倉知淳さんのおすすめミステリー小説10選【猫丸先輩】

  • URLをコピーしました!

「倉知淳さんの作品を読むならコレは外せないよね」的なオススメ作品をまとめてみました。

参考にしていただければ幸いです。

目次

1.『過ぎ行く風はみどり色』

単刀直入に言って、倉知淳さんの最高傑作だと思います(星降り山荘と迷いますが……)。

猫丸先輩シリーズ〉の2作目です。

実家で幽霊騒ぎが起き、叔父が霊能者にハマってしまって大変だ、ということで10年ぶりに実家に帰った主人公。

しかし、帰省してすぐに密室殺人に巻き込まれてしまう。霊媒師が悪霊の仕業だと言うので降霊会が行われるが、その最中にまた殺人が。

「犯人にとってはデメリットが多い〈降霊会の最中〉になぜ殺害したのか」に注目。

伏線の回収も気持ちが良いし、どんでん返しも華麗に決まっている。本当に「お見事!」と叫んでしまうような解決編です。

完全に騙されたわけですが、不思議と悪い気はしません。

そして物語の面白さ。ミステリというより「小説」としての面白さがこの作品にはあるんです。タイトルのような爽やかな読み心地で、とにかく綺麗。

特にラストは猫丸先輩の優しさに涙です。これを読めば猫丸先輩を好きになる、そんな作品です。

霊媒は悪霊の仕業と主張、かくて行なわれた調伏のための降霊会で第二の惨劇が勃発する。名探偵・猫丸先輩が全ての謎を解き明かす、本格探偵小説の雄編。

2.『星降り山荘の殺人』

「どんでん返しミステリ」としてまず名前があがる名作。

倉知さんの作品の中でも特に有名なのではないでしょうか。『過ぎ行く風はみどり色』と並ぶ最高傑作です。

ただ一言、「もしまだ読んでいないなら、予備知識ゼロの状態でとにかく読んでみて」としか言えません。

本当に些細なことでもネタバレになってしまうので、ネタを知って後悔する前にササっと読んでしまいましょう。

雪に閉ざされた山荘で起きる連続殺人を描きながらも、倉知さんらしいユーモアなキャラクターのおかげで硬くならずに読める王道本格ミステリ。

そしてなにより、多くのミステリファンを虜にしたあの衝撃。こういうのを一度味わってしまうと、並みのどんでん返しでは驚けなくなってしまうから困ります。

2017年7月に新装版が発売となったわけですが、1996年の作品が今もなお読み継がれ新装版が出るということは、それだけ読まれるべき名作だということなのです。

雪に閉ざされた山荘に、UFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女性作家、癖の強い面々が集められた。交通が遮断され電気も電話も通じなくなった隔絶した世界で突如発生する連続密室殺人事件!

3.『ほうかご探偵隊』

ミステリーランドから出版されたジュブナイルミステリであり、見事な本格モノ。

①図工の授業で描かれた風景画、②学校で飼育していた一羽のニワトリ、③生徒が作ったハリボテの招き猫、④たて笛の真ん中の部分、

という、不要なモノが次々に紛失する事件に小学生探偵団が挑みます。

すでにミステリが大好きな人も、改めて「推理する」ことの楽しさを思い出す、とにかくワクワクの詰まった作品です。

結局、こういう事なんです。謎について皆でアレコレ推理しあうのって、こんなに楽しいものなんですよ。不可解な謎に対してドキドキする、純粋な気持ちを思い出させられます。

ミステリ小説入門にも良いかもしれませんが、個人的にはミステリ小説を読むことに慣れ過ぎてしまった人にこそ突き刺さる作品だと思います。

ミステリーランドのコンセプトは「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」。「子供向け」のミステリではないのです。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」ミステリなのです。

このような作品を、子供の時に読める今の小学生が羨ましい。

そしてこの先も、いろんなミステリを読むことができる自分を本当に幸せだと思います。

謎は まだまだ 終わらない。

ある朝いつものように登校すると、僕の机の上には分解されたたて笛が。しかも、一部品だけ持ち去られている。―いま五年三組で連続して起きている消失事件。不可解なことに“なくなっても誰も困らないもの”ばかりが狙われているのだ。

