『危険な蒸気船オリエント号』- 豪華クルーズで次々に起こる奇妙な事件の真相は

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ミステリ限定の読書会「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」のメンバーたちは、蒸気船オリエント号で5日間の豪華クルーズを楽しんでいた。

メンバーの一人であるアンダースが、臨時の船医として乗り込むことになり、格安料金になるからと誘ってくれたのだ。

アンダースに恋するアリシアは、彼とのロマンチックな船旅を期待してウキウキ。

ところがオリエント号では、奇妙な事件が続く。

度重なる盗難に、女性の急死、さらには船長夫人が海に突き落とされ行方不明に……。

アリシアたちは、ブッククラブの名にかけて事件の真相を探ろうとするが、調査は難航。

乗船客に怪しい人物が多すぎて複雑な上、頼みの綱のアンダースが船医としての守秘義務によってメンバーとしては動けないからだ。

さらに、多忙でロマンスどころではないアンダースにアリシアが業を煮やし、二人の恋路にも暗雲が立ち込めて――。

目次

クリスティの名作がモチーフに

『危険な蒸気船オリエント号』は、「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」シリーズの第二弾です。

クリスティが大好きな読書会メンバーたちが、身近で起こった難事件に素人探偵として立ち向かい、クリスティ作品からヒントを得ながら解決へと導いていくシリーズですね。

第一弾である前作はキャラクター紹介的な意味合いの強い物語だったので、ブッククラブの全員が登場し一致団結して活躍しました。

それに対して第二弾の今作では、主人公のアリシアと、その恋人アンダースにスポットが当てられています。

他のメンバーも登場しますが、メインはこの二人ですので、ファンの方は必読!

編集者のアリシアと医師のアンダースが、今作では自分の専門分野をどう生かして活躍するのか。

もちろん二人の恋の行方もバッチリ描かれているので、目が離せません。

また、今作は舞台設定も読み手の心をくすぐるものであり、なんと豪華客船オリエント号です。

「オリエント」というと、ミステリ好きの方であれば真っ先にクリスティの『オリエント急行の殺人』が頭に浮かぶと思いますが、今作『危険な蒸気船オリエント号』は、まさにこの名作をモチーフとした作品なのです。

しかもクリスティ作品の方では列車だったオリエントが、こちらでは船、つまり陸地から遠く離れていて逃げ場のない閉鎖空間。

ますますのミステリ性とサスペンス感が期待できますね!

さらにオリエント号は「本物を忠実に再現した蒸気船」で、1900年代初頭にタイムスリップしたかのような船旅ができるのだとか。

ちょうどクリスティが活躍していた時代の船なので、ノスタルジックな感じも良いです!

事件の複雑性とどんでん返しの連続

『危険な蒸気船オリエント号』はクリスティ作品をモチーフにしてはいますが、ミステリーとしては全く別物であり、独自の謎解きを楽しめます。

しかもこれが結構複雑で、まずは船内で盗難事件が起こり、ダイヤモンドのネックレスや真珠のイヤリングなど、きらびやかな宝石類がゴソッと盗まれます。

厄介なことに同じ人からではなく、持ち主はそれぞれ別。

さらに被害者全員が酩酊状態だったことから、薬物が使用された可能性が出てきます。

また、船上で女性が心臓発作のような形で死亡するのですが、これもどうも薬物が絡んでいそうな気配。

そして船長夫人は海に転落し、行方不明。

このようにオリエント号では、いくつもの事件が立て続けに起こり、しかもそれぞれの事件の関連性がなかなか見えてこない上、容疑者の数もやけに多いので、アリシアはもちろん読者も大いに悩まされます。

ちなみに薬物絡みということで、毒薬マニアのアンダースは医師として大忙しで、ブッククラブメンバーとしての調査にはほぼ参加できません。

前作のようなメンバー同士の絶妙な連係プレイができないので、これが謎解きを一層難しくしています。

作品全体の雰囲気はライトな感じであり、キャラクターもよく動くのでテンポが非常に良いのですが、ミステリとしてのレベルは高めで読み応えバッチリ!

伏線やミスリードもあちこちに張り巡らせてありますし、どんでん返しもたびたび起こるので(本当に目まぐるしいほど起こります!)、本格ミステリが好きな方にはたまらないと思います。

ラストにはもちろん事件の驚愕の真相が明らかになりますし、さらにはアリシアの恋にもビックリなオチがつきます。

最後の最後まで、見どころ山盛りです!

先に本家を読むことで面白味がアップ

前作に続き、随所からクリスティ愛がめいいっぱい感じられる作品でした。

クリスティ好きな方であればかなり楽しめると思いますし、そうでない方にもクリスティ作品の良さが伝わるので、「読んでみようかな」という気持ちになれそうです。

ただひとつ注意点があって、今作はクリスティの『オリエント急行の殺人』がモチーフとされている以上、作中にそのネタバレがあります。

まだ『オリエント急行の殺人』を読まれていない方は、先にそちらを読んでおいた方が良いかと思います。

それに先に、クリスティ作品の雰囲気を味わっておけば、アリシアたちとクリスティ愛を共有できるようになる分、『危険な蒸気船オリエント号』をより楽しく読めるようになります!

さて、第二弾まで来た「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」ですが、実は英語版では既に第五弾まで刊行されています。

一体どのような物語なのか、日本語訳版はまだ発表されていないので気になりますね~。

本書のようにメンバーの一部がメインとなって立ち回るのか、第一弾の時のように一致団結するのか、どちらにしても彼らはまたクリスティ愛を炸裂させて、難事件に挑んでくれることでしょう。

その物語をめいいっぱい楽しむためにも、日本で刊行される時までに、できるだけクリスティ作品を読んでおきたいものですね!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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