サークルの基本ですが、今作では一味違います。

その無人島は世田谷のとある街をそのまま再現しており、十津川警部以外にも7人が集められていました。

この7人にはある事件を目撃したという共通点があり、その真偽を確かめるために集められたのでした。

物語が進むにつれて過去の証言をした人たちの事実が明らかになり、そして殺されていくという展開は手に汗を握ります。

証言者たちの一見正しく聞こえる証言の矛盾点を突いていく構成にも驚かされるでしょう。

ただのクローズド・サークルものではなく、法廷ミステリーとしての側面も楽しめる内容になっています。

目撃者を殺害している犯人は十津川警部たちを無人島に集めた老人と同一人物なのか、という点にも注目して読んでみてください。

無人島に都会とまったく同じ街を再現することは可能なのか?という点においては現実味がやや薄い舞台設定ですが、それもミステリー小説ならではです。

これまでにないクローズド・サークルを読んでみたい方におすすめです。

人気キャラクター十津川警部が活躍

十津川警部は西村京太郎氏のミステリー小説に多く登場する人気のキャラクターです。

十津川警部シリーズとして多くの作品が発表されています。

土曜ワイド劇場、火曜ミステリー劇場、月曜名作劇場など、ドラマ化されている作品も多く、読んだことはなくても名前を聞いたりドラマを見たりしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

十津川警部シリーズといえばさまざまな土地へ行って事件を解決していくというトラベルミステリーです。

その土地を観光しているような気分になれるだけでなく、その土地ならではの物語も丁寧に描かれており、熱心なファンも多いです。

ですが今作「七人の証言」では実在する街に十津川警部が赴くのではなく、無人島に拉致されるという驚きの始まり方をします。

これまでの十津川警部シリーズを読んでいた方はびっくりするかもしれません。

有名な作品は読んだことがある方でも、本作を見落としている方も少なくないでしょう。

これまでに西村氏の作品に触れたことがある方にとっては新鮮な驚きを楽しめますし、初めて読むという方にも入り込みやすくなっています。

人気作が新装版になって登場!

「七人の証人」が発表されたのは1983年です。西村氏は膨大な量の小説を発表していますが、十津川警部が登場する作品の知名度が高くなるよりも前の作品なので、知らなかったという方も多いかもしれません。

事実、西村氏がこれまでに発表した小説は500冊以上。すべてを読んでいるという方は少ないでしょう。

人気作や新作を追うので精一杯で古い作品に手が回らないということもありますよね。

ですが本作は今読んでも古さを感じずに物語の世界に没入できます。

さらに無人島で私的に裁かれていく証言者たちの虚栄からの嘘や矛盾点を突きながら証言を究明していく様子は、現代の法廷ミステリーにも通じるところがあると言えるでしょう。

そんな「七人の証人」が今回新装版となって登場しました。

過去に読んだことがあるものの忘れてしまった方、西村氏のまだ読んだことのない作品を探している方はぜひ手に取ってみてください。

他にも西村氏の作品の中から名作と人気の「殺しの双曲線」や「天使の傷跡」なども新装版として登場しています。

これらも古い作品ではありますが、現代でも解決されていないような社会問題を取り扱っている一面もあります。

先品の作品との違いや十津川警部の初期の活躍をぜひ楽しんでみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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