4.『日曜の夜は出たくない』

猫丸先輩シリーズ〉の1作目。

猫丸先輩の魅力が詰め込まれた、純粋に面白い短編集です。

どれも雰囲気の違う短編が揃っており、様々なタイプのトリックあり、ユーモアあり、捻りありと、それぞれのお話が申し分ない完成度。

はあ、なるほど面白かったなあ、なんて油断していると最後にやられます。途中で投げ出さず、絶対に最後まで読んでくださいね。

こういう仕掛けを忍ばせているところが、倉知作品の大きな魅力です。

できれば、シリーズ2作目長編『過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)』の前に読んでほしいところ。

今日も今日とて披露宴帰りに謎解きを始めた猫丸先輩。新聞記事につられて現地へ赴くこともあれば、あちらの海では船頭修業。絶妙のアドリブで舞台の急場を凌ぎ、こちらでは在野の研究家然とする。

5.『夜届く (猫丸先輩の推測)』

元のタイトルが『猫丸先輩の推測』である通り、あくまで『推測』なんですよね。

猫丸先輩が謎の対して「僕はこう思うんだけどね」と推測する。その推測が当たっているかどうか、確かめずに終わっているお話ばかりなんです。

れでも、謎に出くわした登場人物、読者は、「ああ、その推測は間違いなく合っているなあ」と納得させられてしまう説得力がある。

これが猫丸先輩の凄さであり、面白さですよ。

想像力ならぬ「推測力」の豊かさが桁外れで、そのヒントだけでなんでそこまで推測できるの?!毎度驚かされてしまいます。

たポイントであるのが、読者にも猫丸先輩と全く同じようにヒントや伏線が提示されているところですね。

つまり、読者も推測力を極限まで働かさせれば、猫丸先輩より先にその推測にたどり着ける可能性が十分にあるということです。

しかし、できないんです。

倉知さんが凄すぎるからです。

この手のミステリを書かせたら、倉知さん以上の作家さんいないんじゃないか、ってくらい巧いですね。

実際、猫丸先輩はほとんどの場合、真相を言い当てているのではない。彼はただ「こう考えれば謎は謎でなくなる」と言っているだけなのだ。こうだとすれば、ほら、不思議でもなんでもない、謎でもなんでもないじゃいか、と。

P.386解説より

6.『シュークリーム・パニック』

全くタイプの異なった6編が収められた短編集。

当時のノベルス編集部が「短編6本を1冊にすると分厚すぎる」と判断したため、最初は『シュークリーム・パニック ―生チョコレート― (講談社ノベルス)』と『シュークリーム・パニック ―Wクリーム― (講談社ノベルス)』の2冊に別れて発売された本作。

しかし倉知さんにとっては、六編揃ったこの『シュークリーム・パニック』こそが当時から思い描いていた完成系。

ユニークさもあり、どんでん返しもあり、奇妙な味あり、本格あり、シリアスあり、コメディあり、青春あり。とにかくバラエティに飛んでおり、いろんな倉知さんを楽しめる贅沢な一冊です。

「メタボ克服合宿セミナー」で起きたシュークリーム消失事件をきっちり論理的推理で紐解いていく『限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件』や、「ほぼ密室状態」からの人間消失の謎に迫る青春ミステリ『夏の終わりと僕らの影と』が特に好き。

爆笑必至の「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」はじめ、ひと味違う傑作本格ミステリ作品を全6編収録。

7.『片桐大三郎とXYZの悲劇』

倉知さんらしい「騙し」が冴え渡る一品。

タイトルからわかる通り、クイーンの「ドルリー・レーン四部作」をモチーフにした短編集です。

というわけで、倉知さんらしいとても面白い作品なのですが、事前に「ドルリー・レーン四部作」を読んでいないと最大限に楽しめないのが唯一の難点。

ですが読んでいるとその分面白い。特に3話目4話目がたまらない。

やられた!と叫びたいなら、読んでみてください。未読であれば、この機会に『Xの悲劇 (角川文庫)』から「ドルリー・レーン四部作」を一気に読んでしまいましょう。

聴力を失ってしまった大スター・片桐大三郎が探偵役となり、彼の「耳」を務める新卒芸能プロ社員・野々瀬乃枝のコンビが事件を解決していく。

キャラクターも良いし、内容も本格的だし、なによりあの衝撃を味わってほしい。

もっと読まれるべき作品だと思うんですけどねえ。

聴覚を失ったことをきっかけに引退した時代劇の大スター、片桐大三郎。古希を過ぎても聴力以外は元気極まりない大三郎は、その知名度を利用して、探偵趣味に邁進する。あとに続くのは彼の「耳」を務める野々瀬乃枝。今日も文句を言いつつ、スターじいさんのあとを追う!

8.『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』

クリスティのABC殺人事件ネタの『変奏曲・ABCの殺人』、殺人現場に横たわる被害者の口にネギが突っ込まれていたという珍事件『薬味と甘味の殺人現場』、

どう見ても豆腐の角に頭をぶつけて死んでいるようにしか見えない死体が発見される表題作。

と、倉知淳さんらしいユーモアのある設定でのミステリを存分に楽しめます。

「ミステリ短編集」というより「倉知淳作品集」と言ったほうがよいかも。

バラエティに富んでいて、読み終わった後にニヤリとしてしまうような短編ばかりでした。

そうそう、倉知さんってこういう人だよね、ってなります。

作品集として文句なしに面白かったです。

9.『ドッペルゲンガーの銃』

ユーモラスで楽しく読めつつ、肝心のトリックや伏線は上質であり読者に対してフェアである、って感じの倉知淳さんらしい作品集。

東京の北と南の端で、ほぼ同時刻に事件が起きた。一つはコンビニ強盗、もう一つは殺人事件。

二つの現場は遠く離れているはずなのに、その犯人が同一人物としか思えない事件だった。

それはなぜか。

銃には線状痕(せんじょうこん)といういわば「銃の指紋」がある。

この線状痕は当然銃によって異なるのだが、なんと今回の二つの事件で発砲された線状痕が全く同じだったのだ!

同時刻に遠く離れた場所で発砲された銃の線状痕が一致するということは、全く同じ銃が同時刻に二つ存在することになってしまう。そんなのありえないのに。

なので『ドッペルゲンガーの銃』という題。

読者の盲点をつくトリック、フェアな伏線、共に上質で「ああなるほど!」と思わせてくれる素晴らしい短編です。

女子高生ミステリ作家(の卵)灯里は、小説のネタを探すため、警視監である父と、キャリア刑事である兄の威光を使って事件現場に潜入する。
彼女が遭遇した奇妙奇天烈な三つの事件とは――?

10.『皇帝と拳銃と』

倉知淳さんによる倒叙ミステリ作品集。

「皇帝」と称される東央大学の稲見主任教授が、一人の男を殺害する。

倒叙でありながら、どうやって殺害したか?も読者は途中までわからないパターン。

倒叙ミステリって、

「自分が容疑者から外れるように綿密に練った計画が、逆に自分が犯人だと決めつける証拠になってしまう」

というのが実に楽しいポイントだと思うんですよ。

この『皇帝と拳銃と』こそ、まさにそれ。

犯人が前もって用意していた何枚もの「壁」を、探偵が淡々と崩しながら突き進んで追い詰めていく、ザ・倒叙ミステリの醍醐味を味わえます。

さすが表題作。このオーソドックスさがいい。

しかも皇帝のキャラクターの痛さと、読後思わずニヤリとしてしまう苦味が残るのも良い。

猫丸先輩シリーズの順番は

①『日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)』短編集

②『過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)』長編

③『幻獣遁走曲 (創元推理文庫)』短編集

④『猫丸先輩の推測 (講談社文庫)』短編集

⑤『猫丸先輩の空論 (講談社文庫)』短編集

となっております。

基本的に猫丸先輩シリーズは面白いので、2作目まで読んで猫丸先輩を気に入っていただけたなら、全部読んじゃいましょう。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

目次